麗しの世捨てロリババア生活を邪魔する奴は全員殺す(涙目)   作:がぱおら

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暫定手綱係

ロッカの眼前で、カイツの心臓が治った。

……ロッカには以前との違いなんてわからなかったが、記憶喪失の凄い人が「治した」と言っているから、治ったんだろう。

 

 

「これで晴れて健康児だね。力を奪ったとか言って復讐しないでね」

 

「え、い、いや、ありがとう……ふ、復讐なんてしないよ、うん。する理由がない……ありません」

 

 

カイツは記憶喪失さん相手に、邪剣を心臓に埋め込まれた経緯を語った。

 

 

「かくかくしかじか……」

 

「そりゃあ、また……面倒な……はぁ~。駄賃をやるから、治験を受けた場所まで案内して」

 

 

記憶喪失さんが手を軽く動かしただけで、カイツを繋いでいた鎖が切断された。

 

他の仲間達はそのままだ。記憶喪失さんは全く気にもせず、立ち去ろうとしている。

 

 

「ち、ちょっと待って!」

 

「えっ、俺達は? 俺達はこのまま!?」

 

 

当然、納得出来ない仲間達は騒ぎ出す。

 

 

「え……な、なんで俺だけ……?」

 

 

カイツも事態を把握できていない。

 

 

「……え、助ける……? 何故……?」

 

 

どころか、記憶喪失さんまで理解できていない様子。

なんてことだ。善性が中途半端過ぎる。

 

 

「アタシが交渉しないと駄目だ……あっ、あのぉ! 記憶喪失さん!」

 

「可愛い呼び掛けありがとう。何かなロッカちゃん」

 

「他の奴隷達も解放できませんか!?」

 

「できるけど、やる理由が無い」

 

「理由がない、って……それは」

 

 

ロッカは理解した。

記憶喪失さんは、自分達と同じ理屈では動いていない。

この人の行動を、情でも利益でも操れはしない。

であれば、ロッカの行動は簡単だ。

 

 

「あ、アタシが……記憶喪失さんに、何かお礼をします……」

 

 

記憶喪失さんの行動は、過程と結果は誰にも不可侵。

しかし、発端はその限りではない。

 

ロッカに対して、記憶喪失さんの行動は気持ち悪いくらい優しかった。

目つきもいやらしかったし。

 

だが、過保護な程に気にかけてくれた。

それはつまり、記憶喪失さんから見たロッカには、何らかの価値があるのだ。

この人は、無意味や気まぐれでは動き出さない。行いはその限りではないのがタチが悪いのだが。

 

だから、交渉材料は最初から全ベット。

駆け引きに付き合ってくれるタイプではないのだ。

 

 

「え、お、お礼ぃ……? マジか……やっぱこうなるか」

 

 

記憶喪失さんの反応は芳しくないように見えるが、その実「ロッカの提案に対して思考している」。先程までの仲間達とのやりとりは、考えもせずに即答していた。

 

 

「えっとね、ロッカちゃん。私は人付き合いが大嫌いなんだ。そういう、恩義とかのやり取りで心が擦り減っていく人種なんだよ。だから何もしないで欲しいんだけど……」

 

 

記憶喪失さんは考え込んでいる。

ロッカの発言に対して、ちゃんと向き合っているのだ。

 

 

「……そう、何もしてほしくない。奴隷を解放したら、感謝されるだろう。私はそれが嫌なんだ、わかるかな」

 

 

ロッカには全く理解できない考え方だ。

だがロッカの理解は不要だ。記憶喪失さんの考え方がそういうものだとわかれば、それで十分。

 

 

「……わかりました」

 

「ありがとう、賢いね。飴あげる」

 

「では、アタシに奴隷解放をやらせてください」

 

「……なんだって?」

 

「アタシに武器か、道具か。奴隷全員の鎖を切って、外まで導けるモノをください。アタシはそれきり、記憶喪失さんのことは忘れて、奴隷解放の英雄として生きていきます。この白い服に似合う武器をください」

 

「おおー……こりゃまた賢い」

 

 

記憶喪失さんは、ロッカが必要なモノは次から次へと与えてくれた。

記憶喪失さんに必要なのは、感謝や礼ではない。

ロッカへの奉仕なのだ!

自分が悪女になったようで、ロッカの気分はすこぶる悪くなったが。

 

 

「すごいねぇ、イマドキの子供は……私の望むことを理解した上で、武器すらお洒落の一部かぁ。それじゃ、いろいろ見繕って見ようか」

 

 

記憶喪失さんは、ジャラジャラと物騒なアイテムを地面に広げ始めた。

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

最終的に、デカイ斧を渡された。

持ち主以外に対して重量が何億倍にもなるというトンデモ神器だった。

 

 

「やっぱロリには斧だよね! じゃ、私はこの……カイツ? と一緒に、治験場所に殴り込んで来るから。終わったら戻ってくるよ」

 

「無理するなよ、ロッカ」

 

 

記憶喪失さんとカイツの姿が消えて、たっぷり一時間。

ロッカはひたすら、奴隷の檻を叩き壊し、鎖を千切って回った。

仲間達は真っ先に解放し、住処の状態を確認に行かせた。

 

 

「か、解放だぁぁー!!」

 

「自由! 自由だ!」

 

「ありがとう! 本当に……!」

 

 

仲間以外の奴隷も、我先に逃げ出して行く。

記憶喪失さん曰く、屋敷の人間はしばらく目覚めないとのことで、皆歓喜の雄叫びを上げながら出ていった。

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

八割程度の奴隷を解放したところで、記憶喪失さんが帰ってきた。

 

 

「一緒に行った子供はスラムで解放したよ。一応、私の記憶は消させてもらった」

 

「そ、そんなこともできるんですね」

 

 

記憶喪失さんが記憶喪失にできるのは自分だけではないらしい。

 

 

「それでだ、ロッカちゃん。実はキミを、モノわかりの良い幼女と見込んで頼みがある」

 

「はい、なんでしょうか」

 

 

記憶喪失さんの力は桁違いだ。

ロッカに拒否権はない。

元より、記憶喪失さんの面倒くさそうな表情を見れば、本当はロッカを巻き込みたくないのがわかる。

記憶喪失さんは、本当は欲しくない「感謝」を使おうとしているのだ。

ロッカにとってみれば、快諾一本である。

 

 

「冒険者ギルドに着いてきて欲しい」

 

 

 

 

 

====================

 

 

 

 

 

しっかし、たくましい幼女だねロッカちゃん。

私、しっかり者のロリ大好き。

 

ロッカちゃんを伴い、翌日。

私達は街を歩いていた。

人混みは昨日よりだいぶ少ない。いつの間にか商人が死んでたから、物騒で出歩きたくないんだろうか。犯人が捕まるまではこの調子かもしれない。

 

 

「チケンの場所が、もぬけの殻だったんですか」

 

「そうだったんだ、悲しいことに。痕跡ゼロ。まあ、だいぶ時間経ってたからね。最初からダメ元だよ」

 

「残念でしたね。それで、何故冒険者ギルドに?」

 

「依頼を出す。人間を実験台にする悪い医者を探させる」

 

「……漠然とした依頼ですね。受けてもらえるんでしょうか」

 

「そこはロッカちゃん次第だね。頑張って」

 

 

私はコミュニケーションアレルギーである。

ギルドの受付とか絶対行きたくない。

細かい書類の記入とかは全部ロッカちゃんに任せて、私は報酬を用意すれば良い。

ロッカちゃん、なんと文字が読めるのだ。無限に偉い。

 

……でもなぁ。

ギルドから邪剣の反応あるんだよなぁ。

依頼する立場だから、今回は先制落城攻撃するわけにもいかないし。

どうやって回収しよう。

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