麗しの世捨てロリババア生活を邪魔する奴は全員殺す(涙目)   作:がぱおら

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闇に溶けるように消えるアレ

「"絶望と闇"ッ!」

 

 

アイオーとか呼ばれてた黒衣マンが、邪剣で斬りかかってきた。

すげースピードの太刀筋で、滅茶苦茶重そうな一撃。隙もゼロ。

これはラスボスクラス、引き当てちゃったっぽいね。

 

 

「ほいっ」

 

 

私はアイオーの先制攻撃を、闇医者(・・・)で防いだ。

 

 

「なっ」

 

「がはあぁぁっ!?」

 

 

なにせ、デカい杖もロッカちゃんの斧も手元に無いんでね。

"加速"で引き寄せ、"硬化"で強化、手は使わないで魔法で動かす闇医者ビットの出来上がり。

ギャバンの蒸着が三十回は可能なスピードで一連の魔法を実行したもんだから、闇医者には滅茶苦茶負担がかかった。

ま、本来化け物になって夜の王都で暴れてただろうし。私の武器になるのも大差ないって。

3DモデルのデフォルトポーズみたいにT字で固定された闇医者を振り回して、アイオーを弾き飛ばす。

 

 

「くっ……!」

 

「ぐおおお!? な、なんだ!? 僕は頭脳は天才だと自負しているが、肉体強度はそれほどでもないはず……僕の身に一体何が」

 

「デンセルス! こんな時まで考察か!?」

 

 

闇医者に語り掛けるアイオーくん。デンセルスっつーのか、このデフォポーズ武器。

アイオーは攻めあぐねているようだ。

そんなにこの武器の頭脳を重要視してるのか。

 

 

「ふーむ、じゃあ取引できそうだね」

 

「と、取引?」

 

「アイオー、お前はこの武器の頭脳が必要。あと私とどう戦えばいいのか、そもそも勝てるのかと考えている」

 

「……勝つさ。勝たねば死ぬ」

 

「だから取引。まだ死なれても困るんだよ、"絶望と闇"には」

 

「……な、なんだと……?」

 

「もし乗ってくれるなら、こいつは返却するよ」

 

 

私はデンセルスを地下牢の壁にガンガン叩きつける。

 

 

「ぐあああ!!」

 

「ぐ、や、やめろ。わかった、協力したいということか?」

 

「は? 何勝手に自陣営に引き込もうとしてんの? 勘違い男?」

 

 

私はデンセルスの指を一本もいだ。

 

 

「ごあああっ!?」

 

「な、そ、わ、わかった! 降伏、降伏だ!」

 

「おっと、剣は捨てるな」

 

「降伏すると言っているだろうが……!」

 

「お前は今、邪剣スキルをどうにかして使えないか? と考えている。"絶望と闇"は、物理的衝撃をメンタルダメージに加算するパッシブスキルと、影の中を移動できるアクティブスキル。さっき闇医者で攻撃を防がれたから、パッシブのほうは今の状況だと邪魔でしかない。だから、なんとかして影に入る技を復活させたい」

 

「…………」

 

「そ、そこまでバレていたのか……だがアイオー、僕のことは気にするな! 肉体強度はともかく、頭脳の強度は自信がある! それに、"絶望"のほうも封印されていた! 心配はいらない!」

 

「今試そうとしていたのは、一度武器を手放せばスキルが復活するんじゃないか? と、遠隔発動は封じられているのか? だろ? 結論から言うと無駄だが、武器を改めて拾わせる行為には隙が生まれる。なので捨てるな」

 

「……デンセルス、お前、なんて化け物を呼び込んでくれたんだ」

 

「す、すまない……」

 

 

アイオーは観念し、次の瞬間には自分の首を刎ねようとした。

邪剣が首にブチ当たって、甲高い音がした。

 

 

「ふふふ……油断も隙もないね」

 

 

絶望の表情で固まるアイオー。

"硬化"にはこんな使い方もあるのだ!

 

 

「ほんと、実力もメンタルもラスボスだよ、黒づくめ。本来は王子くんが愛と勇気で倒す予定だったんだろうなぁ」

 

「……目的は、なんだ」

 

「希望より先に、私の思惑を気にするの? それってつまり、私の目的次第では、この武器私にくれるってことでいいんだ?」

 

 

デンセルスの腰の辺りをちょっとひねった。

それだけで、デンセルスの腰回りに血が滲んだ。

真っ二つになった身体を無理やり"接着"してるもんだから、無理に動かすと壊れるんだ。

 

「……っ、す、すまない、デンセルス……!」

 

「ぐぅぅ……い、いいんだ、僕はお前の野望のためなら命だって捨てられる!」

 

「お美しい友情ですなぁ。目的はシンプル、平穏無事で孤独なスローライフだ」

 

 

邪剣を滅ぼし、邪神も滅ぼし、王国をもうちょっと脅して、それでまた数万年はスローライフを満喫できるだろう。

私の目的は、最初からずっとそれだけ。

 

 

「どうよ? あんたらの目的と競合する?」

 

「……しない。我々の目的は、『全人類が邪剣を持った世界』だ。孤独に暮らすというなら、衝突はない……」

 

「そうかな、そうかも。じゃ、あんたらの本拠地に案内してもらおうかな」

 

「……な、何?」

 

「望みだよ、望み! 目的は聞かせたろう、私のお願い事は無視か?」

 

「わ、わかった! わかったが……それは無理だ」

 

「は?」

 

 

"激痛"で、デンセルスの全身に地獄のような痛みを走らせた。

 

 

「ぎゃああああああ!? ぐああああああ!! あがああああっ!!」

 

「や、やめてくれ! 違うんだ、やりたくないわけじゃない! 俺たちの拠点には、俺の邪剣スキルがないと帰れない! 邪剣スキルを封印されている状況では帰還手段が無いんだ!!」

 

「んなこと言って隙を作りたいんだろう?」

 

「違う……違うんだ、本当に帰れない……やめろ、やめてくれ。デンセルスを……俺の仲間を痛めつけるようなことは……」

 

「あっ、これ以上刺激したら覚醒されて反撃フラグだな。わかったわかった、今解除するし、こいつも返すから。下半身外れやすくなってるから気を付けて」

 

 

私はデンセルスをアイオーに投げ渡し、"邪剣封印"を解除。

同時に"チェックポイント""リスポーン地点""八王子""ここをキャンプ地とする"等々あらゆる保険魔法を約7万程発動した。

"絶望と闇"の邪剣は、"鈍ら"と"発泡スチロール"で、武器としては無力化した。

 

ここまでやったら、流石にアイオーとやらが何に覚醒しても大丈夫っしょ……。

いやいや、ここで慢心してもいけない。かといって緊張しすぎてもいけない。

私は、私が敗北する運命の流れを作らないように、細心の注意を払わねば。

 

 

「……お、俺の、俺の邪剣が」

 

「あー、スキルは残してるから安心して。さ、案内してくれ。キミらの拠点に」

 

「あ、アイオー……さっきこの牢屋に、3万以上の魔法がかけられた。賢者は用意周到に対策している、諦めるしかない……」

 

「さ、3万……? 一瞬で、そんな数の魔法をかける意味があるのか……?」

 

「それだけ私は、"闇"のほうを警戒してるんだよ。理解できるかな? あっという間に私の手の届かない場所に逃げられる能力が相手なんだ。これでも、世界を管理する神様が警告してこないギリギリを攻めた」

 

 

ちょっぴり嘘。以前脅した女神様から「世界のバランスについて確認があります。折り返し連絡ください」って通知来てる。

 

 

「というか、半分くらいしか認知できなかったのか、私の魔法。これは想像以上に警戒し過ぎだったか……? いやしかし、ラスボスをあっさり倒されたくないなら、これくらいは撥ね退けるハズ……」

 

「な、ろ、6万以上の魔法……」

 

「なぁデンセルス。純粋な疑問なんだが、魔法ってそんなに種類があるものなのか?」

 

「いい質問だ、アイオー! 厳密に分けると魔術の種類は8万程度と言われているが、細かな構造式の違いをどこまで別の魔術とするかで魔術界の意見は分かれているんだよ、人によっては億を超えているとも、そもそも『人智の及ぶ地平に無し』として魔術の数は無限とする説も存在していて」

 

 

滅茶苦茶早口で語るじゃん、デンセルスくん。ちょっと親近感湧くね。

 

 

「はよ"闇"しなよ、アイオー殿。私急いでるの、ロッカちゃんの添い寝が待ってるの。今晩でケリつける予定なの」

 

「わ、わかった。少し暗く冷たい感覚に包まれるが、我慢してくれ」

 

 

地下牢が再び、闇に包まれた。

 

闇が晴れた時。

今度こそ地下牢には、誰もいなくなっていた

闇医者も、黒衣の男も、賢者も。

以上、"実況カメラ"がお送りしました。

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