「ノイズとは異なる、高出量エネルギーを検知!」
「まさかこれって、アウフヴァッヘン波形!?」
__GUNGNIR__
「ガングニールだとッ!?」
(そんな、だって、それは奏の……!)
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ」
すっかり日が沈んで周囲が暗がりに呑まれてからも、私はまだ女の子を連れて逃げまわってた。
今はよくわからない施設の屋上に身を潜めて上がった息を少しでも整えようとしているところだ。
「はぁ、やっと止まってくれた。もう響ったら、見通しの悪いとこばっかり通るんだもん。見失わないように追いかけるの大変だったんだから」
さすがに体力の限界だった。数日はまともに食べていないのにものすごく吐きそうになったし今も口の中は血の味でいっぱいで足にも力が入らない。しばらくはまともに動けないだろう。むしろよく足手まといがいる状態でここまで逃げ延びれたものだと自分でも思う。
願わくば、このままノイズが消えていなくなるまで隠れてやり過ごしてたい。ノイズが現れてからどれくらい経ったのかは分からないけど、少なくとも空の色がすっかり変わるくらいには経ってるんだ。そろそろ消えたっておかしくないはずだ。
「お、おねえちゃん……」
「うん?ああノイズか。もう見つかっちゃったね、これって地味にピンチなんじゃない?でも響ならこの程度のピンチなんて平気へっちゃらだよね」
そんなことを考えていたからだろうか、どうやらそううまくはいかないらしい。縋りついてくる女の子の視線を追えばノイズ。しかも私の見間違いじゃなければだんだんと増えてるように見える。どう見たってたった2人を追い詰めるには十分が過ぎる数だ。
どうする?どうすれば生き残れる?いっそのことこの子を見捨てるか?いや、今更見捨てたところで遅すぎるし、そもそも私も一歩も動けないほど消耗しているんだ。死ぬのが少し早いか遅いかの違いでしかないだろう。
「だとしてもッ!みくからもらったこの命がッ!燃え尽きて果てるまでッ!生きるのを諦めるわけにはいかない!」
「
「ちゃんと装者として覚醒したね。もしかしたらこのまま死んじゃうんじゃないかとヒヤヒヤしたけど一安心だよ」
ナニカが私の身体を作り替えていく。熱くて、痛くて、苦しくて。それがようやく収まったとき、なぜかピッチピチのボディスーツみたいな恰好をしていた。
「へ、なにこれ!?どうなってんの!?」
まったくもって意味がわからずこんな状況だと言うのに素っ頓狂な声をあげてしまう。
何が何だかわからないけれど、似た格好を確かに見たことある。2年前にあの会場で、ツヴァイウィングがノイズと戦ってた格好と。
であるならば、もしかしたらこの状況を打開できるかもしれない。一か八かの賭けになるけど少なくとも何もしないで殺されるよりはマシだ。
女の子を抱えて後方に跳ぶ。あんまり力が入らなかったにも関わらず結構な距離を開くことができた。どうやら身体能力がかなり強化されているらしい。間違えて女の子をひねり潰さないように力加減に気をつけないといけないだろう。
とはいえ消耗した体力まではさすがに回復しないみたいだ。となると身体能力にものを言わせて振り切るのは厳しいか。この子を守りながら戦うのは無理だし、そもそも本当に戦えるのかわからないのにわざわざこの身で試す気はない。
結局はさっきまでと変わらない、命がけの鬼ごっこしかない。
しかもこのカッコになってからノイズの動きが明らかに変わった、さっきまではどこか緩慢としていたのに今はそれがない。まるで戦闘のスイッチが入ったかのようだ。
突進してきたノイズの攻撃をギリギリでかわし、囲いに来た奴らの頭上を飛び越えて建物の壁にしがみつきぶら下がる。
これで少しは時間を稼げるなんて思っていたけど、今までいったいどこに隠れていたのか、めちゃくちゃ大きいノイズが現れた。
「いやいやそれは反則でしょ……ッ!」
大きいノイズの攻撃を手を放すことで避けるけど下には当然ノイズの群れ、咄嗟に壁を蹴って無理やりに落下地点をずらす。
こんなんじゃいつまでも持たない。いつか必ず捉えられてしまう。それに今みたいな機動はこの子には相当にキツかったみたいで青い顔している、あまり無茶な動きはできない。
「思ったより苦戦してるね?このくらいなら大丈夫だと思ったんだけどさすがに消耗しすぎてたか。ちょっとだけ数減らしてあげようかな?」
ふと、場違いなエンジン音が近づいてくる。
「Imyuteus amenohabakiri tron」
「翼さん来たなら私がどうこうする必要はないか。せいぜい頑張って、私を愉しませてよね」
ノイズを蹴散らしながら突き進んできたバイクがすぐそばを通り過ぎる、その一瞬だけライダーと視線が交差する。あれは、あの人は間違いない、ツヴァイウィングの片割れ、風鳴翼さんだ。
バイクから跳びおりた風鳴さんがノイズと戦い始めた。私があれだけ苦しめられたノイズが風鳴さんの剣の下にいともたやすく次々と倒されていく。そして最後には大きいやつをもたった一撃で仕留めてみせた。時間にして大体1分だろうか、あっという間の出来事だった。
なんだかあまりにあっけなさ過ぎて拍子抜けしてしまう。兎にも角にももうノイズはいないから面倒なことになる前にさっさとずらかってしまおう。この力のことは風鳴さんならわかるだろうけど、情報と引き換えになにをされるか分かったものじゃないんだ。風鳴さんには2度も助けてもらったとはいえ、それは信用できる理由にはならない。
「いい?これからはあのお姉ちゃんが守ってくれるから、あのお姉ちゃんの言うことちゃんと聞くんだよ?」
「おねえちゃんは……?わたし、おねえちゃんがいい……」
「ごめんね、お姉ちゃんはもう一緒にいられないんだ。いい子だから、わかってくれるよね?」
「ひぐっ、うん……。わかった……」
よし、これでこの子を押し付けられる。風鳴さんが血も涙もない鬼じゃなければこんなところにさっきまで死の恐怖と戦っていたこの子ひとりを置いていくなんてできないはずだ。そうでなくてはすごく困る。あまりにはやく決着したからまだ全然回復してないんだ。追いかけられたらすぐに捕まってしまう。
「じゃ、元気でね」
「窮地を救ってやったんだ、退散する前に礼のひとつくらいあってもいいと思うが?」
カチャリ、と背後から喉元に刃を突き付けられてしまう。チッ、逃げ遅れたか。
「それもそうですね、すみません。危ないところを救っていただいてありがとうございました。それではこれで失礼します」
「そう急くな、せっかくの縁なんだ、茶でもどうだ?奢るぞ」
「ありがたい申し出ですが、生憎予定がありますので」
「そうか、残念だ。あまり手荒な真似はしたくなかったのだがな」
ピリピリとした空気が漂う。まさに一触即発、緊張がじりじりと高まっていく。そして……
意外な人物がその緊張を破った。
「かっこいいおねえちゃんにひどいことしないで……!こわいおねえちゃん!」
「こ、こわいっ!?」
「あはははははは!怖いお姉ちゃんだって!翼さんすごいショック受けてるし、いきなりこんなのが観れるなんてこれはこの先も愉しくなりそうだよ!」
女の子が風鳴さんの腰にしがみついて必死に止めようとしてくれてる。小さく震えながら、それでも私のために。なんて、いい子なんだろう。それに比べてわたしは……。
とにかく今が好機だ。翼さんに背を向けて一目散に逃げる。
「あ!?ちょ、待て!」
当然待てと言われて待つわけがない。腰にしがみつかれたままの風鳴さんを尻目に闇夜に身を沈めた。
前回投稿しました『閑話:歪んだ鏡に映るのは 後編』ですが、ラストシーンを大幅に加筆修正いたしました。
すべては投稿した翌日に天啓が下りたのが原因です。
そのせいでこの一週間は夜しか眠れませんでした。
今後はこのようなことがあまり無いように努めます。
救いは
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いる
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いらない
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どっちでもいい
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