なにもかも思い通りにならないチェンソーマン   作:ドルデダバ

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ミッション3 誤魔化せ

「それで?」

「………対魔特異4科は謎の虫の報せにより襲撃を対処。無傷とは言えませんが全員生存。新人隊員の活躍により今回の襲撃の首謀者、沢渡アカネ、及び日本刀の悪魔と合体した○○組の若頭を確保」

「……どういうこと?」

「……私にもわかりません」

 

 

 

 

「すごいよねぇ、たった1人でボスを2人もやっちゃうんだもん」

「んまぁ民間でぶいぶい言わせてた俺にかかりゃああんなチンピラ2人なんてちょちょいのちょいっすよぉ~」

 

 あれから数日後、出勤すると廊下で姫野先輩と会った。

 ことの顛末は当日も伝えたはずだったのだが、正直皆ピンと来ている感じがしなかった。俺の口からは真実を語ることができるはずもなく、「急に虫の報せが入り銃で襲撃される気がした、男の懐から銃が見えたので先制攻撃をしたら運よく気絶してくれた」なんてふざけた説明しかできなかったしな。

 

「…でも不思議だよね、女の方、契約してた悪魔に殺されたって言うじゃん」

「そうっすね、俺も残念です、もっとちゃんと聞きたかったんですけど」

「シラタミくんって尋問もできるの?」

「まさか、ジェントルマンに接してやれば自ずと口は開くんですよ」

 

 公安の職員の死亡率はあまりにも高い、おそらくこの国で最も死亡率の高い職業はここで間違いないだろう。というのも、民間で対処しきれなかった悪魔は公安に流されてくるからだ。

 だがそれにも関わらず職員同士の関係は粗方良い方で、何故だか陰鬱とした雰囲気はしない。皆こんな仕事をしている内に心が摩耗してしまっているのだろうか。

 

「…おい、シラターミ…奴がくるぞ…打合せ通りにしろーよ」

「…」

 

 俺の脳内に自由の悪魔の声が響く。

 わかっている。これから向かう先にはあの支配の悪魔が待っているのだ。

 

「…ん、あれ…マキマさんだ、ロッカールームの前にいるなんて不思議だね」

「そうですね、もしかして誰か待ってるのかも」

 

 男子更衣室の前でマキマさんが1人立っていた。

 此方を見つけると表情を変えないまま軽く片手を此方に振ってくる。俺はにこやかな笑みを浮かべながら手を振り返した。

 

「あら、もしかしてシラタミくんを待っててくれてた感じ?」

「この雰囲気だとそうですね」

「うひー、もしかして何かご褒美くれるかもしれないよ!」

「だといいっすねぇ、自分、期待しちゃっていいっすかね?」

「もうこのドスケベ!」

 

 姫野先輩は俺の肩を思い切り叩くとそのまま女子更衣室へと入っていった。

 マキマさんは此方にゆっくりと近づいてくると、「職場にはもうなれたみたいだね」と一言呟いた。俺はそれに対して「おかげさまで、やっぱり美人が多いおかげですかね」と返答する。

 

「シラタミ君、この前の一件のことで聞きたいことがあるんだ、ちょっとそこの部屋にきてもらえる?」

「始末書で詳細に書いたつもりなんですが、何か不備がございましたか?」

「君の口から直接聞きたいんだよ」

 

 上司からそこまで言われて逆らえるはずもない。俺は大人しく彼女の後ろをついていき、部屋の中へと入っていった。

 小さな机と椅子がそれぞれ2つずつ置かれた簡素な室内に、昔学生の頃に受けた面接を思い出し嫌な気分になる。

 

「それじゃあ、改めて…あの日のことを最初から教えてくれるかな?」

 

 マキマは椅子に腰を下ろしながら問いかけてくる。

 俺は自由の悪魔と契約していることによりこの女からの支配を弾くことができる。しかし、それが奴に知られれば俺はおそらくここにいられなくなるだろう。最悪奴の傀儡に囲まれボコボコにされて殺される。

 支配の悪魔は自分より下と見なした存在を支配することができる。とどのつまり俺は、自力で奴から()()()()()()()()()()と思われなければいけないのだ。自由の悪魔と相談した結果、俺はとある方法でこの問題を打破することにした。

 

「んー…いや、ですね」

「ん?」

 

 俺は机の上に腰を下ろすと懐から一枚のコインを取り出した。

 

「書類で報告したことをまた口で言うのってめんどくないですか?それとも俺ってもしかして…信用されてない?」

「シラタミくん」

「そこで!マキマさんに1つ提案があるんすけど、俺と勝負しません?」

 

 俺は彼女にコインの表と裏をしっかりと見せると、指先でピンッ、とコインの端を弾き空中で回転させそのまま手の甲へと乗せ、その直後にもう片方の掌でコインを上から覆うように隠した。

 

「マキマさんが勝ったら満足するまで懇切丁寧にこの前のことを話します。負けたら俺は…そうだな、昼飯でも奢ってもらいましょうか」

 

 マキマは基本的に人間を見下している。

 俺からふっかけられた勝負には乗らないわけがない。彼女はほんの数秒そのまんまるな目で此方をジッと見つめてから一言だけ「裏」と言った。

 俺が掌を退かすとコインは表を向いていた。

 

「おぉっし、俺のかち~」

「…仕方がないね、あとでランチを奢るよ」

「へへッ、やりぃ」

 

 俺はさっさと部屋を出ると額に滲む汗を軽くハンカチで拭きとりつつ男子更衣室の中へと入っていった。

 するといつの間にか俺の隣にきていた自由の悪魔が俺の肩をぽんぽん叩きながら此方を見つめてくる。

 

「…一先ーずは成功、だな」

「ああ」

 

 マキマには定期的に此方から勝負をしかける。それはどんな勝負でもいい、ジャンケンでも、カードゲームでも、手押し相撲だって構わない。

 問題はそこで必ず勝利することだ。仮にそれがどんな小さな勝負だろうと、俺が勝っている内はマキマは俺を下にみることはできない。

 

「しかーし2分の1とは言え肝が冷えたーな」

「…あぁ?」

「さっきのコインの勝負だよ、おまーえ、負けてたかもしれないんだぞー?」

 

 俺は小さな鼻を鳴らして笑うと、逆に自由の悪魔の肩をぽんぽん撫でる。

 

「俺はギャンブルはしねぇんだよ」

 

 

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