ボロボロの日記と記憶の話   作:ガイナ


原作:あるけみすと
タグ:オリ主
ボロボロの日記と旅立ちの記録

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ボロボロの日記と記憶の話

【ずいぶん昔のことだからだろうか、あるいは心を打つような出来事だったからか

どれだけ思い出そうとしても、自分も、家族も、風景も、何もかもが灰色で、何もかもに霞がかかったようだ

古い、古い記憶

確か物心ついた頃、世界の全てに興味があって、父や母にあれこれ質問をしては困らせていた頃

 

私は、母方の祖父母の墓参りに行った

子供だった私には、墓はずいぶん大きく見えた

母によると、祖父母は流行病で亡くなったらしい

祖父は優しく陽気で、とても力強い人だった、祖母は寡黙で、とても知的な人だった、そんなことを聞かされたと覚えている

そんな事を聞いたからだろうか、私はひとつ、疑問を抱いたのだ

祖母の祖母はどんな人だったのだろうか

優しい人だったのか、厳しい人だったのか

力強い人だったのか、知的な人だったのか

 

母は、知らないと答えた

父にも質問した、父方の祖父母にも質問した

近所の人に、店の常連に質問した

誰も、知らないと答えた

 

今となっては当然だと思う、昔の自分は馬鹿だったとすら思う

そりゃそうだ、会った事もない人の事を、しかも子供にわかるように答えるなど、とてもじゃないが難しい、納得できるような答えを渡すなんてできっこない

特に近所の人には申し訳ない、いきなりあんな質問をしてしまって、たぶん凄い困ったと思う

でも、まぁ、気になってしまったから仕方ないのだ、うん

 

それはそうとして、当時の私はそんな答えを聞いて、空恐ろしくなったのだった

確かに存在したのに、誰に聞いても「知らない」と答えられたせいか、まるで何処にもそんな人が存在していないような、そんな感覚に襲われた…のだと思う】

 

すらすらと走らせているペンをぴたりと止める

「う〜ん…やっぱりよく思い出せないな」

ひとつ呟いて、くるりとペンを回してみて、もう一度ペンを走らせる

 

【これから始まる私の旅を記録するなら、最初のページには旅の動機と目的を記すべきだと思ったのだが、いかんせんハッキリとしたことを思い出せない】

 

「にしても…さすがにやりすぎたよねぇ…」

 

【旅に出たいと両親の説得を試みたものの、まぁ全否定である

『物騒な世界だし、かわいい娘が一人旅など許可できない』

『そもそもパン屋はどうするんだ、常連さんもいっぱい居るのに』

『君が旅をするなら、僕も一緒に連れていってくれ、君と離れるなど僕にとっては死も同然だ』

 

いや、言い分はわかるんだよ、確かにその通りではあるんだよ、つーか呼んでもないのに何で許嫁居るんだよ

まぁ確かにさ、記憶に残る残らないなんて死んだ後のことだし、いくら名を残したっていずれ消えてしまうだろう

そもそも、記憶に残るって何するんだとか、私の子供や、そのまた子供に私のことを伝えていけば良いじゃんとか

でも、そういうことじゃない…と思うんだよ

たとえば、朝ごはんはオシャレにカフェに行こう!ってなって、メニューを見たらフレンチトーストがあって

『あぁ、そういえば、フレンチトースト好きな奴がいたなぁ』

みたいなことを思って欲しいんだよ

そのあとが『誰だっけなぁ、思い出せない』でも『たしかガイナだっけな』でもどっちでもいい、そのあと抱いた感情が喜怒哀楽のどれでもいい

その人の日常の、ほんのひとかけらに私は存在していたい…のだ、たぶん

あとこの世界100年1000年軽く生きる種族もわりと居るし、記憶が消えていく問題もなんとかなるだろう

 

………いや、白状しよう、正直殴った時はここまで考えていなかった

うるせ〜〜〜!旅に行かせろ〜〜〜!程度しか考えてなかった

でもまぁしゃーないのだ、日頃の鬱憤とかのアレだ

だって厳しいんだもんパン屋修行、その日の湿度や気温から仕込みを変えるとか本当にわからん、私にはパン屋のセンスがない

あと許嫁、正直顔がタイプじゃない、あと性格も趣味も色々好きじゃなかった

何より私は、追われる恋より追う恋がしたいのだ

そんなこんなでぶん殴って正面突破した、行く手を阻んできた常連のおじさんもノリで殴った

パン屋は、許嫁くんが継ぐだろう、アイツ何故か私と同じ修行してたし、私よりパン作るの上手かったし…マジでなんなんだよアイツは】

 

「さて、どうするかなぁ」

 

【前途洋々、一寸先は闇 

天気晴朗ナレドモ波高シ

これよくわかってなかったりする

そろそろ集中が切れてきたらしい、衝動的に落書きみたいなのを書いてしまった

最初はかっちりした文章にしようと思ったのだが、やはり素を出した方が書きやすいらしい

 

記憶に残るだとかの前に、まずは生き残るのが先だ、とりあえず近くの街を巡りながら日銭の稼ぎ方を学ぶことにする

これにて旅立ちの物語は終わりとする、無事1日が終わったなら次のページに書き込むことになるだろう

初めて日記を書くので終わり方がわからない、こういうのってそのうちフォーマットが決まるものなのだろうか?】

 

「…まぁ、これで終わりでいいかな」

「よし…ここからだ」

「やってみよう、どこまで飛べるかはわからないけど、羽が千切れて落ちるかもしれないけど」

「倒れるときは前のめりなんて、かっこいいこと言えないけど」

 

「私が選んだ道だ」


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