何がヒーローたらしめるか   作:doraky333

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スクリームフィストに頼まれて訓練指導に来た総武中学、その少年はそこにいた。
個性使用訓練だというのに何もせず、隅の方で佇む少年。
その暗い目に見覚えがあった。
10年前、ヒーローを辞めると言ってこの俺と決別したあの男。
その息子が。
声をかけ、個性を使ってみろと促す。
渋々といった様子でこちらを見た、その子から出た言葉は。

「…知らない人の言うことを聞くなと言われてるんで」

燃やしてやろうかと思った。


Episode12.猛る想いが暗礁を照らす

「ほえー…雪乃さんでも2位だなんて」

「まー妥当じゃないかな?あの1000万を狙わないとどう頑張っても2位以下だし」

「相手はあの葉山先輩でしたからねー。かなり時間かかりましたね……ほぼ互角でしたし…。雪ノ下先輩って中学の頃すごい強かったですよね?葉山先輩が強いんでしょうか…」

 

雄英体育祭一年ステージ観客席。

雪ノ下チームと葉山チームの攻防を終始見ていた比企谷小町、一色いろは、雪ノ下陽乃の3人が、今し方行われた戦闘について感想を漏らす。

小町といろはは二人ともヒーロー志望ではない。

小町は無個性であり、いろははヒーロー向きの個性を持ってはいるが使う気がない。

だが、それでも兄の八幡や身近な先輩の雪乃や結衣を見続けてきた結果、戦闘に関する目や知識は養われてきた。

 

「隼人は確かに強いけど、このルールだと雪乃ちゃんは全力出せないからねー。後にトーナメントも控えてるし、力温存したんじゃない?水も使ってないし必殺技も使ってないしね」

 

それに隼人には海老名ちゃんの個性サポート付きだしね、と思うが口にはしない。

トーナメントは辞退してしまったようだがかなり強力な個性だ。

個性の唯一無二さで言えば雄英1年でも屈指。

サイドキックにぴったりの個性だろう。

 

「ガハマちゃんといい、今年はサイドキック争奪戦激戦必至だねー」

「やっぱり結衣先輩もすごいんですか?」

「そりゃもう。あの子の個性の類は見たことないね」

「はー。あのドジっ子属性付きのあの人が」

「ちょい天然入りのあの人が」

「間違ってないけど2人とも中々だね?」

 

辛辣な年下2人に笑う陽乃。

3人とも方向性が違うだけで嗜虐的、所謂Sっ気がある為結衣はいつも上手を取られている。

 

「でも…勝負決めたのは結衣先輩でしたからね。あの葉山先輩を出し抜いて」

「それをやったのはガハマちゃんだけど…その意図を汲み取ってサポートしたのは雪乃ちゃんと…留学生くんだね」

「やっぱりあのとき鉢巻を葉山先輩に寄せたのってあのオオカミさんですかね?」

「もしかしたらその前からかもよ?」

「え?」

 

その前?と首を傾げて思い出そうとする小町。

いろはにはすぐに思い当たる。

鉢巻が宙を舞う前、その原因となったのはウルフによる葉山への頭の突風だった。

アレのおかげで雪乃は鉢巻への攻撃を回避し、葉山は鉢巻を結果的に結衣に取られた。

 

「…まさか、あの結衣先輩の個性を織り込み済みであの鉢巻を上空に飛ばしたってことですか!?」

「あとは…えーと、相模ちゃんだっけ?あの子なら隼人たちよりも先に宙に跳べるって思ったんじゃない?」

「確かにあの時葉山先輩たちは飛びかかった勢いそのままで宙に浮いてました。地に足ついてたぶん、相模先輩の方が有利でしたけど……そんなことあるんですか?咄嗟にそこまで先を読んでたら気持ち悪いですよ、初めてチーム組む個性の人が3人もいるのに。留学生ですよね、あの人?」

「あっはははは!気持ち悪い!なるほど、確かに気持ち悪いかも!」

 

あの狼顔の中身は比企谷八幡なので、初めてチームを組むわけではない。

だが、先の展開を読めていた…というより、誘導したのは間違いなく彼だろう。

そこまで緻密に展開させたかはわからないが、鉢巻さえ結衣に触らせればほぼ詰みだ。

確実にその鉢巻だけは手に入る。

浮かせた鉢巻は葉山チームの鉢巻だった為、合計で1400以上のポイントになる。

機動力も巨体で猫という個性の相模なら勝てると踏んでいた。

だからこそ、宙に飛ばせば何とかなると踏んでいたのは確実だろう。

 

「そんくらい気持ち悪くないと…ね。ヒーローのサイドキックなんてやってけないよ」

「サイドキックかー。確かにあの人サイドキック向きかも」

「もしかしてはるさん先輩、あの人狙ってます?」

「ん?まーね。私にも職場体験の指名権あるし」

「留学生なのにですか?」

「うん、留学生なのに」

 

なのにー?と連呼する2人を放っておき、エンデヴァーの方を盗み見る。

今のところ警備に異常はないようだ。

 

(…やっぱり狙いは…トーナメント終わった後かな?何か生徒たちへしでかすなら障害物競争が人が大勢いて確実だったし、レクリエーションにも彼は参加しないみたいだし)

 

現在、眼下のグラウンドでは第一競技と第二競技でそれぞれ脱落した生徒たちがレクリエーションに励んでいる。

今は借り物競争だろう。

何故かA組の女子たちがチア姿になって応援に興じてるけど。

 

「…とりあえず小町ちゃん、写真撮ろっか。雪乃ちゃんの」

「既に結衣先輩のと一緒に撮っています。いずれ兄が戻ってきたら高値で売ります」

「えー。私には?」

「もちろんタダで!」

「小町ちゃんラブ!」

「こまちもですー!」

「うわー…。…ていうか先輩買うかな?そもそも」

「買わないなら他の誰かに売りつけちゃおうかなー?とか言ったら変な理由つけて買いますよ、多分三千円くらいで」

「…私もやろうかな」

「色仕掛けですか?」

「違うし小遣い稼ぎだし」

 

そもそも雪ノ下先輩たちも許してくれますかね?と首を捻るいろはだが、そこは上手くやっちゃうだろうなと渦中の少年の妹を見る。

あの2人も八幡ほどではないが素直じゃない。

よく押してダメなら引いてみろ、と言われるがあの捻くれ者には押しまくるくらいの方が案外上手くいくんじゃないかと予想する陽乃。

 

それも全て彼が表舞台へ戻ってこれるのが前提だけど、とウルフ──八幡を見る。

 

「…」

 

その八幡は、チアガールと化してしまった哀れなA組女子を眺めていた。

誰だ、こんな悲劇喜劇を招いたやつは。

あ、アイツらか。

チアガール姿の雪乃にシメられている上鳴と峰田を見る。

2人とも氷漬け寸前だ。

氷葬ってあんな感じかなあと雪乃から何とか視線を外してお調子者2人を見る。

もちろん助ける気はない。

寧ろ良い仕事をしたと思ってるくらいだが、それも口には出さない。

さっきから雪乃の視線が痛いのだ。

観客席から別の視線も飛んでる気がする。

正体バラさないように絡まないんじゃないのかと言いたくなるくらい睨まれている。

何とも警戒心激高の猫みたいで可愛いが、今考えていることをバレたら確実にあの2人の仲間入りだろう。

とりあえず心の中で上鳴と峰田にサムズアップ。

その時、間抜けなベルの音が鳴って場内放送が流れる。

 

『エブリバディ!!業務連絡ダァ!!今から20分休憩を挟んだ後……ガチバトルトーナメント!!雄英体育祭の目玉を開催するぜぇ!!解説役のイレイザーもバッチリ起こすんでYOROSHIKUUU!!』

 

あの大音量を横に置いてよく起きないな、逆に感心するわ。

どうでも良い感想を並べながらレクリエーションの終わりを観客席で見届ける八幡。

八幡が今いる場所はA組に用意された指定席だ。

トーナメント中は、場内には基本的に対戦する2人のみ。

控え室がいくつか用意されてはいるが、試合前に何人か準備の為に入るためのものだ。

その間、基本的に試合に出ない人間はトーナメント不参加者も含めてクラスの指定席に座るらしい。

レクリエーションを終えて生徒たちが観客席へと戻る中、四角い顔の消しゴムのような顔をした男が何やら大掛かりなパイプを持ち出して作業をしている。

セメントスというコンクリートを操るヒーローだ。

個性だけなら八幡の下位互換だが、その昔、八幡はよく彼の戦う映像を見ていた。

彼ができることは全て自分もできるはず、ならやれるようになってやろうと学んでいた為だ。

ただ、八幡の場合はセメントスと違ってコンクリートの粘度は操作できず、固まってコンクリートを個性で造形させて動かすという形だが。

八幡にとってはある意味“師”である。

 

「全く…何を考えているのかしら」

「でも、ヒッキーがいなくて残念だなー。どうせなら見て欲しかった」

「……ゆ、由比ヶ浜さん?」

「いや、でもほら。ゆきのんだってそうでしょ?」

「…黙秘するわ」

「ゆきのん、素直になろうよー。ね?ヒッキーだって前向きな返事くれたし」

「いえ、そうではないの。お願いだから今は体育祭に集中しましょ?ね?」

 

おいこら。

こっちを見るなこっちを。

ていうか早く着替えてこい。

目に毒だから。

違う目に消毒だから。

八幡の目が浄化されて消えてなくなっちゃう。

無くなっちゃうのかよ。

 

結衣の言葉があまりに気まずく感じる八幡。

早く戻ってきてほしい、見てほしいという結衣の思いに対して全力で踏み躙ってる気がしてならないからだ。

何せ密かに戻っている上に結衣に黙ってチア姿を見ているのだから。

そして雪乃ものそのことに気がつき、結衣だけが何も知らないでいる。

心の中で2人に平謝りしつつ、そっぽを向く八幡。

 

セメントスが施工を進める中、トーナメントを思い返す八幡。

相手は恐らくB組の生徒、骨抜と呼ばれた生徒。

拳藤、又は鉄哲というチームにいた生徒だろう。

それに勝てば戸塚、又は拳藤。

それも勝てば雪ノ下か川崎あたりが順当に来るだろう。

戸塚の相手はあまりしたくない。

出来れば拳藤に勝ってほしいが、拳藤も確か女性だったはず。

どっちの相手もごめん被りたい。

更に言えば、その次も恐らく女性になる。

雪ノ下と川崎以外が上がってこれるとは思えない。

その2人のどちらかなら、相手は雪ノ下になるだろう。

川崎は肉弾戦ではかなりの強さを誇るが、雪ノ下は肉弾戦より中遠距離が得意だ。

川崎は氷で拘束されたら一貫の終わりなため、まず勝ち目はない。

最も、川崎がもし勝ち上がってきたらそれはそれで面倒だ。

空気で押し飛ばせるような奴ではない。

肉弾戦も面倒だし、ズルでもするかとAFOに取り付けられた左腕を見る。

三回戦まで勝てば次は準決勝、そうすれば目標達成となってAFOの命令を守れる。

もう、それしかないのだ。

 

(…オールマイト。あんたを殺して、世界が恐慌したとしても。それでも俺は…妹を守りたい)

 

No.1ヒーローの殺害、それは平和の象徴の喪失。

世界と肉親を天秤にかけ、彼は肉親を選ぶ。

ただそれだけのこと。

比企谷八幡は、ヒーロー史にその悪名を刻むことを決めたのだ。

 

 

 

「オッケー、ほぼ完成」

『サンキューセメントス!ヘイガイズアァユゥレディ!?』

 

セメントスが次の戦いの場となるタイマンエリアを竣工させ、プレゼントマイクへ引き継ぐ。

プレゼントマイクの声も今までの競技より高く、大きい。

彼もこのバトルトーナメントに向けて気合を入れているようだ。

 

『色々やってきましたが!!結局これだぜガチンコ勝負!!』

 

「げ、もう始まんの!?」

「瀬呂君行かなくて良いのかい!?次の次だろう!」

「緑谷は!?」

「もういったよ?デク君」

「んじゃ轟は!?」

「もういないぞ」

「やべぇ!行ってくるわ!」

 

いてらーと見送られる瀬呂。

第一試合第二試合のうち3人がA組生徒だ、慌ただしくて仕方ない。

A組指定席の最後列に座るウルフ──八幡。

その隣にはなぜか沙希が座っている。

何でこいつがここにと言いたいところだが、中学の頃もこんな感じだったと思い返す八幡。

中学2年の頃、八幡がいたクラスにはぼっちが2人いた。

1人は言わずもがな彼だが、もう1人は彼女──川崎沙希だ。

この状況は単にぼっちが2人、クラスの隅の方に居場所を求めて座ってるだけである。

なんだ、いつも通りか。

 

「…ねえ」

「…」

「……ねえ、聞いてんの?留学生」

 

まさかの俺。

ウルフが川崎沙希の方へと向く。

 

「…あんた、三回戦で私と当たるよね?」

「…」

 

頷きを返す八幡。

もちろんお互いに順当に勝ち上がれば、の話だが。

八幡はともかく、沙希の方はかなりの強敵が待っている。

下手すれば今トーナメント一強い相手だ。

 

「あのさ、私の時は手加減しなくて良いから」

「!?」

「騎馬戦の時、全力で個性使ってなかった。そんなナメた状態で挑まれても癪なんだよ」

「…」

 

よく見ているな、と少し感心する八幡。

恐らくロボ・インフェルノの時との落差のことを言っているんだろう。

確かに空気を操作するという点のみに見ても、騎馬戦では全力を出せているわけではなかった。

 

「まあ、あたしは勝てるかわからないくらい強いのが手前にいるけどさ」

(雪ノ下のことだろな)

「だからもしあたしが勝てなかったとしても、あんたの全力を見せてよ。その世の中をナメた態度…どこかのバカにそっくりだ。そこが気に食わない」

「…」

「返答は?」

「……善処、する」

「…あんた、ほんとそっくりだわ」

 

その言葉に吃りそうなるとことかね、という言葉で会話を終える沙希。

声を抑えながら出した言葉だった為、気づかれはしてないはず。

ただ、そっくりなバカというのがまさか比企谷八幡(自分)のことじゃないだろうなと勘繰る。

いや、自惚れか。

まさか、大凡一年程度の付き合いで、そんなに印象に残ってるわけでもない。

 

「あ、デクくんだ!」

「始まるぞ…」

「緑谷、気をつけろよ…!心操の問いかけに応えちゃダメだ!」

 

フィールドを見ると、モジャモジャ頭の緑谷ともう1人目つきの悪い生徒が舞台へと上がっていた。

片方は超パワーの持ち主。

もう片方は精神操作か何かの個性持ちの…確か心操という名前の生徒。

正面から戦えばパワー勝負ができる緑谷の方が有利なはず…というより心操の個性では直接戦闘ができない。

 

(普通にやれば緑谷の勝ちだろうが…いや、関係ないか。この試合の勝者に俺が勝つ必要はない)

 

 

──────────

 

 

「オールマイト!」

「塚内君!」

 

出場者ゲートから緑谷の背中を不安げに見守るオールマイトだが、そんな彼に声をかけたのは塚内。

いつものスーツ姿ではなく私服だ。

だが、もちろんプライベートではない。

 

「彼が心配なとこ悪いね。業務連絡だ」

「わざわざ塚内君が来るとは…緊急…っていうわけじゃなさそうだね」

「まあね。とりあえず、現状不審人物はなし、不審物もなしだ。私服警官と雄英プロヒーローが数名見張っているけど、ホシの少年も動きはない。順調だよ…不気味なくらいね」

「爆破予告をしている割には…かい」

「ああ。だが、このトーナメントまで来れば小細工はほとんどできない。後は彼がトーナメントの試合中に対戦相手に何かするくらいだ…試合を装って相手を襲うとかね」

「やめてくれそんな想像は!…考えたくもない」

 

声を荒げるオールマイト。

オールマイトは比企谷八幡という少年を知っている。

とても後ろ向きで、緑谷少年とは方向性の違う暗さをもっているが、性根は優しすぎると評するくらいには、八幡のことを理解しているつもりだった。

そんな少年が同年代の少年少女を殺めるなど。

だが、それが起こりえないと言い切れないのが現状である。

オールマイトがAFOの恐怖と実行力をよく知っているからこその想像だ。

 

「…ありえるってことだけは理解しておいてくれよ。その時、万が一にもその事故を起こさないように、全力で備える為に」

「…ああ」

「…わるい、こんな話をしにきたわけじゃなかったのに。ほら、緑谷君負けそうだよ?いいのかい」

「え!?ああ!!こ、こっち来ちゃだめ!洗脳にかかっちゃったのか!!あわわわわわわ」

「で、話の続きなんだけど」

「この流れで!?」

 

舞台から今にもリングアウトしそうな緑谷と話の続きをしたそうな塚内を交互に見るオールマイト。

首が疲れそうな勢いだが、そのままの姿勢で話を聞くつもりのようだ。

 

「寧ろこっちが本題だ。…やはり、AFOや死柄木、黒霧の目撃情報や手掛かりはこの二週間で見つけられなかった」

「…そうか。いや、まあそうだろうね。いくら動き出したとはいえ、それだけで見つかるようになるかと言われたらそうではない。この6年なんて寧ろ死んだかと思っていたくらいだ」

「ああ。これで、体育祭までに大本を叩くという最善策はとれなくなってしまった」

 

何を小細工されようとも、黒幕さえ押さえることが出来ればそれで今回の事件は終わる。

その見解は雄英と警察の間で一致したが、やはりそれはできなかった。

何せ敵には黒幕というワープ持ちが要る。

敵は移動でさえその痕跡を残さないのだ。

あの比企谷八幡潜入宣言から二週間、AFOの手がかりを警察は見つけることができなかった。

 

「…やはり、雪ノ下少女の策に乗るしかないね」

「アレか…。いや、了承はしたけど……ほんとに起きるのかい?そんなことが」

「比企谷少年を一番よく知る人間の案だ。俄かには信じられないかもしれないが…起きるんだろう」

「…けど、こっちはこっちで強硬策も辞さないつもりだ。あのエンデヴァーまで来てるんだぞ。比企谷八幡を直接捕らえる可能性の方が明らかに高いよ」

「どうかな?エンデヴァーの弟子だしね…」

「…誰が?」

「比企谷少年が」

「…なに?」

「あれ?」

 

 

──────────

 

 

 

第一試合が終わった。

一度は心操の洗脳にかかってしまった緑谷だが、自力で洗脳を解き、乱闘の末心操を個性無しで一本背負いでリングアウト。

洗脳にかかったのに逆転勝ちとは、地味だったがなんともヒーローらしい勝ち方だった。

続く第二試合、轟VS瀬呂は八幡が特筆することがないくらい一瞬で終わった。

まさかの試合時間5秒である。

秒殺にもほどがある。

轟の巨大氷結が瀬呂はおろかステージのほぼすべてを覆い、瀬呂が凍結で動けずにそのままギブアップ。

秒殺された瀬呂は観客たちからどんまいコールをもらっていた。

 

(…エンデヴァーの息子が氷使いとは…。エンデヴァーは確か自らの弱点を克服できる個性を持つとかなんとか言ってたけど、体温調節のことを言ってたのか?)

 

エンデヴァーの個性はヘルフレイム。

その名に恥じないほどの業炎を生み出す個性。

だが、炎を使えば使うほど本人の体温は上がり、身体を冷やす必要が出てくる。

その問題を、エンデヴァーの息子は解決出来る手段を自前で持つのだ。

 

『続いて一回戦第三試合!両者COME ON!』

 

「…参ります」

「っべー…。今更緊張してきたわー」

 

次は、と見るとひとりは知った顔。

元総武中の戸部だ。

もう一人は見たことのない顔なのでB組だろう。

頭髪がとげのついた茨になっている少女。

戸部もB組の筈なのでB組対決ということになる。

 

『まずはB組から!きれいなアレには棘がある!?塩崎茨!そしてこれまたB組出身!急噴射にご注意を!戸部翔!』

 

「うぃ~煽るねー…マイク先生!ま…やるだけやるっしょ!よろしく塩崎さん!」

「志を同じくする者として…手加減は致しません」

「もち!当然っしょ!」

 

『レディ……START!!』

 

「もう直で!!いくっきゃねえっしょこれ!!」

 

戸部が足のジェットを噴射し、一足で塩崎との間合いを詰める。

その距離、わずか2m。

 

「はええ!!」

「流石総武枠!!いい脚してる!」

 

「近接格闘は苦手です。故に技で払います」

 

A組から戸部に対する感嘆の声が上がる中、塩崎は戸部の特攻を冷静に対処する。

同じクラスだからこそその手の内はある程度知れている。

それは個性にとどまらず、性格もである。

戸部の性格なら小細工は仕掛けて来ないと判断した塩崎。

正面からくるとわかっていた、だから備えた。

それだけのこと。

 

戸部が飛び出したのと同時に茨を伸ばし、戸部を待ち構えていた。

が。

 

「わりーね塩崎さん!まだ片足残ってんだわ!」

「!?」

「それ!!」

 

ぶわっと左足のジェットが噴射し、茨が空振り、戸部は塩崎の背後に着地する。

直接つかみさえすれば場外に投げ出せる。

意表も突いた。

 

(勝った!っしょ!!)

 

(いや甘いぞ戸部)

「戸部…相手の個性をちゃんと見ないと」

 

心の中で八幡が、B組観客席で葉山が口に出してその甘さを否定する。

塩崎茨の個性はツル。

そしてそのツルは頭髪となって生えている。

当然、彼女の背後の方がツルの量が多い。

戸部がつかみかかろうとしたその瞬間、塩崎のツルがぶわりと扇のように広がって防御態勢を取る。

途端に尻込む戸部。

ツルを直接つかめば巻き取られるのは明白だ。

 

「しまっ…」

「よかった」

「ぐえっ!?」

「勝てました」

 

躊躇したその一瞬の隙を突かれ、全身をツルで拘束される戸部。

このツルから抜け出す方法は、彼にはない。

 

「…ぐうっ…。まぁじかー……。すんませんミッドナイト、ギブっしょこれ…」

「OK!勝者、塩崎さん!!」

「ありがとうございました」

 

「戸部…ったくアイツはー。折角海老名がくれたチャンスを」

「まあまあ。相手は塩崎さんだし…」

「海老名ぁ、あんたもガツンと言ってやれって。じゃないと戸部が成長しないっしょ」

「優美子に任せるねー」

「…はあ」

 

三浦の様子に、心の中で戸部に合掌するB組一同。

負けた直後に加えて説教、推し量るまでもなくその辛さが予想できる。

 

「つ、次は誰だっけか!?」

 

話題逸らしに鉄哲が次の試合の話を始める。

それに乗る泡瀬。

 

「次は…A組の飯田とサポート科の発目って子だ」

「あ、じゃあB組からは出ねぇのか」

「いや、その次は拳藤が出るな」

「お!んじゃあ行かなきゃいけねえんじゃねえか拳藤!!」

「わーってるよ、いまいく」

 

席から立ちあがる拳藤。

B組結成からまだ一か月足らずだが、B組委員長として既に信頼を集めつつある、B組の中心の生徒だ。

 

「おお!ぶっ飛ばしてこい!」

「切り刻んで来いよ拳藤ぉ…」

「いや切り刻めないしあたし。刻んじゃダメでしょ鎌切」

「心意気だぜぇ」

「わけがわからん」

「んで相手は!?」

「A組の戸塚ってやつだ」

 

A組、と言われてA組の観客席を見る鉄哲、拳藤、ついでに物間。

観客席からちょうど立ち上がった生徒がいた。

恐らくその生徒が戸塚、なんだろうが。

小柄な体格、白い肌、長く整ったまつ毛に大きくきれいな目。

まるで小動物を連想させるようなかわいらしさ。

 

「…女子対決か!」

「いや、戸塚は男だし」

 

鉄哲たちの会話に口出しする三浦、驚くB組の生徒たち。

 

「男!?」

「あれが!!?」

「性別変える個性だったりするのか!!?」

「んなわけないっしょ」

「戸塚は正真正銘男だよ」

(やっぱり誰でもそこわからないよね…)

 

葉山の口添えを聞いてようやくその事実を飲み込むB組一同。

あんな美少女のような美少年が本当にいるとは。

同じ中学の総武生である相模も、戸塚と同じクラスになる二年までは割と本気で戸塚が女だと思っていたのだ。

初対面ではわかりようがない。

 

「…あんなの、コミックの中だけだと思ってた」

「うーん、常識が崩れてく…。流石雄英ノコ」

「いや雄英は関係ないから…」

「と、とりあえず行ってくる」

「ファイトだ拳藤!!」

「A組の出鼻をくじいてやってよ、クラス対決だ」

 

鉄哲と物間の声援が耳に入っているのかいないのか、拳藤は納得いっていなさそうに控室の方へと向かう。

下手したら女の自分より肌のキメがよさそうだと思ってしまったのだ。

試合前になぜか負けた気分になってしまった拳藤であった。

 

 

──────────

 

 

 

「次は戸塚先輩だねー」

「…いろは先輩。さっきの試合って何だったと思います?」

「えー?商魂逞しいセールスの売り込みでしょ?」

「…雄英って濃いなぁ」

 

飯田と発目の試合を一言で片づけてしまういろは。

雄英を濃いと言いはしたけど、この人も大分濃いなと思う小町。

まあいいかと思い、戸塚と書かれた団扇を用意してその手に持つ。

そして、舞台へ上がった戸塚に向かって声援を送る。

 

「戸塚せんぱいファイトー!」

「戸塚先輩って何の個性だっけ?」

「ウィングですよ。いつもお兄ちゃんが自慢気に教えてくれました」

「…先輩って、自分の個性のことは特に何も言わないくせに他の人の個性は言うよね」

「あれが雪乃さんとか結衣さん相手なら小町的にもポイント高いんだけどなぁ…」

「ウィングか…でも、普段から翼を持ってるようには見えないけど…必要な時だけ出すのかな?」

 

陽乃の言葉に、確かにと思ういろは。

異形型の個性の持ち主はいくらでもいるが、その大半が身体に通常の人間の器官とは異なるような器官を持っている。

常に個性が発動しているような状態なのだ。

だが、戸塚を見ると普通の人間のように、特に何も変わりがない。

さっき雪ノ下たちがチームを組んだ相模のような変形型に当たるのかなと首を傾げる。

 

「戸塚先輩は翼を出すのも色んな翼を出せるんですよ」

「体内の物質を翼に変換するみたいな感じかな?」

「はい、それビンゴです!鉄の翼とか、人間が翼を生やしたらこんなんだろうなみたいな翼とか、本当に鳥のような翼とか」

「あー、なるほど…。流石に総武枠に選ばれるだけはあるね」

 

鉄の翼を出せば近接で振るえ、鳥の翼を出せば空を飛ぶ。

なるほど、強力な個性ではある。

 

「…けど、弱点ありそうだねそれ」

「え?」

「相手の子がそれに気づくかどうかかな…」

 

フィールドでは、マジマジと拳藤が戸塚の顔を見ているところだった。

確かに、よく見ると男の子だ。

だが、男の子と言えても男とは言えないくらいかわいらしい。

こんな奴がいるなんて、と思ったところで首を振るう拳藤。

ダメだ、集中しないと。

 

「あ、あの…大丈夫ですか?」

「え?あーいや、大丈夫!よろしくな」

「はい!」

「…」

 

性格も良いのかい、とイメージ通りの性格に苦笑いする拳藤。

これはやりにくい。

 

『では一回戦第五試合!B組より、みんなのまとめ役兼姉御!拳藤一佳!対するはA組出身、可愛い顔に騙される者ども続出!?男子戸塚彩加!準備はいいかぁ!?』

 

構える両者。

その姿を、控室から見ている八幡。

戸塚を心の中で応援しつつ、思う。

 

(…戸塚が勝ったらどうしよう。次俺じゃん)

 

 

──────────

 

 

 

『試合開始!!』

 

「先手必勝!」

「ん!!」

 

開始の合図とともに戸塚に向かう拳藤。

対する戸塚は背中から白い羽根の翼を出し、浮かび上がる。

 

「飛ぶ個性…!」

 

「戸塚が上取った!」

「いけーさいちゃーん!」

「戸塚の背中ってどうなってんだ!?」

 

A組が声援を飛ばす中、峰田の疑問に言われてみればと思う一同。

戸塚は雄英ジャージを着たままだ。

だが、その背中にはまるで最初から穴が開いているかのようにジャージを飛びぬけて翼が出てきている。

 

「戸塚君のジャージはオーダーメイドなんだよ!最初から穴が開いてるけど普段は見えないようになっているんだって。翼が穴を押し広げてるんだってさ」

 

同じ総武枠の折本が峰田の疑問に答える。

戸塚のジャージは特別に申請していて、個性使用の妨げにならない為のものだ。

 

「Si…☆ぼくと戸塚君は同じく個性に悩める者ってことだね☆」

「まあそーゆーことになるかなー!」

「彼もキラメキそうだし」

「それは意味わからんウケる!」

 

青山のボケだか真面目だかわからないような発言を一蹴する折本。

二人を放っておいて試合に注目するA組たちだったが、ここから戸塚はどうする気なのか。

上を取っただけじゃ意味はねえ、と爆豪。

結局、相手をギブアップさせるか場外から出すか、気絶させるか拘束するか。

いま戸塚が取れる一番現実的な手は。

 

「もちろん場外一択だよ!」

「だよね!」

 

翼を折りたたんで急降下する戸塚、右手を大きくして戸塚を迎え撃つ拳藤。

拳藤の個性は大拳。

拳を人ほどにまで大きくし、そのパワーで相手を叩き潰せるパワー型の個性だ。

 

(この手で掴めば場外に出せる!)

 

だが、それは想定済みだった戸塚。

二人が接触する直前、翼を広げて空気抵抗により急ブレーキをかける。

拳藤の大拳が空を掴み、前のめりになる。

 

「げっ」

「もらった!」

 

再び翼を羽ばたいて拳藤に突っ込む。

だが、ニヤリと笑う拳藤。

悪態も演技の内、全て想定内だ。

トーナメントまで上がってきた人間がただ突っ込むだけの策など講じるわけがない。

 

「甘いね!」

 

左腕を戸塚に向けて翳し、巨大化させる。

戸塚から見れば急に現れた壁である。

なにより、拳を巨大化させれば質量が変化し、単純に拳藤は重くなる。

戸塚は小柄で、その分抱えられるものは軽いものに限られる。

これでは拳藤を抱えることは出来ない。

 

「なら、こうだ!」

 

翼を羽ばたいて後方に下がり、地面に着地する戸塚。

その間に翼を消し、後に僅かな白羽根が残る。

 

「個性を…消した!?」

「消したんじゃないよ。切り替えるだけ!」

 

ガシャン、と音を鳴らし、戸塚の背中から今度は鉄剣の翼が生える。

先の白羽根の翼と違い、枚数が少ないが、その分一枚一枚の羽根が大きい。

 

「は!?」

「いくよ拳藤さん!」

 

今日の体育祭において、戸塚が使った翼は白羽根だけだ。

それを見ていた拳藤は、戸塚の個性はただの翼を生やす個性だと勘違いしてしまったのだ。

翼を生やしたまま拳藤へ向かう戸塚。

鉄の塊を背中に抱えた人間のスピードではない。

 

「鉄か!けど悪いね。それは慣れてる」

「!?」

 

鉄剣の翼を拳藤にぶつけにいく戸塚だが、なんと真正面から両手の大拳で鉄剣を受け止める拳藤。

B組の鉄哲を思い返す拳藤。

アイツの体当たりの方が、もっと重かった。

 

「掴んだ!投げとばして…」

 

やる、と力を込める直前。

その危険に気が付く拳藤。

さっき戸塚はどうやって翼を切り替えた?

 

まずい!

 

「もらっ…え!?」

「こっちのセリフだ!!」

 

戸塚が鉄の翼を消すのと同時に、その拳を開く拳藤。

すぐに鉄の翼を生やそうとするが、その至近距離では拳藤が戸塚の身体を掴む方が早かった。

 

「くっ、なんて力…!」

「悪いけどパワー勝負じゃ負けないよ。どうする?」

「…足掻くよ、最後まで!!」

「良い根性だな!」

 

同じように拘束された戸部と違い、諦めない戸塚。

無理やり翼を生やそうとするが、流石にそれを看過する拳藤ではない。

適度に力を込め、戸塚の邪魔をしながら場外の方へと走る。

 

「これで…終わりだ!」

「まだ!!」

 

拳藤が勢いそのまま、戸塚を場外へ投げつける。

戸塚も投げ飛ばされながら白羽根を広げようとするが、投げられた勢いは覆せず、そのまま場外の地面に触れてしまう。

 

「戸塚君場外!勝者拳藤さん!二回戦進出!!」

『OH!二人の見た目とは裏腹に、白熱した良いバトルだったぜ!!』

『拳藤の読みが光ったな。戸塚はもっと自分の土俵で戦うべきだった。制空権を確保して、そこからの動きが奴の課題だろう』

『ナイス解説!今日一の働きだぜ!』

 

「…拳藤さん、強いや」

「あんたも、良い個性だったよ」

 

場外に座り込んでいた戸塚を立たせ、握手する二人。

まだまだダメだな、と戸塚は反省する。

こんなんじゃ、憧れの人に追いつけない。

 

一方、拳藤の勝利に沸くB組。

 

「これでB組VSA組は1勝0敗だ…。ふふふ、いいぞ拳藤」

「んじゃさっきのお前と爆豪のは勘定入れなくていいのかよ物間?」

「円場…さっきのは乱戦の中での結果だ。一対一じゃないからノーカンだね。そして、次で2勝目だ」

「あ、次は柔造か!」

 

B組推薦入学枠、骨抜柔造。

個性は柔化。

物を柔らかくするだけの個性だが、本人の身体能力の高さと対応力の高さから、推薦枠を勝ち取った男。

B組の中で彼への信頼は厚い。

 

「相手A組なの?誰?」

「A…なんだけど、留学生くんなんだよねぇ」

「ああ、あの狼顔の…」

「…葉山。さっき戦ったんだろう?どうだったんだい」

 

物間に声をかけられた葉山が、その呼びかけに答えようとする。

が、すぐに口を噤む。

 

「…どうしたんだい?」

「……わからない」

「え?」

「多分…いや、確実に強いんだ。だが、さっきの彼は明らかに全力じゃなかった。どの程度までやるのかはまるでわからないよ」

「不気味だね、能ある鷹は爪を隠すとでも?」

「いや、そんな大層なことじゃないと思う。…けど」

 

戸塚と入れ違いに舞台に出てきたウルフを見て、やはり思う。

 

「…絶対に侮っていい男じゃない。彼と似ている男を過去見たことがある。…俺は、そいつに最後まで勝てなかった」

「葉山君の高評価…」

「そう聞くと…何やら恐ろしいものがありますな」

「…意外だね。君は、そういった敵意から無縁だと思っていたよ」

「敵意?そんなものは持ってないよ。…ただ、負けたくないと思うよ」

「…いいね、闘争心剥き出しじゃないか」

 

葉山の意外な一面に驚くB組一同。

もっと穏やかで優しく、皆を護るようなヒーローになると思っていたのだ。

だが、今の彼はどうだ。

一人の男に対して、戦わんとするその姿。

その横顔に鼻血を出す海老名、横でドン引きする相模。

 

「は、はやウル…いける、ここにヒキタニ君が要れば完璧なのに!!嫉妬する誘い受け……ぐふ!」

(誰か助けて。うちまで腐りそう…)

 

そんな相模の思いは誰にも届かず、一回戦第六試合が始まろうとしていた。

この試合の勝者は拳藤と戦うことになる。

相対する骨抜、そしてウルフ──八幡。

 

『一回戦第六試合!まだ目立っちゃいないが実は優秀、B組から骨抜柔造!今年初めての留学生、海外からの刺客!ウルフ・エイティス!さあ見合っちゃいなYOU!!』

 

構える骨抜、無造作に立つ八幡。

だが、八幡の心中は穏やかではなかった。

先程の試合に少し感化されてるのか、と心を殺そうとする。

戸塚と拳藤。

夢の為に戦い、足掻いた二人。

 

まさか、羨ましいと思ってしまうなんて。

そんな感情、小学生の頃に捨てれたと思っていたのに。

夢に向かえない、いや向かわないなんて。

個性を使わないと決めた幼い頃に、切り捨てた思いが。

少しだけ、浮き上がってきていた。




いわゆる間の回になります。というかなりました長くなったので。
ただ、ヒッキーの心に少し変化が訪れます。どのように変化するかは御覧じろ。
総武生や何かしらの変化がある試合は描写していきたいと考えています。
じゃないとめちゃくちゃな文章量になりかねないので…。
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