麗しの世捨てロリババア生活を邪魔する奴は全員殺す(涙目)   作:がぱおら

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奴隷少女の回想シーン

ロッカはスラム育ちの少女である。

両親の顔も知らずに、孤児仲間達とリカラ公都で育った。

決して楽な暮らしではなかったが、仲間達と支えあって生きてきた。

 

数ヶ月前に、幼馴染のカイツが「治験」とやらに行って、たくさんのお金を貰ってきた。

 

 

「すごいね、チケンって。アタシもチケンしたいな」

 

「……やめとけ。滅茶苦茶痛いから」

 

「ええっ!? そんなことしてきたの!? 駄目だよカイツ、もうチケンは禁止!」

 

「うわ、わ、ロッカわかったよっ! 暑いからくっつくな!」

 

 

スラム孤児達は、ふたつだけ「自分達のルール」を定めていた。

 

───無茶をしない。

───無茶をした奴を助けない。

 

理不尽な出来事で、誰かが犠牲にならなければいけない時は、ある。

その時、勇気を出した仲間の心意気を無駄にしてはいけない。

そういった理由から定められた、掟というヤツである。

 

掟に乗っ取れば、カイツの「滅茶苦茶痛い」は、無用の無茶だった。

 

 

「お金いっぱい持ってきて偉いけど、ルール違反はルール違反だからね! ご飯抜きでトイレ掃除!」

 

「へいへい……」

 

 

この時、ロッカはカイツの変化に気づいていなかった。

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

気づけたのは、ほんの三週間前。

 

皆が寝静まった深夜に、ロッカは物音で目を覚ました。

起き上がって、カイツが抜け出したのを、たまたま見かけた。

 

 

「……散歩かな」

 

 

まだ屋根すら持てずに寝ていた頃、目が冴えた時は皆でスラムを歩き回ったものだ。

懐かしくなったロッカは、こっそりカイツの後を追いかけた。

 

 

 

その先で、カイツが誰かと戦っている場面を見てしまったのだ。

 

カイツは黒く染まった身体で殴りかかり、敵は黒い剣で迎え撃っていた。

敵の体格は明らかに大人で、カイツとの戦力差は歴然なのに、実力は拮抗して見えた。

 

 

(……何を……何をしてるの、カイツ!?)

 

 

ロッカが見守る中、カイツの貫手が敵の首を貫いた。

敵の剣が、カイツの身体に吸い込まれるようにして消え、カイツの黒い身体が元に戻った。

 

ようやくロッカは飛び出した。

 

 

「カイツ!! 今のは何が起きてたの!?」

 

「ッ!! ろ、ロッカ……これは」

 

 

カイツは狼狽えているが、ロッカは気に留めない。

 

 

「まさか孤児狩り!?」

 

「ち、違う! コイツは俺の敵で、それだけだよ……」

 

 

カイツはちらりと死体を見やる。

 

 

「敵? 何したのカイツ。盗みで下手打った? そもそもソイツは誰なの?」

 

「名前はわからない、でも敵なんだ」

 

「……黒い剣が、カイツの身体に吸い込まれていったのは?」

 

「……! そこも見られてたのか……」

 

 

カイツは観念して、事情を説明してくれた。

 

「治験」の時、心臓に刃物を埋め込まれた。

邪剣、という武器の破片らしいそれの力で、カイツの身体は黒く染まって、凄いパワーを発揮できる。

「収束と精錬」のスキルで、他の邪剣の特殊なエネルギーを吸収し、硬くして身に纏える……とのこと。

カイツも感覚的な理解に留まっているらしく、それ以上の説明はできなかった。

 

そして、「邪剣所持者は導かれ、争う運命にある」らしい。

 

 

「なんでそんなことになっちゃったの!? 心臓弄られる前に逃げなさいよ!」

 

「本当にごめん! でも、お金あったからゾンとベルの風邪も治せたし、それに今までの襲撃はロッカ達に気づかれる前に倒せてたし……」

 

「カイツ、あんたねぇ〜……」

 

 

ロッカはしばらく唸っていたが、意を決して告げた。

 

 

「もぉ〜っ! いいわよ、アタシ達引っ越すから!」

 

「えっ」

 

「え、じゃない〜! ゾンはまだ病み上がり! カイツのポカで、この先ジャケンの戦いに巻き込まれたらどうするの!?」

 

「そ、それは……そうならないように、強くなるから!」

 

「人質にされたら!? 今のアタシみたいに、戦闘中に偶然紛れ込んだら!?」

 

「……」

 

「敵の正体もわからないんでしょう!? 官憲だったらどーすんの! 偉い商人の関係者だったら!?」

 

「……」

 

 

カイツという少年は、昔から「やればなんとかなる」という精神で生きてきた。

ロッカ達も救われた事の多い考え方だが、今回ばかりはロッカにとって恨めしい性格だった。

 

 

「……まあ、カイツがそういう性格なのは仕方ないわ」

 

「……ごめん」

 

「過ぎたことよ。とりあえず、カイツの身の回りにいると物騒だって事だけみんなに明かして、住処を変えてもらわないと……」

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

翌日は早朝から慌ただしかった。

いろいろとカイツの金の世話になった以上、誰もカイツを責めはしなかったが、カイツを見る視線は呆れが強いものだった。

「無茶をした奴を助けない」という掟に則って、誰もが自分達の引っ越し準備に集中していた。

 

引っ越しと言っても、緊急時用として目星を着けておいたスラムや地下水道に移り住むだけである。

もともとモノをあまり持たない者が多かったので、引っ越しそのものは三日もかからず終わった。

 

ロッカを含めた数人の仲間は、カイツと共に残った。

 

 

「な、なんで……」

 

「いきなり住処が空になったら怪しいでしょ? 官憲に変な疑われ方されたら、アタシ達だけじゃなくてスラムの皆が困っちゃう」

 

「あ、そっか。なるほど……」

 

「アタシ達は少しづつ他所に移るけど、カイツもひとりで生きていけるように頑張って」

 

「……ごめん」

 

「本当は情もあるから、サポートとかしてやりたいけど……掟を破ったら、アタシ達はバラバラになっちゃうから。こっちこそごめんね、カイツ」

 

 

その後も、カイツは邪剣所持者達と数度戦った。

ロッカ達は徐々に別所へ移り住む予定だった。

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

一週間前、白昼堂々現れた邪剣所持者によって、カイツは敗北した。

 

 

「ぐ、く……そ……、俺は……!」

 

「たまたま破片に縁があった程度で、調子に乗り過ぎたな」

 

 

筋骨隆々とした冒険者の男は、黒い大剣を担ぎ、倒れ伏すカイツを見下ろしていた。

 

ロッカ達は、冒険者の仲間に捕まり、傷だらけのカイツをハラハラと見守っている。

 

  

「カイツ! しっかりして! カイツ!」

 

「く……っそおぉぉぉおお!!」

 

 

カイツは最後の力を振り絞り、バネのように跳ね起き、冒険者へ殴りかかった。

 

 

「学習しねぇガキだ」

 

 

冒険者は黒い大剣の腹で、カイツの拳を防いだ。

 

 

「"跳弾と囮"……」

 

 

大剣の闇に波紋が広がり──次の瞬間、カイツは弾き飛ばされていた。

 

 

「ぐああーっ!?」

 

 

壁に激突し、カイツはぐったりと動かなくなった。

 

 

「う……ぐ……」

 

「カイツ! カイツーッ!」

 

「カイツ、ね……じゃ、俺も改めて名乗っとくか」

 

 

冒険者の男は、大剣を鞘に納め、起き上がらないカイツに背を向ける。

 

 

「俺は"跳弾と囮"のゲール。ま……お前らはこれから奴隷になるんで、二度と会うことはないだろうがな。野郎共、ベルコットの屋敷に帰るぞ!」

 

 

こうしてロッカ達は奴隷となった。

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

今、ロッカはベッドに腰掛けていた。

眼前には、でっぷりと太った、絵に描いたような悪人……屋敷の主人、大商人ベルコット。

 

 

「ぐふふふ……乞食のガキを狩るのはこれだから辞められん。しばしば上玉が眠っておるからな……」

 

 

言葉と表情も性根同様、言い訳不能の悪人であった。

 

ロッカは薄いヒラヒラした布を被せられ、これから自身に起こるであろう展開を想像し、絶望していた。

 

 

(……もっとイケメンの遺伝子が欲しかったなぁ……)

 

「ぐふふふ……さぁて、まずはどこの口から確かめてくれようか────」

 

 

その瞬間、部屋の壁が爆発した。

 

 

「ぐふぉお!?」

 

「きゃあっ!?」

 

「貴様ァァァ!!」

 

 

立ち込める煙を突っ切って現れた、ローブ姿の人間。フードがずり落ちているが、気がついていないようだ。

 

同性のロッカから見ても、美しい少女であった。

可愛らしく、愛でたくなるような可憐さ。ロッカより身長が低い。さながら童話の妖精だ。

少女は、一目見てわかる程、キレていた。

 

 

「ロリにはもっと可愛い服着せろ逃げ腰ロリコン!!」

 

 

ロッカにはよくわからないキレ方だった。

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