物語もそろそろ終わりそうですね~。
一真や夏耶が実家に帰って一週間が経ち、二人はIS学園に戻ってきていた。
何故ずっと実家にいなかったのか? 特に一真は問題が無かったのだが、夏耶が戻るよう言い出したので戻ることにした。
その事に不思議に思わなくもない一真だが、自立意識が芽生えつつあるのだと思い寧ろ歓迎した。
実際は、夏耶が隣の部屋の様子を毎晩聞かされて気まずくなってしまったからなのだが。
毎晩行われる激しすぎる『アレ』を聞いてしまう夏耶は気が付けば自分でも感化されてしまう始末。
毎回下着が大変なことになり、それを洗濯機に内緒で入れるのだが、母親には見抜かれてしまっているのか妙にイイ笑顔を向けられる。
そのため、気まずさを感じ早めに学園に戻ったというわけだ。
それは皆も同じらしく、各自実家に帰っていた者達もIS学園へと戻ってきた。
一真は実家に帰っていたウチに修理を終えた絶影を受け取り、慣らしやそれまで出来なかった鍛錬などを熟していく。
その頭にあるのは、『あの男』との再戦のみ。
対して、一真に恋い焦がれる6人は更にヒートアップしていく。
寝ている布団の中に潜り込んだり、一緒に食事をしたり、一緒にトレーニングや勉強をしたりなど。
特に束を除いた5人は一真の実家で止まってからはタガが外れたかのように果敢に一真にアピールしていく。
中には束もあわせ、青少年には見せられないような事態になりかけたこともないとも言えないことに。
そんな美少女達に迫られ冷や汗を流しながらタジタジと怖じ気付く。だが、あまり不快ではない。
そんな日々が続く中、その日の朝も一真を魅了しようと、乙女達は各自動き出した。
早朝、夏の熱気に地面が焼かれる前の時間。
小鳥のさえずりと共に清々しい空気を感じさせる中、一真が眠っているであろうベットに近づく影が一つ。
「ぬっふっふ~、か~ずくん、起きてますか~。返事は聞いてないけどね~」
小さな声で愉快そうに笑うのは機械的なウサミミを着けた大人の色気と子供の無邪気さを兼ね揃えた女性だ。
この学園一の変人にして、年齢と見た目が合致しない美女『篠ノ之 束』である。
束はそろりそろりと足音を立てないように忍び足でベットに近づき、ベットの膨らみを見てしたり顔で笑う。
「まだ寝てるみたいだね~。それも当然、何せかずくんがトレーニング始めるより30分も早いんだからね~」
そう言うなり、その身に纏っていたエプロンドレスのような衣装を脱ぎ始めた。
シュルシュルと衣擦れの音が静かな部屋になり、束は下着のみの姿となった。
大人の色香溢れる紫色のセクシーランジェリーにガーターベルト。
それらが包むのは豊満な肢体。最近は発育の良い子供が多くなったが、この妖艶な雰囲気と淫らなまでに感じる肉付きは大人ならではだろう。
思春期の男の子には刺激が強すぎる恰好になった束は、そのままゆっくりとベットの中へと侵入していく。
「かずくん~、束さんが会いに来ましたよ~。ぬふふ~、このままかずくんの性欲を刺激して押し倒されちゃったり……考えただけで下着が濡れて来ちゃうよ~」
明らかに18歳未満禁止な妄想をして悶える束。
こんなアレな人間だが、これでも世界を騒がせた有名人にしてこの学園の教師でもある。それで良いのかよ皆が突っ込みたいと思うが、この変人が普通に止められるわけがない。
そしてベットにかけられた布団をゆっくりと、まるで慎重にお菓子の包み紙を開けるかのように剥がしていく。
「では、かずくんのご開帳~。もしかしたらもう下の方が凄くなってるかもしれないけど、寧ろ好都合だし。そのまま束さんが食べて、あ・げ・る♡」
束は満面の笑みを浮かべながら全てを取り払った。
しかし、その笑みは途端に凍り付く。
何故なら、布団の先にいたのは一真では無かったから。
「な、なな……何で夏耶ちゃんとあっちゃんがいるのさ! かずくんは何処に!」
その声を聞いて二人……一真のベットに潜り込んでいた夏耶と葵はは目を覚ます。
「ん~、もう朝~………」
「お、おはようございます………」
二人とも寝ぼけているのか、声がはっきりとしていない。
だが、次第に意識がはっきりしていいくに連れて、あるべきはずの物が無いことに気付いた。
「あれ、お兄ちゃんは!?」
「一真様は何処に!?」
両者とも、ほぼ同時に声を出し、そしてお互いに何をしていたのか理解して牽制を含めた笑みを向け合う。
「あれ? 何で葵さんがお兄ちゃんのベットにいるのかなぁ? 葵さんのベットは向かいのはずでしょ?」
「おかしいですね? 夏耶さんはこの部屋ではないはずなのに、どうしてこの部屋に? それも一真様のベットにいるのでしょうか?」
お互いにうふふふ、と笑いはするがその目はまったく笑っていない。
両者が火花を散らし、まるで見えない竜虎が争っているような雰囲気を発し始めた。
「私はただ、人肌が恋しくなってお兄ちゃんと一緒に寝に来ただけだよ。そう言う葵さんはなんでここにいるのかな?」
「わたくしはどうやら寝ぼけてベットを間違えただけですよ。それにしても、いい加減良い年なのですから、兄離れなさった方がよろしいのでは?」
「それなら葵さんもいい加減ムッツリ止めたら? 今気付いたけど……下着濡れてませんか?」
「っ!? そ、そんな破廉恥な真似していません! そういう夏耶さんこそ……」
両者の言い争いに、当然起こした張本人が混じらない訳が無い。
「ちょっと待った~! そもそも何で二人してかずくんに迫ろうとしてるのかなぁ? かずくんは私のだって決まってるのに」
それまで火花を散らしていた二人は第三者の存在に気付き、その矛先を束にも向ける。
「あぁ、束さん!? 何でここにいるの!」
「それに何ですか、そのはしたない恰好は! それで一真様を誘惑なさろうとしたのですか!」
「ふっふ~ん、小娘には出せない色香でかずくんをノックアウトさ!」
そしてギャアギャアと騒ぎ始める3人。
そんな騒がしい部屋に新たな来客が訪れる。
「お兄様、一緒に朝食に行きませんか?」
「かずくん、私と一緒に鍛錬しない」
「一真~、ゲームでもして遊ぼうぜ~!」
一応まだ時間は太陽が昇りってそんな経っていない。
だというのに、こうも賑やかに誘いに来たのは、一真に好意を寄せるアリシア、灯、颯の3人である。
3人とも少しでも一真との時間を増やそうと誘いに来たのだが、3人が見たのはエロい恰好をした束とワイシャツに下着だけの夏耶、そして襦袢を着た葵の3人が言い争い騒いでいる姿であった。
そして更に騒ぎは大きくなり、寮長でもある千冬に発見されて全員叱られることに。
その際、6人の考えて居ることは一緒であった。
一真は何処に行ったのかと。
彼女達はまったく気付いていなかった。
一真に宛がわれたデスクに書き置きが置かれていることに。
そしてそこにはこう書かれていた。
『しばらくセンセーの所で修行してきます。一真より』
電車を乗り継ぎ、深い山々の中を俺は歩いて行く。
何故朝も早くからこんな所を歩いているのか?
それは、この先にいる人物に会うためである。
絶影の修理も終わり、あの男との再戦が迫ってきていることに何となくだが察することが出来た。きっと奴は全力を持って俺と戦うのだろう。
ならば、此方も負ける訳にはいかない。故に全力を出すべく、根本から鍛え直す必要があった。
絶影もそれまでかけられていたリミッターが外され、本来の力を発揮出来る様になったが、それには今の俺では耐えきれない。
だからこそ、その力に耐えられるようにするために、俺はあの人に鍛えて貰おうと思ったのだ。
父さんが技と精神の師匠なら、あの人は戦闘その物の師匠である。
俺は会った当初から『センセー』と呼んでいて、良く殺され………鍛えられてきた。向こうも何だかんだと言って俺を可愛がってくれているようなので、嫌われては居ないと思いたい。
そう思いながらしばらく山の中を歩いて行くと、ぽつんと一件の山小屋を見つけた。
周りは畑があるようで、何かしらの野菜が植えられている。
山小屋はとても古いのか、今ではまず見ないだろうデザイン。
それに向かって俺は歩んでいく。
だが、途中で歩みは止まった。
何故なら、上空から途轍もない殺気を感じたからだ。
慣れ親しんだとは言え、一般人なら心臓が止まる程に重々しい殺気。
それが俺一人にむかって注がれていた。
途端に俺は相棒の名を叫ぶ。
「絶影ッ!!」
その呼びかけに応じ絶影が飛び出し、俺の意を酌んで『伏竜』『臥竜』の二振りを投げ飛ばす。
それを掴むと共に俺は真上から来た巨大な影を迎え撃つ。
「HITAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」
「ぐぅうぅううううううううううううううううぅううううううう!!」
放った二刀に掛かる凄まじい衝撃に苦悶の声が漏れる。
刃の先を見れば、此方と同じ二刀が火花を散らし、俺を斬り殺さんとじわじわと迫ってくる。
その強大な力に押されつつ、俺は咄嗟に身体ごと動かしその攻撃を流した。
流した攻撃は地面に激突し、轟音と共に地面を陥没させる。
襲撃者はそのままゆっくりと身体を起き上がらせると、俺を見てニヤリと笑った。
「気を抜いていると死ぬぞ、小僧?」
途轍もない威圧感の籠もった声を聞いて、心臓を鷲掴みにされるような錯覚を覚える。だが、俺は苦しさよりも懐かしさを感じながらその襲撃者に笑いかけた。
「勝手に殺さないで下さいよ、センセー。いや……『四代目、宮本 武蔵』様」
「ふん。口だけは達者になったようだな。では腕の方はどうか、見せて貰おうか」
再び噴き出す殺気の嵐に、俺は脂汗が止まらなくなっていた。
そう、この目の前に居る六十を過ぎても尚、巌の如き肉体を持った強者こそが、俺の『センセー』。
最強の剣豪と名高き、『宮本 武蔵』の名を継ぐ人だ。