天井知らずに盛り上がるライブ会場に突如として爆音が鳴り響き、ステージ全体が煙で覆い隠された。ざわざわと、誰も何が起きたのか分からずに動揺が広がっていく。そして煙が晴れたとき、そこには無数のノイズが姿があった。
誰かの叫び声を皮切りに一瞬で会場全体がパニックへと陥り、みんなが我先にと逃げ出そうとする。そんな中で私は、突然の事態に呆然として逃げ出すことができないでいた。
なのに、ノイズが現れただけでもいっぱいいっぱいだっていうのにさらに衝撃の事態が起こった。
なんとツヴァイウィングのふたりが一瞬でピッチピチのボディスーツみたいな姿に変わって、それぞれ剣と槍をもってノイズと戦い始めた。
驚いて思わず2人に注視していると、突然衝撃に襲われて倒れ伏す。それが隣にいたみくに突き飛ばされたからだって気づくのに数秒、後ろを振りかえろうとしたところで床の崩壊に巻き込まれて下に落ちてしまう。
「ったぁ⋯⋯ッ、みくは!?」
痛みをこらえて立ち上がり急いで辺りを見回す。みくの姿が見当たらない、上を見上げるとちょうど目の前に
「ぁ……」
最悪の想像が脳裏をよぎる。それがただの想像であってほしくて、否定してほしくて、必死にみくの名を呼ぶ。
「ひび……き……」
返ってきたのは消え入りそうな小さな声。返事があったことには安堵したけど、その声にまた不安を掻き立てられる。
「ひびき……わ、たし……もう…………だからっ……」
「 呪 っ て あ げ る 」
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「みくっ!!!」
今のは、あの日の……。久しぶりに夢に見たな……。
炎と悲鳴が渦巻くライブ会場、蠢くノイズと逃げ惑う人たち。炭と崩れる誰かの躯体。幾度となく見る悪夢、私の罪の記憶。
家出してからはほとんど固い地面で寝てたから夢を見るほど寝れることがなかったのに。
そういえば、さっきから地面に転がってるにしては柔らかいし温かい。一体どういうこと?
うすらと目を開ける。そこはどこかの一室で、私は布団に寝かされているらしかった。
慌てて起き上がり身体に異常がないかを調べる。最悪の想像が頭を過ぎるが、以外にも着てる服が違うこと以外はナニかされた形跡は特になかったのでひとまずは良しとしておく。
でも一体どうしてこんなところにいるんだろう?昨日はたしか、ノイズと追いかけっこした後に風鳴さんから逃げ出して、それで適当な路地裏に身を潜めて………………、
ダメだ、そこから先の記憶がない。たぶんそこで限界を迎えたんだろうな。それでそのあと誰かにここに連れてこられた。昨日はいろいろ起こりすぎたとはいえ、連れ去られて服も着替えさせられてるのに起きないなんて、自分の鈍感さがイヤになる。
「おや、気が付いたかい」
「ッ!?」
声のしたほうを見る、部屋の入り口に50代くらいの女性が立っていた。手には私が着ていた服を持っている。
「ああ、悪いとは思ったけど服は洗濯せてもらったよ。随分と汚れていたみたいだからね」
その言葉に思わず顔が熱くなるのを感じる。私だって一応は年頃の乙女なんだよ。
「まずは名前を教えてもらってもいいかい?」
「………………響」
「響ちゃんか、いい名前だね。さて、響ちゃんはどうしてあんなところに倒れてたのか、おばちゃんに聞かせてもらってもいいかい?」
「……」
「………………、そうだ響ちゃん。お腹空いてないかい?ちょっと待っててね。すぐに持ってくるから」
私が話す気がないのを察したのか、部屋から出て行った。ご飯を持ってくるって言ってたけどあの人を信用することなんてできない。さっさと着替えて逃げ出してしまおう。
私の服を手に取り着替える。ふわりと包む柔軟剤の香りが胸の奥をチクリと刺した。
部屋を出ようとしたところでちょうど鉢合わせた。手にはお盆と湯気がたつ器。早すぎる、まだ5分くらいしか経ってないはずなのに。
「もう動けるのかい?それならコレ食べてお風呂に入っちゃいなさい」
ずいと差し出される器にはシンプルなおかゆが入ってた。真ん中にちょこんと梅干が添えてあって美味しそう。
ぐぅ〜っとお腹の虫が盛大に鳴いてしまう。断ろうと思ってたのに断りづらくなってしまった。
もう一度差し出される、もはや受け取るしかなさそうだ。おとなしく布団に戻って食べ始める。
「……美味しい」
おかゆは見た目通り味付けもシンプルで美味しかった。梅干の酸味もいいアクセントになってて自然と手が進み、気が付いたら完食していた。
「ぁ……」
思えばこんな温かい、ちゃんとした料理を食べるのはいつ以来だろう、家出する前から随分長いこと温かい食事なんてものはなかった。
目頭が熱くなるのを頑張って堪える。この人は温かいからきっと親身になって心配してくれると思う。だからこそ、涙は見せたくなかった。
「あの……、ぉかゆ、ありがとうございました。これ以上迷惑はかけれないので、失礼します」
「失礼するって、どこか行くあてはあるのかい?」
「それは……」
適当にあると答えればよかったのに、言葉に詰まってしまい何も言えない。その沈黙が答えだった。
「ねえ響ちゃん、おばちゃん『フラワー』っていうお好み焼き屋をやってるんだけど、あてがないならしばらくウチで働いてみないかい?住み込み3食付きで日当5000。もちろん響ちゃんさえよければだけど」
思ってもみなかった提案だ、確かにお金ももうなくてどこかで稼ぐ必要はあった。だけど……
「ありがたい話ですけど、私がいると迷惑に……」
「迷惑になるかどうかなんて響ちゃんが考えることじゃないよ、それはあたしが判断することさ。そういう面倒なのは全部取っ払って、響ちゃんはどうしたい?」
私、は――――――――――
ドイツ語っていちいちカッコよくて厨二心をくすぐられます
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