Will this bring about a reunion that was longed for?
Or is it a battle cry for the next battle?
Episode6.見え始めた展望
被害状況の報告を受け、負傷者数を聞く塚内。
思ったよりも少ないその数に、ヒーローたちの奮戦並びにその卵たちの必死の抵抗を想像する。
負傷者はヒーロー三名。
生徒の中にも一名重傷者が出ているが、命に別状はなく、その怪我も自らの個性の暴発によるもの。
問題は、ヒーロー三名のうちの一人、イレイザーヘッド=相澤消太は見るからに重傷だ。
顔部・右手・背面と、数々の傷病者を見てきた塚内から見ても酷い。
また、被害状況とは別に、
電気・通信系の個性で雄英高校の通信系統を麻痺させ、そこにワープの個性の持ち主が大多数の
そこまではわかる、というより癪だが合理的とは言えるだろう、動機は理解できないが。
その侵入者が特筆すべきことになる。
まず、改造人間。
脳無と呼ばれていたようだが、明らかに普通の人間ではない。
異形型とも違い、個性を複数持つ。
口がきけず、更には恐らくだが自意識がない。
剥き出しの脳に、黒人とは違う色の悍ましく黒い肌。
他にも死柄木、黒霧、ジャックと呼ばれる男がそれぞれ先導役、移動役、通信妨害役として居たが、その三人は単なる個性を振るう
塚内が着目したのは最後の一人、コネクタと呼ばれた者。
ただの
だが、まず悪意があまりなかった、という報告を生徒、オールマイトから受けた。
あとやる気もなさそうだった、とも。
無気力な
大体、今や世の中に飽きてぶっ壊そうと思った、のような戯言を吐く。
だが、何も壊そうとしない無気力な
疑問なのが、何故そんな人物がオールマイトを殺すなどと宣う
「そう、問題はそこだねやはり」
「オールマイト、それより訊きたいんだけど‥負けかけたって?」
「さすが僕の親友!訊かれたくないことをズバッと訊くね!?」
「早く答えてね、他にも仕事あるから」
ぐさり、とNo.1の矜持にナイフを刺しこむ塚内、致命傷に倒れるオールマイト、なんて珍しいオールマイトの伏せ姿だ、と興奮する出久。
ツッコミがいないね、とリカバリーガール。
「‥マッスルフォームの活動限界が近かったこともあるが‥正直に言おう。あの即席の戦舞台が崩れなければ、私は負けていた」
「そ、そんな!?いくらなんでも、オールマイトが‥!」
「
ショックを受ける出久に、オールマイトが現実を諭す。
「恐らくかなり特殊な個性だ。多分、遠隔操作系で汎用性が類を見ないくらい高い。ベストジーニストのような糸の個性が更に自然物に使えるんだろう」
「し、自然物‥ですか?ていうと、USJの土に‥」
「私と戦った時は空気を使っていたよ。開幕ノーモーションで大量の空気を上から叩きつけられた。まるで深海の水圧だよ。一対一の状況でパワー勝負で負けるっていう割とショッキングな事態に陥ってるのさ!察してくれ」
HAHAHA、と笑うオールマイトだが、出久や塚内の冷や汗は止まらない。
ヒーローオタクの出久、警察経験の長い塚内だが、オールマイト以上の怪力などヒーロー
そのオールマイトを力尽くで抑えつけられる
尋常勝負では誰でも勝ち目がないのと変わらない。
「ま‥次は勝つけどね!」
一瞬だけマッスルフォームに戻ってニカッと白い歯と共に笑うオールマイト。
そして吐血して筋肉が萎むまでがワンセットだ。
「お、オールマイト!」
「無茶してんじゃないよ良い歳して!」
「す、すみませんリカバリーガール‥‥。‥それに、彼には聞きたいことがある」
スーツの下に着ていたXXXLサイズのランニングシャツに目を向ける。
その様子に不思議に思う出久だったが、塚内の声に意識を向ける。
「コネクタによる被害はなし。強いて言えば
「
「でも、やっぱり不思議です。そんなことが出来るなら、何故それを僕達にやらなかったんでしょうか?あの
「距離や体積に制限があるのか、それともその気がなかったのか‥」
「後者だね。やらない理由も特にないし‥。彼に直接個性を使われたのは私と緑谷くん、それに爆豪くんだが‥三人とも彼による怪我はなし。爆豪くんは蹴りを喰らってたけどそれによる怪我もなしだ。彼は人を傷つけたいわけじゃないんだろう」
「そうすると、何故彼が
「うん」
人を傷つけない
出久の脳裏に思い出されるのはある動画投稿サイトを少し賑わせている派手な紳士。
だが、それとは明らかに風貌と雰囲気が違う。
それも、今はわからないとしか言いようがない。
まずは自分のことから、リカバリーガールの治癒を受けなければならないと少し辟易する出久だった。
──────────
「ゆきのん、どこも何ともないんだよね!?」
「大丈夫よ。だから少し離れてちょうだい」
「背中と喉見てあげるね!」
「いえ、だから違和感も何もないから」
「脱がすね!」
「‥もういいわ」
「あ、諦めた」
警察からの事情聴取が終わり、更衣室に向かったA組女子一同。
男子達も終わり次第A組教室に戻されていた。
すぐに制服に着替えようとしていた彼女達だったが、結衣が雪乃からまるで離れようとしない。
一時的に
反論しようにも「また、無茶して‥!」と泣かれたので反論にもならなかった雪乃である。
「でも、雪ノ下さん。何であんなこと‥」
「誰だってそうするわ。ヒーローを志している者ならば。あの状況、オールマイトと社会の今後を考えれば‥誰だって」
「いや、すごい即決だったよね‥うちにできるかなアレ」
「そうだよー!わたし、あんなにヤバいって思ったの久しぶりだよー!」
「みんなは、やらないよ」
結衣の言葉に皆が注目する。
結衣は雪乃の背中を撫でつつ、目を細めて言葉を続ける。
「みんなはやらない。そうできない。ゆきのんが言ってるみんなは‥きっと、ヒッキーのことだよね」
「‥」
「習わなくて良いの、ゆきのん。ただ、今度ヒッキーがそんなことしそうになったら、引っ叩いて止めるか、一緒にやるかだよ」
「‥‥そうね。でも、まずは彼を引っ張り出す必要があるわね」
「うん!」
もーいつまで出てこないつもりなんだろうねー、と結衣。
体良くサボってるだけよどうせ、と雪乃。
耳郎響香や芦戸三奈が首を傾げる中、沙希は溜息を吐き、かおりは比企谷みたいでウケるーとカラカラ笑う。
「そういえば、もうすぐ体育祭だね。雄英体育祭」
「そうですわね‥。けれど、
「体育祭‥!」
「‥お茶子ちゃん?目が熱くなってるわよ」
「目が熱い!?‥ほんとだ、燃えてる‥」
「雪ノ下、いるかー?」
ガラリと更衣室のドアが開き、ヒーロースクリームフィスト・平塚静が顔を出す。
ギョッとした顔で振り向く女子一同。
「先生、ノックをしてください。中学の頃から何も変わりませんね、その気遣いのなさが女性としての魅力を著しく下げてるんです」
「ぐはっ!!!‥‥‥すみませんでした」
「あれ?知り合いなの?」
「中学の頃、私たちのせんせーだったの!」
吐血しながら後ろ手でドアを閉める静。
流石に雪乃の言葉の刃が効いたようだ。
「それで、何か御用ですか?」
「‥おほん。明日、雄英は臨時休校の予定だが‥今回の
「承ります」
「うむ。よろしく頼む。詳細は後ほど伝えよう‥ではな」
足取りがふらついてる静が更衣室から退室する。
結婚したい、と定番のように呟きながら出る姿を見て、こうはなるまいと誓う女子一同。
例えヒーローになろうが、結婚はしたい。
静は良い反面教師だ、女子としての。
「‥ヒーローとして?」
「ゆきのんはプロ資格を持ってるから、多分それだよね?」
「そうね」
「え!?」
「どゆこと!?」
「そのままの意味よ。中学3年生の冬頃、プロヒーローの資格を取ったわ」
更衣室に驚愕の声が響き渡る。
その姦しさに耳を塞ぎつつ、雪乃は黒霧とあの
かおりが黒霧に対して比企谷八幡のことを尋ねた時、黒霧は何か知ってるような口をきいたらしい。
やはり、2年前に奉仕部の三人が出くわしたあの
(何より、比企谷くんのことを知っている)
絶対に逃さない。
どんな手を使ってでもこの手に捕らえ、比企谷八幡を取り戻す。
その為にヒーロー資格を3年も前倒しして取ったのだから。
改めて決意しながら、自らのコスチュームを丁寧に畳む。
すると、あることに気がつく雪乃。
コスチュームの背中の内側の糸がほつれていた。
おかしい、まだ新品のはずだ。
中学生の頃使用していたコスチュームとは別に新調したコスチュームであり、まだ新しい。
糸がほつれてしまった以上、とりあえず糸を切る必要があると、糸の根元を探す。
すると、コスチュームに妙な窪みができていることに気がつく。
細い線が幾つもコスチュームに走り、まるで文字となっているような。
「‥‥か?」
これは「か」だろうか?
次は‥横文字だとすると「な」なのか。
そうすると、次は‥。
「!!」
すぐに気がつく。
これは、メッセージだ。
誰からの?
決まっている。
「‥ひき、がや‥‥くん‥」
『かならずもどる』
何という簡潔な文。
もっと何かあるでしょう、と顔を抑える雪乃。
ダメだ。
今はこの手を離せない。
その手から、涙がこぼれ落ちないように。
何故?
いつ?
どうやって?
そんな疑問が浮かんでは消える。
今はそんなことどうだって良い。
彼が、求めて止まない彼が生きている。
今はただ、それだけで。
恐らく気づかれないところを少しずつ変えています。