麗しの世捨てロリババア生活を邪魔する奴は全員殺す(涙目) 作:がぱおら
ロッカちゃんが扉を開けると、地下から白衣の男が登ってきた。
「おや、お客さん二号だ。いらっしゃい」
「あ、どうも」
「前のお客さんには、何の店なのかわからないってクレーム入れられたんだけど……やっぱりわからないかな?」
「店名くらいは書いたほうがいいんじゃ……」
「検討しとくよ。ここはエステサロンみたいなものだ、お客さんの立場なら、美貌の追及とか大好きだろう?」
今のロッカちゃんは、私のプレゼントした高級ドレス姿だ。
ちょちょいと"化粧"もしてあげたので、見た目は貴族のお嬢さん。
ロッカちゃん演技派だから、ボロが出る不安はない。
「ええ、まあ」
「じゃあ、早速施術をしてみるかい? 興味があったら、地下に来るといい」
そう言い残すと、白衣の男は地下へ降りて行った。
ロッカちゃんと、"透明"で姿を消した私も、白衣の男を追いかける。
「ああ、それと、手術道具はデリケートだからね。魔導具とか持ってたら、不具合が起きるかもしれないから預かろう。地下には魔力を遮断するフィルターが貼ってあるからね」
「ええっ、そ、そんな!?」
これこれロッカちゃん、そんな大袈裟に驚くんじゃあないよ。
白衣野郎が怪訝そうに見てるだろう。
「……? そんなに困るのかい?」
「え、あ、いえ、その……い、一級品なので、他人に預けるのはちょっと……えへへへ」
「あー……これは失礼した。でも、何か事故があっても責任は取らないよ」
「いえいえ、お構いなく~……」
「じゃあやめた、とならない辺り、欲が深いようだね。ふふふ、そういうお客さんは大歓迎だ……」
白衣野郎が視線を外した隙に、ロッカちゃんが私の服の裾をくいくい引っ張った。
(だ、大丈夫なんですか!? 魔力遮断って……賢者様でも危ないんじゃ……!)
とでも考えてくれてるのかな? いやあ、ロリに心配されると嬉しいねぇ。
少し意地悪な心が芽生えたので、ロッカちゃんの手を握っておいた。
いかにも不安そうな感じに。
(……!! い、今からでも帰りましょう! 危険過ぎますって!)
滅茶苦茶心細そうなロッカちゃん、かわいい。嗜虐心が収まらん。
……魔力遮断、ねぇ。
生憎、その手のピンチは一阿僧祇年想定してきた。対策はしている。
それに、邪剣が異能バトルで魔法バトルを上から支配してきたら危なかったんだけど、どうやら地下の邪剣の破片に、そういう超次元概念異能バトルに持ち込める能力は存在しない。
"邪剣探知"で、邪剣の能力はまるっとお見通しなのだよ。
そう、"邪剣探知"が通っているのです。
魔力遮断、私には通じてませんなぁ?
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地下室は薄暗いが、様々な医療器具が並んでいた。
私自身の人体改造に何かと入り用だったもんで、用途とかはそれなりにわかる。
しかし金持ってるなこの白衣野郎。踵を柔らかくするための機械とか、用途限定的なのに滅茶苦茶高級だぞ。
……機械、なんだよなぁ。
よくあるよね、古代文明っつって銃とか出てくるファンタジー。
浪漫だよね。私も好きだよ。
元生徒会長の不審者が魔法の銃なんて使ってたけど、この世界の技術レベルって現状どんなもんなんだろ。森にこもってたからわからん。
まあともかく、思った以上に現代的な手術設備だった。
ロッカちゃんはスラム育ちだから、流石に並んだ道具の用途まではわからないっぽい。
それでも、異様な雰囲気を感じ取ってはいるらしい。
「彼女の欲と照らし合わせると……"栄光と美貌"がピッタリかな」
白衣野郎は、ガチャガチャと邪剣の破片が詰まった箱をかき混ぜて、目当ての破片を見つけたようだ。
……さて、どう攻略したものか。
やはり、白衣野郎の魔法封じは、私には効いていない。
未だに私は透明だし、"鑑定"も"探知"系もバンバン使っている。
まあ、予測できた結果だ。
予測できた理由には、私と魔力を巡るそこそこ長い昔話が関わってくるのだが、本当にそこそこの長さだから、語るのはそのうち。
一阿僧祇年あれば、愉快痛快な昔話もそれなりに持ち合わせているのだよ。
で、白衣野郎の体内には、実に百本近い邪剣の反応がある。
多分、厳選した邪剣スキルの破片を全部、自分に埋め込んであるんだろうなぁ。
下手に突っつくと、思わぬ起爆の仕方をしそう。
先手必勝、先行ワンキルを求められている。
ふーむ。
じゃあ、意地悪しちゃおっかな?
「それでは、そこのベッドに横になって……ッ!?」
お、気づいたか。
白衣野郎を襲った異変。闇医者はロッカちゃんが下手人と判断し、襲い掛かろうとしたが、
「そうは烏賊のお寿司、ってね」
"透明"を解除した私の、斧の一閃で、闇医者の身体は横に真っ二つになった。
ロッカちゃんにあげた凄い斧、凄いだろ!
今だけ返してもらっている。
「がふっ! な、なんだ……何をした!?」
狼狽しながら、床に這いつくばる闇医者の上半身。
下半身はぴくりとも動かない。
「う、動け……何故動かんのだ……!」
本来闇医者は、下半身も独立して動くのだ。
なんせ、骨とか全部、邪剣の破片で補強してるからね。
カイツは邪剣パワーの残りカスだけで、心臓の代わりが務まった。
成人男性の下半身分の破片数なら、そのくらいの芸当だって可能なスペックはあった。
「……な、何者なんだ、貴様……!」
「世界一かわいい幼女」
「……」
絶句する闇医者。おい、そこは肯定するとこじゃあないのか。
「"邪剣封印"と、"心臓マッサージ"の魔法で、今のお前の命は私の手中だ」
「魔法……!? 魔法だと!? 何故だ、魔力遮断が無効化されたとでも……いや、正常に機能している!? それに"邪剣封印"なんて、そんな魔法は」
「そこんとこ、説明するの面倒なんだけど……お前は頭が良さそうだし、ヒント上げたらすぐわかるかな」
「ぐ、ぐおおお……コケにしおってェ!!」
火事場の馬鹿力ってヤツか、腕の力だけで飛び込んでくる闇医者。
"浮遊"を手術台にかけて、ぶつけて跳ね飛ばした。
邪剣の破片箱に頭から突っ込んだ闇医者は、気を失ったようだ。
やれやれ、ヒントすら与える暇がなかったぞ。
「親切心は大事にしなよ。『魔力という概念は私が持ち込んだ』……と言えば、手のひら具合がわかるかな?」
そして、今更気づいたのだが。
ロッカちゃんにまたスプラッタシーンを見せてしまった。
ああ、やっぱりこっちも気絶してる。
私はため息をついて、ロッカちゃんと闇医者を"浮遊"させて、結局店名すらわからなかったエステサロンを後にした。
ああ、邪剣箱は全て、私の森のおうちに"転移"させた。
邪神をやっつけるために必要なので、押収です。
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魔導学園に戻ると、何王子パーティの女性陣が抱き合う感動シーンの真っ最中であった。
「ズウェッタ、ごめんね……」
「わたしこそごめんなさい……どうしても、どうしても不安で……」
「ああ、本当にすまなかった……」
疲労困憊で座り込んでる王子くんと、その肩をポンと叩くカイツの表情も晴れやかだ。
黒幕排除してる間に終わってて、命拾いしたな。
こっちは学校に隕石落とす口実がなくなって、ちょっぴりガッカリ。
「お疲れ様、こっちは用事終わったよ」
「ああ、賢者様。ええと……そちらの男性は?」
「あっ、その人、わたしに邪剣を埋め込んだ人です……!」
「ほぉ」
ズウェッタちゃんの告発で、邪剣の出処も明確になった。
後は闇医者を牢屋にブチ込んでしまおう。
「それで、王子。王国の牢屋借りていい?」
「え、ええ……何をするつもりなんですか、賢者様?」
「大丈夫、寝てるうちに全部片付くから」