麗しの世捨てロリババア生活を邪魔する奴は全員殺す(涙目) 作:がぱおら
私の言葉を聞いた瞬間、シャリアドネはズウェッタを取り押さえようと飛び掛かった。
対するズウェッタは、困惑した表情ながら、シャリアドネから距離を取る。
そして私は、シームレスにスタートした同士討ち展開で、もうツッコミ疲れていた。
突然の騒音に、箱庭ルームにいた全員が、私たち三人に視線を向けた。
「ねえねえロッカちゃん、どうなってるのこれ」
「わ、私ではちょっとわかりかねます」
「賢者様! シャリアドネとズウェッタが突然戦い始めましたが、何かあったのですか!?」
「えーと、ズウェッタが邪剣持ちって言ったら突然……」
「なっ、ズウェッタが邪剣を!?」
「はい? え、誰も持ってたって知らなかったんすか、まじ?」
「賢者様、また勘違いが発生してると思います。落ち着きましょう」
「ロッカちゃんがそういうなら……」
念の為、"邪剣探知"をもう一度使用。
やはり、ズウェッタの心臓から反応がある。
「カイツと同じく、心臓に邪剣の破片を埋め込んでるみたいだけど、そういう話聞いたことなかった?」
「……俺は、そんな話、聞いたことはありません……」
「わ、私も」
「なんでズウェッタが!? 賢者様、何かの間違いじゃないんですか!?」
「知らんて。私はズウェッタ氏とは今が初対面だぞ」
「くそっ、俺の仲間にまで手を出して……ッ!」
ディッツは義憤に燃えているが、うーむ。
「宰相みたいにスパイだったんじゃあないの?」
「それはあり得ません! ズウェッタとの出会いは偶然だったし……」
「じゃあ出会った後に邪剣に取り込まれたとか……」
「そんな……何故なんだ、ズウェッタ……!」
「とにかく邪剣持ちなんでしょ、殺してもいい?」
「賢者様お待ちください! そもそも邪剣が心臓に埋め込まれてたら、即スパイ決定なんですか? カイツはそういう素振りありませんでしたし、そういう器用なことできるヤツでもありませんでしたけど……」
「あ、そうか。闇医者に騙されて埋め込まれた可能性が……、待てよ?」
帝王のおっさん。
今のズウェッタちゃん。
催眠チャラ男。
私の知ってる邪剣所持者の中で、王子達が把握していた邪剣所持者は……。
そして、邪剣所持者と、心臓に邪剣の破片が埋め込まれた者の、厳密な違いは……!
「……王子くん、キミ達は邪剣所持者を、どう判別してたの?」
「邪剣に魅入られると、力を振るいたくなるんです。こちらから探さずとも暴れ出します。賢者様の"邪剣探知"には驚かされて……」
「今まで、心臓に邪剣が埋まってた人って、どのくらいいた?」
「いません。ひとりも、見たことはない。いや、なかった……見ただけでは全く、心臓がそうなってるなんて、わからない。なんて恐ろしいことを……!」
ここで驚愕の情報をひとつ、教えなければいけない。
普通、刃物が心臓に突き刺さった状態だと、人は死ぬ!
「王子くん、キミのハーレムメンバー、大ピンチだぞ。邪剣の加護がなくなったら死ぬ」
「……!」
「聖剣での浄化のやり方がどんなもんかは知らないけど、今はやめといたほうがいい」
「賢者様、俺の時みたいに助けることはできないのか?」
カイツが疑問を口にするが、私は首を横に振る。
「この際、私が助ける理由がない……というのは大前提であり、不可能かどうかには関係がない。一番大きな問題は、ここに代わりの心臓がないこと」
「代わりの……心臓?」
「カイツの時は、ロッカちゃんを食べようとしてたロリコンを殺して、心臓を奪ったんだ。あ、商人殺しに関して追及するのは今はやめてね。でまあ、カイツの本来の心臓は、とっくに死んでる。つまりだね、ズウェッタちゃんを邪剣から救いたいってんなら、『代わりに死んでもいい、内臓が健康なヤツ』を連れてくる必要がある」
「……そ、そんな……!」
「なん、だって……」
まあ私にかかれば、そこのテーブルで横倒しになってるティーカップから心臓をでっち上げるくらいはワケ無いんだけど……大前提と言ったように、そこまで私が頑張る理由が、本当にない。
ズウェッタちゃんなぁ、地味眼鏡は私も大好きなんだけど、巨乳なんだよなぁ……。積極的に助ける理由に乏しいというか……。
「というわけで、王子くん達のすることはシンプルだ! ズウェッタ氏を、邪剣を持ったままメンタルコントロールできるように、説得する! 意外と『王子様の為に頑張りたいんですきゃぴっ!』くらいの理由かもしれないから希望はあるぞ!」
「……ズウェッタを、説得」
「失敗したら、私が尻拭いするから安心しなされ! 魔導学園を更地にすればどうにかなるから!」
一回やってみたかったんだよね、学校に隕石落とすの。
落とすことと事件解決に因果関係はないけどね。
「更地は駄目よディッツ! 更地にするくらいなら説得しましょう!」
不審者フォウエンも、ディッツに意見する。
うーむ、邪剣イコール敵でずっとやってたのかな、こいつらの冒険譚。単純明快なのは好印象だがね。
「……迷う理由なんて無い。ズウェッタを説得しよう! まずは取り押さえることから! 賢者様は……」
「あ、私は他にやることあるから、頑張って」
「ええ、わかりました!」
王子パーティは、どんがらがっしゃんと学園を飛び回っているシャリアドネとズウェッタを追い、姿を消した。
残されたのは、私とロッカちゃんとカイツ。
「いやお前はあっちだから。地剣で頑張ってこい」
「うわわっ! お、俺も!?」
カイツの背中を物理的に押して急かした。
当事者って自覚がないのかね、この少年は……!
私のチーレムメンバー入り拒否はお前の活躍にかかってるってこと、わかってんのか!?
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「それで、やることってなんですか?」
私はロッカちゃんを伴い、魔導学園を出た。
学園編、あっという間に終わっちゃったよ……ロリババア制服スキンの入手チャンスかと思ったのに。
「ロッカちゃん。キミを邪剣の戦いに巻き込んだ闇医者に、復讐するチャンスだ」
「え、そんな面倒なことはする気はないですけど……」
「あ、そうすか……」
さっぱりしたロリだ。のど越し爽やか。
やることはシンプル。改めて"邪剣探知"してみたところ、城下町の一角にまとまった量の邪剣の欠片が固まってるのがわかったのだ。
バラバラの破片状態で、微動だにしていないってことは、多分闇医者の倉庫か何かじゃないかな?
「あるいは、引っ越し先が王国だったか……。行けばわかるさ、いざ進めぃ」
「それにしても、街並みもボロボロですね……」
ロッカちゃんとの散歩を楽しむべく歩いていると、王国の惨状が目に入ってくる。
家屋はボロボロ、住民もボロボロ、路地裏の猫もボロボロ。
人々は諦めてはいないけど、気持ちでギリギリ踏ん張ってる感じ。
これは本当に……。
「なんかテコ入れしないと、森を守ってもらうどころじゃあないぞ、こりゃあ」
「何か、施しをされるんですか?」
「しないと、森の魔法生物を食べられたりしそう。くそっ、女神と厄介な約束しちまった」
壊して終わりが、私のモットーなんだがなぁ。
やだなぁ。
私のスローライフ野菜、提供したくないなぁ……。
他人の評価が怖い。
「あ、ここか」
私たちが到着した場所は、『本日営業開始』と書かれた看板のぶら下がった、一軒の民家だった。
店名すら無い。
この家の地下から、邪剣の反応と、人間の反応がある。