何がヒーローたらしめるか   作:doraky333

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二人の身体に残された遺恨。
片や衰弱の一途を辿る男、片や望まぬ強さを手に入れた少年。
男は次の者へ望みを託し、少年は堅固な意志で強さを捨てて帰還した。
ただ、その行いは。

──正しかったのであろうかと、あらゆる者が問いを突きつけるだけ。


Heros' Episode11.穿たれた身体 空洞へ楔

「あの、皆さん。少しよろしいでしょうか?」

 

夏休みに入る前日、前期終業式当日。

終業式を終えたA組女子は、その内の一人である八百万の呼びかけに応じ、夕暮れの公園に集まっていた。

雄英教師寮に住まう雪乃も、雄英敷地外を出て八百万の元に集まっている。

 

「んでヤオモモー、話って?」

「I・アイランドというものをご存知でしょうか?」

「何それ?」

「アメリカの西海岸近くに位置する学術都市のことね。それも、人工の島に存在する移動都市」

「移動都市!?島が移動するの!?」

「世界最高峰の個性研究を、島内に存在する研究機関のほとんどが行なっているのよ。研究成果はとても貴重なもの。それ自体が財産とされることから、(ヴィラン)集団やテロ組織に狙われない為に、防衛目的で島を移動させているの。防衛レベルは、あのタルタロスと同等を誇ると言われているわ」

 

雪乃の解説に、ふんふんと頷いて聞く芦戸、折本。

こんな説明が咄嗟にさらさら出てくる雪乃の方にも驚いていたが。

 

「んで、その島がどうしたの?」

「今度、I・アイランドでエキスポが開かれますの。I・ エキスポ……個性に関する研究結果、それに基づいて開発されたサポートアイテム等々の博覧会ですわ。そのプレオープンに、我が家が株主招待されたのですわ」

「株主…!?お、お金持ちの言葉や」

「お父様とお母様に、友人を誘って行ってはどうかとお薦めされて!…み、皆さん、宜しければご一緒しませんか!?」

 

少し辿々しい八百万のお誘い。

日本からI・アイランドまではそれなりに距離がある。

つまり、旅行になるのだ。

プレオープンからオープンまで参加するとなると、二泊三日はかかるだろう。

そして、八百万百──いわゆるお嬢様。

彼女は、友人と旅行がしたことがない。

ましてや彼女自ら誘うなど、もちろん初めての試みである。

だが、それでも勇気を出したのは、志を同じくした友人を大事に思うが故。

林間合宿前に英気を養い、見聞を深めようという心遣いである。

さて、それに対する彼女たちの応対は。

 

「い…」

「え?」

「いく───!!!」

「行くよ!行く行く!すっごい楽しそうそれ!」

「百ちゃんのお誘いだもの、是非行きたいわ」

「A組女子でI・アイランドにレッツゴー!!」

 

わっと喜色の声を上げる芦戸たち。

雪乃や耳郎も微笑んで頷いている。

その反応に胸を撫で下ろす八百万。

ただ一人だけ、沙希だけは浮かない顔で八百万の話を黙って聞いていた。

 

「ひ、費用は自費になりますが…」

「大丈夫大丈夫!I・エキスポでしょ?そんくらいどうって事ないよー!」

「滅多にない経験だし、しかもプレオープンなんて!」

「プレオープンの夜にはレセプションパーティにも参加できますわ」

「パーティ!?美味しいものたくさんでそー!」

「ただ、問題が。プレオープンに参加できるのは、あと二人だけですの」

「二人かー」

「残りの人たちは一般公開に参加になるかな?」

「そうなりますわね…」

「んじゃージャンケンで決めよう!」

「その事だけれど…」

 

「…私はいい。行かない」

 

雪乃の言葉を遮り、沙希が無表情で八百万の誘いを断る。

しん、と鎮まる一同。

話は終わったとばかりに荷物を持ち、公園を出ようとする沙希。

そんな沙希に芦戸が思わず声をかける。

 

「か、川崎!なんで!?いこうよ!きっと楽しいよ!!」

「…」

「いや、その…用事があるなら仕方ないけどさ…」

「用事は…ないね」

「じゃあいいじゃん!なんで…」

「お金がないんだよ」

 

沙希の一言に、ピタリと口を噤む芦戸。

芦戸の優しさに、観念して話し続ける沙希。

 

「うちは…四人姉弟でさ。両親も共働きしてるし、私は中学の頃からバイトしてる。…今もそう」

「え…ゆ、雄英に通いながらバイトしてるの!?」

「そんな大変な…」

「大変でも、やらないと家計は回らないよ。…私がヒーローになる理由の半分は、お金が稼げる職業だからだよ。上手くいけば高卒でサイドキックとして活動できる。雄英のヒーロー科に入ったのも、国立で学費が安いからさ」

 

もう半分は、アイツだけど。

その言葉は出さず、芦戸や八百万の方を振り向き、彼女たちの目を見つめ返す。

八百万が口を開きかけ、お金なら私が、と言おうとしたが、それはあまりに無責任だと押し黙ってしまう。

この先も同じようなことが起きたら、沙希の分を八百万が出し続けることになる。

それは沙希にとっても八百万にとっても良くない。

彼女らは単なる高校のクラスメイトで、まだ学生なのだ。

 

「だから、行きたくないとか、あんたたちと行くのが嫌とかじゃなくて……。……ごめん、帰る」

「…!」

 

「…待ちなさい、川崎さん」

「…雪ノ下」

 

再び歩き出そうとする沙希を、今度は雪乃が止める。

まさか雪乃が口を出してくるとは思わなかった、と沙希。

何せ、中学の頃に沙希の家庭財政の問題で、一度揉め事になりかけたことがあったのだ。

雪乃は沙希の家の問題を理解していると勝手に思っていた。

だが、雪乃は思わぬことを言い出す。

 

「貴方、相変わらずせっかちね。解決策がちゃんとあるのに」

「は?」

「少し待ってなさい」

 

スマホを取り出し、電話をかけ始める雪乃。

3コール目で相手が出て、スピーカーボタンを押してその場の全員に聞こえるようにする。

 

『…なんだよ』

 

その声に、驚く一同。

 

「私が電話したらワンコールで出なさい」

『俺はお前の犬か』

「お似合いじゃない」

『んなこと言う為に電話してきたわけじゃないだろ。…何かあったか』

「ご心配なく、緊急性のある話じゃないわ。…貴方、I・エキスポの招待状、三人目はまだ決めてないわよね」

 

「…!」

 

雪乃の言葉に、まさかと目を見開く沙希。

相手は少し逡巡して、雪乃に言葉を返す。

 

『…まあ。小町は平塚先生と一般公開日に参加するってよ。戸塚を誘おうと思ったけど、その日は予定あるからこれまた一般公開日に参加するそうだ。…戸塚ぁ…』

「電話で泣かないでくれるかしら、鬱陶しい。……その枠、川崎さんに譲ってあげられないかしら?」

『!』

「ちょ、雪ノ下!あんた何言って」

 

沙希が慌てて雪乃に詰め寄るが、電話相手──八幡の方が先にあっけらかんと言葉を返す。

沙希の名前を聞き、なんとなく事情を察したのだ。

 

『別に良いけど』

「決まりね」

「雪ノ下!わかってんの!?私お金が…」

「比企谷君には研究対象として、デヴィット・シールド博士からオファーが来てるのよ。個性因子の観察と診察を受けるという名目の」

「オファー!?」

『…川崎もそこにいるのか』

「ええ。全員に聞こえるようになってるわ。貴方から説明しなさい」

 

げ、という言葉の少し後に、八幡の声が雪乃のスマホから流れ始める。

 

『川崎……その、なんだ。…俺の個性が(ヴィラン)連合に弄られたっていう話は聞いてるか』

「う、うん」

『んで、その話を雪ノ下さんがI・アイランドの研究者の一人…シールド博士に流したんだと。そしたら、個性が外的要因で変化したっていう事例は今まで出てこなかったらしくてな…俺を研究対象として招きたいと』

「…うん」

『それで、博士側から来たのはそのオファーと、俺と他同伴者三人分の旅行費とI・エキスポのプレオープンと一般公開日の招待状。俺含めて四人までは、研究協力に対するお礼として、全部タダでI・アイランドに来れるようにするってことらしい』

「…」

 

話を聞いて、何とも言えない表情で黙る沙希。

何とか口を開く。

 

「で、でも…あんたに悪いよ…」

『他に誘う奴がいない。小町を連れてきたかったが、小町を連れてくとなると平塚先生もプレオープンに入れなきゃいかんからな。枠が足りん』

「…雪ノ下や由比ヶ浜は…」

『その二人はもう入ってんだよ。雪ノ下は株主として挨拶回り役に雪ノ下さんに抜擢されて、一枠使われたし…。由比ヶ浜は雪ノ下の付き添いに雪ノ下さんが指定した。雪ノ下だけでそんなことできるとは思えん』

 

八幡の言葉に眉を顰める雪乃だが、空気を読んで何も言わない。

川崎を説得する形になっているなと気づいた八幡だが、構わず続ける。

 

『どうせ、I・エキスポに行こーとかいう話になって、金がないからって断ったんだろ。家族に悪いと思ってな。普通なら数十万かかるし』

「…!」

『たまには甘えとけ。けーちゃんや弟の面倒は大志に任せろ。アイツは、なんだかんだいってお前のことを気にかけてるぞ。わかるだろ』

「…」

 

中学の頃を思い出す八幡。

沙希の依頼の始まりは、小町が連れてきた大志からだった。

京華や小さい弟を理由に、八幡に悪いと思って断ろうとした沙希だが、それも読まれていた。

何でこいつはいつもいつも、と目を瞑る沙希。

 

「…本当に、良いの?」

『タダ券を使われない方が浮かばれんだろ。せっかく向こうが金出してくれてんだ、経済回しとけ。キャンセルされても誰も使わん』

「……バーカ。相変わらず、何言ってんの」

『んで、どうすんだ?』

「…後になってダメって言っても遅いからね」

『他に誘う奴なんか居ねえよ』

「わかった。…あんたに甘えとくよ、よろしく」

『ん』

 

くるり、と恥ずかしそうに八百万と芦戸の方を向く沙希。

 

「…ご、ごめん。なんか行くことになった…」

「もちろん、それで結構ですわ!!良かったです!」

「比企谷やるじゃん!!」

「雪ノ下さんナイスアシスト!」

「私こそ、配慮が足りなかったですわ…すみません、川崎さん」

「これで全員でいけるね!」

 

沙希に駆け寄る芦戸たち。

スマホの方に折本と結衣が話しかけ、珍しく八幡がベタ褒めされる。

その声の多さに、状況に改めて気がつく八幡。

慌ててスマホを切ろうとするが、その前にと沙希に声をかける。

 

『じゃ、じゃあ…改めて後で日程送っとくから。普通の旅行に要るもん以外に、コスチュームと正装が要るぞ』

「コスチューム?」

『プレオープンをうろつくのに、どういう立ち位置の人間かわかるようにな。個性使って遊ぶアトラクションとかもあるらしい』

「わかった。準備する」

『じゃあ…』

「比企谷君」

 

電話を切ろうとした八幡に、スマホを沙希の手から取って雪乃が話しかける。

そして、刀のように鋭い切れ味の言葉が飛び出す。

 

「確か、指定されたホテルは二人二部屋だったわよね?貴方、誰と同じ部屋になる気かしら」

「「「え」」」

『…雪ノ下、帰りに牛乳とにんじん買ってきてくれ』

「待ちなさい」

『あ、なべのひがー』

「そんな棒読みの言い訳が通じるわけないでしょう。……切ったわね、あの男」

 

通話の切れたスマホをポケットにしまい、固まっている結衣たちの方を見る雪乃。

 

「私と由比ヶ浜さん、川崎さんは比企谷君の方のチケットを使うから…八百万さんのチケット分は、貴女たちで決めてちょうだい」

「まままままってゆきのん!!ヒッキーと同じ部屋!?」

「ひえー、凄いことになりそう…!……川崎、何してんの?」

「…心の準備」

「大丈夫よ、私が犠牲になるから」

「いや、犠牲じゃないでしょそれ」

「何か?」

 

 

──────────

 

 

そして、I・アイランドへ出発当日、午前11時。

既に夏休みに入った雪乃たちは、羽田空港にて待ち合わせをしていた。

 

「何で八百万たちと一緒に行くんだよ…」

「どうせなら皆で一緒に行った方がいいじゃん!」

「肩身が狭いのはわかるけど、折角誘われたんだから我慢しなさい」

「…お前、友達いなかったはずだよな」

「彼女たちは私を僻まないもの」

「…そうか」

「今更だけど、珍しい服装してるね比企谷」

 

沙希の言葉に、八幡の服装に目がいく二人。

ああ、と言葉を返す。

 

「上鳴が選んだ奴だからな。これ」

「千葉Tシャツ以外の服を持ってると感心したけど、道理で。小町さんの趣味でもないし、どうしたのかと思ったわ」

「ダウナーだよね。うん、似合ってる。ていうか似合いすぎて誰かと思った…」

「似合ってるのに誰かわかんなくなっちゃうのかよ」

「だって、ヒッキーがそんな格好するわけないんだもん」

「服なんて何でも一緒だからな。あるならそれで」

「…相澤先生と同じこと言ってるよ…」

 

「おーい!雪ノ下さーん!結衣ちゃーん!」

 

遠くから麗日の声が聞こえ、そちらを見ると麗日、八百万、耳郎の3人が人混みの中から雪乃たちの方へ向かっているところだった。

結衣も手を振って応じ、7人が合流する。

 

「お茶子ちゃんと響香ちゃんがプレオープンに行くんだったね!」

「じゃんけんに勝ったからね。あとの4人は翌日の一般公開日に合わせて行くってさ」

「…あら?比企谷さんは?」

「あっちで向こう向いてる人がそうだよ」

「え、あれ比企谷さんですの!?」

「頭のアホ毛そうでしょ?」

「…本当ですわ」

「…ちょっと比企谷の写真撮ろうかな。滅多に見れない服装だよアレ」

「比企谷君の私服はこの前のショッピングモールで買ったもの以外は、千葉Tシャツしかないから。その内珍しくなくなるわよ」

 

「…比企谷、いろいろ不名誉なこと言われてる気がするけど良いの?」

「事実だからな」

「そういえば他人の評価とか何も気にしない奴だったね」

「いや、中学の頃のも事実だったしな」

「ヒキタニって名前も?」

「…」

「やっぱりどうでも良いんじゃん」

「いや、葉山は許さん。戸部は……アイツ、未だに俺の苗字をヒキタニって読むって思ってそうで怖いんだが」

「…流石に無い…と思いたいね」

 

飛行機の搭乗時間となり、機内に乗り込む一同。

八幡たちの席はファーストクラスで指定されていたが、シールド博士が気を利かせて、八百万たちの分の飛行機代まで研究費から捻出してくれたのだ。

一応事前のやり取りで、そこまでしてもらって良いのかと聞いた八幡だったが、実は最近まで行っていた研究が一段落するため、研究費が余っているとシールド博士は言った。

よって、八幡たちと同じファーストクラス、それも八幡たちの向かい側に八百万席を予約していた。

八百万だけは自腹でファーストクラスの飛行機代を出せただろうが。

そのおかげでまた気恥ずかしい思いで窓の外を見ている八幡。

 

「ヒッキー窓側良いなー」

「通路側だと人通る時に一々面倒だろ」

「ちゃんと足退けてくれるんだ?」

「…」

 

耳郎の指摘を黙り込んで無視する八幡。

その八幡の耳が赤くなっていることに気がつく耳郎。

 

「…前から思ってたけど、比企谷って照れ屋だよね」

「人の好意に慣れてないのよ。元々人付き合いが全くと言って良いほどなかったし、何より思春期形成の重要な期間を2年も無くしているのだから」

「ばっかお前。戸塚とか戸塚とか戸塚とか…ちゃんと付き合ってたろ。いや、その、恋愛的な意味じゃなくてだな…」

「気持ち悪いわよ。やはりそこは矯正が必要ね」

「お前の言う矯正はペットに対する調教とニュアンスが変わらないんだよなあ…」

 

二つ隣の雪乃から離れようと更に窓際に寄る八幡だが、突然目の前に口が開いたポッキーの箱が差し出される。

なんだ、と思ったら向かいに座る耳郎が差し出すものだった。

 

「食べる?」

「…いや、その、なんだ。無償の好意は受け取らないようにしてるんだ」

「なにそれ、ただのクラスメイトがクラスメイトにお菓子あげるだけじゃん。見ず知らずの人なら警戒するのはわかるけど。ほら」

「……さんきゅ」

「うん」

 

八幡が他のポッキーに触れないように一本だけ抜き取り、それを見た耳郎が横の結衣と麗日の方に箱を手渡す。

 

「ありがとー響香ちゃん」

「やっぱりポッキーだよねー。チョコまみれなのがちょー良い!」

 

結衣が普通にポッキーの箱を受け取り、そのまま雪乃と八百万、沙希の方へポッキーが回っていく。

 

「ほら、これだけのことでしょ?あんた考えすぎなんだよ比企谷。あんたに何か引っ掛けようなんてこのクラスのやつは考えてないよ」

「…施しを受けないぼっちのプライドだよ」

「…いや、昔は知らないけど今のあんたをぼっちとは言えないでしょ…。…それとも」

 

しゅるりと耳郎のイヤホンジャックが八幡の首に伸び、ぐいと顔が前に出るように引く。

無抵抗で耳郎と目を合わせる八幡。

彼女は真っ直ぐ彼を見ていた。

 

「そんなに人の好意が怖い?」

「…」

 

無言で耳郎の目を見つめ返す八幡。

だが、それも一瞬。

直ぐに顔を赤くして顔を逸らす。

そんな八幡を見て、しゅるりと彼の首を撫でながら耳郎はイヤホンジャックを外す。

 

「…複雑な人生送ってそうだね」

「じ、人生なんて皆複雑だろ。単純に生きてる奴なんていない。それぞれ大小違っても、悩みや柵やら、色んなもん背負って生きてる」

「…ま、そういうことにしといてやるかな」

 

何でもないようにスマホを見始める耳郎。

しかし、内なる彼女は顔を赤くしていた。

 

(ヤバ…今絶対顔赤い!距離近すぎた…だ、大胆だったかな。…まあいいや、素直じゃないコイツが悪い)

 

八幡も、目の前の耳郎からも右隣の結衣からも情報をシャットアウトすべく、目を瞑って寝たふりを始める。

カリフォルニアにあるロサンゼルスまであと約9時間。

そこから更に飛行機に乗り換え、I・アイランドへ向かうため、優に半日はかかる。

着く頃には朝になっているだろうと八幡は狸寝入りをする。

耳郎の言葉が何度も反芻されたおかげか、その身が本当に寝入るまでそれなりに時間がかかったのだった。

 

 

──────────

 

 

半日後。

日本時間では既に昼から夜に流れる時間だった為、一同のほとんどは寝て過ごした。

八幡だけが隣の結衣と前の耳郎、斜め前の麗日に緊張して半分くらいしか寝れなかった。

その後、ロサンゼルスに到着したのは現地時間の朝。

正午に出発して半日経ったのに、時差によって現地に着いたら朝という時差ボケに耐えつつ、一行はI・アイランド行きの飛行機に再び乗る。

 

「なんでロサンゼルスからじゃないといけないのかな?日本から直接行く方が早いんじゃないの?」

「警備の為よ。出入り口が多いと、その分警備に手間がかかるし、リスクも増えるでしょう?」

「警備する空港を一つに絞る事で、経費削減も兼ねているのですわね」

「…比企谷、もう寝てるね」

「ロスまでの飛行機で寝れなかったんでしょ。こっちは十分寝れたけど」

「比企谷君、目を瞑るとアレやね…」

「…残念イケメンが普通のイケメンになる、って感じかな。写真撮ってクラスのグループにあげ…いや、勿体ないかな」

 

スマホで八幡の寝顔を写真に撮り、A組に共有しようとしてやめる耳郎。

横を見ると、結衣も八幡の横顔を写真に撮るところだった。

 

「ゆ、由比ヶ浜?比企谷の写真とか持ってそうだけど」

「え?い、いやー…ヒッキーこういうの撮らせてくれないんだよね。すぐ逃げるし…人前で顔見せて寝てるとこレアっていうか!あ、あはは…」

「…」

 

結衣と耳郎をチラチラ横見する雪乃。

しばらくした後に、結衣が気を利かせて雪乃のスマホにも写真を送ることになる。

 

「もうすぐ着きますわね、I・アイランド。どこかでコスチュームに着替えなくては…」

「空港に着いてからで良いんじゃない?」

「そうですわね、比企谷さんもいますし…」

「百ちゃんたちは、向こうに着いたらどうするの?」

「私たちはI・エキスポを見学しますわ」

「結衣ちゃんたちは?」

「私たちも同じ!けど、ヒッキーだけえっと…今回呼んでくれた博士のとこ行くんだって!」

「…デヴィット・シールド博士でしょ」

「そう、その人!」

 

結衣の説明に沙希が補足し、八幡だけは別行動をするという点を伝える。

そこで首を傾げる八百万。

 

「比企谷さんお一人で?雪ノ下さん(ヒーロー)が同行しなくても大丈夫ですの?」

「I・アイランドでは、日本と個性に関するルールが違うのよ。それにI・アイランド創設以降、I・アイランドでは(ヴィラン)は一度も出現したことがない。問題ないと、私も雄英も、比企谷君も判断したわ」

 

出発前、デヴィッド・シールドからの誘いについて根津、陽乃、八幡、雪乃の四人は話し込んだ。

結果、タルタロスと同等のセキュリティレベルを誇るI・アイランド内で八幡を襲う理由がないということから、島内では八幡の護衛は必要ないという結論に至ったのだ。

 

「なるほど、浅慮でしたわ」

「個性のルールが違う?」

「あの島では、個性の使用が自由なの。勿論個性を犯罪に使うのは厳禁だけれど。そうでなくては個性を使ったアトラクションなど成立しないわ」

「アトラクションなんてあるんだ…」

「個性による的当て、それぞれの個性に合わせたコスチューム考案書作成体験……一番告知されているのは(ヴィラン)アタックの類ね。全てのターゲットを壊すまでのタイムを競うレジャー施設よ」

 

雪乃の解説を聞き入る一同。

事前準備万全でI・エキスポに入ろうとしている雪乃。

優秀な人だなあ、と麗日。

そういえばと彼女は考える。

雪ノ下雪乃は既にプロヒーローの資格を持っている。

比企谷八幡も中学2年時にはプロヒーロー仮免許資格を取っていた。

中学生で二人とも、既に戦える立場と権利を持っていたのだ。

そんな二人が今はクラスメイトだなんてすごいことやなあ、と麗日。

特に八幡の方は凄まじいレベルの戦闘力を持っている。

戦うことだけがヒーローの全てではないが、やはり戦えるに越したことはない。

 

(プロがどの程度強いか、何てようわからんけど……比企谷君は今どの程度のレベルなんやろ?平塚先生との試験はほとんど沙希ちゃんが抑え込んでたし、B組ではオールマイトと戦ったらしいけど…訊いたら教えてくれへんかな?)

 

「…あ、もしかしてあれかな?I・アイランド!」

「本当だ、あの島だよ!」

「おっきいー…!」

 

結衣と耳郎が八幡を起こさないように窓側に寄り、窓を覗く。

飛行機の窓から見える、人工の壁に覆われた島。

博覧会が開かれる直前だからか、島には賑やかな雰囲気が漂っていた。

実際飛行機内は楽しげな人ばかりで、普段のI・アイランドとはかけ離れた光景である。

 

「ていうか…島、本当におっきいね!?」

「人口は数万人よ」

「人住んでるの!?」

「研究者、その家族、研究成果を受け取って活用する企業…。個性研究に関わる中枢の人間だけで数万人。この島に関わる人間は、島外に存在する末端の人間を含めるとその数十倍以上になるわ」

「学術都市としても有名ですわ。ヒーローのサポートアイテムを開発する、発明家や研究者を育成する学校がありますの」

「比企谷起こさなきゃ…って、起きてたんだ」

「…寝れるかよ」

「ウチらに緊張して?」

「ぐっ……」

「わわっ、ヒッキー起きてたの!?」

 

耳郎の悪戯な笑みから目を逸らし、コスチュームボックスを持って席から立ち上がる八幡。

だが、あれと結衣が声をかける。

 

「ヒッキー、それいつものコスチュームの奴じゃなくない?」

「あ、ほんとだ。26の数字もない」

 

1-Aの生徒たちは、各々のコスチュームボックスに自身の学籍番号が入っている。

学籍番号は五十音順だが、中途入学した八幡は26番目の生徒として番号を割り振られている。

だが、いま八幡の持つコスチュームボックスは数字が入っておらず、BJというアルファベットが代わりに入っているものだった。

 

「…その、もらった。試しに使ってこいって言われた」

「もらった!?」

「誰に?」

「…ベストジーニスト。あるべき姿を正せってよ…」

「そういや、爆豪君もジーンズ穿かされたとか何とか言ってたけど…」

「…まさか、アイツと同じ扱いされてたのか俺」

「もしかして、比企谷のジーンズ…!?」

「ええ、見たい!ヒッキー、早く着替えてきて!!」

「へいへい…」

 

そして着替えから戻ってきた八幡。

その新鮮な姿に、わあと声を上げる結衣。

黒のスキニージーンズに白の長袖シャツ、そして紺のデニムトップスを肩にかけた八幡。

両腕両ふくらはぎには金属の糸のような物が何重にも巻かれ、一種の防具になっていた。

 

「うわあ、ヒッキーのジーンズとか初めて見るかも!細いからシュッてした格好似合うね!」

「…その、腕と足に巻かれてんのなに?これ、金属?」

「…ベストジーニストから糸を使うのを勧められて、まあ…な。細くて丈夫な合金で作られてる。全長5mの合金糸がそれぞれ4本、手足に巻き付いてる」

「付け外し大変そうやね…」

「個性使えば1秒もかからないから、関係ない」

「あ、そっか!本当に便利な個性だ!」

「でも、5mだけなの?」

「近接格闘、捕縛向けな。それに、糸通して相手の服に接続したら相手の服の糸を操作して相手を簀巻きにできるし」

「…比企谷、ベストジーニストの弟子になったわけ?」

「いや、単にできるならやってしまえって言われて…。それに、ジーニストみたいに糸数本で建物の倒壊を防ぐとかそんなことはできん」

 

ベストジーニストの個性はファイバーマスター。

繊維を操る個性。

ベストジーニストの場合は触れずとも他人の服の繊維を操作できるが、八幡の場合は直接触れるか糸やら地面やらを介して接続して初めて操作出来る。

発動条件は違えど、個性的には師であるエンデヴァーよりも似てるのだ。

 

「もうすぐ着くわよ。比企谷君、はしゃぐのはわかるけど程々にしておきなさい」

「…はしゃいでるように見えたか?」

「内心嬉しいっていうのは丸わかりよ。…後で写真を撮るから、忘れないように」

「…お前も、隠せてねえぞ色々」

「何のことかしら」

 

柔らかな笑みを浮かべる雪乃に、なぜか負けた気分になる八幡。

少しだけ、ベストジーニストからコスチュームをもらって内心喜んでいたのがバレていたのだ。

その分そのうちベストジーニストにこき使われるだろうなとは思っていたが、それを差し引いてもヒーローにとって一種の代名詞でもあるコスチュームをもらうということは、それほど大きい物であるのは、世間一般の認識である。

ヒーローコスチュームは、大切であり神聖な物。

だからこそ、八幡は密かに平塚のコスチュームに似せたコスチュームを発目、材木座、サポート会社に依頼して作ってもらっていた。

ちなみにそのことは雪乃と陽乃にはバレている。

 

(よくわからないところで素直なのよね、この人)

「私たちは空港についたらコスチュームに着替えI・エキスポの方へ向かうわ。貴方はどうするの?比企谷君」

「空港着いたらそのままシールド博士の研究室へ行く」

「そう。付き添いは必要かしら。私が行ってあげても良いわよ」

「要らねえよ、エキスポを見て周っとけ。レセプションパーティで貴賓や開催者の人たちと談笑する話題作ってこい、要るんだろ」

「貴方のそういう捻くれたところを治さなくてはと思うのだけれどね…」

 

八幡が飛行機着陸に備えて席に着くのを見届けるが、溜息をつく雪乃。

話を聞いてた麗日が、その後のことを八幡に尋ねる。

 

「比企谷君、シールド博士んとこの用事ってどの程度で終わるの?」

「……一応、話聞いてる限りではデータ採るのに1時間もかからないって聞いてるが」

「あ、ならエキスポ周れるね!一緒に周ろうよ!」

「…」

「…えっと…いやだった?」

「……いえ」

「! よかった、じゃあ終わったら連絡入れてね!合流しよ!」

「……はい」

 

「…ちょっと、比企谷が負けたよ。完璧に負けたよアレ」

「ウチの時より対応が素直じゃない?」

「邪心もない強かさもない、麗日さんのただの純粋さに負けたのよ。捻くれた回答してもそのまま受け取られるって思ったのでしょう」

「なるほど、ヒッキーにはアレで良いのかも…」

「皆さん、すっかり比企谷さんの研究家ですわね…」

 

 

──────────

 

 

I・アイランドに着き、ヒーローコスチュームに着替え終わった雪乃たち。

今はI・エキスポ内のサポートアイテムの展示会で見学中だ。

既に八幡はデヴィット・シールド博士の元へ向かっている。

 

「ヒッキー一人で大丈夫かなー」

「元々一人で様々なことをやってきた男なのよ。問題はないでしょう。それに、歳上には彼は強いもの」

「それもそっか。最近のヒッキー、ちゃんと周りの人と交流しようとしてるから、多分大丈夫だね!」

「…アレで……?」

 

耳郎の脳裏には、教室の休み時間にずっと突っ伏している八幡の姿が思い浮かぶ。

一応誰かに話しかけられたりちょっかい出されたりしたら、のろのろと起き上がり、ようやく会話が始まるのだが。

八幡から誰かに話しかけているところは見たことがない。

この前のショッピングモールに行く約束を沙希にも取り付けた時くらいだろうか。

あの時はクラスの皆だけではなく、耳郎も心底驚いた。

 

「アレでもマシになったのよ。中学の頃なんか誰にも話しかけられなかったわね」

「ええー…由比ヶ浜や雪ノ下さんも?」

「私はクラスがそもそも違ったのよ」

「…ごめん、私は…」

「…?」

 

結衣の申し訳なさそうな顔に、雪乃と沙希以外の3人は首を傾げる。

あまり言いたくはなさそうだ。

比企谷がまともな中学生だったとは思えないけど、由比ヶ浜にもそれなりに事情があるのかな、と耳郎。

その時、八百万は沙希がある一点をじっと見つめていることに気がつく。

 

「…川崎さん、どうかされましたか?」

「…ねえ、あそこに見覚えのある緑コスチュームのやつ居るんだけど」

「緑、てまさか…デクくん!?………え」

 

沙希の示す方を喜色を浮かべて振り返る麗日。

しかし、次の瞬間には表情筋がピタリ止まる。

沙希の指差す方にいたのは確かに緑谷だ。

ヒーローコスチュームを纏い、サポートアイテムをいつものキラキラした目で見ている。

だが、一人ではなかった。

緑谷の真横に、彼と楽しそうに談笑するブロンドヘアーの女の子がいたのだ。

緑谷よりも少し背が高く、歳上に見えたが学生服を着ている。

麗日の見覚えのある人間ではなかった。

 

「…きょ、響香ちゃん」

「え?」

「ちょっと…良いかな?」

「…あ、うん。わ、わかった…」

 

固まった笑顔のまま喋る麗日の迫力に押され、その意図を読み取ってイヤホンジャックを床に刺す耳郎。

緑谷とブロンド女子の会話を聞き取る気だ。

その様子を眺める雪乃、結衣、沙希、八百万。

 

「と、止めなくてよろしいんでしょうか?」

「…機密事項を盗み聞きするわけでもない、個性の使用は禁じられていない…まあ良いでしょうね」

「それに、今のお茶子ちゃんを止めるのはちょっと…」

「そ、そうですわね」

「…緑谷、随分楽しそうだね。なんか、デートしてるみたい」

「ででででで、デート!!?」

「あ、ごめん。そういうわけじゃないかも…。…いや、でも…うーん。どうする?話しかける?」

「ええええええ!?でででも、邪魔しちゃ…その、うーん…」

「麗日さん」

 

話しかけに行きたい、けど楽しいところを邪魔するのも、という悶々とする麗日。

そんな彼女へ、氷のような表情で話しかける雪乃。

 

「ゆ、雪ノ下さん?」

「アドバイス」

「え?」

「いま、動かないと…後悔するわよ」

「!!」

 

「…ええ、雪ノ下がそれ言うの…?」

「さ、沙希ちゃん、ダメだってそれ言っちゃ…」

「いや、まあ良いんだけど…。…比企谷がいなくなった時に死ぬほど後悔したのはわかるけどさ」

「そういうことにしとこ?ね?」

 

雪乃も大概奥手である。

そのせいで八幡と結衣との関係が拗れに拗れかけたのを、雪乃は忘れているわけではない。

だが、恋する少女を前にして、他人事とは思えなくなった雪乃は単に麗日を想って声をかけているだけなので、とりあえず結衣も沙希も雪乃には何も指摘しなかった。

 

「よ、よし!なら、行ってきます!」

「ええ、いってらっしゃい。貴女の勇姿を見届けてあげるわ」

「…ご、ごめん。ついてきてもらってもいいかな?」

「もちろん」

「仕方ない、行きますか…」

 

 

──────────

 

 

「メリッサさん、お父さんがデヴィット博士!?」

「ええ、うちのパパよ」

 

緑谷と共にいたのはメリッサ・シールド。

現在、I・アイランドのアカデミーに通う高校三年生。

メガネが可愛い女の子である。

緑谷たちと合流後、雪乃たちはメリッサの提案でエキスポ内のカフェでお茶をしていた。

緑谷はこれまた男子一人、更に麗日の緑谷とメリッサに対する誤解を解いたばかりで中々疲労している。

女子たちが華やかにお茶をする中、一人だけ別テーブルで椅子にもたれかかって疲れをとっている最中だ。

 

(誤解解けてよかった…)

「あ、じゃあメリッサさん。その…何か、目が腐ってアホ毛の男の子見ませんでした?今、全身デニムのコスチューム着てるはずなんですけど…」

「そういえば、確か研究室でサムさんが今誰かを診てるって話聞いたわね。私は、デク君たちを出迎えてて会ってないわ。すれ違ったのかしら」

「アホ毛って…比企谷君!?来てるの!?」

「招待状をもらったのは彼だもの。私たちは付き添いよ」

「ゆきのんだけ、レセプションパーティで挨拶回りするって役あるけど。あ、あたしはゆきのんの付き添いもするよ!」

「…私も…比企谷の付き添い」

 

雪乃たちの言葉に、納得する緑谷。

八幡の個性は少々特殊であることは、緑谷にも察しがついていた。

似たような個性の複合個性に、体育祭時までは保持していた生物操作と呼ばれた個性。

既に無くしてしまったらしいと聞いていたが、やはり体育祭で彼から生物操作の個性を奪い取ったのはオール・フォー・ワンなのだろう。

一瞬で思考の海に潜りかけた緑谷を、目の前に差し出されたウェルカムドリンクが引き上げた。

 

「お待たせしました」

「え……その声は…か、上鳴君!?」

「と…峰田君!?」

「あんたらなにしてんの!?」

 

緑谷たちの前に現れた上鳴と峰田。

両者ともウェイターの服装をしており、緑谷たちが来たカフェでバイトしているようだ。

 

「エキスポの間だけ、臨時にバイトを募集していたから応募したんだよ。なー?」

「休み時間にエキスポ見学できるし、給料もらえるし…来場した可愛い女の子と素敵な出会いがあるかも…しれないしなあっ!」

 

峰田の目は明らかにメリッサに行っていた。

素早く緑谷と肩を組む上鳴と峰田。

二人とも既に顔がアレであった。

やらしいのである。

 

「おい緑谷、あんな美人とどこで知り合ったんだよ!?」

「紹介しろぉ、紹介…!」

「あの、その…」

 

「…彼らも雄英生?」

「そうですっ」

「ヒーロー志望ですっ」

 

早速メリッサにアピールを始める二人。

ブロンド美人を前にして、二人とも見境がない。

雄英の恥を晒しているのではないかしら、と雪乃。

 

「メリッサさんに迷惑が…と、止めた方がいいかな?」

「…止めなくていいんじゃないかしら。安全弁が向こうからやってきたわよ」

「へ?」

 

雪乃の視線の先に、砂煙を上げて高速で上鳴たち目がけて走り抜けに来る誰かが目に入った。

コスチュームの白いアーマーを着た、1-Aクラス委員長、安全弁こと飯田天哉その人である。

 

「何を油を売っているんだ!バイトを引き受けた以上、労働に励みたまええぇぇ!!」

「「ひいいいいいぃぃぃぃぃ!!!」」

「い、飯田君!?」

「来てたん!?」

 

上鳴と峰田の二人を壁に追い込んで間接的にメリッサを助ける飯田。

独特な手捌きで、自身の家である飯田家がI・エキスポに招待を受け、一人でここまで来たと説明する。

どうやら、上鳴たちとは既に顔を合わせていたらしい。

 

「なんかどんどん揃ってくね…A組」

「プレオープンに参加しない連中もほとんどEXPOの外には来てるらしいよ。戸塚とかは明日来るらしいけど」

「そうなの!?」

「折本が言ってた」

 

沙希の言葉に、これは全員でエキスポに参加かなと結衣。

示し合わなくても集まるあたりが、A組らしい。

その時、カフェの外で爆発音と煙が上がる。

思わず振り向く一同。

 

「な、なんだ!?」

「ああ、アレは(ヴィラン)アタックね!」

(ヴィラン)アタック!?」

「あ、ゆきのんが言ってたレジャー施設のこと?」

「個性を使って、ターゲットのロボを無力化するタイムを競うの。良かったら、見に行かない?」

 

メリッサの提案ですぐ近くの(ヴィラン)アタックの施設へ駆け寄る緑谷たち。

上鳴と峰田だけはバイト中なので、寂しそうにカフェに残った。

 

「…俺たち、バイト中なのに…」

「せめて女子成分をくれぇ…。メリッサさぁん…」

 

 

──────────

 

 

(ヴィラン)アタックに挑戦していたのは、これまたA組クラスメイトの切島。

爆煙の中から現れた切島は、33秒で(ヴィラン)アタックをクリアしたようだ。

 

「切島くん!!」

「デク君、彼も?」

「はい、クラスメイトです…!」

 

『さあ、次のチャレンジャーです!』

 

司会の女性の声に合わせて現れた人物。

切島と聞いてまさかと目を見張る緑谷。

コスチューム姿で、ゆっくり(ヴィラン)アタックの方へ歩いていく──爆豪。

 

「か、かっちゃんんん!!?」

 

『それでは、(ヴィラン)アタック!Ready……Go!!』

 

スタートの合図と共に、爆速ターボで飛び出す爆豪。

すぐに一つ目のターゲットロボを壊し、爆速ターボで急転換して次のターゲットへ向かっていく。

 

「死ねええええ!!」

 

(…死ね?)

「相変わらず口が悪いね」

「悪いとかいうレベルじゃなくて、もう…なんだろ。ナチュラルな死刑宣告…」

「あんた宣告とかいう言葉使えたんだね、由比ヶ浜」

「沙希ひどい!」

 

『これはすごい!ただいまの記録、15秒!トップです!』

「フン…」

 

全てのロボを破壊し終え、待っていた切島のところへ戻る爆豪。

その時、切島が観客席にいた緑谷たちの方へ気づいて声をあげてしまう。

爆豪も緑谷に気が付き、途端にキレ出す1-Aの導火線。

慌てて飯田が仲裁に入るが、爆豪の勢いは止まらない。

 

「なぁんでてめえがここにいるんだぁ!!?」

「やめようよかっちゃん、人が見てるよ…」

「ええいやめたまえ爆豪君!!」

 

「彼は何で怒ってるの?」

「…いつものことです」

「男の因縁ってやつです!」

「いや、多分違うよお茶子ちゃん…爆豪くんが絡んでるだけだよアレ…」

 

爆豪を不思議そうに見るメリッサだったが、他の1-A連中はすでにそんな彼らに慣れきっているため平常運行。

八百万は気にせずに、事情を聞けそうな切島に声をかける。

 

「切島さんたちも、エキスポに招待を受けたんですの?」

「いや、招待されたのは体育祭で優勝した爆豪!俺は付き添い!」

 

八百万の言葉に笑顔で答える切島。

よく爆豪くんに付き添いで来れるなあ、と麗日は少し感心する。

 

「なに、みんなもアレ挑戦すんの?」

 

切島の指差す方には(ヴィラン)アタック。

それを見た爆豪はキレ顔のままケッと言い放つ。

 

「やるだけ無駄だ、どうせ俺の方が上なんだからな」

「あら、聞き捨てならないわね」

「ゆ、雪ノ下さん!?」

 

興味なさそうに話を聞いていた雪乃が、絶対零度の笑みで爆豪を見返す。

彼女は、奉仕部どころか総武組の中でも一番の負けず嫌いである。

 

「やる前から諦めるのは愚か者よ。まずは挑戦。成功したならそれでよし、失敗したなら原因を考えて改善。それが成功するためのプロセス。それすら投げ出すのは、いかがなものかしら…?緑谷君」

「え、ぼくぅっ!?」

「爆豪君が喧嘩を売ったのは貴方でしょう?」

「てめえでもいいんだぞ、雪ノ下!」

 

爆豪が雪乃を更に挑発する。

雪乃は、爆豪に名前を呼ばれる数少ないクラスメイトの一人だ。

彼は自身が認めた者以外はその名前を呼ばない、

彼が呼んだのは現在、轟、切島、雪乃、八幡、それから麗日のみ。

その為ヒーローのことはきちんと名前で呼ぶ。

ちなみに、緑谷も例外で入れていいだろう。

 

「もちろん買うわよ。けど、その前にまず彼でいいでしょう?」

「で、でも…雪ノ下さん!?」

「デク君、雪ノ下さんのいう通りやと思う!やってみないとわからないよ!がんばろ!?」

「麗日さん…」

 

麗日の後押し、それからその気になった爆豪が投げる形で(ヴィラン)アタックへ挑戦することになった緑谷。

そして、その様子を観客席の外れの方で見ていた少年が一人、八幡である。

 

「…騒がしいと思ったら…クラスの半分が集合してんじゃねえか」

 

既にデヴィット博士の元で個性因子の測定を終えた八幡は、一応約束だったので皆を探しに来ていたのだった。

ただ、デヴィット博士に一つだけお願いごとをされたのでそれも兼ねて(ヴィラン)アタックの施設へ来ていた。

彼が来ているとは露知らずにターゲットロボへ飛び出す緑谷。

身体にワン・フォー・オールの力を行き渡らせ、次々とターゲットロボを破壊していく。

 

(今更だが、体育祭の時の身体のぶっ壊しようとはえらい違いだな。もう問題なく、ワン・フォー・オールを戦闘に使えるようになってる)

 

後の問題はその出力だろう。

身体を壊さずにオールマイト並みに力を出すのはかなりの修練が必要なようだ。

 

『16秒!第二位です!』

 

そろそろ行くかな、と観客席から(ヴィラン)アタックの申し込み受付まで行く八幡。

すると、これまた予想外の人物と出くわす。

 

 

──────────

 

 

「…比企谷?」

「…轟」

 

受付を済ませていたのは轟である。

轟の後に受付をする八幡。

二人で観客席の下に位置する、出場通路へ向かう。

 

「お前、一人で来たのか?」

「…いや、雪ノ下たちと」

「雪ノ下?」

「今上にいる。…さっき見たけど、色々いたぞ」

「? …俺は、親父が招待受けて代わりに来た」

「ああ、エンデヴァーか。まああの人はI・エキスポ(こんなもの)に興味は持たんだろ」

「比企谷はどうしてここに?」

「個性研究で呼ばれたんだよ。…ほとんど用事は終わった」

 

八幡のいつもより少し暗い表情に、轟が首をかしげる。

 

「…何かあったのか?」

「…いや。大したことじゃない」

「…」

「もう出番だぞ、お前の番だろ」

「…ああ。アレ、雪ノ下じゃないのか」

「げ」

 

見ると、雪乃が全てのターゲットロボを同時に水の槍で撃ち抜いているところだった。

パクパクと魚のように口を開き閉じする司会者。

 

『き、記録…4秒。あ、圧倒的トップです…』

 

「…アイツ、本当に手加減てもん知らねえな。エキスポなんだからお愛想見せろよな…」

「お愛想?」

「プロがガチで出張るなよっていう話なだけだ」

「…お前は全力出さないのか?」

「…」

「…」

「…わかったよ、んな目で見んな。早よいけ」

「ああ」

 

先に受付を済ませた轟が(ヴィラン)アタックへ向かい、八幡は通路で待機し彼を見守る。

すると、上から爆豪と雪乃の声が聞こえてきた。

 

「てんめえ雪ノ下!!…もう一回やっててめえぶち抜いたるからそこで待ってろ!!」

「あら、どのくらいかかるかしら?今日のエキスポが終わるわよ?」

「この雪女が!!」

「捻りがないわね…」

「かっちゃん、ダメだって…!」

「そうだぜ爆豪、雪ノ下はプロだしよ」

「プロだなんて関係ねえ!!勝つか負けるかだろうが!!」

 

(…相変わらず妥協がないな。圧倒的向上心と自尊心が同居してるってのもなかなか珍しい例だ)

 

それに、爆豪がこの(ヴィラン)アタックで雪乃に勝つのは中々ハードルが高いと八幡。

個性による戦闘には向き不向きがある。

単にこの形式の勝負では圧倒的に雪乃が有利というだけだ。

見たところ、水の槍の生成だけでゆっくり3秒ほど使っていた様子。

その気になればタイムは更に速くなるだろう。

 

そうこうしているうちに、轟が(ヴィラン)アタックを終えた。

氷でフィールドごとターゲットロボを氷結させ、競技は終了。

 

『記録は14秒!第二位です!』

 

(雪ノ下が一位、轟が二位…んで爆豪が三位で緑谷が四位か)

 

案の定轟に突っかかりに行く爆豪。

何故か雪乃の時よりも激しくキレている。

轟と雪乃では、ムカつき方が全然違うのは何故かと首を捻る八幡。

それが体育祭での轟の姿勢の問題なのだが、二人の試合中はオールマイト抹殺のことで頭がいっぱいだった八幡は知る由もなかった。

 

『それでは次の方、どうぞ!』

 

一方的に轟に詰め寄る爆豪を、飯田、切島、緑谷の三人がかりで抑えられていたが、それを何とかスルーして競技を進めようとする司会者。

 

(…仕事って大変だなあ。働きたくねえ。…いや、既に働いてたわ)

 

ポケットからある計測器を取り出し、左腕に取り付ける。

爆豪を抑えながら、八幡の方を向く飯田。

 

「す、すみません!この男は今すぐ退場させますので…って比企谷君!?」

「「え!?」」

「比企谷っ…!」

 

爆豪もピタリと暴れるのをやめ、八幡の方を睨みつける。

それを一瞥し、司会者の方を向く八幡。

 

「すみません、これ…デヴィット・シールド博士からの依頼で。3回参加させて欲しいんですけど」

『え、デヴィット博士!?…は、はい!承りました!』

「…デヴィット博士?なんで?」

 

緑谷の不思議そうな声に反応し、そちらを向く八幡。

 

「悪いが、これやんなきゃいけねえからどいてくんねえか」

「う、うん。もしかして比企谷君、それもコスチューム!?ベストジーニストに似たジーンズ仕様!?その手足につけた金属輪は…後左腕に、これは何の機械なの!?」

「ちょ、後で」

「あ…ご、ごめん」

「爆豪、お前も…」

「あ?てめえの見てやっからとっととやれや!!」

「…お、おう」

 

既に爆豪が八幡の後ろで待機していた。

飯田と切島の拘束からさらりと抜け出し、いつの間にと二人も驚く。

八幡の(ヴィラン)アタックを見たいのだろう。

 

『そ、それでは…研究案件により3回のチャレンジ!1回目の(ヴィラン)アタックです!』

 

「…研究案件?」

「エキスポ内で、時々行われるデモンストレーションのことよ。でも…(ヴィラン)アタックでは珍しいと思うわ。彼、ヒーローなのかしら?ずいぶん若いのに」

「あ、あれヒッキー…比企谷八幡君です!私たちのクラスメイトで、プロヒーローです!」

「え、まだ高校生!?」

「えへへ、ゆきのんもそうですよ」

「うそ、本当に!?」

 

メリッサの驚く顔に、自慢顔の結衣。

麗日や耳郎たちもどこか誇らしげだ。

クラスメイトが褒められるのは、悪い気分ではない。

雪乃はそんな言葉に慣れ切っているのか、特に気にした様子はない。

 

「始まるわよ。3回…きっと、面白いものが見れるわ」

「?」

 

『Ready…Go!!』

 

開始の合図と共に駆け出す八幡。

その行動に驚く一同。

てっきり、土か空気を使うと思ったのだ。

目指す先は、フィールドに流れる沢。

まさか、と緑谷。

沢の水に触れる八幡。

途端に水流が逆巻き、宙へと浮かんでそれぞれターゲットの元へ矢のように飛んでいく。

 

「オー・アロー」

 

『そ、そこまで!記録…7秒!第二位です!』

 

水がロボを高速で撃ち抜き、全てのターゲットは破壊された。

手を振って水を切りつつ、スタート位置へ戻る八幡。

そこへ爆豪が睨みつけながら声をかける。

 

「おい、比企谷。なにてめえまでナメプしてんだおい!」

「ナメプ?」

「手ェ抜いてんだろうが!何でわざわざ水触りに行く必要があんだぁ!!?」

「いや、これそういう依頼だから。次は空気使う」

「あぁ!!?」

「…もしかして、3回って…」

「まあ、後で説明する」

 

新たにターゲットロボが配置され、再び構える八幡。

 

『では2回目!Ready…Go!!』

 

(次、気体操作)

 

個性有効範囲内の大気を一気に凝縮し、更に八幡の方へ風が流れ込み、一瞬だけ嵐を引き起こす。

圧縮された空気が左の掌に収まり、更に圧縮した空気ごと掌を丸めて拳を作る八幡。

 

「ヴァン・ガンズ!」

 

拳から、風の銃弾が撃ち出された。

圧縮された空気は指と指の隙間から押し出される形で飛び出した風の銃弾は、全てのロボを撃ち抜き、破損させて尚土壁や地面に突き刺さる。

 

『き、記録…3秒!!トップに躍り出ました!』

 

「…思いついてやったけどこれ掌めっちゃ痛えな。無駄に使うと痛いだけだこれ…」

 

「お、思いつきなんだ…」

「…比企谷、次は固体操作なのか?」

「まあ。そういう約束してるからな」

 

左腕に取り付けられた計測器をチラつかせる八幡。

そして、3回目の(ヴィラン)アタックが始まる。

 

『で、では3回目!ラストは何を見せてくれるのでしょうか!?Ready…Go!!』

 

次の瞬間、緑谷は自分の目を疑ってしまった。

Goという言葉とほぼ同時に、ターゲットロボが全てひとりでにひしゃげて潰れるという光景を目にしたからだ。

 

『ちょ……え?こ、故障……じゃ、ないですよね…』

 

八幡を見た司会者が、ロボの故障ではないとすぐに気がつく。

地面から立ち上がった八幡が特に驚くことなく、ふらりと観客席の方に戻ろうとしていたからだ。

 

『け、計測不能…です。ていうか、1秒未満…!!』

 

「固体操作による、圧縮…!一瞬で掌に地面をついて…地面とロボを繋げたんだ!すごい…!」

「…解説どうも。まあ、ロボ相手なら簡単だ。特にぶっ壊していい奴は」

 

ぶっ壊していい、という八幡の言葉に疑問を覚える緑谷。

壊してはいい機械はまだわかるが、壊してはいけない機械に対処するにはどのような違いがあるかわからなかったのだ。

一度観客席へ戻る一同。

爆豪は興が削がれたらしく、切島と共に既にその場を離れていた。

メリッサが八幡と轟に声をかける。

 

「あの、初めまして!メリッサ・シールドです」

「轟です」

「…シールド?っていうと」

「はい、私の父はデヴィット・シールド。貴方が今回の研究協力者…比企谷八幡君ですね?」

「…ああ、ちょうどよかった。これ、シールド博士に渡してくださいませんか」

 

八幡が左腕から計測器を取り外し、メリッサにそれを手渡す。

 

「これは…パパの、個性因子の簡易計測器?」

「まあ。これつけて個性使って戦闘してきてくれ、って頼まれてたんで」

「個性因子ってなに?ゆきのん」

「個性を使う時に活性化される、人体に存在する因子のことよ。個性は、基本人体に追加器官や特集能力を付和されたもののことを俗に言うのよ。それらは、皆例外なく個性因子によるものよ」

「へえー…!」

「まあ、その個性因子が俺は少し特殊で…。どの個性を使うかで個性因子の一部分だけが反応するようにできてるっぽいから、試してきて欲しいって言われてな…」

「特殊?」

「複合個性ってのと…一度個性を混ぜられた上に剥がされてるからな。多分そのせいだ」

「こ、個性を…?」

「あ、今のオフレコで」

 

八幡の言葉にピクリと反応したメリッサを制し、ふらりと逃げるように離れる八幡。

計測器を見るメリッサ。

個性因子の三つの数値は、どれも一般的平均値と比べても低いものだった。

首を傾げるメリッサ。

 

(彼の個性は間違いなく強い。けど、高校一年生にしては個性数値が少し低いわね。…アレでまだ、成長過程?個性が発現し切ってないということかしら)

「ど、どんなデータなんですか?」

「流石にこれを見ただけでは何とも言えないわ。パパが彼の何を知りたいのか…パパに渡してから、私もデータを見てみようかな」

 

八幡も計測器の数値を見ていたが、正直な話数値だけではさっぱりわからなかった。

だが、デヴィットの研究室で起きた会話が八幡の脳裏に浮かび上がる。

 

『…君の個性因子は特別だ。個性因子自体が四つの特色がある部分に分かれてる。これは個性そのものが混ざり合った証拠だよ。この結びつきからして、君のご両親の個性が混ざったというわけだ』

『まあ、合ってますよ』

『だが、一つの個性因子部分だけ明らかに新しい。樹木における年輪はわかるかい?個性因子にも似たようなものがある。いつ発現したか、なども個性因子を観察すればわかるんだ。だが、そのうちの一つだけ、明らかに個性因子の結びつきが新しいんだよ。恐らく、ここ二、三年のことだ』

『…』

『オール・フォー・ワンのことなら私も知っている。…君は、個性を奴に与えられたんだね?』

『ええ。そして、また奪われました』

『だが、君の個性因子にはまだそれが残っているように見える。意味がわかるかい?』

『…』

『もしかしたら、今後君の個性は──…』

 

 

「比企谷?」

「!」

 

沙希が八幡の顔を覗き込んでいた。

咄嗟に顔を引く八幡。

バランスを崩して倒れそうになる。

 

「…何やってんの」

「びびったんだよ、脅かすな…。で、なんだよ」

「みんな先行っちゃったよ。今からレセプションパーティだってさ。あんたも出るの?」

「ああ、アレか。…俺も、シールド博士に会わないといけないからな。面倒だが出る。お前はどうする」

「…じゃ、あんたの付き添いで行ってあげようかな。雪ノ下には由比ヶ浜がついてるし」

「…おう」

 

ホテルへ向かう二人。

正装に着替えて、レセプションパーティが行われるセントラルタワーへ向かうのだ。

いくら自らの個性について知るためとはいえ、パーティも正装も面倒だな、と溜息をつく八幡。

しかし、今夜においては更に溜息を吐きたくなる自体が起きるとは、彼は予想だにもしていなかった。

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