織斑 一真の苦悩   作:nasigorenn

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今回は一真のライバル(?)にしてクラスメイトであるキャラに視点が向きます。
一体彼がなんなのか……


第9話 織斑 一真のルームメイト

 ここいらで一端、俺の寮での生活、ひいてはルームメイトについて語ろうと思う。

この武帝校に入ってからも特に俺の行うことが変わるわけでも無く、毎朝の始まりは一緒だ。

朝日が昇る早朝四時半くらいに起床するのだが………

 

「なぁ……信吾……何でこんなに顔が近いんだ?」

「わひゃっ!? な、何でも無いぞ。ただ、そろそろ起こそうと思ってだな!!」

 

目を開けたら鼻が触れあうんじゃないかというくらい近い距離に信吾の顔があった。

俺が毎回こうしてそのことに気付いて言うと、信吾は顔を真っ赤にして慌てて離れる。こいつのことだから俺を起こそうと頑張って熱中してたら知らないうち近づいてしまったのだろう。

そのたびにに実は少しドキっとしたりしているのは内緒だ。信吾ってよく見ると女の子みたいな顔をしているので、それが間近にあるとやはり男としては驚いてしまう。

まぁ、夏耶もたまに起こしにきてくれたことがあったが、大体布団に潜り込んで抱きついてくるのでそれに比べたらマシなのだが。

まったく、アイツは……………

おっといけないな。これで話が進まない。

こほん……それで信吾に起こして貰った後、共に鍛錬を詰む。

やはりこうしてライバルと共に鍛えるというのは、充実感があって楽しいものだ。

特に信吾の向上心は素晴らしく、此方としても良い刺激となっている。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

 

顔を真っ赤にして荒い息を吐きながら地面に座り込む信吾。

確かにやる気は十分だが、俺よりも体力がないらしい。そこが入学式の試合での差になった。

 

「どうした、休むか」

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、ま、まだやる…」

 

身体は悲鳴を上げているが、心は滾っているようだ。

それは良いのだが……妙にその姿が艶っぽいと皆は言うんだよなぁ。

俺はそんなことないと思うんだが。

そのことを言ってみると、信吾の奴は顔を真っ赤にして『何変なこと言ってるんだ、馬鹿者がぁ~!』と怒る。

誰だって男なのに艶っぽいと言われて嬉しい奴なんていない。

そのことを謝ると、何故か少し拗ねたような感じになるので、イマイチよく分からない。

 それで鍛錬をし終えると部屋に戻ってシャワーで汗を流し、そして学校に行く準備をする。

その前に昼食のお弁当を作るのだが、これは何故か全部信吾が作る事になってしまっていた。

二人で一緒に生活しているのだから、いちいち個別に弁当を作るというのは効率が悪い。

なら一緒に二人分作ったほうが効率が良いと思い、俺が言い出した。

ところが俺が作った弁当を食べた信吾は全部食べた後に『わ、悪くはないが、これなら僕の方が上だな。だからこれからは僕が作ってやろう』と言って、それ以降は信吾が作るようになった。事実、俺よりもかなり美味かった。

毎日作ってもらうことに悪いと思って断ろうとするが、何故かかたくなに譲らないので仕方なく折れることにした。

その変わりにたまに手伝っているのだが、その時改めて思うことがある。

何というか………料理をしている信吾の姿は『綺麗』なのだ。

所作が美しいというのか、一枚の絵になるというのか、そんな感じである。

きっと良い家で育てられてきたのではないだろうか。そのやけに綺麗な姿についつい見惚れてしまい、指を切ってしまうことがあった。その時はたしか………

 

「つぅ!?」

「どうした? あ、指を切ったのか! 待ってろ、すぐに絆創膏を」

 

俺の指から出る血を見て慌てる信吾に俺は気にせずに笑う。

 

「別に慌てるような怪我じゃないだろ。この程度なら放って置いて問題ない。武者ならこれぐらい怪我の範囲にはいらないよ」

「そんな問題じゃない! もう、貸せ!」

 

そう言うと信吾は俺の手を強引に引っ張り、切った指を口に咥えて血を舐めとり吸った。

そして少ししてから放すと、それこそ倒れるんじゃないかと思うくらい顔を真っ赤にして『さ、些細な怪我でもそこから菌が入って来て化膿したら大変だろ。指は刀を握るのに重要なんだから、もっと大切にしろ!』と言って俺を怒った。

そう言えばよく夏耶も料理を手伝って俺が怪我したときはよく咥えていたっけな。

まぁ、信吾と違ってあいつはかなり舐めていたみたいだけど。

父さん達もよくやっているので、医学的な根拠はなくても指を怪我したときの応急処置なんだろう。

 

(普通はそんなことはないのだが、一真の周りではそれが普通だったので普通だと一真は認識している)

 

その後に軽くバンドエイドを貼り、またお弁当作りを再開した。

その間信吾の顔がずっと赤かった。

そして昼食の弁当を作った後に朝食を取りに学食へ向かうのだが、その間に信吾は布団を頭にかぶってばたばたと寝っ転がりながら暴れていた。

きっとストレスがあったのかもしれない。見なかったことにしておこう。

 しばらく信吾を温かい目で見守った後に、何がない感じに朝食に誘うのは友人としての優しさだと思う。

 

 

 

 こうして朝は始まり、一緒に登校。

そして共に切磋琢磨しながら授業を受けてお昼に。

いつも雄飛達と一緒に弁当を広げるのだが、一緒の弁当にクラスの奴等からからかわれたりする。

まぁ、みんな似たり寄ったりなことをしているのでそこまで酷くはないのだが。

そこに偶に灯姉さんが来たりする。

 

「かずくん、一緒にお昼食べましょう」

 

満面の笑顔で俺達の方に来ると、灯姉さんは俺に向かってお弁当を渡してくる。

 

「はい、これ。今日は時間があったからかずくんのお弁当も作ってきたのよ。さぁ、どうぞ」

「あ、ありがとうございます」

 

俺のために作ってきてくれたというお弁当を受け取ろうとしたのだが、それを何故か信吾が遮る。

 

「真田先輩、こいつの昼食は僕が作ったのがありますから充分ですよ」

 

笑顔なのに何故か可笑しな雰囲気を醸し出す信吾。

それを向けられた灯姉さんは笑顔で信吾と向き合うのだが、何故か雰囲気がおかしくなる。

 

「あら、そうなの? でも武者は一杯熱量を消費するから、一杯食べないと身体が持たないわよ。たぶんその量じゃかずくん、すぐお腹がすくんじゃないかな。だって男の子だしね」

 

そう答えるとお互い、うふふふふ、と笑っているのだが、俺の気のせいだろうか。

二人の背後にタツノオトシゴと猫が見える気がする。

周りをを見ると、雄飛は何故か顔を青くしていて忠保はやれやれと肩をすくめていた。

そんなことなど気にしないのか、灯姉さんと信吾の二人は俺に一気に詰め寄り、

 

「「どっちのお弁当を食べる!!」」

 

と聞いてきた。

その迫力に飲まれそうになりながらも、俺は何とか二人の要望に応えようと頑張る。

 

「なら……両方ともいただかせてもらう。結構今日の授業は大変だったし。それに信吾にはいつも作って貰ってるしね」

「そ、そっかぁ。や、やっぱりかずくんは男の子ね。この量でも全部た食べちゃうんだから」

「そ、そうだな。いつも一緒に作ってるんだから、やっぱり僕としても食べてもらわないと」

 

そう応えると、二人とも少し納得のいかない顔をしながらも頷いてくれた。

そして昼食になるのだが……

 

「はい、かずくん。あ~ん」

 

と言って灯姉さんがおかずを俺に差しだしてきて、それを見た信吾は怒る。

 

「な、何やってるんですか、真田先輩。自分で食べられるんですから、一々食べさせる必要なんてありませんよ! あ、それより一真。この煮物なんだけど、試しに作ってみて自分のお弁当にだけ入れて見たんだ。よかったら味見してくれないか、ほら」

「あ、徳臣君こそ、何やってるの。人のこと言えないじゃない!」

 

と、二人でまた喧嘩し出した。

何故かこの二人、ソリが合わないんだよなぁ。

この後、俺は双方から無理矢理口におかずを突っ込まれるという事態に。

その光景を何故かクラス中から羨望と嫉妬の眼差しで睨まれることに。

一体俺が何をしたというのだ?

 

 

 

 そして午後の授業も終わり、部活をする者は部活へと向かう。

俺は部活には所属していないので絶影を用いての鍛錬に精を出す。

日が沈むまで鍛錬し続けた後は、寮に戻り信吾達と一緒に夕食へ。

そして風呂に入るのだが、何故かその時に絶対に信吾は顔を真っ赤にして先に入るよう主張する。

 

「ぼ、僕が先にはいるからな。絶対に出るまで入るなよ! 絶対だからな!!」

 

そう言って信吾は急ぎ足で風呂に向かう。

ちなみにこの寮には二種類の風呂があり、部屋についている小型の風呂が一つ、それと生徒が大勢はいれる大浴場がある。

信吾は何故か大浴場には絶対にいかない。前に行こうと誘ったときは断固拒否された。

たまには一緒に汗を流したいと思う俺はおかしいだろうか? 少なくても男なら裸の付き合いくらいおかしくないと思う。

それから少し経って、信吾が風呂から上がる。

その後に俺の番になるのだが、信吾が入った後はいつも甘い香りのようなものを感じるのは何でだろうな。

こうして風呂を出た後に就寝となる。

これが俺の基本的な一日、そしてルームメイトとの過ごす時間だ。

多少気むずかしいところもあるが、信吾は良い奴だ。一緒にいて楽しい。

そんな奴とルームメイトになった俺は幸せなんだろう。

ただ………何故か信吾は俺達の前だと絶対に着替えたがらないんだよな。

まぁ、そんなルームメイトの事も、少なからず悩みと言えるかも知れない。

 

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