麗しの世捨てロリババア生活を邪魔する奴は全員殺す(涙目) 作:がぱおら
ロッカは宝石の鑑定を待つ間、傷ハゲの冒険者パーティと話をしていた。
「するってぇと、なんだ、その武器はあの名前も知らねぇ、魔法使いみてぇなお嬢ちゃんに貰ったってのか」
「ちょ、ちょっとだけ刃物が必要な場面があったんですが、その時貸してもらってから、返すタイミングが無くって」
「どこを切ってもとんでもねぇ嬢ちゃんだな……」
鑑定台で何故か"鑑定"のレクチャーをしている記憶喪失さんを見る。
従来のやり方だと時間がかかりそうで面倒だから、という理由で教えているらしいが、やはりあの人の行動はちぐはぐだ。
恩を受け取るのは苦痛と語る一方、恩を与える時はとても行動的。
恐らく、性根は悪人ではないのだろう。
奴隷解放の交渉の際も、記憶喪失さんが強調していたのは「しがらみに対する不快感」のほうであり、「利益が無い人助け」にはそこまで忌避感がなかった。
行動原理がよくわからないのだ。
当然、今こうして多量の宝石を使った人海戦術をしようとしてる理由も、全くわからない。
カイツの心臓が目当てでベルコットの屋敷に乗り込んできたことも加えて考察すると、彼女は邪剣に対して何らかの確執があるのだろうか。
(……そこまで聞いて、アタシが深入りするような用件かなぁ)
ロッカ自身、自らの行動も、どこかフラフラと軸が定まっていないのを自覚していた。
なんだかんだでロッカにも上昇志向がある。
記憶喪失さんの実力は、きっと世界一だ。記憶喪失さんの側というのは、世界一安全な場所だ。
何かと理由を付けて着いていくこと自体は……記憶喪失さんの、ロッカを見るいやらしい視線を考えたら、不可能ではないかもしれない。
そうなった場合、スラムの仲間達は置いていくことになるが……まま有ることだ。
貴族や商人の気紛れで拾われ、スラム暮らしを一抜けすることはよくある。それが吉と出るか凶と出るかは、相手次第だが。
記憶喪失さんの態度を見れば、スラムの仲間を丸ごと抱えるのは断られるだろう。
何が問題かと言えば、恩知らずになってしまうことだ。
記憶喪失さん本人から、どういった考え方で動いているのか説明されている。「他人と関わりたくない」が第一目標だ。
弱みにつけ込む形で転がり込まれれば、記憶喪失さんは甚だ不愉快に感じるだろう。
気分を害しても笑って許してくれる限界というのが、現時点ではわからない。堪忍袋の耐久試験はしたくない。
世界一安全な場所とは、世界一危険な存在がある場所のことだ。
今後の身の振り方を考え込むロッカ。
その背後から、声が降ってきた。
「……おい」
ロッカは戦慄した。
その恐ろしい声を、忘れる程の日にちはまだ経っていない。
(……か、カイツを負かして、アタシ達をベルコットに売った冒険者の声……! 確か……"跳弾と囮"のゲール!!)
「おや、ゲールさんじゃないか」
「こないだ依頼を終えたばかりなのに、また仕事かい? 熱心だねぇ」
親しげに話しかける傷ハゲ冒険者達。
固まったままでは不自然だ。ロッカは意を決して振り返る。
果たしてそこには、黒い大剣を背負った大男が立っていた。
「やはりか、お嬢ちゃん。また会ったな?」
ゲールはニヤリ、と威圧的に笑う。
覚えられていた。
生唾を飲み込むロッカと対照的に、冒険者達は気安い。
「ロッカちゃんと知り合いだったのか」
「世間は狭いもんだなぁ」
「ちょっとした縁でな。お嬢ちゃん、ロッカって言うのか。少し向こうで、仕事の話をしようや」
ゲールに肩を掴まれたロッカは、頷くしかない。
「おいおい、ゲールさんよぉ……ロッカちゃんビビってるぜ」
「ちぃっとは自分の顔の怖さを自覚しろよな!」
「へいへい、んじゃ借りてくぜ」
ロッカは鑑定台に視線を向けた。
(記憶喪失さん、助けて……!)
「んん?」
ゲールもまた、鑑定台に目を向ける。
山と積まれた宝石と、鑑定中の職員。
記憶喪失さんの姿は無い。
「……あ、あれ?」
「なんだありゃ、大口の依頼か? あんなに一発で出したら、かえって価値が落ちちまうだろうに。ま、それよりも、だ……」
ゲールが、ロッカの耳元で囁く。
「……どうやってベルコットを殺して脱出した……?」
「……!」
「その斧か……? ヤバいオーラを感じるぜ……あのロクデナシ商人もマヌケなこった、こんな神器をうっかり盗られちまうとは」
「……」
「……こっちとしても、あんまり大っぴらに出来ない仕事の成果なんでな……わかるよな、ロッカちゃん?」
肩を掴む腕に力が入る。
「そいつを寄越────」
次の瞬間、ゲールの身体が爆発した。
────────────────────
瞬間、ゲールの意識はクリアかつスローであった。
(殺気!?)
突然自らの身体を包む、害意としか表現できないナニカ。
ゲールは"跳弾と囮"の邪剣を一瞬で手に持ち、防御の構えで備えようとした。
冒険者として身体に染み付いた、危機に対する条件反射。
安全なハズのギルドでそれが急に出てくる異常事態に少し混乱しつつも、生き残る為に思考が透き通っていく。
(どこから来る!)
それは目の間に現れた。
先ほど、鑑定台に大量に積まれていた宝石がひとつ、ゲールの眉間数センチの位置に突然出現したのだ。
"転移"の存在を知らないゲールの思考は、一瞬硬直した。
無思考のまま、身体が最適解を選び、邪剣で宝石を防ごうとした。
"跳弾と囮"は、攻撃を反射するパッシブスキルと、攻撃を引き寄せるアクティブスキルを持った邪剣である。
この邪剣を手に入れてから、ゲールはあらゆるダメージを負わなくなった。
どんなダメージも、邪剣が引き寄せ、相手に跳ね返すのだ。
大剣としても十分な強さを持つ、ゲールの相棒。
その邪剣に、宝石が引き寄せられるように飛ぶ。
まだスキルを発動していないのに。
(何が)
もはやゲールは全てが後手であった。
常に効果を発揮する"跳弾"が、宝石を目の前で──ゲールの視界と、邪剣の腹の中間で、跳ね返す。
ゲールの顔面目掛けて。
唐突な危険球に、しかしゲールの生存本能は奇跡的に対応した。
顔を背けることで、ギリギリ頬を掠めただけで済んだのだ。
ゲールとて、生半可の冒険者ではなかった。
ロリババアの前では無力だったが。
(あ……?)
次の瞬間、ゲールの視界を、鑑定台に乗っていた宝石全てが塞いでいた。
それらが、ゲールと邪剣の間で、"跳弾"する。
(ぐおおおああっ!?)
最早ゲールに、回避の手札は残っていなかった。
全身を"跳弾"で増幅された運動エネルギーでボコボコにされ、鎧すら弾け飛ぶ衝撃で、ゲールの意識は暗転した。
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「この街にはロリコンしかいないのか!?」
私はご立腹である。
ロッカちゃんの華奢な肩に手を回しやがって、しかも邪剣所持者の分際で!
"邪剣鑑定"で邪剣のスキルは全てわかる。
反射系かぁ、そら強いわ。スラム主人公くんも負けるよそりゃ。
真正面から啖呵切って決闘する趣味はないので、盾と肉体の隙間に攻撃を"転移"させる戦法で解決した。
敗因は、衝撃を反射する方向性を弄るスキルを持っていなかったことだね。ざまあみろ。
さて、全身血塗れの男から邪剣を取り上げ、内側を"破壊"で満たすことで衝撃を自分で乱反射させ、粉々に砕いた。
これでこの街に残る邪剣は残り一本。
足元にへたり込むロッカちゃんに、とりあえず簡易不老不死飴を与える。
これでも舐めて元気出しな。
「怖かったろう、すまない。助けるのが遅れた」
「え、あ、い、いえ……」
そこで私も流石に気づく。
"跳弾"の最終的なエネルギーは上空に逃すように計算したが……その結果、天井に穴が開いている。
太陽がさながらスポットライトのように、私と、ロッカちゃんと、ついでに元邪剣所持者を照らしている。
ギルド中の人間が、絶句して私達を見ている。
何が言いたいってめっちゃ目立ってる。
私は絶望した。
ああ、テンプレートからは逃れられない。
多分この後、ギルドの偉い人が来て、私とロッカちゃんを無理やり冒険者にするんだろうな。屋根の修理代を盾に。
面倒だが、治験野郎の捜索は別の街でやるしかあるまい。
「逃げるよロッカちゃん」
「はえ?」
「こ、これは一体……なっ!? け、賢者様!?」
出入り口から、王子様の声がした。
なんでここで唐突に王子様が出てくるの? どうして?
「え、王子様? 何でここに?」
ギルドの出入り口に、捨て子王子様と、制服っぽいのを着た女の子が立っていた。
……帰りたい。
今まさに、私の帰宅欲はマックスである。
体調崩したので、次話投稿は遅れるかもしれません。
今後の展開に関わるアンケートを置いておきます。
ご協力お願いします。
今後の展開の参考にしたいので、今後の奴隷少女の行動を決めるアンケートです。上ほどメインキャラ化。方向性固まり次第〆
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ロリババアに着いていく
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王子様に保護される
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スラムに帰って出番終了