麗しの世捨てロリババア生活を邪魔する奴は全員殺す(涙目) 作:がぱおら
私は激怒していた。
一般幼女の初体験は素敵なものでなくてはならない。
好きなお洋服を着て、好きな人と過ごすべきなのだ。
こんなご主人様の趣味丸出しなスケスケスケベールは、もっと抵抗力を持った強いロリに着せなくてはいけない代物だろうが!
強くないロリへの無理強いは解釈違い!
それは単なる弱いモノイジメ!!
目の前の豚は、そこを履き違えた、私とは性癖を異にするロリコンであった。
「な、何者だ!」
「貴様とは永遠にわかりあえない!!」
私は豚を"時間停止"で止めた。
この魔法、どう改良しても獣にだけは効かなかったんだよね。多分時間感覚の有無が原因なんだと思う。
使う機会が全然無いからいいんだけどね。
私は、ベッドの上で震えるロリに近づく。
「ひっ」
ロリはガチガチに怯えていた。
……あれー? ひょっとして、自分も"時間停止"されるかもって思ってる?
寿命へのダメージそれなりにあるから、ロリには使わないよ。安心して。
「にっこり」
私は笑顔を浮かべた。
ロリスマイルなら緊張も解けるさ。
「……あ、あなたは、誰ですか」
まだ怯えてる気はするけど、コミュニケーションは取れた。
「ロッカで合ってる?」
「えっ、アタシの名前……はいロッカです!」
「好きな色」
「……い、色……ですか……? なんで急に……」
「無いならピンクでいい?」
私は"転移"で、自宅のクローゼットからピンクのドレスを呼び出した。
「服が、突然!? いえ、その、え?」
「今の薄布のほうが好き?」
「いやそういうわけでは……」
「着方はわかる?」
なるたけ脱いだり着たりが楽な物を"転移"させたつもりだけど。
「……もうちょっとシンプルで、白い服をお願いします」
「なるほど、白ワンピ! わかってるね!」
素晴らしい趣味の幼女だ。
私は純白のワンピースと麦わら帽子を"転移"させた。
「それを着てる間、ちょっと作業するから」
「え、は、はい」
私は豚野郎に向き直った。
"刃"の魔法で不可視のメスを手に持ち、豚野郎の胸部を掻っ捌く。
目当ては心臓。
"時間停止"中だから、血が出たりはしない。
"転移"で引っこ抜くのは、"時間停止"と同時使用したことがないので、思わぬ被害を恐れて今回は見送った。
心臓をくり抜くと、ショタ奴隷の邪剣心臓と一緒に、ベッドの上に置いた。
目視と"鑑定"で確認しつつ、豚野郎の心臓をショタ奴隷用に改造していく。
成人した裕福な男性の心臓を、子供用に作り変えるのは、なかなか大変な作業だ。
だが、これはやらなければならない。
だって、ショタに復讐されたら困るもん。
死んでも復讐はできるって前世のWeb小説各位が教えてくれた。
「げぼおぉぉ……」
なんか誰かが嘔吐した音がする。
あっ。
「ご、ごめんね! モザイクかけるね!」
この場には一般幼女がいたのだ。
突然グロテスクな所業を見せつけられたら、吐くに決まってる。
失態だ。
ロッカちゃんに"幻覚"を使って、正気度を保護してやらねば。
────────────────────
私にロリコンパワーで敗北した哀れな豚野郎の死体をどうしようか。
屋敷の人間の大半は邪剣と無関係だから、屋敷を更地にするのは虐殺判定になるだろう。女神との約束は守らないとね。
かといって、ホムンクルスの材料は間に合ってるし。
無難に、ベッドに寝かしておくか。
縫合とか面倒でしてないから、"時間停止"が解けるとベッドが血塗れになるけど、ロリが見て吐かなければ別にヨシ。
私は青褪めた白ワンピロッカちゃんを伴い、廊下に出た。
廊下には、手当たり次第"入眠"で無力化してきた屋敷の人間達が、ぐーすか眠っていた。
「……あの、あな、あなたは、何者なんですか?」
ロッカちゃんが、私の背後で震えている。
「うーん……」
うーん、なんだよね……。
名乗るような名前は無いし、森の賢者を名乗って森に突撃されたくもない。
記憶消すからって、無計画に名乗るのはよろしくない。
何故ならば、私の敵は異能力剣豪バトルの住人なのだ。
真相意識から記憶を掘り起こしてくるような奴がいるかもしれないし、魔法無効化で記憶を復活させる奴もいるかもしれん。
私は異世界スローライフの住人なのだ。バトルファンタジー向けの突破口を用意する義理は無い。
「……忘れた」
ここはテンプレート・オブ・テンプレート、記憶喪失作戦で行こう。
「わ、忘れた……?」
ロッカちゃんの不気味なモノを見る目が辛い。
違うんだよー、私はもっと可愛いモノを見る目で見られたいんだよー。
「地下の奴隷に、ロッカちゃんの救出を頼まれた。代表者に心臓を返しに行く。着いてくる?」
「奴隷に……カイツ達に!? それに、心臓を返す、って……」
「喉渇いた? 足元気をつけてね」
私は極めて自然な仕草で簡易不老不死薬をロッカちゃんに渡し、牢屋へ向かった。
====================
「大商人ベルコットが、自室で心臓を抉られ死亡!?」
王子ディッツはリカラ商公国に到着し、賢者の動向を調べ始めたのだが、真っ先に得られたニュースは別のものだった。
「確かに悪い噂はあったらしいが、何故急に……暗殺にしては、他の大商人も寝耳に水といった様子だ」
「ベルコットの死の時、屋敷中の人間が眠っていたらしい。死んだのは商品保管庫の見張りと、ベルコットの二名……」
聖騎士副団長シャリアドネの補足に、ディッツは更に考え込んだ。
ディッツはベルコットとは、直接の面識は無い。
女商人マキルダが話題に上げたのを、数回聞いた程度だ。
故に、宰相の推理に則ると、ベルコットの死はディッツとは──賢者とは関係ないスキャンダルだ。
(……本当に無関係なのか?)
賢者が動き出し、ディッツの周辺で不審な死が目立ち始めた。
「前触れの無い死」、という一点で、アレストレウシス帝と大商人ベルコットの死は繋がっているのでは……?
ディッツの推理を聞いて、魔導学園生徒会長フォウエンも考えを述べる。
「二人の死の関連性は邪推かもしれないけれど、センセーショナルな事件でリカラが浮足立ってるのは事実よ。何かが起こる前触れかもしれない……マキルダさんと早急に合流しましょう」
「屋台で買い食いする暇は無さそう?」
幼馴染テルナの言葉に、ディッツは苦笑した。
「そうだな、残念ながら。マキルダと合流したら、集ってやれ」
「ディッツのケチ、ケチ王子」
「これも残念ながら、俺は漁師なんだ」
その時、轟音が鳴り響き、地面が揺れた。
「!? じ、地震か?」
「違うわディッツ、ギルドの方角を見て!」
ディッツが言葉に従うと、冒険者ギルドのある区画から、煙が立ち昇っていた。
「くそっ、何が起きているんだ!? テルナ、シャリアドネ! マキルダと合流を急いでくれ! フォウエンは俺とギルドに! 集合場所は西門!」
「わ、わかった!」
「了解! 無茶はするな!」
冒険者ギルドへ急行し、扉を蹴破り入ったディッツとフォウエンの目に飛び込んで来たのは。
「え、王子様? 何でここに?」
粉砕された大剣と、その側に血塗れで倒れ伏す筋骨隆々の男。
無傷で床にへたり込む、白いワンピースの幼女。
そして、ローブ姿の賢者であった。