蜘蛛の糸を掴めたら   作:SHALC7

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四話 中編になります。


四話 中編

「……ボクの顔に何かついているのか?」

「え? ああ……いえ、すみません。 初めまして、倉木紫莉です。 店長……ミカさんの命令でここに来ました」

「よろしく、紫莉」

 

 

 紫莉は眼前の少女が伝説のハッカーだという事実に、面をくらってしまっていた。 ついつい自分の頬を抓りたくなるが、差し出された手を慌てて握り返す。 彼女の手は小さく、あっけなく壊れてしまいそうなほど儚かった。 

 けれど、幼い見た目とは裏腹に彼女のからは知的な印象を受けた。 何より命が狙われている状況下においても、焦りや動揺も見られず冷静でいられることが、一般人とは異なっているように感じた。 かなり肝が据わっているか、それとも能天気なだけなのか──おそらくは前者だろうが。

 ウォールナットは「それにしても……」と顎に手を当て、紫莉を訝しげに見つめる。

 

 

「どうかしましたか?」

「いや……未だに信じられなくてな。 日本の平和の裏側で、犯罪者達を闇に葬っていくJKの殺し屋が本当に存在するとは……」

「物事には何かしら裏があるものですよ。 ほら『事実は小説より奇なり』ってことわざがあるでしょう」

「『ドン・ジュアン』か。 まったくその通りだ」

「正直に言えば、自分も驚いています。 まさか生ける伝説が、貴女のような人だったとは……」

「底意地の悪い痩せた眼鏡小僧か、それともブクブク太った巨漢だと? それなら映画の見過ぎだな」

「いえ、そこまでは……単に男性かと思っていただけですよ」

 

 

 心の中を見透かされたような気がした紫莉はどぎまぎする。  紫莉が想像していたのは、真っ暗な部屋の中、忙しなくキーボードを叩いている不健康そうな人物だった。 それこそ彼女の言ったイメージはぴったりと当てはまった。 

 わざとらしく目を逸らす紫莉に、ウォールナットは疑いの眼差しを向けたが、「まあいい」と話題を変えてくれた。 

 作戦の最終確認をしようと提案してきたので、紫莉はコクリと頷く。

 当初の予定通り、紫莉がウォールナットに成りすます。 そこで活躍するのがここにあるリスの着ぐるみだ。 これで敵に紫莉が標的だと誤認させ、本人(ウォールナット)は先ほどまで彼女が入っていたスーツケースの中に身を隠しておく。 

 着ぐるみの生地にはライフル弾でも防げる防弾が施されており、極めつけに派手な演出をするため大量の血糊を搭載しているらしい。 そのせいでかなりの重量になってしまったらしいが、元々はミズキが着用するだったことを踏まえると、現役リコリスの紫莉には支障もないだろう。

 その後は護衛の二人と合流したのち、敵の攻撃をかわしながら指定ポイントに向かう。 なんでも、ハリウッド並みの大爆発をする仕掛けを用意してあるらしいので、それに巻き込まれたフリをするまでが今回の作戦の流れだ。

 

 

「──以上だが、何か気になる点や認識が違う所はないか? もしあれば、遠慮なく言ってくれ。 お互いの命にかかわることだからな」

「いえ、特に問題ありません」

「随分とあっさりとしてるな……着ぐるみの防弾性能は保証できるが、万が一ということもある。 死ぬのが怖くないのか?」

「怖くないと言えば嘘になりますが、仕事ですから仕方ありません。 仮に自分がいなくなっても代わりはいくらでもいます」

「……こう言ってはなんだが、イカレてるな」

「人殺し組織の構成員が、まともな倫理観など持っているとでも?」

 

 

 この発言にウォールナットは、否定も肯定もせずただ肩をすくめただけだった。 紫莉は心中で己を冷笑した。自身の倫理観も酷くねじ曲がってしまったものだ、と。 

 自分達は平和を守る装置の道具である。 部品に余計な感情は必要ない。 それが使える間は最低限のメンテナンスを行い、破損したら新しい物に取り換えればよい。

 先進国の日本であっても、紫莉のような存在は必ず現れるため、DAにとってはペンのインクを入れ替えることくらいの感覚だろう。 書けなくなったペンの末路など言うまでもない。

 その時、紫莉の手首にある腕時計から電子音が鳴る。 作戦開始五分前のアラームだった。 

 アラームをきっかけに二人は真剣な面持ちに変わると、無言で頷き合い、それぞれの準備を始めることにした。

 スーツケースの中にウォールナットが身を潜めるのを見届けると、紫莉は着ぐるみの方に足を向けた。

 

 このために事前に制服から着替えるように言われたのか。

 

 ミカから「涼しく動きやすい服装で行くように」と伝えられた理由が分かった。 今の紫莉はいつものベージュの制服ではなく、ウォーキングをするような格好をしていた。 今日は日中の気温も高くなると予報も出ていたので、こんな格好で動き回れば、間違いなくサウナに入っている気分になるだろう。

 着ぐるみに袖を通してみると、中は予想通り蒸し暑く、肌着で着ている長袖のコンプレッションウェアが肌にぴったりとくっついてくる。 

 

 一応動けるが、流石に戦闘は無理だな。

 

 紫莉がその場で軽く歩いたり跳ねたりして着心地を確かめていると、左耳に装着したインカムから通信が入る。 相手はウォールナットだった。

 

 

 ─聞こえるか? 

「感度良好です。 鼻についてるカメラには問題ありませんか?」

 ──今のところは問題ない。 安くはない金額を払ったんだ、これで不良があったらそのメーカーをクラッキングしてやる。

「本当にやりそうな口ぶりですね……」

 ─当たり前だ。 こっちは命がかかっているんだぞ。 そんなつまらないことで危険な目にあうのはごめんだね。

 

 

 それもそうかと紫莉は納得する。

 装備の確認を終えた紫莉は、スーツケースを助手席に載せシートベルトで固定したのち、運転席に乗り込む。

 古い車だが、計器盤周りは最近の車らしくデジタル式に改造されており、カーナビまで搭載されていた。 キーを回しエンジンを始動させると、車内のスピーカーから和楽器の音色が流れ始め、続いて独特のこぶしをきかせた女性の歌声が聞こえてきた。

 

 ……渋い趣味してるな。

 

 この曲はウォールナットの趣味なのであろう。 演歌をBGMにハッキングを行う金髪少女というシュールな光景を思い浮かべながら、車を発進させるのだった。

 

 

 

 ▼

 

 

 

 廃工場を後にして、しばらく車を走らせる紫莉。 今のところは敵の襲撃もなく言ってしまえば退屈なドライブが続いていた。

 

 

「……ひとつ訊いても良いですか?」

 ─どうした。 敵がいたのか? 

「少し……いや、この格好は逆に目立ちすぎるのではないか思いまして……」

 

 

 紫莉は信号待ちの間、通行人や対向車の人々が奇異な目でこちらを見ているのが気になっていた。 客観的に見ても着ぐるみが運転している光景など、誰でも目で追ってしまうだろう。 しかし、紫莉の心配をよそにウォールナットは、安心するかのようにため息をついた。

 

 

 ─なんだ、そんなことか。 誰もボク達のことなんか気にも留めないから、運転に集中しろ。 五分後には全員忘れてる。

「写真を撮られてSNSに投稿される可能性があるのでは……」

 

 

 紫莉は篠原沙保里のことが頭をよぎっていた。 あれもSNSが発端で発生したトラブルだった。 誰かが面白がって写真を撮り、そのせいで自分達の現在地がバレてしまうのではないかと考えてしまい、一抹の不安を拭えなかった。 けれどウォールナットは鼻で笑っただけだった。

 

 

 ─お前、かなりの心配性だな。 

「な、何がおかしいのですか。 俺はあらゆる可能性を想定して──」

 ──それくらいの事態、すでに想定済みだし、対策も打ってある。 お前は安心してボクの身代わりをしてくれれば良いよ。

「……承知しました」

 

 

 ネットに情報が流出してしまうと、全てを削除することは不可能だという話を耳にしたことがある。 ラジアータなどの高性能AIを使えば話は別かもしれないが、基本的には無理だろう。 けれど、彼女の言葉に妙な説得力を感じた紫莉は、それ以上は口をつぐんだ。 彼女くらいになれば、それらを消すことは造作もないのだろうか。 いや、むしろそうでなければ、ダークウェブなどの無法地帯では生き残ることなど出来ないのであろう。

 ハッカーという存在の底知れぬ恐ろしさに舌を巻いていた時、ふと後方を走っていた一台の車が目にとまった。 それは何の変哲もない白の商用バンであった。

 しかしどこか違和感を覚えた紫莉は、しばらくの間その車を注意深く観察した。 商用バンは、着かず離れずといった距離を保ちつつも、ぴったりと紫莉達についてきている。 

 信号が赤になり車を停止させたタイミングで、ウォールナットに商用バンの存在を伝える。 すると、彼女の声音が警戒感を現れ始めた。

 

 

 ─確かに怪しいな。 けど決定的な証拠がない。 今はドローンも飛ばしてないし……

「では、わざとこっちのスピードを上げてみるのはどうでしょう? それで相手の動きに変化があれば確証を持てるはずです」

 ─ああ、そうしてくれ。

「了解。 少々揺れますよっ!」

 

 

 紫莉は信号が青になった瞬間、アクセルを踏み込み車体を一気に加速させた。 キュッとタイヤを鳴らしカーブを曲がって表通りから路地に入り込むと、商用バンも同じく速度を上げて追従してきた。

 

 やっぱりか……! けど、この道幅ならこっちが有利だ。

 

 紫莉は軽自動車のアドバンテージを活かすため、あえてこの狭い道を選んだ。 小回りの利くこの車なら、楽々と進めるからだ。 狙い通り、相手は曲がるたびに減速しており、そのおかげで少しずつではあるが距離を広げることができた。 だが、闇雲に逃げていても埒が明かない。

 紫莉は叫ぶようにウォールナットに訊ねる。

 

 

「合流地点まではどれくらいですか!?」

 ─向かいにある公園の奥の有料駐車場だ。 次の突き当りを左に曲がってくれ。

「そうですか、なら、このまま突っ込みます!」

 ─なっ! ちょっと待て、公園の中を突っ走る気か!? 危険だぞ! 

「危険な状況下での運転も訓練済みです……よっと!」

 

 紫莉は速度を緩めずに、道路沿いに設置してある背の低いフェンスを乗り上げ、公園内に車ごとに乗り入れた。

 突然飛び込んできた車に園内に居た人々は驚愕していた。 その場で腰を抜かしている老人もいれば、我が子を守ろうと子供を抱きかかえてる母親の姿があった。 紫莉は彼らに心の中で謝罪しつつ、けたたましくクラクションを鳴らしながら駆け抜けていく。

 

 

 ─まったく、無茶するなぁ、もう! これじゃどっちが秩序を乱しているのか分からないぞ! 

「仕方ないじゃないですか! こうでもしないと、追手は振り切れませんよ!」

 

 

 ウォールナットの苦情を聞き流しながら、紫莉が後方を確認すると、流石に相手は園内までは追ってこなかった。 やがて視界の先に駐車場が見えてきたので、同じ要領で外に飛び出すと、すぐ近くに見慣れた制服を着た女子二人組が、ぽかんとした表情でこちらを見ていた。 車をバックさせ、彼女らに近寄ると予想通り千束とたきなであった。

 

 

 ─ウォール! 

「ナット」

 ─早く乗れ、追手が来るぞ。

「えっ、なにそれ合言葉? カッコわるぅ……」

 

 

 事前に決めていた合言葉を、声を出すことが出来ない紫莉の代わりに、ウォールナットが伝えてくれる。 たきなが即座に答えてくれたが、どうやら千束は知らなかったようで合言葉のセンスに苦言を漏らしていた。

 紫莉は二人を後部座席に乗せると、バックギアのまま後退。 何やら千束はスーパーカーがどうのこうのとぼやいていたが、何のことだがさっぱり分からなかった。

 再び表通りに戻る。 紫莉は警戒を緩めることなく周囲に目を光らせるが、敵の姿は見えない。 ひとまずは相手を振り切れたようだ。

 ふぅ、と紫莉はひと息をつく。 汗で濡れた髪が、べたべたと顔に纏わりつきうっとうしい。 被り物だけでも外して髪を払いたかったが、作戦が台無しになってしまうので我慢する。

 千束とたきなは、紫莉がこの作戦に参加している事実は知らない。 そもそも作戦の本当の狙いも知らされていないはずだ。 日ごろからポーカーフェイスのたきなはともかく千束は芝居下手で、自然なリアクションがとれない可能性があるためらしい。 敵を欺くにはまず味方から、というわけだ。

 二人も紫莉の変装には気づいてはおらず、疑う素振りも見せずにウォールナットと会話をしていた。 会話を聞き流しながら車を走らせていると、途中でたきなが羽田空港に向かう前に車を変えるように指示をされていると言い、被り物の前にスマホを差し出してきた。

 紫莉はウォールナットにも見えるように、鼻先のカメラをスマホに向けつつ場所を確認する。

 

 高速を使うのか。 確かこの先にインターがあったはず。

 

 紫莉がカーナビに視線を移すと、確かに高速道路の料金所が近くにあった。 しばらくすると入口へ誘導する看板が見えたので、車線変更をしようとしたその時だった。

 

 なんだ? ハンドルが妙に重いな。

 

 紫莉はハンドルを回そうとしたが、石になってしまったかのように動かない。 少し力を込めてみるがびくともしなかった。 そして気が付けば料金所を通り過ぎてしまっていた。

 たきなが訝しげに「高速に乗るのでは?」と言ってきたが、紫莉にも何が起こっているのかが分からない。 まるで誰かに車を操られているかのようだ。 紫莉は嫌な予感で背筋がぞわぞわし始めた。

 

 

 ─どうした? 

「いや……それはこっちのセリフなんですけど?」

 

 

 今の問いかけは、千束とたきなに向けられたものではない。 紫莉にはそれが分かっていたが、返事するには無理がある。 

 その時メーターパネルの表示が、突然切り替わった。 パネルにはヘッドホンを付けたロボットの頭部と【DANGER】という文字が映し出され、紫莉達を嘲笑うかのような笑い声が車内に流れた。

 

 

 ─車を乗っ取られたか……

 

 

 すぐに状況を理解したウォールナットは、あっさりと驚愕の事実を告げてきた。 紫莉もまさか、と思いつつハンドルから手を放してみると、ハンドルは意志を持ったかのように勝手に動いていた。

 次の瞬間、車は急加速を始めた。 その後は前の車を無理やり追い越し、蛇行運転を繰り返すなど完全に敵の手中に落ちてしまった。

 

 クソっ! どうすりゃいいんだ! 

 

 紫莉は苛立ちに近い焦りの感情を帯び始める。 このままでは四人とも海に突っ込んでしまう。 せめてこんな格好じゃなければ、まだ何か出来たかもしれないが現実はそうではない。

 たきなが回線の切断を提案するが、即座に上書きされてしまうため無理だと一蹴されていた。 千束が頭を抱えながら声を上げる。

 

 

「えぇ~じゃどうすれば?」

 ─こちらの作業完了と同時にネットを物理的に切れれば良いんだが……

「ルーターどこよ?」

 ─知らん、ボクの車じゃない。

 

 

 いまいち緊張感に欠けるような会話に、紫莉は頭痛が出そうだった。 けれども、紫莉自身もまさか車ごとハッキングされるなどとは思いもよらず、ルーターの所在など知る由もない。 打つ手がないと紫莉が思い詰めた時、たきなが「千束さん、あれ」と言った。

 最初は、彼女が何を指しているのか分からなかったが、ふいにルームミラーを見ると、後方に一機のドローンが飛んでいるのが見えた。 どうやら敵のハッカーはドローンを経由してこの車を操っているらしい。 ドローンを偵察に使ったり、機体に爆弾を積んで目標に自爆攻撃をしかけたりするなどの方法は知っていたが、このような使い方もあることに紫莉は唇を噛んだ。

 それでも解決策が見つかったことはかなり大きい。 あれを落とせば、車の制御を取り戻せるのだろう。 だが、問題はどうやって落とすかだ。 ドローンは小さく頻繁に動いており、激しく揺れる車内から銃で撃ち落とすのは至難の業だろう。 それにこっちが下手に動き見せれば、察知した敵は安全圏に機体を移動させるに決まっている。

 紫莉にとっては、高速で反復横跳びしている人物の頭上にある林檎を撃ち抜け、と言われているようなものだ。 とてもじゃないが、そんな芸当は出来る気がしない。

 それは千束も同じ気持ちだったようで、「あれに当てるのは自信がないわー」と苦言していた。 でも、たきなは違った。 千束に任せた、と無茶ぶりされるも「分かりました」と二つ返事で了承していた。

 

 本当にやるつもりか……? 

 

 実のところ紫莉は、たきなという人物のことが分かっていない。 互いに千束のようにべらべらとお喋りするタイプでもないことに加え、初めて出会った時の印象は正直良くない。

 リコリコでも朝と帰りの挨拶、最低限の業務的連絡しかしないでいた。 そのため彼女のリコリスとしての技量がどれほどなのかは未知数だった。

 そうこうしているうちに車は道を外れ、芝生で覆われた土手を駆け上がっていく。 海は目前まで迫っており、もう時間がない。 後部座席の二人がしくじれば、身動きが取れないウォールナットは間違いなく溺死してしまうだろう。 それは紫莉にも言えることなのだが。

 

 

 ─よし、制御を取り戻すぞ。 三、二、一、──今だ。

 

 

 ウォールナットの合図と共に千束が窓ガラスに向けて発砲。 次にたきなが開いた窓部から身を乗り出した。 だが同時に土手を登り切ってしまい、車は空へと舞い上がる。 車体が空中で右回転し無重力を感じる中、今度はたきなが発砲。 彼女が放った弾丸は的確にドローンをとらえたのだった。

 たきなの見事な腕前に、紫莉は思わず叫びそうになった。 一回転して元の姿勢に戻った車は、ガタンっと音を出し地に戻る。 急いで紫莉はありったけの力でブレーキペダルを操作する。

 

 止まってくれ!! 

 

 横方向から襲ってくる重力を受けつつ、しがみつく体勢でハンドルを切る。 甲高い音を鳴らし、地面に黒いタイヤ痕を着けながら、車は横向きで滑っていく。 そして間一髪のところで停止してくれた。 

 紫莉を含めた全員は安堵の息を漏らす。 けれど車体の半分は波止場に落ちているので、早く脱出しなければならない。 千束の指示の下、ゆっくりと順番に降車していく。

 最後に千束が車から降りた直後、バランスが崩れた車は海に落下した。 目の前で派手な上がる水しぶきを眺めながら、紫莉はこれからについて思案する。 

 ひとまずは助かったのだが、移動の足を奪われてしまったことはかなり痛手だ。 まだ次の車までの距離はだいぶあり、徒歩で向かうのは現実的ではないだろう。 どうしたものかと悩んでいると、背後で爆竹が弾けるような音がした。

 振り返ると近くの地面が小さくえぐれていた。 視線を少し上げると、高架橋に例の商用バンが停まっており、傍らには複数人の姿が見えた。 彼らは小銃を構えていたが、「この距離じゃ当たらねぇ!」や「もっと近づけ!」などとこちらにも聞こえる声量で怒号を飛ばしていた。

 

 見つかったか、早く安全な場所に移動しないと……

 

 紫莉がそう思っていると、千束が場所を変えようと提案してきた。 そして紫莉達は、近くにあった潰れたスーパーマーケットに身をかわすことにしたのだった。

 

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