All for the sake of my promise and my immediate family.
But please, please.
I just want them to live.
比企谷八幡は考える。
何故、死柄木と黒霧は、全戦力を初めから投入しなかったのか?
単純に数の理を活かさなかった理由。
波状攻撃?
有効だろう。
敢えて余裕を持つことにより先に相手を疲労させる。
勝負の世界や戦争においては最も有利な戦術の一つではある。
だが、そんな戦術とかいう以前の問題があると、比企谷は黒霧が新たに喚んだ
恐らく、コイツらは。
「おいおい、脳無とかいうでけえのやられてんじゃねえか!?」
「俺らでオールマイト殺せってかよカハハハ!!」
「黒霧!」
やっぱり。
比企谷八幡もといコネクタは自分の考えを確信していた。
だからこそ、先に予防線を張っておかねば。
うまくいけば、
「このザコどもに俺の近くに寄らない様に言っとけ。相手はオールマイトだ、周りを気にする余裕は残念ながらない」
わざと強い言葉を使い、あからさまに俺つえーよアピールをする。
ヒーローたちはこれを受けて構えるだろう、それは当然だ。
そして、本来の味方ならば本人から距離を取るように立ち回るだろう、巻き込まれたくなんてないだろうから。
だが、新しく来た
「コネクタ、それは…!」
「おい、あいつ調子乗ってね?」
黒霧が声を挙げかけたが、遅い。
かかった、と心の奥底で笑う。
その空気は周囲に伝染し、何人かが更に目をギラつかせ始める。
比企谷に向かって威嚇し、前列の方の連中なんか殺意が滲み出ている。
何かあればすぐに彼へ攻撃を開始するだろう。
だが、比企谷は何かあればどころか、その何かすらも自らの手で起こす。
それこそが、彼の目的なのだから。
「何か言ったか、有象無象ども」
取るに足らない存在だ。
その声が発せられた途端に、
雄叫びというよりも、これは怒号だ。
コネクタとかいう全身を灰色で覆われた少年に向かって、口々に罵倒しながらそれぞれの武器となる個性を使う
そう、比企谷八幡が出した結論はこれである。
恐らく、予備戦力だった
このドームに来る時は笑いながらぶっ殺してやる、とか言ったり、彼らの最大戦力である脳無が倒れているのを見ても不安がる様子もなかったりする。
彼らには緊張感がない。雄英というヒーローの巣窟とも言えるようなか場所に来てるのに、気負ってすらない。
簡単に言えば状況が飲み込めていない。
だからこそ、コネクタの挑発に乗る。自分たちの敵は傍観させているヒーローだということをいとも容易く忘れたのだ。
コネクタは右足に力を入れる。
(…よし、繋がった)
次の瞬間、
その目を瞠り、下を強制的に見せられる。
身体がくの字に曲げさせられているのだ。
そこにあったのは、土の塊。
しかも、ただの土ではない。
地面からいくつも棒のような土塊が飛び出し、それぞれが拳の形をしている。
「なっ……んっ!」
一人が呻き声を出すと同時に、土に殴られるというとても奇妙な体験をした彼らは、そのまま後方へ吹き飛び、その意識を落とされた。
「…今のは正当防衛、だよな?」
確認するコネクタ。勿論、相手は死柄木と黒霧だ。
「おまえの相手はオールマイトだって言ってんだろうが!何勝手なことを…!」
「じゃあそこの兵隊たちを大人しくさせとけよ。無駄に戦力が減るぞ」
減らしたのはお前だろう!!
そう叫びたい死柄木だったが、止める。
これ以上事を荒げるような真似をすれば、もう兵隊たちは止まらなくなる。
地面が拳のように隆起して殴り始めるという光景によって、兵隊たちどころかヒーロー側も固まっている最中だ。
これ以上兵隊たちを刺激してコネクタと戦い始めてしまったら、そこをヒーローたちは一網打尽にしてくるだろう。
コネクタにとって、ヒーローに捕まるということは避けるべきではなく、寧ろ歓迎するところだ。
それだけは避けたい。
コネクタの個性はとても貴重で、使い所を選べばいくらでも敵を殺せる個性なのだ。
それを手放すような真似はしたくない。
「…兵隊のみなさん、敵はヒーローどもです。コネクタの傍には極力近づかないように」
「おい黒霧!」
「コネクタも兵隊たちを潰すような真似はやめてください」
「俺は正当防衛のつもりだったんだが」
あくまでもしらを切るコネクタに黒霧は頭を抱えそうになる。
コネクタは、ヒーローとの戦闘という、しかもオールマイトを殺すこの場において、どさくさに紛れてこちらを潰すつもりだ。
あるいは、ヒーロー側に加担する腹づもりか。
どちらにせよ、自分たちを快く思っていないのは事実だろう。
それも当然と言えば当然だが。
「…先生が見てるのです、わかっていますね?コネクタ。困るのは貴方ですよ」
「俺は俺のやるべきことをやっただけだ」
「はぁ…」
どうやら聞く気はないらしい。
困った男だ、本当に。
こんな状況でも、何も諦めていない。
ならば、せめてオールマイト以外と戦わせねば。
オールマイトと戦わせるとたとえ戦闘不能に追い込めたとしてもそこまでやらないだろう。
オールマイト以外のヒーローたちを抑えてくれればいい。
──────────
「何が…起きたの?」
「仲間割れか!?なんだあいつ!」
緑谷と切島の声をよそに、平塚静はある懸念をしていた。
それは最悪の想定。
土を操る個性………土だけならいい。
だが、もしあのコネクタと呼ばれた男が想定通りの男なら。
それは、彼が
それは───。
チラリと、横の雪ノ下雪乃と由比ヶ浜結衣、更にはオールマイトを見る。
三人が、いや、もしかつての彼を知る人たちが彼のことを知ったら。
もし本当に、彼が
それは、知らせたくはない。
まずは確認しなければ!
「どうやら土を操る個性のようだ!アイツとその他大勢の相手は私がする!オールマイト、あの黒い霧の男と手だらけ男の監視をお願いします!生徒たちは手を出すな!」
「私は納得できません、先生。私も戦います」
「襲いかかってきた場合のみ応戦しろ!それと、黒い霧の男をお前も見張るんだ、雪ノ下!」
「…」
黒霧を見やる雪ノ下と平塚。
それは、全ての元凶。
比企谷八幡と彼を取り巻く人々全ての運命を壊した張本人。
「逃したくはないだろう!?」
「ならば尚更あの男を抑える人手が必要な筈です」
「私が相手をしよう」
「オールマイト!?」
「オールマイト、だけど…!」
ザッと音を立てて一歩を踏み出すオールマイト。
何も心配はいらない、私がいる!
そんな顔を見せて微笑んだ彼に、平塚だけではなく緑谷も不安気な声をかける。
「大丈夫です、平塚先生。それに、私も奴には聞きたいことがある!」
眼が光る。
その両眼は、彼が平和のために象徴として目覚めたその日から、一度も潰えたことはない。
その両目は、いま、一種の怒りを湛えて黒霧に向けられていた。
「させねえけど」
「!?」
だが───。
その場の全員の意思に背くように、コネクタはオールマイトへ向かう。
眼を離したわけではなかった。
それは、
人の意識の隙間を縫うように接近し、自らの身体能力を個性で強める。
結果、オールマイトの三尺手前まで接近していた。
「バカが!!」
一歩で距離を詰めきろうとしたコネクタに、鉄拳を振るう平塚。
雪ノ下、爆豪までもコネクタへと各々の攻撃を仕掛ける。
「こちらの台詞ね」
「俺を無視して何オールマイトに…!」
突っかかってやがる!
その一言は、爆豪は言えなかった。
コネクタがオールマイトの一寸先の地面へと着地すると同時に、コネクタとオールマイトを持ち上げるように隆起する地面。
柱のように隆起した土は、二人を一瞬で数十メートル上空まで押し上げていく。
「…なんの真似だい?
「あんたの相手は俺だよ、オールマイト。下の連中は他に任せる」
急に二人だけの場を作られたオールマイトだったが、それだけ。
周囲を見ると足場が増えている。
どうやら土が地面から登って足場と成り続けているようだ。
「ここなら邪魔は入らない。もしかしたら下の柱を砕いて二人とも落とそうとかするかもしれないけどな。…でも、あんたらヒーローだもんな。そんなことは、しないよな…?」
「…一つ、質問があったのだが」
確かめるような問答をするコネクタ。
彼の意図は、こんな高さから落ちたらオールマイトはともかく俺は死ぬかもよ?だからしないよなそんなこと、っていうか下の連中にそう言ってマジで。といったところだったが、オールマイトはそれには返事はしない。
攻勢も見せず、ただ言葉を発した。
「…? 質問?」
「また一つ、訊くことが増えた。返答次第ではまだまだ増えそうだ」
その身は200kgを超えているオールマイトだが、質量を感じさせずにふわりと跳び、別の足場へと退がる。コネクタと一旦距離を取ったのだ。故に、コネクタは構えた。
相手はプロヒーロー。
それも、パワー1位、スピード1位、タフネス1位。
彼は一なる英雄、オールマイト。
オールマイトによって犯罪組織はほとんど解散、自壊し、
今や彼は平和の象徴とまで謳われる存在。
そんな男に、自分が挑む。
不謹慎ではあったが、試さずにはいられない。
コネクタは…いや、比企谷八幡は笑った。
心の中で、不幸にも自分と関わってしまった人々に謝りながら、笑った。
自分は、
人質を取られたとはいえ、
今も、
こんな状況でもヒーローとして、その力をオールマイトに見せ、試したかった。
「さあ…」
袖の長いコートから手を伸ばす、
「では、時間がないのでね」
一つ咳き込みながらも、その眼光を鋭く魅せるオールマイト。
「いくぞ」
「手短に済ませようか!」
大地が波を起こし、大気は震える。
No.1ヒーローvs.元ニューフェイス。
時代がひとつ、進む。
──────────
「おのれ…!」
歯軋りしながら上を見上げる平塚。
下から上へ登った一本の土柱。
それを追うように土柱がいくつも伸び、コネクタとオールマイトの足場を形成していく。
現状、オールマイトはあの乱入者と
しかも活動限界が近いというハンデ付き。
だが、こちらを見逃すこともできんと死柄木、黒霧、その他
特に手だらけ男と黒い靄の男はまずい。
イレイザーの惨状を確認していた平塚は、恐らく力任せに腕を折って顔すらも潰した者が脳無、皮膚と肉をボロボロにした者が死柄木であると当たりをつけていた。
黒霧に関しては脳無を収容しているのが見えた。
恐らくワープ、又は収納、或いはその両方。
侵入も靄の男の仕業だとわかっていた。
人手が足りない。
黒霧と死柄木を戦闘不能にする必要がある。
また、兵隊達も一人残らず。
更には、万が一を考慮して活動限界近くのオールマイトの救援、及びコネクタと呼ばれたフードの者を戦闘不能にしなければならない。
ほかのプロヒーローを待って耐え忍ぶという手も取れたが、時間にしておよそ五分。
その五分以内に、こちらはともかく分断されたオールマイトが心配だ。
普段の彼ならともかく、今は違う。
彼が負けるというよりも、彼の個性のことがバレる可能性が高い。
それは彼、オールマイトが負けることに繋がると、雄英高校教師陣共通の認識である。
自分一人で全員倒すか、オールマイトの活動時間を信じて耐え忍ぶか。
答えは───。
「…雪ノ下、由比ヶ浜!」
「はい」
「は、はい!」
「スクリームフィストが許可する。個性を使え!」
「!」
「え!?」
「お前たちが出来る最高の技を以って奴らを阻止するんだ!責任は私が取る!」
彼女は、プロとしての自分をあっさり捨てた。
雪ノ下雪乃はともかく、ほかの生徒はまだプロ資格どころか仮免すら持っていない。
つまり、個性を振るうことを許されていない。
その意味を瞬時に理解した雪ノ下は、すぐさま由比ヶ浜の方を向く。
由比ヶ浜の目にも、決意が浮かんでいた。
そうだ。
ここであの靄の男を捕まえられれば、そのままそれがヒッキーに繋がるかもしれないんだ!
「ほかの生徒は雪ノ下たちの防衛および取りこぼしを頼む」
「何言ってんすか!俺らも…!」
「男なら女を守れ愚か者!」
「うすっ!」
「ちょっ!?」
男なら〜という文言を使われて一瞬で納得する切島。
だが、そこに待ったをかける者がいた。
轟である。
「雪ノ下が出来るなら俺にも出来るのでは?平塚先生」
「雪ノ下と由比ヶ浜は将来チームを組むつもりだ。それを前提に技と連携を磨いている。もうそのまま練度が違う!今回は下がっていてくれ!爆豪、お前もだ!前に出るなよ!巻き込まれるかもしれんぞ!!」
巻き込まれる。
その言葉で脳裏に浮かんだ光景は、黒霧と13号に挟まれた状況。
我先にと飛び出した、あの時。
切島は勿論、爆豪もだった。
プロの邪魔をしたかったわけではないが、結果は出てしまった。
そのせいで今の状況があると言っても過言ではないのだ。
その拳を強く握りしめるも、構えるだけに終わる爆豪。
彼は勇猛で好戦的だが、馬鹿ではない。
「二人とも準備はいいか!」
「はい!」
「いつでもいけます!」
由比ヶ浜の手元には、雪ノ下が出した氷塊。
掌に収まるその氷塊は、よく見ると振動している。
どうやら、
氷の虎も由比ヶ浜を下ろして悠然に佇んでいる。
その眼は、肉食動物のそれの如く。
牙を見せ、笑っていた。
ヒーロー側の様子を見て、
スクリームフィストにとっては恐らく、オールマイトも生徒も守らねばならない対象だ。
オールマイトは今回の殺害対象であるし、生徒をそのままにしておけるわけもない。
そして、優先順位は生徒の方が上。
ならば、兵隊たちに生徒とスクリームフィストと戦わせ、その間に自分と黒霧はコネクタの加勢に行けば良い。
加勢と云うよりも、横槍。
コネクタなら確実に邪魔をしてくる。
オールマイトの様子を確認しつつ、オールマイトとコネクタの隙を突いてオールマイトを塵にすればいい。
殺せなくても腕一本塵にしてしまえば儲けものだ。
平和の象徴の戦力を削っておくのは、殺害の次に目指すこと。
しかし、現実はそう上手くいかない。
二人の少女が前に出たのは見ていた。
取るに足らないことだと、油断してしまった。
油断するなと口酸っぱく呼びかけていたのは、自分だったのに。
死柄木が次の瞬間見たのは、氷の波。
顔つきの、雄叫びをあげながら
「キシャアアアアアアアア!!」
「死柄木!!」
咄嗟にゲートを広げ、死柄木をゲートへ無理矢理潜らせる。黒霧もそのまま自分でゲートへ入り、氷の波から逃げ切る。
「キシャアアアアアアアア!!」
目と口がついた氷の波が襲ってくると云うあり得ないと何度言っても足りないくらいの光景に、
声を上げる間も無く氷の波に呑まれ、固まっていく
個性による攻撃なのはわかるが、何をしたら意思を持った氷の攻撃などが生まれるのか。
そして、それこそが由比ヶ浜結衣の個性だった。
「これくらいで十分ね?」
「うん、もう大丈夫だと思う」
最初の氷の玉に氷を継ぎ足していた雪ノ下は、供給を止める。
既に由比ヶ浜の手元にあった氷の玉は彼女の元を離れている。そう、氷の玉が成長して氷の波になったのだ。
『由比ヶ浜結衣!個性、アニミズム!
その手に触れた無生物を生物にすることが出来る!
同時に生物化できる数は5つまで!
また、その対象の質量により生物化にかかる時間は変動する!質量が多ければ多いほど、生物化には時間がかかる!
また、作られた生物はある程度損傷するか、一定時間経過するか、また由比ヶ浜の意思で元の無生物に戻る!』
彼女たちはアニミズムという個性を上手く使っただけにすぎない。
まずは雪ノ下が小さな氷の玉を作成。
由比ヶ浜はそれをアニミズムにより生物化。
そして、雪ノ下は生きた氷の玉に氷を足していく。
すると、不思議なことに生物としてそのまま成長していくのだ。
ちなみに損傷も同じ物質等で補えば直る。
それにより、雪ノ下や轟が放つただの氷波攻撃ではなく、自ら目を持ち、雪ノ下が指示、操作せずとも勝手に敵を追うオートチェイスが行える氷の波となる。
そして、単純に戦力が増える。
雪ノ下が操らずともひとりでに戦う氷の波が出来上がる。
恐らく、襲われた側としてはたまったものではないだろう。
事実、
「くそっ…!ありえないだろ、何だあの個性!」
「氷ですか…中々厳しいですね。何より、対抗できる個性がいない」
対策を練ろうとするも、残っているのは自分たち二人だけだろうと思う黒霧。
あの氷の波に加え、氷の虎、スクリームフィストも健在。
そして奇術を起こした生徒二人に、
せっかく連れてきた予備の戦力もコネクタに削られ、女子生徒二人に簡単に封殺された。
目的のオールマイトはコネクタに持っていかれ、しかもコネクタが殺してくれるとは思えない。
そして、この人。
「何人かは取りこぼすかと思ったが…。熟練している。誰一人も逃さんとはな」
「スクリームフィスト…!」
指を鳴らし、怒りの眼を向けてくる平塚。
彼女はまずい。
何がまずいというと、個性とその戦い方。
彼女と正攻法でやりあえば、負ける可能性が大いにあり、非常に戦いが長引くことは確実である。
そんな状況が続けば、すぐにプロヒーローが来る。
そうすれば、もう諦める他ない。
コネクタも回収しなければならないのだ。
それこそ捕まってしまうかもしれない。
一旦ワープで距離を取ってそのままオールマイトのところへ行くしかないか!?
そんなことを企んでコネクタの戦場を見上げる。だ
が、そこでまたもや目を見開くことになった。
なんと、戦場の足場が轟音とともに爆発を起こしたのだ。
「まさか!!」
バッと平塚も上を仰ぐ。
その目には、足場からの落下物が見えた。
それはそのまま粉塵とともに地面に落ち、その場の人間に衝撃を与えた。
物理的にも、心情的にも。
「オ…オールマイト!!?」
「ぬぅ…!」
落ちてきたのはオールマイト。
緑谷と平塚は、跪いたオールマイトから粉塵だけではなく蒸気が発せられるのを見た。
明らかに活動限界が近く、あと1分とないだろう。
さらにもう一人の人物がオールマイトの後ろに着地する。
コネクタだ。
「…余計なことを喋るな、オールマイト。あんたはヒーローだよ、確かにな。他人のことを気にするのも大事かもしれないけど、今は自分のことの方が大切なんじゃないか?」
「少年…!君は!」
「要らん世話だ」
「コネクタ!殺せ、今すぐオールマイトを殺せ!!」
咄嗟に叫んだ死柄木。
だが、その瞬間には目の前の平塚が消えていた。
同時に、駆け出そうとした生徒たちの横を一瞬で抜ける緑谷。
二人は左右からコネクタに迫っていた。
「絶対にやらせん!!」
「オールマイトぉ!!!」
対してコネクタは、平塚の方を向く。
その目は、的確に平塚を捉えていた。
そのことに気づいた平塚はゾクリと脅威を感じる。
自分の超スピードが見えていたのだ。
「面倒」
「ふざけるな!」
拳を刹那に四発放つ平塚。コネクタの後ろからSMASHを放つ緑谷。
「SMAAAA…‼︎?」
緑谷の下から、土が緑谷を襲う。
先程の
「うわぁ!!?」
あっという間に土に覆われ、動けなくなる緑谷。身体を動かそうにも、ガチガチに土が固まっている。
「なにこれ!!っ痛!!」
「緑谷少年!!」
勢いがなくなると、すぐに両足が痛みを訴えてきた。
オールマイトを助けようと全力でワン・フォー・オールを使ったのだ。
既に両足は骨折している。
更にコネクタは、平塚の連打を捌く。
超スピードで放ってきたパンチに対し、腕の側面を手のひらで押してパンチを逸らす。
受け流しの技術である。
「!!」
腕が無理なら脚だと、すぐさま薙ぐようなハイキックを放つ平塚。しかしそれすらもしゃがんで躱される。
コネクタはコネクタで、平塚に近づきたかったが、懐に入ろうとするとすぐさま迎撃されるだろう。
一瞬の膠着。
だが、それもすぐさま壊される。
「ぶっ殺す!」
緑谷の上を跳び越えてコネクタに襲いかかる爆豪。
その周囲には氷の玉がいくつも浮いている。
雪ノ下の仕業だ。
だが、コネクタは一切爆豪の方を向かずに土壁を用意して防御する。
予備動作なしで土壁が出てきたことに目を見張る爆豪だったが、関係ねえと壁ごと爆破。
更にコネクタに肉迫する。
だが、振り向くコネクタ。
振り向くと同時に爆豪に向かって正確に回し蹴りまで放っている。
しかし、それすらも防御する爆豪。
その反射神経の鋭さに舌を巻きながらも、コネクタは個性により強化された脚力で爆豪を横に蹴り飛ばす。
「クソが…!?」
数メートル吹き飛び地面に擦らさせられるもすぐに起き上がろうとする爆豪。だが、それはできなかった。
腕を上げようとすると、地面から腕にかけて土が纏わりついていたのだ。そのまま爆豪はズルズルと引き込まれ、地面に縫い付けられるような形で止められる。
「どうなってんだフード野郎!!」
コネクタはそのまま平塚との戦闘を続ける。
だが、決して殴り返さない。
コネクタが平塚に攻撃を加えてしまえば、平塚の有利になってしまうからだ。
コネクタは既に待ちの状態に入りかけていた。
やることは一応やった。
もう一人くらい細工を施したいがと、オールマイトに目を向ける。
まだオールマイトは自身に施された細工には気がついた様子はない。
急いで起き上がって由比ヶ浜と共に緑谷の拘束を解こうとしている。
ついでに、爆豪の救出に向かっているのは轟と切島だ。
四人とも今の自分では平塚の足手まといになると考えているのだろう。
「受けの技術は大したものだ。本来なら、受けと同時に隙を突いて相手に土で攻撃するのだろう」
連打を放ちながら唐突に喋り出す平塚。
彼女は直情型だが思慮深い。
比企谷であるコネクタはそのことを思い、訝しんだ。
何の真似だ?
オールマイトは話しかけてきたが。
「なぜ攻撃をしてこない?緑谷と爆豪も拘束されただけだ。オールマイトも膝をつかせただけで生きている。オールマイト殺しに来たんじゃないのか?」
息を一切乱さずに話す平塚。
平塚も本気で攻撃はしていなかった。
スピードに重きを置き、パワーは込めていなかったのだ。
気持ちも冷めているため、個性はあまり上手く働いていないだろう。
彼女の個性はそういうものだった。
「…」
コネクタは答えない。
本当は答えてしまいたかった。
オールマイトにもいくつか質問をされていたが、一切答えていない。
あの老害の監視の目がある以上、ヒーロー側に情報を渡すような真似をしてしまえばそれは裏切り行為だと言われるだろう。
それだけは避けたかった。
「平塚先生!」
一瞬止まった攻防に、雪ノ下が手を出して来る。
平塚の救援のためだ。
大きな氷塊を重ね、地面に這わせながらコネクタを凍らせようと波のように迫らせる。
だが、コネクタはまたも避ける。
今度は上空に跳びはねて。
馬鹿ね。
空中なら避けられないでしょうとそのまま氷塊を飛ばす雪ノ下。
だが、奇妙な現象が起きる。
何と、そのまま放物線を描いて着地するだろうと思われたコネクタが、強烈な風で扇がれた。
「え!?」
「なんだと!?」
しかも、驚きの声をあげたのはコネクタではなく、雪ノ下と平塚だ。
コネクタは風に扇がれ、そのまま空中を少し飛ぶ。
そして、雪ノ下の背後に着地した。
「しまっ…」
あまりにもピンポイントすぎて対応が遅れる雪ノ下と平塚。
動かなければと思ったその時には、コネクタの右手が雪ノ下の背中に添えられ、左手は雪ノ下の喉元へやられていた。
「動くな」
たった一言。
だが、そのせいで二人はおろか、ヒーロー側は誰も動けなくなってしまった。
「ゆきのん…!」
「くっ…!平塚先生、申し訳ありません…!」
「くそっ!雪ノ下を離せ、そいつは生徒だ!お前達には関係ないだろう!?」
正確には雪ノ下はプロヒーローだが、そんなことは口には出さない。
「…」
だが、何も答えないコネクタ。
同時に、比企谷八幡は個性の使用を開始。
雪ノ下のコスチュームに細工を始める。
対して、死柄木は笑みを浮かべる。
コネクタに不意打ちは通じない。
個性の関係上、不意打ちなんてものが一切通じない技を使えるのだ。
そのコネクタが人質を取った。
それと引き換えにオールマイトを殺せばいい!
「わかるだろうオールマイト!そこの女を死なせたくなければそのまま動くなよ!黒霧、ワープゲートでオールマイトの身体を引きちぎれ!」
「そうですね、それが手っ取り早そうです」
死柄木が個性を使うために近づけば何をされるかわからない。
故に、念には念を入れて遠距離から安全に殺す。
「…わかった。動かないから、私が死んだ後には雪ノ下くんを離してくれ」
「そんな!オールマイト!」
隣で緑谷と由比ヶ浜が悲痛な顔を浮かべる。
だが、オールマイトは意に介さない。
彼は今、自らの命をあっさりと捨てた。
だが、それは雪ノ下もであった。
「…やらせない」
「?」
「オールマイトは死なせないわ!」
自らはどうなってもいいと、全身から冷気を発生させる!
「なっ!!」
「よせぇ!雪ノ下ぁ!!!」
「やめて──────!!!」
オールマイト、平塚、由比ヶ浜が叫ぶ。
その時、雪ノ下は見た。振り向いた先の、コネクタの口元を。
彼は、怒っていた。
膨大な氷が雪ノ下の周辺に発生する。
コネクタは、氷によって吹き飛ばされていた。雪ノ下には一切手を出さずに。
「なんだと!?」
また風に煽られるも、体勢を立て直し、死柄木の隣へ着地するコネクタ。
そのコネクタに非難の目を向ける死柄木。
「おいコネクタ!なぜさっきの女を殺さない!オールマイトの目の前で生徒を死なせる意味がわかるだろう!」
「そんなこと言ってる場合じゃない。逃げるぞ」
「! 死柄木!」
黒霧がワープゲートを広げようとするも、遅かった。
銃弾がそれぞれ4つずつ、死柄木たち三人へと到達する。
死柄木は両腕両足に銃弾を受ける。
黒霧は身体を燻らせ回避。
コネクタはそもそも事前に避けていた。
そのことに、ゲート付近から銃撃を放ったプロヒーロー、スナイプは警戒する。
彼の個性はホーミング。
遠距離からでも急所を狙える強力な個性だ。
だが、それを避けるとは。
「もう…来たのか!?」
「逃げますよ、死柄木、コネクタ!」
「足止めしてやろうか?」
「ふざけたことを言わないでください、逃げるんです!」
顔は真顔だが、声色は明らかに面白がっているコネクタ。
再度繰り返すが、彼にとって捕まることは寧ろ歓迎すべきことだ。
不可抗力だった仕方がなかったとでも言うだろう。
捕まれば、彼にとっての人質である彼の妹、比企谷小町は自然とコネクタのそばにいるようになる。
つまり、その気になればコネクタの手で小町を守れることになるのだ。
それは、コネクタが死柄木や黒霧の元から完全に離れることを意味する。
それだけは避けなければ!
スナイプは続けざまに銃撃する。
同時に、ダウンから起き上がった13号が黒霧に向かってブラックホールを発動。
黒霧は死柄木と、それから無理矢理コネクタの手を掴んでワープゲートに入る。
「次は殺すぞ、平和の象徴」
死柄木が呪詛を投げかける中、コネクタは雪ノ下を見つめていた。
雪ノ下もまた、コネクタを見続けていた。
お互いに何故だと、視線で告げた───。
今話で一区切りつきます。
第一章と銘打ってますが、第一章あと10話以上続きます。
第一章が終われば、この物語のタイトルの意味が見えてくると思いますので、お付き合いください。