怪力の肉食動物   作:もこきち

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そろそろ原作の時光くんも動き出しそうでワクワクしますね


唯一無二の武器

 第1試合チームYとの試合を大差で勝つことができて喜ぶチームW。

 

 5チーム総当たりのリーグ戦で勝ち残れのは2チームだけのため、2敗したらほぼほぼ勝ち上がることはできない。チーム得点王のみ勝ち上がれるという救済措置はあるが、その枠も俺か志熊くんで埋まるだろう。

 

 次回の試合は俺たちは休みのため、他のチームの研究に専念することができる。もし負けていたら研究どころの騒ぎではなかったため本当に勝てて良かった。

 

「みんな試合が終わったばかりで悪いんだけど、少しだけ聞いてくれない?」

 

 賑やかだったのが一瞬で静かになる。みんな今回の試合で多かれ少なかれ思うことがあるのだろう。

 

「今回の試合無事に勝てたのは良かったけど、それと同時に各々の課題も見つかったと思う。本来なら部屋に戻ってその課題を解決するための作戦を練ろうと思ったんだけど……」

 

 誰かがごくりと唾をのむ。

 

「せっかく快勝したんだし祝勝会をしよう!」

 

 時光の言葉に再び盛大に盛り上がる。普段あまり喋らない人とも今回は喋れるきっかけになる良いイベントだ。これでもっと作戦に深みが出て点が取れやすくなる。

 

「よし、じゃあさっそく部屋に──」

 

『待ちたまえ、才能の原石共よ』

 

 ロッカー室から出ようとした俺たちを絵心が呼び止める。

 

『さきほど己の課題が何かという話があったが、サッカーにおいて最も重要な力は何かわかるか?』

 

「え? なんだろう」

「速さとか体力とか?」

「……技術」

「いや、役割を遂行する精神と肉体だろ」

 

「役割か……。どれも間違いではないが、サッカーにおいて最も重要なことは独力。お前ひとりの個の力だ」

 

「独力?」

 

「そうだ。その局面で攻守が一変する自由度の高いサッカーにおいて、ただ役割を全うするだけでは勝てないようにできている。一流のストライカーという生き物は皆、何物にもない唯一無二(オリジナル)の武器を持っている! ゴールという革命を起こすのはいつだって己の武器だ。勝利はその先にしか存在しない」

 

 絵心は檄を飛ばし、姿を消した。唯一無二(オリジナル)の武器を持つことがこの一次選考(セレクション)を勝ち抜く突破口。祝勝会が終わったら、改めて自分の武器、そして弱点を聞いておく必要がありそうだ。

 

 

 

 

 ■□■

 

 

 

「このステーキうめ~!」

「たった一切れだけど、こんなうめぇ肉は初めてだー!」

「そろそろいつもの飯にも飽きてきたし、こういうのもありだな」

 

 各自の持ち寄ったご飯と俺がゴールした3点分のステーキで祝勝会をしている。久々の別メニューと勝利した余韻で、チームWの雰囲気は最高潮だ。

 

「本当にいいっぺか? 時光さんがゴールしたお肉だってのに」

 

「大丈夫だよ。その代わりに次回からFW固定にしてもらえたんだから」

 

「……それは志熊さんも同じじゃ──」

 

「俺が何か?」

 

「な、なんでもないっぺ!」

 

 志熊にバレないように小さな声で時光に意見を求めるが、志熊の想像以上の地獄耳で会話を聞かれてしまう。慌てて言い訳をするが、志熊のヘッドロックにより七星の悲鳴が響き渡る。

 

「そこまでだよ志熊くん。夕食ももうすぐ終わるし、そろそろ絵心の言葉について考えよう」

 

「……」 

 

 志熊は黙って七星を解放した。痛がっていた七星もぶつくさと文句は言いながらも、すぐに聞く態勢になってくれた。

 ランキング下位からそれぞれの武器と弱点を聞いていき、今回の試合でランキングで三位になった七星に話を振る。七星は緊張した面持ちで答える。

 

「お、俺の武器はパスだべ。そ、それで弱点はそもそものボールタッチだべ」

 

「確かに七星くんにパスを出すと、1手でパスを受けれるところを2、3手でボールを受けているよね。そこでDFに攻められればボールを奪われるし、そうじゃくても決定機を逃してしまう」

 

「それに今回は俺と時光がコート上を走り回ってうまくパスを受けていたが、この試合が何度も起きる可能性は低い。七星のパススキルを活かすには、もっとボール保持(キープ)力を鍛えるべきだ」

 

 俺と志熊くんの指摘により、徐々にテンションが下がっていく。覚悟はしていたようだけど、実際に自分の弱点を列挙されると落ち込んでしまった。

 

「う~やっぱそもそもサッカーの技術が拙いんだべな。でも逃げるわけにはいかん! どうやって解決するか教えてくんろ!」

 

 七星くんはキラキラした瞳で俺と志熊くんを見つめる。顔を見合わせて俺が先に喋ると志熊くんがアイコンタクトしてきたので、素直に譲ることにする。

 

「シンプルにもっとボールに触れることだな。お前はよくトレーニングルームでマシントレーニングをしているが、もっとフィールドで練習するべきだ」

 

「たしかに。でも、パスの練習をする相手が……」

 

「……俺が相手になろう」

 

 以外な申し出に目をパチクリする。

 志熊本人が自分から立候補するなんてことが今まで無かったからだ。

 

「俺は嬉しいけど、本当にいいべか?」

 

「何度も言わせるな。やると言っている」

 

 志熊は少し照れたような表情でそっぽを向く。にやにや。志熊は俺たちの視線から逃れるように話の先を促す。

 

「次は俺だ。俺の武器は身体(フィジカル)とジャンプ力。弱点はペナルティエリア外でのシュート決定力の無さだ」

 

「たしかにペナルティエリアでのシュート力高いよね。練習でも外したところほとんど見ないし」

 

「俺は幼いころからずっとポストプレーで仕事をしてたからな。エリア内での戦いなら俺に負けはない。逆にそれ以外のプレイではあまり貢献できないが」

 

 志熊くんの力はペナルティエリア内で実力を発揮する。ゴールの約75%が生まれるペナルティエリアにおいてその力は破格だ。実力も申し分ない。

 しかし、エリア外でのシュート力は決して良いとはいえない。蹴ったボールはふかしてゴールの外にいくか、キーパーのど真ん中に行く傾向が高い。もしも狙った場所に打ち分けられるようになれば、一気に強くなれるだろう。

 

「俺も志熊くんと似た感じだね。武器は身体《フィジカル》とジャンプ力に加えて俊敏反応(クイックネス)と先読み。弱点はミドルレンジのシュートとドリブルだ」

 

「あれ? でも時光さんはどっちもできてるべ。そこまで気にすること?」

 

「できないわけじゃないけど、自慢の武器に比べたら質は各段に下がるよ。全部トップクラスにするわけじゃないけど、絵心の言ってた唯一無二(オリジナル)の武器に、やはりシュート決定力は必要不可欠だ。だから、今の俺の課題はゴール決定力かな?」

 

 俺自身そこまで深刻に捉えているわけじゃないが、ストライカーとしてゴールを生めないのであればピッチに上がる資格はない。ペナルティエリアで勝負できる志熊くんがいる以上、今一番欲しい力は外からのシュートだ。それも敵が予想できないものほど良い。

 

「俺と志熊くんは結構役割がかぶってるし、能力の違いもあまりないけど、ひとまずは志熊くんが中で俺が外。そこに中継で七星くんが入る。あとは点をとられないように全員で守る。もし敵にエース級の人がいたら一番体力のある俺がマンマークでつく。これでどう?」

 

 全員から了承をもらい、本日の祝勝会兼ミーティングを終了する。早速、七星くんは志熊くんと一緒にトレーニングフィールドに向かった。やる気があるのは結構だけど、そろそろ就寝時間だよー。あっ、と声をかける間もなく出て行った2人を苦笑しながら見送った。

 

 その後、少し遅れて俺もトレーニングフィールドに向かった。

 

 

 

 

 ■□■

 

 

 

 この一次選考(セレクション)を突破するか頭を悩ませた翌日。

 

 いつもの3人組はトレーニングフィールドで三つ巴の対戦をしていた。

 

「止められない! 志熊さん、そっちいったべ!」

 

「黙れ七星。俺たちは敵同士だ。……だが時光は止める!」

 

「かかってきなよ巨神兵」

 

 七星くんをあっさり抜いた俺は、まっすぐにゴールへと突き進む。志熊くんの守備力は高いし、デュエル勝利率も高いが、それは俺以外とやったときの話。

 

「ちっ……まだだ!」

 

「はずれ」

 

 俺の俊敏反応(クイックネス)で左右に揺さぶるが、志熊くんも負けじと追い縋ってくる。良い体幹をしているし、速さがないわけじゃないけど少しずつ置いていかれる。体幹が不安定になって理想の動きに少しずつ追いつかなくなっているところを見計らいぶち抜く。

 

 志熊くんも最後の力を振り絞ったが、フェイクに引っかかって抜かれてしまう。これで楽々とゴールを決められるとシュートを蹴ろうとしたが、そこに一度抜かれた七星くんがスライディングで止めに来る。

 

「あぶな!」

 

「これでもダメか!」

 

 七星くんをぎりぎりかわして再びシュートを放とうとしたが、今度は横から掠め取られた。態勢が崩れて次の動作にワンテンポ遅れたところを的確に奪われてしまった。

 

「これで終わりだな」

 

「いいとこまでいったんだけどね」

 

「惜しかったべ!」

 

 今回は志熊くんのファインプレーで見事に負けてしまった。彼の執念を侮っていた俺の負けだ。次やるときはこの執念も計算に入れて勝負しないとだな。

 

「そろそろ次の対戦相手の偵察班が戻ってくるはずだ。戻ろう」

 

「おう」

 

「絶対勝つべ!」

 

 昨日のミーティングは確実に実を結んでいる。僅かだが、己の武器がなんなのか自覚できたことによって前より迷いがなくなったように見える。

 

 次の試合はチームX。一戦必勝を胸に全力で叩き潰す。

 

 

 




次回チームX戦です
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