織斑 一真の苦悩   作:nasigorenn

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今回で買い物は終了です。


第61話 織斑 一真は平等である。

 皆で明日に海に行くと言うことで始まった買い物。

夏耶、葵さん、アリシアさん、灯姉さん、颯姉、束さんの計6人と共に街中を歩き、改めて皆が美しい女性であることを自覚させられた。

周りから刺さってくる羨望と憎悪の視線が実に痛くて仕方ない。

昔から夏耶の兄ということで周りから睨まれていたことは幾度となくあったが、ここまで凄まじいのは初めてだ。

こう言っては彼女達に失礼だが、一体俺の何処が良いのだろう?

頭もそこまで良くなく、常に父さんやあの人の背を追いかけてばかり、小粋なジョークを言えるほど口達者でもなく、容姿もそこまで優れていない。

所謂『魅力的な男性』とはかけ離れていると思う。

確かに人を好きになるというのは、容姿だけではないということは分かっているのだが、どうにも腑に落ちない所があるのも事実。

だけど、やはり好意を向けられて嬉しくないわけで………。

そのジレンマがどうしようもなく苦しかったりする。

それに苦しみつつも同時に幸せ者であることを周りの視線から自覚させられながら済ませた買い物。

その後はお昼ということで皆の要望に添うべくファミレスに行くことになった。

着いて早々集まった視線には驚かされると共に、同時に納得させられた気がした。

皆スタイルが凄いから、グラビアアイドルでも充分通用するし、そこいらのアイドルなんかよりも綺麗で可愛い。

それに囲まれている俺は何様なんだと言わんばかりの視線を受けたわけだが。

明らかに幸せ者であろう事は容易に想像が付くだろう。自分ではいつも通りのつもりだが、客観的に見ればそうなのだろう。

そしてそんな視線に耐えつつ案内された席に付くと、頼んでもいないのパフェが出てきた。

何でも恋人サービス期間なんだとか。そんなこと、店の前には張り出されていなかったはずだが? しかも出されたパフェが可笑しい。

いや、パフェ自体は普通の美味しそうなパフェだ。

だが、出された数に対して付けられたスプーンの数があっていない。

一つのパフェに対し、用意されていたスプーンは七本。

一本は俺なんだろうから、普通は後一本のはず。なのに六本ある。

皆それを見て納得したのか、素早くスプーンを取ると一口分掬って………。

 

俺に差し出して来た。

 

ちょっと待って欲しい。

これはつまり………遠回しに俺の恋人はこの6人だって言っているようなものじゃないのか!?

いや、確かに告白はされたよ、夏耶を除く5人からは。

それに対し答えられていない俺が不甲斐ないのは分かっている。だからといってコレはどうなんだ! それに夏耶は妹だぞ。確かにここ最近さらにぐっと女の子っぽくなって可愛くてスタイルも良くなってドキドキさせられることもしばしば………何を言っているんだ、俺っ!!

と、取りあえず、夏耶とは兄妹……に見えないからこうしてアイツの分のスプーンも用意されているのか。ここまで似てない双子というのも珍しい。

詰まるところ俺が何を言いたいのかと言えば…………。

 

周りから見た俺は、どう見ても女の子に囲まれた六股男にしか見えないということだ。

 

明らかにこれは駄目だろう。世間的にも、自分としても。

彼女達はそう考えないのだろうか? そう思うが、まったく気に留めた様子もなく、皆魅力的な表情でスプーンを差し出してきた。

それに内心たじろぎつつもドキドキしてしまった俺は駄目な男なのだろうか?

そこで問題になった『誰のを最初に食べる』かという問題に対し、『全員のを一遍に食べる』という選択をした俺はきっと優柔不断で駄目な奴なんだろう。

そんな息子でごめんなさい、父さん………そう父さんに謝りたかった。何故かは知らないが。

その後、今度は誰に俺がはい、あ~んするかで揉めることになったわけだが。

別に自分で勝手に食べればいいじゃないか、と思うのが普通なのかもしれないが、してもらった手前、そんな無粋なことを言えるわけがない。

されたからにはお返しをするのは当然である。如何様なことであったとしてもだ。

皆キスをするかのように顔を赤らめて目を瞑りながら小さく口を開けているのだから尚更だ。

やらないというのは、色々と不味いことになりそうだ。

結果としては、右から順にしていくことになった。

理由など特になく、強いて言えば時計回りだから。

最初は一番最後になった夏耶が文句を言いたそうだったが、して上げたら幸せそうに頬を赤く染めてた。

 こうして、昼ご飯前のパフェ騒動は終わった。

 

 

 

 パフェを周りからの視線から耐えつつ何とか空にし終えると、皆早速メニューを見始めた。本来お昼ご飯を食べに来たのだから当たり前なのだが。

 

「ん~、どれにしようかな~」

 

夏耶はメニューを見て楽しそうに悩み始める。

その様子は年頃よりも幼く見えて、兄としては微笑ましく見える。だが、唇に指を当てて悩み首を傾げるという母さんも良くやるポーズ。それが妙に艶っぽく見えるのは何でなんだろうかなぁ。

 

「先程にパフェはいただいてしまいましたし、何にしましょうか……」

 

自分で言って恥ずかしかったのか顔を赤くしつつも、葵さんはメニューを見ていく。

普通ならお昼ご飯を選ぶはずなのだが、めくられているページはスィーツのページである。武帝校では男の振りをしていたからなのか、やっぱり女の子っぽいところを見ると可愛いなぁ。

 

「これは美味しそうですけど……あぁ、カロリーが高いですわぁ……」

 

アリシアさんはメニューのカロリー表を見て悲壮感溢れる声を上げていた。

やっぱり女の子はこういうことを気にするんだなぁ。代表候補生でもそこは変わらないと思うと、何だか可愛く見える。

アリシアさんのように気品溢れる女性なら尚更そう思えるのだ。

 

「どれにしようかしら? お魚も良いけど、もうちょっとお野菜も取りたいし…」

 

灯姉さんはうふふふ、と笑いながらメニューを選んでいた。

その様子はまさに母性溢れた女性といった感じで、見ていて心が安らぐ感じがした。

言っていることはまさに『お母さん』と言った感じだ。母さんも良く同じようなことを言っていたし。そう思うときっと良い奥さんになるんだろうなぁ……………何を言っているんだ、俺は!?

 

「さぁ、喰うぞ~! ハンバーグも良いし、ステーキもいいなぁ。あ、でもこの焼き肉定食っていうのも捨てがたいし……デザートにはプディングとかチーズケーキとかもいいかなぁ……」

 

颯姉は目を輝かせて悩んでいるようだが、ちゃっかりデザートも選んでいる所が可愛らしかった。

やっぱりこうしてると楓姉も立派な女の子なんだなぁ。身体はある意味凄く女性だけど。

 

「ん~、かずくんはどれがいい? 束さんは睡眠薬入りのスープでも何でも食べるけど、特に好みとかはないんだよね~。美味しければなんでも大好きなのさ~」

 

束さんがニコニコ笑顔でとんでもないことを言いながらメニューを見て聞いてきた。

確かに束さん、特に食べ物に関して拘ってるところは見たことがないかな。父さんや母さんの料理を美味しいと言って食べている所を見たことはあるけど。

出来れば束さんの好みとかをもっと知りたいかなぁ。

そう思ってたのを察したのか、束さんはそっと俺の耳元に顔を寄せて囁いた。

 

「私は………かずくんのだぁいすきなものなら、何だって好きだよ。強いて言えば……かずくんと同じ甘いのが好き……かな」

「っ!?」

 

その妖艶な囁きにゾクッと来た。

その後束さんはにゃはは、と笑って何かのメニューを選び始めていたけど、俺は赤面してしまってそれどころではなかった。皆がメニューに集中していたことが正直あるがたい。

そして約十分後、皆決め終えたらしいので注文し、待つこと更に十数分。

俺達の前には美味しそうな料理が並んだ。

 

「では」

 

「「「「「「「いただきます」」」」」」」

 

皆で挨拶をすると共に食べ始めた。

 

「う~ん、このパスタ、美味しい!」

 

夏耶が選んだのはカルボナーラのようだ。良く絡まったソースが美味しそうに見える。

 

「このリゾットも美味しいですね」

 

葵さんが上品にリゾットを掬い口に運ぶと、華やかな笑顔で喜ぶ。

その様子が可愛らしくて頬が緩むのを感じた。

 

「このそば粉をつかったガレットも美味しいですわぁ」

 

アリシアさんが美味しそうに食べているのはそば粉を使った甘くないクレープだ。

変わった食べ物なだけに興味深いかな。それを美味しそうに食べている様子は何だか綺麗な感じで少しドキっとした。

 

「このサラダも緑黄色野菜がふんだんに使われていて身体に良さそうねぇ~」

 

灯姉さんが何やらふむふむと頷きながらサラダを食べていた。

きっと勉強してるんだろうなぁ。そういうのが好きだから。

本当、良い奥さんになりそうだよ。

 

「うめぇなぁ、やっぱり。どっちも捨てがたかったけど、こっちを選んでよかったぜ」

 

颯姉が豪快にステーキを食べていた。

その食べっぷりときたら、まさに男らしい。

だけどその脇にちょこんと置かれているイチゴのショートケーキが女の子らしい。

やはり見て可愛らしさに笑ってしまう。

 

「うん、美味し! ほら、かずくん、あ~ん」

 

束さんが頼んだのは何故か鰤の照り焼きだった。

いや、別に可笑しくはないのだが、少し意外かな。差し出された鰤の照り焼きは素早く俺の口に入れられ、それを見た他の皆が騒ぎ始めたのは言うまでも無い。

そして食べている最中、あることに気付いた俺は夏耶の方に近づく。

 

「どうしたの、お兄ちゃん?」

 

俺を見て不思議そうに首を傾げる夏耶に俺は手に持っていた紙ナプキンで口の端を拭ってやる。

 

「きゃっ!? お、お兄ちゃん、いきなり何を!」

 

いきなりの事に顔を真っ赤にする夏耶に俺は微笑みながら答えた。

 

「口の端、カルボナーラのソースが付いてたぞ。もうちょっと落ち着いて食べたらどうだ」

「あ、あぅ~~~……恥ずかしい」

 

俺にその事を指摘されると、夏耶は恥ずかしがる。

もうちょっと気を付けないといけないなぁ。まぁ、まだ夏耶も手の掛かる妹だということか。

何かその後瞳を潤ませて俺を嬉しそうに見つめていたけど……気のせいだよな…たぶん。

すると………。

 

「夏耶さん、ずるいです。あ、一真様、わたくしも変な所がないか見ていただけませんか」

「お兄様、わたくしもお願いしますわ」

「かずくん、私もどうかしら?」

「一真、あたいも汚れてないか見てくれよ」

「かずくん、私も~!」

 

残り5人が俺にずいっと顔を近づけて言ってきた。

そのことに驚きつつも皆の顔を見ると確かに汚れていた。

 

葵さんの口の端にリゾットが、アリシアさんの唇にはガレットの小さな具が、灯姉さんの口にはサラダのドレッシングが、颯姉の口の端には肉汁が大胆に着いて唇を艶やかに照らし、束さんの口には鰤照りのたれがついていた。

明らかにわざと付けたような感じがするが、気のせいだろう。(気付いてない)

皆、まるでキスするかのように顔を赤らめながら突きだしてきた。それに驚きつつも収拾を付けるために紙ナプキンで皆の口を拭っていく。

その際に手に触れた唇の柔らかさにドキドキしてしまったのはしょうがないと思いたい。俺だって男なんだから。

皆、拭き終えると顔を顔を恍惚としていたけど、何かあったのだろうか?

しばらく皆の顔に見とれていたら、何やら俺の顔に何かが触れたような感触がした気がしたけど、ドキドキしていたので良く分からなかった。だけど、それに気付いたのは俺ではなく束さんだった。

 

「あ、かずくん、こんなところにおべんとついてる~! いっただき~、ちゅ」

「!?」

「「「「「あぁああああああああああああああああああああああ!!」」」」」

 

束さんは俺に顔を近づけると、俺のほっぺたにキスをしてきた。

その感触に驚き言葉を失う俺。

5人がそれを見て騒ぐが、俺はそれどころではない。頬に触れた柔らかな感触にドキドキしてそれどころではなかった。しかもよく見れば、確かに束さんの唇には米粒が咥えられていた。

その後、再び店内で騒ぎになったのは言うまでも無い。

 こうして、賑やかな昼食は終わりを告げた。

そしてその後も皆で彼方此方と寄り道をし、夕陽が出てきたところで皆で帰路に就いた。

 

「お兄ちゃん、明日の海水浴、楽しみにしててね!」

 

部屋に戻る際に夏耶にそう言われ、俺は明日の海水浴でどれだけドキドキしてしまうのか心配になってきたのは内緒だ。

でも、やっぱり楽しみだと思いながら葵さんと一緒に部屋へと入っていった。

 

 

 

 

 




次回は海水浴! 水着回ですよ、水着!
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