麗しの世捨てロリババア生活を邪魔する奴は全員殺す(涙目)   作:がぱおら

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ゴブリンは殺す

ロッカちゃんにしりとりに付き合ってもらいながら、馬車をトロトロ追いかけていると、私の"レーダー"に反応があった。

 

 

「あ、ストップロッカちゃん。厄介事かも」

 

「え、な、何かあったんですか?」

 

「調べるから、少し待っててね」

 

 

"広域鑑定改"で調べたところ、どうやら魔法生物の群れのようだ。

森から出た個体が繁殖したのかな?

 

 

「……うげ」

 

 

その姿を"投影"して、思わず呻いた。

まるきりゴブリンだ。

 

 

「何故……何故ゴブリンが……!?」

 

「け、賢者様? ゴブリンがどうかしたんですか?」

 

 

"投影"された魔法生物を見たロッカちゃんが、私を心配そうに見てくる。

最悪なことにゴブリンがゴブリンだと確定した。

いや、何言ってるかわからんと思うけど、重大だよこれ。

酒はどの国でも「命の水」と形容され、ガンダムが造られる世界では人型兵器群は概ねモビルスーツと呼ばれ、世界が一巡してもスタンドはスタンドである。

命名規則が似るものには、理由があるのだ。

なんだろ、収斂進化的な……? ちょっと違うか?

 

つまり、ゴブリンはあのゴブリンである。

不潔で、たくさんいて、他種族を使って繁殖する、あのゴブリンと思って間違いないのである。

 

ロリババアはそんな奴らの存在は許しません!!

幼女が危ない! たった今、全世界で!!

 

 

「ロッカちゃん、私ゴブリン消してくる。馬車でお留守番してて」

 

「え、あ、はい。あの、力み過ぎないでくださいね」

 

「ん~ロリの励まし! たまんねぇ!! もうロッカちゃんが二度とゴブリンなんて見ることないようにしてくるね!!」

 

 

私は馬車めがけて急降下。

御者の女騎士さんはだいぶびっくりしてる。

 

 

「んがっ!? け、賢者様! 何用ですか!?」

 

「遠くにゴブリン」

 

「は、ゴブリンですか! では我々が討伐を……」

 

「いや、それには及ばない。ロッカちゃんよろしく」

 

「よ、ろしく? わわわっ!?」

 

 

ロッカちゃんを"浮遊"で女騎士さんの隣に座らせ、元気づけるためにウィンク。

失敗した。両目瞑った。

 

 

「え、あの、賢者様? よろしいのですか?」

 

「一生よろしいように、徹底的にやるね!」

 

「徹底的に!? 賢者様、どうか加減をお願いします!」

 

 

女騎士さんの言葉に、茶目っ気たっぷりに返事のウィンク。

失敗した。半目で睨んだ。

 

 

「ひっ」

 

「うっ」

 

 

ロッカちゃんも女騎士さんも怯んでしまった。

ウィンク下手くそでごめんなさい……。

 

私はトボトボと、ゴブリン方面へ"浮遊"していった。

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

戦闘らしい戦闘は、私には発生しない。

争いは同じレベルの者同士云々だ。

 

道の脇の森林地帯で、予備含めて三匹を残し、ゴブリンを殲滅。

私たちの馬車の通り道だった。多分ほっといたら、襲撃イベントがあったんだと思う。

 

まずはゴブリン一匹、DNAとか体の構成とか調べるべく、"分解"。

仲間が突然光の粒子になったので、予備の二匹は失禁して恐れおののいていた。

調べたところ、どうやら世間一般的なゴブリンから逸脱した独自設定の類いは無いようだ。

 

ここからがちょっと難しい。あんまりやらないことをやるから。

まず遺伝子情報から、始祖に至るまで一気にスクロール。

森の魔法生物を捕獲した奴がいたらしく、そこ以前は私の知ってる魔法生物だったので、そこを開始地点に。

どうやら魔法生物を改造して戦争をしたかったらしい。森の外でも強いんだね、うちの放し飼いペット。

でも出来上がりが想像以上にゴブリンで、飼い慣らすのも難しかったようだ。不潔だもんなぁ。

それなりに戦争で活躍はしたけど、国は負けて、どさくさでゴブリンは野に解き放たれた。

あとは増えては討伐されの繰り返し。

なかなか壮絶な歴史だった。

 

始祖がわかったからには、やることはシンプル。

まずは"時間転移"で、完成個体の時代にアクセス。

ただ、時間いじる魔法って、神様に書類出して許可もらったりしないと怒られるから、面倒なんだよね。

なので私は飛ばない。

飛ぶのは"自滅プログラム"の魔法だけだ。

原初のゴブリンの遺伝子に「遠い未来で、この種族は突然死する」と書き込む、今回以降ほぼ使わなそうな魔法。

この程度の過去改変では、影響は何も起きない。バタフライエフェクトなんて言ったりするけど、遺伝子情報の書き込みひとつで状況が変わるイベントなんて存在しない。

そのくらい短く、細かい遺伝子情報なのだ。

 

これで、現代のゴブリンは全て、次の瞬間死ぬことになった。

この場にいないゴブリンも、全てである。

遺伝子情報が書き換わってる突然変異の特殊個体とかがいたら生き残るかもしれんが、いても少数だ。ほぼ進化に巻き込まれないくらい、"自滅プログラム"は短く小さな書き込みなのである。

邪剣もこのくらい楽々処理できたらなぁ……。

 

私の隣で、予備のゴブリン二匹が、白目を剥いて突然死した。

多分成功だ。今頃全世界で、このゴブリンのような突然死が発生している。

これで幼女がゴブリンにさらわれて繁殖エンドになることはないだろう。

いやあ、久々に主人公らしい善良ムーブをしちまったぜ! これで今日から私もゴブリンスレイヤー!

ロッカちゃんに褒めてもらお~。

 

 

 

 

 

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その日、世界中のゴブリンが突然死した。

目撃者は多数。

 

冒険者パーティと戦っていた群れが突然死。

田舎で野菜を盗んでいた個体が突然死。

魔物研究者の檻で突然死。

魔物の軍隊で突然死。

戦利品達で遊んでいた奴らが突然死。

巣を移動していたら突然死。

ちょっと能力が変わっただけのゴブリンシャーマンとか、上位個体とはいえ結局ゴブリンであるゴブリンキングとか、そういった小さな変化に留まっていた種は巻き添えで突然死。

 

それはもう世界中で大パニックだった。

 

後世には、マルヴリアス王国の37代王ディッツの言葉が伝えられている。

 

 

「賢者様が、世を乱す存在を憂いて、神の国へ送ったのだ」

 

 

とりあえずそれっぽい言葉残しときなさい、と妻に言われて慌てて口にした、ありがたいお言葉である。

 

 

 

 

 

 

====================

 

 

 

 

 

 

馬車に戻ると、私が戻るまで休憩しているつもりだったらしい。

みんな馬車から出て、食事を作ったり、座って休憩したりしていた。

ちょっと早く来過ぎたかも? 休憩は大事だ。

 

 

「へ~、献立は何?」

 

「のわああ!?」

 

 

なんか私が話しかけると、最近こう慌てられてばかりだ。

コミュ障が加速してしまう。

 

 

「え、と、野菜と干し肉のスープ……ですかね?」

 

「確かにそんな見た目してる」

 

 

鍋をかき回していたのは生徒会長フォウエン。

鍋の中身は、野菜くずと干し肉の欠片に、謎の調味料でさっと味付けした汁物。

なんだろ、さっきの小瓶の中身。味の素かな。

 

 

「スラム育ちの子が多いので、あまり豪華なものを突然食べさせるのもどうかと思いまして」

 

「なるほどね。馬車酔いで戻されてもよろしくないか」

 

「そういうことです」

 

「お帰りだったのですね、賢者様」

 

 

女騎士さんも会話に参加してくる。

両腕マッスルポーズで、スラムの子供たちをぶら下げて運んでいた。

何それ楽しそう。

 

 

「すみません、こんなに手早く終わるとは思わず、休憩していました」

 

「別に私に許可もらわんでもいいのに。むしろこいつらいつ止まるんだろう、って心配してた」

 

 

急ぎ足でこそなかったが、野営で最低限寝る以外にほぼ休憩をしていなかった。

そんなに焦るような事態なんだろうか。

 

 

「そうでしたか……。では、今後はこちらの都合で馬車が止まることもあるかもしれません」

 

「いーよいーよ、馬撫でていい? あとスープちょうだい」

 

「……え、ええ。いくらでもどうぞ、とは言えませんが、お口に合うかどうか……」

 

「賢者様は、想像以上に自由ですね」

 

 

フォウエンとシャリアドネは顔を見合わせ、苦笑している。

女子達のくすくす笑いはメンタルにダメージ入るからやめてね、お願いします。

 

 

「はいどうぞ。熱いので気を付けてください」

 

「んむ、うん。スープの味。無料なら店出せるレベル」

 

「ふふ、それは店とは言えないかと」

 

 

なんか微笑ましいものを見る目のフォウエンとシャリアドネ。

しかし、王子パーティの料理上手枠は生徒会長殿でござったか。

 

 

「王子様パーティで、一番料理上手なのが生徒会長?」

 

「ええ、フォウエンの料理は素晴らしいです。私など、切って焼いて塩を振るくらいしかできませんから」

 

「豪快でいいじゃん。工夫すればきっと店出せるよ」

 

「いえ、店を持つ予定はありませんが……」

 

「いいじゃない、テルナよりマシよ」

 

「幼馴染ちゃん、料理できないの?」

 

「あー……本人の胃腸が丈夫なのと、生鮮食品に囲まれて育った影響なのか、その……素材の味重視というか」

 

「ディッツもそれ食べて育ったから、あんまり凝ったもの作っても感想が淡白なんですよ。まったくもう、レパートリーの増やし甲斐がないったら。ディッツ本人も、火が通ってればいいって言うくらいだし」

 

「流れるように惚気たぞ。なんて早業だ」

 

 

今回ばかりは隙を作った私が悪い。

なんというか、王子パーティは人間関係良好なんだろうな。

引きこもりには眩しいね。

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