麗しの世捨てロリババア生活を邪魔する奴は全員殺す(涙目) 作:がぱおら
「うぐっ……くっ、賢者様……何故、どうして」
「ま、まあまあ……なんか事情あったんだよ、多分」
「ちょいとお互い感情的過ぎたよなぁ。次があるさ、元気出せって」
王子ディッツは、冒険者ギルドの片隅で、冒険者達に慰められていた。
賢者直々にかけられた"窒息"を、死物狂いで解除した生徒会長フォウエンは、ぐったりと受付テーブルに突っ伏していた。
冒険者ギルドは本日はお休みになった。
昔話の賢者の来訪、邪剣という脅威の発覚、それの関連者を探させようとしていた賢者の依頼文、邪剣所持者だった冒険者の治療と処罰の検討、建物の修理、外国の王子の登場。
解決しなければいけないものが多過ぎて、受付嬢すら駆けずり回らせないと課題が片付かないため、全職員がギルド長の陣頭指揮の元で事務処理に奔走している。
冒険者達は冒険者達で、突然今日の仕事が無くなったこととで、暇潰しとばかりに滅茶苦茶打ちひしがれてる外国の王子様のご機嫌取りをしていた。
「……賢者様、いったい何を掴んだのかしら」
フォウエンは、賢者の依頼文を眺める。
心臓に邪剣の欠片を埋め込む闇医者の捜索依頼。
報酬は、邪剣冒険者ゲールをボコボコにした大量の宝石。
不思議と欠けや傷跡が見られないらしい。
心当たりはある。
ディッツ一行は、邪剣を研究する秘密結社と戦ったことがあるのだ。
激戦の末に壊滅させたハズなのだが、残党がいたのだろうか?
賢者はどこから、この闇医者の存在を知ったのだろうか。
ディッツが邪剣の存在を語ってから、殆ど日が経っていないというのに。
「……あー、もしもし」
フォウエンの頭上から、野太い声が降ってきた。
最早居住まいを正すスタミナすら残っていないフォウエンは、申し訳なく感じつつも視線を上げた。
「本当にいいのか? 隣国のお偉いさんが、他国でこんなことして……」
そこにいたのは、リカラ冒険者ギルドのギルド長。
一般的な「引退したベテラン」タイプのギルド長で、身体つきは未だ現役と言われても信じられる。
「……だいぶ越権行為ですから、あまり褒められはしませんね。後ほど現公様にもお話は通しますし、自国にも持ち帰って同様の依頼を出す予定です」
「手続きをすっ飛ばすような事態ってことか」
「賢者様の手柄を掠め取る形にはなってしまいますが、どうやら我々は賢者様に好かれていないようで、お話も出来ず……」
フォウエンはため息をついた。
ディッツは人情に厚く、優しい人間だ。
あの場で聖剣を抜く気は間違いなく無かったと言えるが、アレストレウシス帝の死を悼んでいるのも本気だった。
会話の流れで思わず問い質してしまったのだから、心の中ではどうしても納得できていなかったのだろう。
だが賢者の反応はいささか過敏に過ぎる。
衆目の只中で問い詰めたのはこちらの落ち度。しかしその話題の時点では、まだディッツを落ち着かせ、説明をしようとはしていたように思えた。
劇的に態度が変化し攻撃してきたのは、何が引き金だったのか?
「……気難しいお方です……」
なにも、おかしいことは言っていない。
なにも、おかしい仕草はしていない。
いったい、何が、賢者の攻撃を引き起こした?
ベルコットの死の話題が原因? しかし賢者の怒りは、そこから更に一拍置いてから噴火した。
何か不測の事態が発生した? それも違う、それなら一撃与えてから逃げる余裕なんて無い。
例え怒っていたとしても、"空気弾"とか、もっと安全に怒りを表明する手段はあった。
賢者は本気で、ディッツに対してキレたのだ。
"窒息"の直前に、ディッツは何を言った?
『俺は貴女を理解したくて』
「……わからないわ……全然わからない」
あの台詞の何処に、賢者の逆鱗に触れる要素があったのか。
まあ確かに、親しくもない男から言われたならキモいかもしれないが、話の流れは真面目なものだったし、そもそも賢者とディッツの関係は……親しくはないが、知らない仲でもあるまい。
では、「理解されること」に何か、トラウマを抱えている可能性は?
極めて長い時を生きている賢者だ。過去に何かあったのかもしれない。
フォウエンは魔法歴史学にはあまり興味が無かったため、詳しくない。
学園に帰ったら、調べる必要がある。
賢者の過去を。
「……お騒がせして申し訳ありませんでした。あとはギルドにお任せして、我々は帰還しようと思うのですが……」
「ああ、まあ、そっちも大変そうだが、頑張ってくれ」
「ディッツ、シャリアドネ達と合流しましょう」
「……わかった。ギルドの皆さん、それに冒険者のみんな……迷惑をかけてすまなかった」
ディッツは頭を下げて謝罪した。
王子という身分の彼にさせる態度ではなかったかもしれないが、今のディッツには何でもいいから行動させたほうが良い、と考え、フォウエンは注意しなかった。
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地面に槍が突き刺さっている。
先程私達の隣を掠めて遥か上空へ飛んでいったものが、重力に従って落下してきたものだ。
丈夫なことで。
投げた張本人は土下座していた。
「大変申し訳ございません!! ですがこうしてお話をさせて頂くために注意を惹く手段が、私達には無くて!! ごめんなさいごめんなさい!!」
テルナ、という名の彼女は、"鑑定"してみても職業は『漁師』としか出なかった。
なんで漁師が、いきなり私達に槍投げて来て、それを必死に謝罪しているんだ……?
一応、王子が森に来た時の面子にいた顔ではある。
何で漁師をハーレムに入れてるんだ?
漁村から着いてきた初期メン枠か?
それを困惑しながら眺める、二人の女性。
片方はナントカ騎士団のシャリアドネ。女騎士枠ね。ガチガチの鎧装備だけど、脱いだら凄い枠かな?
もうひとりは知らない女だった。
受けた第一印象はキャリアウーマン。服装は旅商人のような動きやすそうなもの。
"鑑定"曰く、彼女はマキルダ。職業は商人と議員。公務員っぽいけど副業していいんだ……。
何故か周囲に人影は無い。遠巻きに見られているのは感じるが、何だか様子がおかしい。
監視されてるというか……隙を窺われている?
「……あー、まあ直撃コースでは無かったね、確かに」
思わずロッカちゃんを庇いはしたが、単純にスピードが乗っていて風切りが凄まじかっただけだ。狙いは見当違いと言って良かった。
テルナがノーコンだったら話は変わってくるけど。
「ロッカちゃんにも謝ってね。漏らしたかもしれないから」
「も、も、漏らしてませんよ!?」
「ごめんなさいごめんなさい!」
「漏らしてませんって!! それより事情を説明してください!!」
ロッカの名誉の為に補足すると、本当に漏らしてない。なんてタフな幼女だ、ロリババアはとても感心している。
「では端的に! 私達は王子ディッツと共にこちらの商人マキルダをマルヴリアス王国に連れ帰るべく、この国を訪れました! 冒険者ギルドから爆発音がしたので、状況確認のためにディッツは私達とは別行動中です!」
「……」
別件で来てたのに、私が騒いでたから見に来たのか、王子くん。
何故再会したのかは理解した。
「私とこちらの副隊長シャリアドネ殿は」
「副団長です、賢者様」
「私達はマキルダと合流しましたが、当のマキルダはこの国の暗部の情報を多数握っているので、リカラを出られては困る現公に追手を差し向けられました! 現在逃走中でした! 賢者様に攻撃したのは、何やら賢者様が恐ろしい攻撃を放とうとしていたので気を逸らそうと! ごめんなさいごめんなさい!!」
「君、ただの漁師っぽいのに危機察知能力凄いね……」
事情は理解した。
つまり、この怪しい気配全部、王子パーティの敵か。
「ロッカちゃん、相談」
「あ、はい」
「私がここで追手全部蹴散らしたら、帝王のおっさん殺した件について、釈明するチャンスできると思う?」
「……少なくとも、敵だと思われることは避けられるんじゃないでしょうか」
「えっ、け、賢者様、手伝ってくださるんですか?」
「おいおい、本当に何が起きてるって言うのさ……あたしゃもう着いていけてないよ」
シャリアドネとマキルダが口を挟んできた。
「いや、今後アテにされると迷惑だから、手伝ったってことにはされたくないかな……。なんかいい大義名分ある?」
「……複雑な事情がお有りなんですね」
シャリアドネの言葉には答えない。
複雑なのは確かだけど、しょうもないっちゃあしょうもない事情だし……。
「何だかわかんないけどさ……暴れる理由が欲しいんだろ?」
マキルダの台詞に、私は頷く。
「じゃあ、金だ。あたしが金払って護衛にしてた、ってことにしよう」
「うーん……お金かぁ。私は別に欲しくないなぁ……他に何か……」
「賢者様、アタシお金たくさん欲しいです」
「ロリがお小遣いをご所望だ。契約成立だね」
私は"転移"で、周囲の剣呑な気配全てを上空に召喚した。
「う、うわあああ!?」
「なんだあああっ!!」
「おおおあああ!?」
地面にキスする前に、まとめて"浮遊"。
"昏倒"の後、"浮遊"で整列させてテルナ達の前に差し出した。
「この中から怪しい奴を選んでね」
「……詐欺じゃないかい、この買い物?」
マキルダの引きつった笑い顔。
他の三人も無言で私を見てくる。
見るな。減るぞ。私のメンタルヒットポイントが。
今後の展開の参考にしたいので、今後の奴隷少女の行動を決めるアンケートです。上ほどメインキャラ化。方向性固まり次第〆
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ロリババアに着いていく
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王子様に保護される
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スラムに帰って出番終了