3人もオイルを塗ってもらって満足したようだし、俺も泳ぎに行こうかな。
そう思いながら浜辺に向かっていると、目の前の海面が少し盛り上がって弾けた。
「はぁ、はぁ……どーよ、あたいの勝ちだろ」
「はぁ。はぁ、はぁ、はぁ……いいえ、私の勝ちよ」
海から出てきたのは灯姉さんと颯姉だった。
二人とも今まで競い合っていたらしく、やっとこっちに戻ってきたようだ。
二人は自分の勝ちだと言い張りながらも息を切らしており、その様子からそれだけ熾烈を極めたことが窺える。
息を整えながら二人は海から上がると、二人は俺を見つけて目を輝かせた。
「おい、一真! さっきはあたいの方が先に海から上がったよな!」
「かずくん、さっきは私の方が颯より速かったわよね」
同時にそう言うと二人とも俺に詰め寄ってきた。
その時にずいずい来るものだから少し怖かったりもするが、同時に乱れる呼吸に顔を赤くした姉さん達に近づかれて意識してしまう。
「「ねぇ、どっち!!」」
言い寄る二人の顔が一気に近づき、俺の間近まで迫る。
その際に塗れた唇が艶やかに見え、さらに俺をドキドキさせた。
「そ、その………同時だったと思う」
意識していることが恥ずかしくなり、それを悟られぬよう顔を逸らしながら何とか返事を返すと、二人は同時に落ち込んだ。
「はぁ、またかよ」
「今度こそ勝ったと思ったのに……」
本当に勝負するのが好きな二人だよなぁ。
そう思うと昔の事を思い出す。
俺が覚えてる限り、最初に競い合ってたのは確か………。
『どっちがかずくん(一真)のお嫁さんになる』
だったか。
子供の頃では微笑ましい思い出だけど、今尚続いてると思うと本当に凄いと思う。その想いが……。
俺はそんな二人にこれからどうすればいいんだろう?
そう思うと、楽しい気持ちに棘が刺さったような気になった。
それを振り払うように俺は二人に声をかけた。
「二人とも、相変わらず競い合うの好きだよね。疲れてるようだし、何か飲み物でも持ってこようか?」
「あら、そう。かずくんが優しくて嬉しいわ。それじゃあお願い出来るかしら」
「おう、すまねぇなぁ。あたいは炭酸系頼むわ」
二人の要望に応えるべく、近くにある自販機で飲み物を購入する。
颯姉は炭酸系だと言っていたのでサイダーを、灯姉さんにはスポーツドリンクを買った。本当は運動後だし二人ともスポーツドリンクの方が良いのだろうけど、颯姉の気持ちも分かるから。運動後の炭酸系飲料というのは、身体には良くないが気分は爽快になる。あの快感はそう簡単には忘れられない。
買った飲み物を持って二人に持って行くと、二人は俺を見て顔を輝かせた。
「かずくん、ありがとうね!」
「一真、サンキュー!」
渡された飲み物を受け取り笑顔を浮かべる二人。
こんな事でも喜んで貰えるのはやはり嬉しい。
そして二人は遭わせた訳でもないのに同時に動き、貰った飲み物に同時に口を付けた。
灯姉さんはゆっくりとペットボトルを傾け、颯姉は豪快に煽る。
それが二人の有様を表しているようで、見ていて少し笑ってしまう。
二人は笑っている俺を見て嬉しそうに笑い返して来た。
「かずくんの優しさが心に染みるわ~」
「一真の優しさがあたいに入って来るぜ」
そして言った台詞が被ったことで二人とも再び目を合わせる。
その瞳にあるのは、競い合う対抗心だ。
「あらあら、かずくんの優しさは私の方が多く入っているわよ、颯」
「何言ってやがる、灯。一真の優しさはあたいの方が上だろ」
そして火花を散らす二人を見て、俺は苦笑してしまう。
別に優しさに量などないのに、この二人と来たらもう………。
このままだと今度は何で競い合うのか心配になるので、俺は仲裁に入ることにした。
「二人とも、そこら辺にして。別に優しさに量なんてないんだから、競い合わないで」
「だってかずくん~」
「一真、だってよ~」
仲裁に入られ納得がいかない様子の二人。
二人ともいい年なのに、こういう所は妙に子供っぽいのだから可笑しいものだ。まぁ、そこがより二人を可愛らしく見せるのだけれど。
すると二人はお互いに顔を見合わせて軽く溜息をついた。
「かずくんがそこまで言うのなら……」
「仕方ねぇなぁ。一真がそう言うんじゃ引くしかねぇじゃねぇか」
何とか納得してくれたようでよかった。
そう安堵したが、そうではないことに直ぐに気付かされた。
二人はそんな俺を見て何やら思いついたらしく、意味ありげな笑みを浮かべた。
「そうだ、一真。せっかくの勝負を邪魔されたんだから、そのツケは払わねぇとなぁ」
「かずくん、傷心のお姉さんを癒してね」
妙な威圧感を感じさせる笑顔を浮かべる二人に俺はタジタジとなり若干引くが、もう間に合わなかったらしい。既に俺の腕は二人によって捕まれてしまっていた。
「それじゃかずくん」
「一緒にパラソルにいくぞ!」
満面の笑みを浮かべる二人によって、俺はパラソルまで引き摺られ連行された。
パラソルまで行くとそこには誰も居なかった。
少し遠くを見れば、さっきまで休んでいた夏耶と葵さんとアリシアさんが波打ち際でハシャギながら遊んでいる姿があった。
「夏耶ちゃん達、楽しそうね~」
「ああ、そうだな。あたい達も後で混ぜてもらおうぜ」
そう二人は夏耶達を見て言うと、パラソルの下のシートに正座で座り込んだ。
それも二人同時に仲良く隣同士でくっついて。
普段ではまず有り得ない行動に俺は嫌な気配を感じ始める。
そしてそれはまさに当たった。
灯姉さんは引け気味になっている俺に手を動かして此方に呼ぶ。
「かずくん、ここに横になって」
「足はそっちだからな」
二人は自分達の前に寝っ転がるよう言う、シートの上を軽く叩いた。
つまり俺に寝っ転がれと言っている。さらに嫌な予感がヒシヒシと感じるが、何故さか今のこの二人から逃げることは出来そうにない。あぁ、絶影がいれば何とかなりそうなのに……。
姉貴分達に半ば強制的に寝ることを強いられた俺は仕方なく横になる。
すると二人は俺の上半身がシートに触れる前に俺の身体を押さえた。
「かずくんの頭は~」
「こっちだぜ!」
そして同時に俺の頭を両者の太股が重なっているところ乗せる二人。
仕方なく横になっているとは言え、頭の後ろから伝わる異なる柔らかい感触に顔が熱くなってしまう。
「なっ、なっ、なっ……何してるの!?」
自分がされている状況に驚き急いで頭を動かそうとするも、その細腕からは考えられない力で俺は二人から取り押さえられていた。
本気でやればこの程度の拘束くらい簡単に解けるが、精神が混乱状態にある今の俺にはそんな力加減は出来なかった。
二人はそんな俺の状態を悟ってなのか、楽しそうに笑う。
「何って~……膝枕よ」
「この恰好で膝枕なんてレアだぜ、レア」
二人は嬉しそうにそう答えるけど、この膝枕って明らかにおかしくないか?
普通は一人の人間が一人の人間にするものであって二人の人間が一人の人間にするものではない。
俺は二人の膝の上から二人を見上げつつ問いかける。
正直、下から見上げた二人は胸が大きすぎて顔が一切見えなかったが。
「本当はさっきの水泳勝負で勝った方がかずくんに膝枕をするって取り決めだったんだけどね」
「結局引き分けだったからなぁ。それじゃ仕方ねぇから半分ってことになったんだよ」
そう答える二人。顔は変わらず胸で見えないが、声の様子からして満足そうに笑っているようだ。
二人が争わないのは良い事だが、これでは俺の心臓がもつかわからない。
現に今もドキドキしっぱなしなのだから。
顔こそ見えないが、声から二人の感情が窺えてくる。
「それにしても、こうしてかずくんに膝枕なんて久しぶりね~」
「身体もこんなに鍛えて、よく鍛えられてるな」
二人はそんなことを言いながら俺の身体をさわさわと愛撫するかのように触ってきた。
「ちょっと! 姉さん達!?」
「ん~、かずくんの身体、触ってて気持ち良い~」
「すっかり男の身体で……触ってるあたいもドキドキしてきちまうよ」
くすぐったくもどこか変な気持ちにさせられてしまう手付きで触られてしまい、俺はその所為で妙に身体が熱くなってきたが、それを悟られないようにするので必死になっていた。
こうして俺は二人が満足するまで膝枕された上に弄くり回された。
年頃の男子には良くないだろう、絶対に……。