何がヒーローたらしめるか   作:doraky333

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God is not in the world.
There is no salvation.
If so, how should people live?


Episode2.接触直前

目の腐った少年は、唐突に目を覚ました。

瞬時に身体を起こし、周りを見渡す。

 

その場は、仄明るい光がただ一つ灯る、暗い小部屋。

普段を室内で過ごすような人は、その部屋に入れば違和感を覚えてしまうような部屋だ。もっとも、入ることさえ不可能な部屋ではあるが。なにせ、その部屋には窓がなければ。入口もない。

 

文字通りの密室である。

日光が入ってこない為、少しの灯りを点けているのだが、ただでさえ少ない物によって遮られる影に、大きな影が増え始めていることに気づいた。黒い靄、ワープゲートだ。

 

「…最悪だ。朝っぱらから何だってこんな起こされ方をされなきゃいかん」

「相変わらず覚醒は早いですね。目覚めは悪そうですが」

「お前のせいでな、黒いの。…何の用だ」

 

少年の問いに、黒い靄に包まれた男──黒霧はため息で応じる。

逃げるなと、少年に突き付けるように。

 

「…あぁ、冗談だ。だからそんな目で見るなよ」

「貴方でも冗談なんて言うんですね。初めて見ましたそんなところ」

「それこそ悪い冗談だな」

「ですね。…死柄木弔が呼んでいます。今回の作戦の詰めを全体に向けて説明するので、貴方も来てください。支度が終わったら連絡を。すぐに戻ってきますので」

 

言いたいことは言い終わったと、黒霧はすぐに個性を発動して出て行く。或いは、寝起きの自分に対して気を使ってくれたのかもしれない。

黒霧は(ヴィラン)にしてはかなり紳士的だ。あんな真面目そうな奴が、何故あんな壊れた老害に従い、あんないかれた(アンチ)オールマイトの面倒を見ているかがわからない。実際余り興味はないが。

 

それに、本当にいかれているのは自分だ。

 

少年、比企谷八幡は上を見上げた。

まるで、こちらを見ているかもしれない神に許しを請うように。

 

勘弁してくれ。

何だってこんなことになっているんだ。

…見えたのは、飾りのない白い天井だった。

 

今日自分は、オールマイトを殺す。その手伝いを行わさせられる。

 

まるでおつかいにでも行くように言われた日には、久しぶりに心が折れそうになった。

 

 

 

自らに与えられた数少ない物のうちの一つ、風呂場にて身体を洗い、着替えて支度を済ませる。

連絡しろと言われたが、こちらからはしない。

どうせ死柄木が痺れを切らして黒霧に迎えに来させる筈だ。それに、こちらの行動は全て監視されている。万が一の可能性を考慮している老害に対し、苛立ちしか感じない。

 

程なくしてワープゲートが再び現れ始めた。向こうから少し喧騒が聞こえてくる。その喧騒が、より一層気分を落ち込ませる。自分の手が、何に向けられるのか。黒へと踏み出す一歩が、恐ろしくてたまらなかった。

 

 

──────────

 

 

「全員、揃ったな?これから一連の流れを確認する。聞き洩らすような愚図が居たら邪魔だから崩す」

 

パキリと手を鳴らしながら、集まった日陰者たちに視線をやって告げる死柄木。

事実、彼は行儀が悪いという名目で一人の若者を彼らの目の前で壊死させている。

死柄木弔、その個性は崩壊。

その気になれば数秒で人を殺せる個性だ。

 

その死んだような目と死柄木の本気を感じた言葉に、死柄木たちに集められたチンピラたちは内心身震いしていた。

 

「…まあ、わかってるよな。……説明を始める。黒霧」

「はい」

 

やることは終えたと言わんばかりに下がって壇上の椅子へと座る死柄木に対し、黒霧は前へ出た。黒霧のことはチンピラたちは良く知っていた。なにせ、彼らの大部分は黒霧の個性によって集められたのだ。

 

「では、大まかなフェーズに分けて説明いたします。第一フェーズですが、私の個性により侵入を開始します。その際、ジャックの個性、電磁波を発動しながら侵入」

 

必要事項だけを淡々と述べていく黒霧の雰囲気が、ただのチンピラたちを目的の為に身を投げる兵士へと変えていく。

 

「侵入が成功したら第二フェーズへと移行します。それぞれの災害ゾーンに適した兵隊たち…つまり、貴方たちを送ります。送られた者たちの目的は、生徒たちの相手です。ここからが第三フェーズです。殺して構いません。ただ、相手はヒーローの卵。油断はないように。生徒たちは、侵入後に隙をついて私が個性でそちらへ送るので、それまでに準備をしておいてください」

 

腐った、諦めた目をしているカラーギャング、盗っ人、悪人たちが、目の色を変えていく。

 

「生徒の他に気をつけるのはプロヒーローです。その場にいるのはイレイザーヘッド、13号、オールマイト。イレイザーヘッドと13号は数で押しつつ、死柄木に仕留めて貰います。どちらか片方、又は両方が生徒たちを守るでしょう。よって、守りに入った方は私が相手をします」

 

オールマイトの名が出た時点で、彼らはようやく現実を飲み込み、確信した。

 

「そして、最後の難関にして最大の目的であるオールマイト。こちらは、脳無に相手をして貰います。その後、私も向かい、トドメを刺しに行きます」

 

俺たちは、オールマイトを殺しにいくのだと。

 

「その他、本校舎にはプロヒーローが多数常駐しています。赤外線センサー等はジャックの個性により作動はしませんが、それらに助けに呼びに行かれたらその時点で我々の負けです。つまり、生徒たちに逃げられないよう注意しておいてください」

「そしてコネクタ、貴方の動きですが…貴方は基本仕事はありません。ジャックの側につき、いざという時はジャックを守ってください」

 

コネクタ。

名指しで呼ばれた者について、兵隊たちの間に疑問が走る。

ジャックはまだわかる。

その名はヴィランや影に潜む者たちにそれなりに名が知られている。電波障害を起こして警報機器と外部を遮断し、強盗を繰り返しているヴィランとしてある程度有名だ。

 

しかし、コネクタという名については聞いたことがない。壇上に改めて目を向けても、説明を行っていた黒霧、多数の手をいくつも顔面や身体に取り付けている彼らのリーダー死柄木、大柄の身体に全身が黒の皮膚、更には異形の顔を持つ脳無という大男がいるだけだ。

 

「更に、オールマイト殺しの件でも手伝ってもらう可能性があります。脳無や死柄木が倒れた時です。その時はすぐに貴方をこちらに転送するので、オールマイトを止めてください」

「いや出来るか」

 

黒霧の要望に対する返事が起きた方へと目を向ける。そこには、確かに一人の人間がいた。兵隊たちに紛れ、小汚い灰色のフード付きコートを被っている男だ。声からして男とはわかったが、顔は周囲から確認することはできなかった。背格好は並の男だが、背がひどく曲がっていて、恐らくはもう少し本来は背が伸びているのだろう。まだ少年といったところであろうか。声はまだ若い。

 

…正直、ただのどこにでもいるようなホームレス程度にしか見えない少年だった。とてもではないが、黒霧に指名されるようなやり手には見えなかったのだ。実際、本人は黒霧の言葉を否定している。

 

「脳無の次くらいには可能性はあるでしょう」

「…オールマイトみたいなタイプが一番苦手なんだけど」

 

なんとまあ軽い口調であろうか。二人の会話を聞いている兵隊たちは呆れている。ただ、そのおかげで兵隊たちは事実確認が遅れてしまった。

 

…いま、黒霧はコネクタという少年に、オールマイトを止めろと言わなかったか?

 

「あと、お前には殿も務めてもらう。俺たちが逃げるとき、ヒーローに狙われていたら敵わないからな。お前なら、一対多戦闘は得意だろ?」

「仕事多すぎるだろ…。ねーよ、マジでねえ。俺の方が一目散に逃げるわ」

 

死柄木が更に要求を追加する。

そのことに対して、周囲はコネクタという少年に対する認識を改めかける。

まさか、コネクタという小僧は強いのだろうか、と…。

 

「そんなことできると思っているのか?本気で?なら止めないけどな」

 

「…」

 

死柄木の問いかけるような口調に、少年の言葉が止まる。何かを考えているようだ。

少年の様子にそれ以外に変化はなかったが、黒霧の方は顔をしかめていた。その一瞬を視れた者はいなかったが、黒霧は明らかに死柄木を戒めるように見ていたのだ。

 

「なあ?どうするんだぁ、コネクタァ…」

 

「態とらしく名前呼んでんじゃねえよ…」

 

ふぅと、少し溜息をついてから、少年は死柄木を見やった。

フードの奥から覗いたその目には、二つの心情が見て取れる。そのことに、死柄木は満足そうに頷いた。コネクタが仕事を請け負うとわかったのだ。

 

死柄木は椅子から立ち上がり、兵隊たちを見下ろす。その目はどれもギラついている。一対の目だけは諦めたような色が見えるが関係ない。作戦が始まったらやるしかないことを、死柄木のみならず、コネクタもわかっているのだ。

 

「今から約二時間後の午後一時半に作戦を開始する。まずは雄英の壊滅、最終目的はオールマイトの抹殺だ!」

 

雄叫びが、挙がる。

 

その反響した怒号に、コネクタは耳を塞ぎ、黒霧はまだ説明の途中であることを考えていた。

 

 

──────────

 

 

四月半ば。

 

僕たち1年A組は、それぞれコスチュームをその身にまとい、レスキュー訓練の場へとバスで向かっていた。

…ちなみにぼくだけは体操着を着ている。

先日の戦闘訓練が激しすぎて、コスチュームが損傷してしまったからだ。

コスチュームを破壊したかっちゃんに文句を言う気はないけど、もう少し爆破加減考えてほしいな…。

バスの中では各々が訓練へと向けて話し合いをしている。

話し合いといっても厳格なものじゃなくて、ただどんなことをするんだろうと、目を輝かせているだけだ。

 

「レスキューかー…。ゆきのんはぱぱーってレスキューできちゃいそうだよね!」

「ぱぱーって…」

「それに比べて、わたしは少し時間かかっちゃうだろうなぁ…」

「…貴女の個性はとても珍しく、そして災害救助には最適解といえる個性よ。きっと、唯一無二のヒーローになれるわ」

「えっ!? え、えへへっ♡ ありがとうっ、ゆっきのーん!」

「ちょっ…あまりくっついちゃ…」

 

雪ノ下さんと由比ヶ浜さんも同様みたいだ。…ちょっと目をそらさなきゃいけないかなぁと思ってしまうのはなんでなんだろう?

 

本当に、ああしているのを見るとただの高校生にしか見えない。

先日の焦り具合を忘れてしまいそうだ。

だけど、由比ヶ浜さんはともかく、雪ノ下さんは間違いなくただの高校生じゃない。

雪ノ下さんと初めて話したあと、少し雪ノ下さんたちのことを調べたけど、驚いた。

雪ノ下さんは、僕達にとって雲の上のような人だったんだ。

 

雪ノ下雪乃。

別名、アウトスノー。

どうやら空から降りた雪っていう意味らしいんだけど…。

 

別名というのは、なんと彼女はプロ資格を持っている。

もちろん、プロとはプロヒーローのことだ。

けど、彼女はプロヒーローじゃない。

厳密に言えば、プロ資格は持っているけどプロヒーローとして旗揚げしたわけでもなく、どこかの事務所のサイドキックというわけでもない。

 

ただ、プロ資格を持っていることでプロヒーローと同等の権限を行使できる。

例えば、ヒーロー活動に際した個性の使用。

これは、一般人ではまかり通らない行為だ。

 

しかもプロ資格を取ったのは中学三年生の時らしい。

数年に一人出るか出ないかという逸材なんだそうだ。

ここ数年では3人も出てるらしいけど…。

それでも彼女がヒーローとして並外れて早熟かつ優秀であることがわかる。

 

僕も見習わないと!

・・・けど、雪ノ下さんがプロ資格を持っているということはあまり公に宣伝されてなかったみたいだ。

ヒーローの紹介ホームページに、一年前のお知らせに一人の少女がプロ資格を取ったと記述があっただけだった。

それをよくよく調べると雪ノ下雪乃という名前であるとようやくわかったくらいだ。

なにか理由でもあるのかな・・・?

 

「わたし、思ったことは何でも言っちゃうの、緑谷ちゃん」

「はい?!蛙吹さん!?」

「梅雨ちゃんって呼んで」

「もじゃもじゃくんどもりすぎマジウケる!どっかの誰かさんそっくりなところとか!」

 

唐突に蛙吹さんが声を掛けてきてつい上ずってしまった。

折本さんはウケるって言う言葉は口癖なのかな…。

今まで僕の周りにはいなかったタイプだ。

………まあ、友達もろくに居なかったけど。

 

「違うわね折本さん。あの男ならきっと言葉を発することもできないわ」

「あー、だね…。あんなんでよくヒーローになれるよねー」

「しゃこーせいなんて必要ないとか言ってたしね!一人で全部やるって言ってたし!」

「なまじ可能だから質が悪いわね」

「…あんたら、平塚先生にアイツの更生を頼まれたんじゃなかったの?特に雪ノ下」

「…あら、川崎さん。そのことをどちらから?」

「小町ちゃんが言っていたような…」

「大志経由でね」

 

僕が蛙吹さんに個性のことで焦らされている横で、総武組の5人がある一人の人物について語っていた。彼女たちの中心のような人だったのかな。その人はここにはいないみたいだけど…。

 

「派手で強いっつったらやっぱ爆豪と轟じゃね?」

 

ふぅ、ようやく話題が移ってくれたよ。

かっちゃんと轟君か。

確かに。

爆破に、轟君の個性は半燃半冷…だったかな?

アニメやコミックに出てきそうな典型的なヒーローの技だ。

かっちゃんも性格はともかく凄まじく強いし、轟君に至っては一人で尾白くんと葉隠さんを完封したらしい。

人気も出そう…かな、轟君に限っては。

 

「爆豪ちゃんはすぐにキレるから人気でなさそ」

「んだとコラ出すわ!!!」

「ほら」

 

かっちゃんと蛙吹さんに挟み込まれている切島君がすごい微妙な顔してる。あと耳郎さんも。特に切島くんはこれからもかっちゃんに被害を被りそうだ…。何となくの予感だけど。

 

「この短期間の付き合いでクソを下水で煮込んだような性格だって認識されるなんてすげえよ」

「てめぇのボキャブラリーはどうなってんだ殺すぞ!!!」

「あんたのボキャも偏ってるよね逆にウケる!」

「てめぇはそれしか言えねえのか!!」

 

ああ、かっちゃんがいじられキャラに…。

上鳴君も折本さんもすごい度胸だ、本当に。

しかもかっちゃんのことを何とも思っていなさそうに見える。

これが雄英…!

 

「…ただの予感やけど、デクくん全然関係ないこと考えてないかな今…」

「…わたくしもそのような予感がしますわ」

「このクラス、こんな様子で大丈夫かしら」

「さあ…。あ、あはは」

「そういえば雪ノ下さん、一つお尋ねしたいことが」

「何かしら、八百万さん」

「どしたの」

「さきほど話題に上がってたお方のことなんですが…」

 

ピクリ。

八百万さんが雪ノ下さんたちにさっきの人の話を聞いている。

ただの興味本位でしかないけどやっぱり気になるな…。

 

「…彼のことを知りたいのね」

「やっぱり、なにかあったん?あ、でも話したくないなら、全然…!」

「いえ、構わないわ。いずれ話さなくてはと思っていたことだもの。それは、私たちがヒーローを目指す理由のみたいなものなのだから」

「ゆきのん…」

「皆も、聞いていて欲しいわ。もしかしたら、情報提供も望めるかもしれないし」

「ん、どうかしたのか雪ノ下君」

「なになにー?」

 

A組の皆の視線が雪ノ下さんに集まる。相澤先生もチラリとこちらに目を向けてきたけれど、止めるつもりはないみたいだ。すぐに目線を元に戻していた。

 

「…私たちの中には、一人の男がいたわ。彼の名前は比企谷八幡。かつての…」

そこで口を止める雪ノ下さん。何て言葉を選ぶか迷っているみたいだ。由比ヶ浜さんも、少し悩んでる。

「…んー、友達?違うなぁ」

「僕にとっては、親友だったよ」

「私は…なんだろう?クラスメイト?かな。兄弟友達…かも」

「私はー、元同中のクラスメイトだね!色々あったけどー…」

 

四人が答えを出していく中、雪ノ下さんはゆっくりと、慎重に言葉を選んでいるみたいだ。

 

「…元敵、ね」

「て、てき!?」

「雪ノ下さんだけ全然違うんだけど…」

「もー、ゆきのん!!こんなところで照れててもしょうがないよ!」

「て、照れているわけじゃ…」

 

「いやー幸せ者だね、比企谷は!」

「あはは、ほんとうだね」

「ハァ…なにをしてんだか…全く」

 

「も、もしかして、そっち系の話?」

 

すごい顔をニヨニヨさせながら芦戸さんが食いつき気味にきいている。

走行中のバスじゃなきゃ多分飛びついてるよね、あれ。

良く見れば女子はほとんどが顔をニヤつかせていて、一部の男子(峰田君と上鳴君)が悔し涙を流している。

ちょ、それ本気の涙じゃないかな。

 

「…そうね。…ふぅ……」

 

「…大切な、人……です」

「私も、特別な人だね…」

 

「えんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「いやああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「うるさい」

 

叫んだ二人に。先生の一言で、バスが一瞬にしてとてもマナーのよい乗客集団になった。

…ていうか、二人のせいで主に必要なことが全然きけなかったなぁ。

例えば、その彼は今どこでなにをしているのか、とか。

[newpage]

「…準備はいいか、チンピラども」

「おお!!!」

「中央広場射撃隊、いつでもいけるぜ!!」

「中央広場近接隊、ぶちのめす用意は万端だ!」

「水難、火災、山岳、土砂、大雨・嵐待ち伏せ隊、それぞれいけます!!」

「ジャック、真っ先にお前をワープさせる。個性を発動させながらゲートをくぐれ」

「ああ」

「コネクタ、わかってるよな?戦闘の時は手を抜くなよ」

「…」

「脳無…は、いいか。行くぞ黒霧」

「はい。先生…では、行ってきます」

『ああ。死柄木弔、がんばってオールマイトを殺してきてくれ』

「ああ」

 

 

 

 

 

…。

 

 

 

「…頑張って殺してこいはおかしいだろ」

『どうした、コネクタくん。早く君もいきなさい。黒霧はともかく弔が痺れを切らすよ』

「殺せると思っているのか?平和の象徴を」

『殺せるとも、君がその気になればね。優秀な前衛である脳無がいて、君のサポート役としては最適解ともいえる黒霧がいる。あとは君のやる気次第では簡単にオールマイトを捕えられる。そして、弔の個性で数秒後には平和の象徴もただの塵となるさ、文字通りね』

「…悪いが黒霧たちが要請してこない限り動く気はないぞ。死柄木なんてああは言ってるが、あいつにもプライドはあるだろ」

『…』

「今回の目的は死柄木の経験値だろ。どうせ成功するなんて思ってるわけがない。オールマイトの拳をその身で感じたあんたならわかるだろう」

『…やはり、惜しいな。正式に僕の部下にならないかい』

「死んでも断る」

『…では、はやく行きたまえ。絶望に呑まれてくるといい』

「そのいやらしい監視カメラでよく見てろよ。色々諦めてきたつもりだけど、流石の俺でも譲れないものくらいはあるってことをな」

 

 

──────────

 

 

【Two years ago】

 

「…エンデヴァーさん、大変です!!例のあの子が襲われたと…!!」

「あの子!?まさか、比企谷八幡か!!!情報源は!」

「サンアイズの妹さんです!!近くの海浜公園で、友人と共に彼が逃がしてくれた!!早く助けてくれと…!!って、ちょっと、君!!」

「エンデヴァー!!助けてください、比企谷君が!!」

「お願いします、ワープの個性を持ったヴィランが!!!」

「急行する!!事務所にいる相棒(サイドキック)を連絡係を除いて全員連れてこい!!それと、サンアイズの妹!お前たちも後から来い!!」

「今すぐ行きます!!ここでなんて待ってられない!!」

「危険だ!!仮免資格を持っているとはいえ馬鹿な真似はするな!!サンアイズにも連絡を入れておけ!!」

 

何故だ!!何故自らも逃げなかったのだ…!!

 

「どこだ!!どこだ八幡!!いるんだろう!!!」

「エンデヴァー!!」

「…! 貴様、オールマイト!!?」

「久しぶりだね!!けど、いがみ合ってる場合じゃない!!急いで捜索、救助活動にあたろう!!施設も半壊になってる!!比企谷君も心配だけど、他の市民の方々も助けなくては!!」

「おのれ…!!」

 

そうだ、そんなことを話している場合ではない…!あの男の息子を、助けなければ…!!

 

「重傷者が5名、軽傷者は38名です、死者は0。しかし、行方不明者が、1名出ております…」

「…」

「それと、捜索時に人の肘から切断された左腕を発見いたしました。警察の鑑定にまわしましたが、やはり比企谷八幡のもののようです」

「…その左腕は保存されるんだな?」

「え?は、はい」

「それでいい…!あいつは必ず戻ってくる。(ヴィラン)を見た少女二人の証言をもとに、全国に指名手配を出させろ!!」

「え…!?(ヴィラン)の情報を公開するんですか!?」

「当然だ!!必ず見つけ出すぞ!!!」

「そんな無茶は飲めないなぁ」

「ひっ!?」

「うわ、人の顔見て悲鳴挙げた。失礼しちゃうわね、こんな美人捕まえて」

「サンアイズ…!!どういうつもりだ!?」

「今すぐには無理だよ。というよりも、(ヴィラン)の情報は別に良いけど、比企谷君の情報を公開するのはだめってこと。一人の少年が攫われたくらいにしてほしいの」

「貴様、何を考えている!?」

「勿論、ヒーローサンアイズはいつでも市民を守るために☆」

「ふざけるな!!!ならば、今すぐにでも…!」

「そして、雪ノ下陽乃はいつでも雪乃ちゃんと、比企谷君のために」

「…これが、奴の為の最善手になるというのか!!」

「そうよ。彼は必ず」

 

 

そう遠くない未来に、最高のヒーローになる。

 




最初辺りはヒッキー空気です。
個性は物語進行と共に明らかになります。
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