織斑 一真の苦悩   作:nasigorenn

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やっと戦いが始まりました。
そして真の姿に……。


第84話 敵と本気の死合い その3

 試合開始のブザーが鳴り響くと共に、お互い相手に向かって突撃を仕掛ける。

 

「おぉおおおおおおおおおおぉおぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「らぁあぁああぁあぁあああああああああああああぁああぁあああああ!!」

 

咆吼を上げながら奴は拳を振り上げた。

それを迎え撃つべく、此方も負けじと気迫の籠もった声を発しながら抜刀する。

鞘から抜き放たれた二刀が奴を斬り捨ようとする俺の意思に従い、一切の無駄なく奴へと襲い掛かる。

そして奴の拳と俺の刀が激突した途端、アリーナに衝撃が走った。

激突によって生じた衝撃は逃げ場を求め、互いの足下の地面を砕く。

だが、それでも俺達は退くことをしない。鐔競り合いのように、奴の拳と俺の刀が凌ぎ合い、火花を散らつかせている。

 

「こんなんでやられるとは思ってねぇが、やるじゃねぇか。これでも前と同じくらいには本気なんだぜ」

 

奴が挑発するように俺に笑いかける。その笑みは野生の獣のようであった。

それに対し此方は感心を込めた声で答える。

 

「初撃とはいえ、こうも簡単に防がれるとはな。これでも最初から斬り捨てるつもりだったのだが」

「けっ、何当たり前の事言ってんだよ。もうケンカは始まってんだぜ。もっと来いよ、なぁっ!」

「まったくだ! 死合いはもう始まっているのだからなぁっ!」

 

そして同時に力を一気に込めて、互いに吹き飛ばした。

少し間合いを開くと、再び俺達は構え直す。

そして何故か………互いに笑ってしまった。

何が可笑しいのかと言えば、何も無い。

だが、何故か笑いたくなったのだ。

初撃目から伝わる、互いの成長。それが分かり、そしてぶつけることが出来るのが嬉しい。

奴はこの楽しさに笑みを浮かべると、俺に少しだけ謝ってきた。

 

「悪いな。つい自分がどれだけ変わったのか知りたくて試した」

 

それがどういう意味なのか? 

初撃を受けた俺には分かる。

あれは、殆ど力の込められていない『挨拶』だ。

奴の力はこんな生温い物ではない。それは前に奴と戦った者なら誰でも分かるだろう。

だからこそ、奴は俺を使って試した。

最低限の力をぶつけて、どれだけ自分が成長したのかを測るために。

別に怒りが燃え上がっているわけではない。

何せ……それは此方も同じだから。

 

「別にいい。それは展開されてる部分を見れば大体分かる。貴様も分かっているだろう? その拳が受け止めた剣の重みを感じれば」

「違いねぇ。テメェ、随分と温い事してくれるじゃねぇか」

「貴様もそうだろうが。互いに文句を言える筋は無い」

 

初手は力を測るのに使った。

如何に前の自分と変わったのかを知るために。

 

「そんな温い拳な訳が無いだろう。いい加減前のように両手足にも展開したらどうだ。それでやっとマシになる」

「言われるまでもねぇよ。そんな舐め腐った攻撃されて黙ってるほど腑抜けでもいねぇよ。まぁ、俺も人のことは言えねぇがよ!」

 

そう叫ぶなり、奴の身体が再び光る。

そして光が収まると共に、その姿は前に絶戦したときと同じ姿へと変わっていた。

右手と同じような装甲を纏った左腕、獣のような爪を備えた装甲が両足を包み込み、まさに野獣のような印象を抱かせる。

不完全ながら、それでも並みのISよりも強いことを知っている。

その姿を見て、奴からは見えないだろうが俺は笑みを浮かべてしまう……やっと来たと。

 

「そうだ、そいつと戦いたかった!」

「いいねぇ、存分にやろうか!」

 

そして今度こそ、手抜き無しの全力へと移る。

開いた間合いから一瞬にして距離を詰めるべく、同時に動く。

 

「いっくぜぇええええええええええええええええええぇぇえぇえええぇええ!! 衝撃のぉおおぉおおおぉおおおお、ファァッアストブリットオォオオオオオオオオオ!!!!」

 

奴は拳を構えると、獣のような咆吼を上げて身体を独楽のように回転させながら俺に向かって突進してきた。

その背からは高エネルギーは噴出している。その出力が独楽のような回転を実現し、遠心力を拳の破壊力へと転化する。

その絶大な一撃に対し、俺も業を持って迎え撃つ。

 

「しゃぁあああああぁあああああ!! 『吉野御流合戦礼法 雪崩が崩し 二刀流、双崩!!』」

 

合当理を噴かしながら二刀を上段に構えて背を逸らし、そこから一気に振り下ろす。

遠心力が最大になり、その全てを破壊力へと転化した拳と俺の二刀が再び激突した。

その瞬間、先程とは比較にならない程の衝撃がアリーナに走り、金属同士の甲高い激突音がアリーナに轟いた。

刀と拳は拮抗し競り合うが、先程のような甘いものではない。

火花を散らしつつ、まるで骨がこすれ合うかのようなゴリゴリとした音が聞こえてくる。

お互いに全力、退く気は無いと相手を押し切ろうとする。

そして両者の力が臨界を超えたところで、互いに攻撃をいなした。

行く先を決められた力はそのまま地面を粉砕していく。

 

「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「BOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」

 

そこから仕掛けようと奴は拳を振るい、俺は二刀を振るう。

至近距離で鳴り響く激突音。

奴は此方の刀を受け止め、強引に弾き、そしてその豪腕を振るう。

俺は奴の豪腕を時に真正面から受け止め、また受け流し、そして反撃に転じる。

苛烈な攻撃の応酬。少しでも気を抜けば直撃し、致命的なダメージを負うことになる。

奴の攻撃に型はない。

実戦経験だけが作り込んだ、まさに殴ることに特化した格闘。

だからこそ、武を学び型のある物を学んでいる俺には予測が付きづらい。

予想外な所から拳が飛んでくることも多くあり、その度に肝が冷やされる。

だが、負ける気は毛頭無い。

此方も相手のペースに呑まれぬよう、更に攻撃の速度を上げていく。

双方の攻撃が掠る度にシールドが削れるが、それに気を遣っていられるほどに余裕はない。当たれば終わる可能性が大きいのだから。

そして幾度となく凌ぎ合うと、再び距離を取った。

此方のシールドは560程度。向こうも同じくらいだと推察する。

あぁ、まったくもって…………。

 

何て楽しいのだろう。

 

この命の削り合いが、生命の危機が、何よりも楽しいと感じてしまう。

待ちに待った、初めて同等の敵との戦いは、俺を何よりも昂ぶらせていた。

だからこそ、より白熱していく。

 

「HITAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

「がぁああぁああぁあああああああああああああああああああああああ!!」

 

咆吼を上げながら奴に向かって斬り掛かる。

奴もまた、負けじと叫びながら俺へと殴りかかっていく。

その度に再び激突音がなり、アリーナに木霊する。

ぶつかり合う度に刀を持つ手が痺れ、身体に雷が走ったような感覚に襲われる。

その痺れるような感覚に笑みを浮かべながら、更に奴へと斬り掛かる。

奴も同じなのか、凄惨な笑みを浮かべながら嬉々として俺へと攻撃を仕掛けていく。

それが幾度となく続いただろうか。

俺は更に攻めるべく、ここで少し奇手を用いることにした。

奴と間合いが離れたのを機に、そこから奴に向かって標的を定め叫ぶ。

 

「行け、絞竜!」

 

俺の命により、首元の触手が高速で奴の方へと向かい襲い掛かる。

その触手を見て、奴はニヤリと笑った。

 

「同じ手は二度と喰わねぇ!!」

「何っ!?」

 

奴は襲いかかって来た触手に翻弄されることなく掴み取ると、それを強引に引っ張る。そのため、引っ張られた俺は体勢を整えることが出来ずに空中へと浮かび上がってしまう。

 

「おらぁああぁああぁあああぁあああああああ!!」

「っ!?……ぐぅ……」

 

浮かび上がってしまった俺は踏ん張ることが出来ず、奴は更に絞竜を大きく振って俺をアリーナの地面へと叩き着けた。

その途端に全身に走る衝撃。呼気が一瞬止まり、肺の空気が吐き出される。

地面は砕け散り、巨大なクレーターを俺の身体は作り出していた。

それほどの威力を受けて、一気に420まで削られるシールド。

だが、戦意は落ちるどころか更に昂ぶる。

俺は少しふらつきつつも起き上がり、奴へと目を向ける。

 

「やるじゃないか。前ならとっくに締められていたところを、よく……」

「まぁな。俺だってそこまで馬鹿じゃねぇんだよ」

 

奴は楽しそう笑いながら俺に向かってそう言ってきた。どうやら前回の時の意趣返しらしい。

それを受けて俺も笑う。

成程、奴なりに成長してきたと言うことか。

なら、今度は此方がそれを示さなくてはなるまい。

 

「今度はこっちから行くぜぇえええええええ! 撃滅のぉぉぉぉおおおおおおおおおおお、セカンドブリッドォォォオオオオオォオオオォオォオオオオォオオォオオォオオオォオオ!!」

 

奴は空いた間合いを一気に突き進みながら拳を突き出してきた。

当たれば俺の身体は一撃で沈むかもしれない。

そんな絶大な攻撃に対し、俺は奴に意趣返しを込めて笑う。

 

「今度は此方から返す!」

「なっ、テメェッ!?」

 

高速で身体ごと繰り出された拳に対し、俺はその軌道を見切って身を躱す。

そこから伸びきった奴の右腕を掴むと、加速の勢いを殺さずに向きを地面に変え、投げ技のようにして奴を地面へと叩き着けた。

 

「ゴハッ!?」

 

奴を叩き着けた地面は俺と同じくらいのクレーターをアリーナに刻み込んだ。

その衝撃の奴もダメージを負ったらしい。

呼気が荒くなり、顔色が一気に悪くなる。

 

「ち……まさかこんな風に返されるとはよぉ……柔道か?」

「そんなちゃんとしたものじゃない。ただ、流れの方向を変えただけだ」

 

そう、俺がしたのはただ力の流れを変えて地面にぶつけただけ。

そんな方法でもしなければ、センセーの太刀など受け止められないから。

これが俺の成長だと意思を込めて奴にそう言うと、奴はそうかいと低い声で笑ってふらついた足取りで起き上がった。

そして再び対峙する俺達。

この試合は傍から見たらISの試合には見えないだろう。

そこまでの動きはないが、それでも重みのある試合だ。

 

「ここまでは前と同じだなぁ、大体」

「あぁ、ここまではな」

 

前回はここで邪魔が入った。

だからこそ、胸が熱く滾る。

ここから先は初めてだから。

奴はニヤリと壮絶な笑みを浮かべると、右拳を空へと突き上げた。

 

「ここから先は初めてだからなぁ! 見せてやるよ、俺の本当の力ってやつをよぉ!!」

 

そう叫ぶと、奴の全身が黄金の輝きに包まれた。

あまりのまぶしさに一瞬だけだが目を瞑ってしまう。

そして光が収まる頃に見えた奴の姿は、それまでとはまるっきり変わっていた。

 

「これが……本当の……シェルブリットだぁっああああああああぁぁあああああぁああぁああぁああぁああああぁあああ!!!!」

 

奴の雄叫びと共にはっきりとする姿。

今までのサイズの倍くらいに質量を増した腕は対象を殴るためだけに特化しており、獣のように細くもしっかりとした爪のある足はその威力を受け止められるようになっている。そして獅子を彷彿とさせるかのような鬣のような装甲が頭部を覆い、それまで顕わになっていた顔はマスクのような物で覆われていた。

まさに野獣。野生の荒ぶる獣を象徴したような姿。

これが奴の言っていた、『本当の姿』なのだろう。

見ているだけでもその覇気が感じられる。

その姿で俺を見て笑う奴に、俺も凄みを含めた笑みで答える。

 

「なら、此方も出させて貰おうか………選りすぐりの力を!!」

 

そして俺は自分の刃に命を出す。

その力を発揮せよと。

その意思を込めて、叫んだ。

 

「絶影ッ!!!!」

 

その瞬間から、俺の身体に装着されていた装甲が始め飛ぶ。

足や胸、背や腕の一部を覗いて殆どの装甲が外れ、そして『消えていく』。

正確には、量子変換されてこの身体へと収納されているのだ。

そして新しき姿へと俺は変わる。

武者というには明らかに細身過ぎて、ISというには明らかに小さい。

まさに人が装甲を着込んだような姿。唯一変わっていないのは、左右に持っている伏竜・臥竜だけだろう。

だが、その力は落ちる所か増している。

俺は顕わになった顔で奴を見て笑う。

 

「これが真の絶影の姿だ。貴様は着いてこれるかな」

 

そして両者とも睨み合う。

ここから先は未知のもの。己が限界以上の力を込めた、まさに死合い。

だからこそ、二人とも笑う。

そして………次の瞬間………。

 

 二人の姿は消えた。

 

 




二人に姿はまんま最終形態ですね(笑)
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