三文小説家「書き始めたら半日もたたずに完成しちゃったのが一つ。あと、私の脳の性能と今後の展開的に時系列戻したかった」
ミュオソティス達は『アルファオメガ』と呼ばれていた。A~Zまでの
能力名は《The Xenophobia》。あらゆる条件を無視して対象を処刑するという概念系に近い能力である。裏切り者を処刑するための能力であり、もはや対象は味方ではなく外来の者という意味を持たせられた名前。彼女達は戦場の暗い狂気そのものなのだ。
「とは言っても、私の権限で即死攻撃は封じているがね」
「あの、すみません。普通の人間は大鎌で斬られた時点で死にます」
現場に向かう途中、リンはいつの間にか軍服のような服装に着替えていたミュオソティスにツッコミを入れた。即死攻撃とか言う、ロールプレイングゲームかインフレしまくったバトル漫画でしか聞かない言葉が飛び出したが、リンからすれば刃物で切られた時点で良くて重症、普通に死ねるレベルである。
なお、後にリンがリコに対してこの即死攻撃の事を伝えたら、彼女は「即死攻撃ね。ふーん、へー、ほー…………は!?」と、面白い反応をしていた。
「ハッハッハ、君は防御魔法も覚えているんだろう? だったら死ぬ事は無いよ」
「そういう問題ではない」
リンのツッコミを飄々と受け流すミュオソティスに与えられた能力は《The Administrator》。B以下の部下の能力の把握と統制である。詳細は省くが、アイヴィーとヘデラの能力を封じたのはこの能力によるものらしい。
「とりあえず、君は私達に防御魔法をかけ続けてくれ。その代わり、彼女等の攻撃は君には向かわせないと約束しよう。それに、万一発動されても心配ないよ。即死攻撃といっても、弱点が無いわけじゃない」
「はあ……ついてきたのは僕ですし、これ以上は文句言いませんよ。あと、アヤメさんの影がシレっと分離して新たな生命体が生まれてる事についてもツッコまないからね!」
リンの言う通り、アヤメの影が本人から分離し、自律して動くばかりか、アヤメとは全く違う姿かたちの人物となって動いていた。
「とりあえず名前だけ紹介しておきます。彼女の名前はヴィローサ。調律文字は《The Variable》です」
「《変数》ね。また小難しい説明が付くんだろうなあ……」
『いや、そうでもないよ』
「うわ!? 僕がもう一人!?」
「これがヴィローサの能力です」
「そういう感じか……」
リンは天に向かってぼやいた。こんなのが後23体もいるのか。名前と能力を覚えるだけでも大変である。リンが如何に天才であろうとも、億劫になるという事自体はあるのだ。なお、彼が後にポケモン達の技や特性を覚える際にこの経験が大いに生きる事となるのだが、それはまだ先の話。
ヴィローサがリンに化けた理由は防御魔法《リフ・ウラヌス》の回転効率を上げるためである。相手はそんなに連続攻撃を多用してくるのか……と、リンはやや戦々恐々とした気持ちになった。
そして、四人は現場に到着。なお、Weyer String-IIIは他の隊員の調整があるとかで参加していない。
狂った笑顔で相対するのは、大鎌を持った小柄な少女達。それぞれ黒と白のフードを被っており、そのシルエットは死神を思い起こさせる。
「……来い」
ミュオソティスの声を皮切りに、アイヴィーとヘデラが攻撃を開始した。移動速度は正に電光石火。ポケモンに喩えたら、デフォルトで《しんそく》が発動しているようなものである。当然、視認などできない。《リフ・ウラヌス》が受けられる攻撃は五回。その全てが一瞬にして壊された。
「『《リフ・ウラヌス》!』」
僅か1秒で剥がされたバリアを再び張り直すリンとヴィローサ。毎秒バリアを張り直さないといけないのか? と、戦慄するリンであったが、五回の攻撃で相手の行動パターン(アヤメ曰く『旋律』)を掴んだのか、バリアに頼らずとも二人は各々の武器で攻撃を防いでいた。
「強いな……訓練を怠ってはいなかったようだ」
手に持つ拳銃で大鎌の攻撃をいなし、反撃とばかりに撃ち返すミュオソティスは部下の成長を喜ぶような声で話しかけた。三発撃って、三発とも回避されたが、彼女は顔を顰める事は無い。下段攻撃を跳躍で回避しながら真下のアイヴィーに向けて銃撃する。アイヴィーはなんとか回避するが、頬に銃弾が掠った。
一方でアヤメの方も負けてはいない。右に左に上に下にと振り回される大鎌を全て剣で弾いている。
「生憎と、太刀筋は見切っています。知らない仲でもありませんからね……」
アヤメは飛剣を飛ばし、ヘデラの行動を誘導しながら剣で攻撃してゆく。アヤメの刺突攻撃をヘデラは躱し、大鎌を振り下ろそうとするが、アヤメはもう片方の手に出現させた剣でその攻撃を受ける。そしてそのまま二刀流で戦い出した。
「すげえな……」
リンは思わず呟いた。アヤメもミュオソティスも、常人には視認できない速度の攻撃を捌いている。無論、《リフ・ウラヌス》を張り直す事があるのは変わらないのだが、その頻度も減っていった。
と、その時、
「みーつけた!」
ヘデラの攻撃がリンに向かった。バリアの発生源を辿り、展開しているのがリンだと気が付いたのだろう。あわやその凶刃がリンに振り下ろされるかと思われた時、
「危ない危ない……」
リンとアヤメの位置は入れ替わっていた。声の主はミュオソティスであり、どうやら彼女が位置を入れ替えたらしい。《The Administrator》の中には味方の位置を入れ替える権能も含まれているようだ。
「少々おいたが過ぎますね」
アヤメはヘデラを蹴飛ばしながらそう言った。見ればアヤメの腕には細かい傷が幾つもあり、バリアを更新し続けて、剣で弾いていても傷を負う攻撃であることが分かる。《The Administrator》で抑えられていたとしても、アイヴィーとヘデラは処刑者なのだ。
リンは意を決して話しかけた。
「アヤメさん」
「何でしょう?」
「相手の攻撃は強い。正直このままじゃジリ貧だ」
「ええ。こちらの体力が尽きる前に鎮圧したいところですが……」
蹴り飛ばされたヘデラは既に起き上がっている。腕から血を流しながら剣を構えるアヤメの目は、最悪破壊すらも実行する決意が見て取れた。
「……僕が囮になる。だから、ミュオソティスさんの権能で上手い具合に入れ替えてください。二人より三人の方が相手を惑わせられる」
「……それは助かるが、いいのか?」
「その覚悟も無しにこんなところまで来ませんよ」
正直、これは賭けに近い。リンはアヤメやミュオソティスと違い、身体能力は一般人だ。アイヴィーとヘデラの凶刃が迫れば、痛みを感じる間もなく真っ二つだろう。だが、アヤメとミュオソティスならば自分を守ってくれるという信頼がリンにはあった。そして、リンに化けているヴィローサも作戦への参加を示す。
「なら、やるぞ」
「ええ」
アイヴィーとヘデラは再び襲い掛かって来る。リンとヴィローサを目掛けて振り下ろされた大鎌は入れ替わったアヤメとミュオソティスによって防がれる。そのままそれぞれの攻防が続くが、
「スイッチ!」
今度はアヤメとミュオソティスが入れ替わり、急な攻撃パターンの変更にアイヴィーとヘデラは僅かにテンポを崩す。
更に、
「やあ」
一瞬だけリンとヴィローサが目の前に現れ、攻撃が当たる直前でアヤメとミュオソティスに入れ替わり、今度は大幅にテンポを崩し、アヤメとミュオソティスの攻撃がクリーンヒットする。
「あは? 生意気な裏切り者だねー」
「裏……切……」
一瞬だけアイヴィーの様子が変わるが、直ぐに元に戻ってしまう。だが、その一瞬の隙にミュオソティスは二人の処刑者の背後に四人を移動させる。二人が振り返ってみれば、三人目のフードがいた。
「流石に戸惑うか。三人目がいたらね!」
アイヴィーとヘデラは雷の矢と拳銃に背後から攻撃される。それはこの闘いの終幕を意味する物だった。
「流石はリンさんです。咄嗟にあんな作戦を思いつくだなんて」
「はは……火事場パワーって奴かな……ミュオソティスさんの能力が優れていたおかげさ……」
今起こった現象を簡単に説明しよう。
まず、四人はアイヴィーとヘデラの背後にミュオソティスの能力で移動した。そして、二人が振り向くその瞬間に
「後は……あのバカ二人を連れ帰って修理するかね。アイリスもな」
「大丈夫ですよ。自分で直せますから」
『逞しいねえ』
「リン少年も休んでくれ。巻き込んでしまって済まない」
最後の最後でアヤメに呼ばれて手を貸したポチに、アヤメはもたれかかって休憩する。腕を治したアヤメに手を引かれ、リンも一緒に
時間にすれば5分も無いが、紛れもなく死闘であった。今だけは、森の木漏れ日に身を任せるとしよう。
最初から激闘でしたね。スピード感という意味では、この作品でも一二を争うバトルだったと思います。
>ミュオソティス
転移前のライジング・ボルテッカーズ枠にあたる組織の長。能力は《The Administrator》。構成員の能力を統制する他、味方と敵を入れ替えたり位置を調整する力もある。そのほか、指揮官向きの能力が多数。リン君の指揮官としての師匠になるかもしれない。
>アイヴィー、ヘデラ
二人の人格面についての詳細は次回に語るが、能力は《The Xenophobia》。高速で動き回る他、制限こそあるが対象を即死させる力を持つ処刑用の能力。
>ヴィローサ
エコーズ、ポチに続く、アヤメの最後の契約精霊。彼女の影から作り出されている。能力は《The Variable》。任意の人物に化ける事が出来る。