麗しの世捨てロリババア生活を邪魔する奴は全員殺す(涙目) 作:がぱおら
「たのも~っ!」
バーン、とデカい扉を開け放った。
覚悟を漂わせるロッカちゃん、なんにもよくわかってなさそうなエリーンちゃん、泣きそうな顔のシャリアドネに、"睡眠"中のセベレルデ、気絶させた隠密。
以上6名、入場です。
「はっ、賢者様……」
「申し訳ありません、賢者様。少々込み入った事情がありまして、ご用件は後程……」
王子パーティに、国王様と宰相、数人の貴族とスラムの子供達。
貴族と子供は、養子縁組でもしたのか、やたら仲良しだ。距離が近いなぁ。
そして全員臨戦態勢。武器も防具もしっかり装備して、今から戦争に行くって見ただけでわかる。
「戦争だろう? 賢者様にぜーんぶまっかせなさい!!」
どん、と胸を叩いて威張ってみた。
「……なるほど、全てお見通しですかな。しかし賢者殿、我々は貴女に払える対価を持ち合わせておりませぬ。故にお力をお借りするわけには……」
「いやいや、王国負けたら次は私の森が焼かれる番じゃん! 遅かれ早かれ、私がやることになるんだぞ」
「む、むう……確かに我が国の軍は疲弊しておりますが、負けるとは限りますまい。何度も邪剣の手先となった敵国を退けてきましたぞ」
「待ってる間、私が不安なんだよ! スパイは入り放題だし、いつ崩れるかヒヤヒヤさせようってのか!?」
「そ、それは、しかしですな……」
「そんなに戦争できるって自慢したいなら、コイツは敵陣に返しとくね! 好きなだけ合戦するといい!」
私は、ぐーすか寝ているセベレルデを放り投げた。
「なっ、せ、セベレルデ!?」
「賢者様、何故彼を牢から出したのですか!?」
「国の面子ってヤツのために、『戦争』はお前たちがやらないといけないんでしょ? 戦争用の頭として、コイツには必要十分な能力がある。違う?」
「確かに苦戦はさせられましたが……」
ディッツの言葉を肯定するように、王子パーティの面子が俯いた。過去の激戦を回想しているのだろう。
「いやしかし、帰す必要はないでしょう!?」
「いいや、実はあるんだ。込み入った事情があってね」
「……賢者様は、確かにやることがぶっ飛んでるけど、結果だけ見ると考えなしではないよディッツ。とりあえず聞こう」
テルナがディッツを抑える。まあ、そこまで鼻息荒くしてたわけでもないけどね。
「とりあえず、私は王国の戦争には関わらないでほしい、というのがそちらの要望?」
「……う、うむ。要望、確かに要望と言えるな……」
「それを叶えつつ、私の不安も払拭する方法が存在するのだ!」
考えたのはロッカちゃんだけど。
「ところで、ディッツは言っていた。『邪剣の存在は世界の危機』だと」
「え、ええ。森で確かに言いました」
「世界規模なら、私が手を出してもいいよね?」
「……! も、もしかして、俺達に協力を」
「違う。断じてそうではない」
ここはキッパリ断っとかないとね。
チートハーレムに巻き込むな。
「今から敵陣に放り込むコイツは邪剣は持ってない」
セベレルデを指差し、シャリアドネに目配せする。
たっぷり逡巡した後、シャリアドネは打ち合わせ通りに喋った。
「……わ、私が所持品を検めました……セベレルデは邪剣を持っていません」
「つまり、お前たちの戦争は邪剣とは無関係だ。私は手を出す必要がない。これで安心できた?」
「……どうにも話の行き先がわかりませんな。賢者殿、何をおっしゃりたいのですかな?」
「実はちょうど、邪剣の反応を感知したんだ」
「! ど、どこから……」
「ハリッシア神国の、神都城だそうです」
ロッカちゃんが詳しい地名を説明する。
私はそこが地図のどの辺なのか知らないけど、国の中枢なのは間違いないよね!
「そう、そこ。私は邪剣を破壊しに行く。それきり、この国には帰ってこない」
「え、あの、えっと」
「森に直帰するんだよ。その後、この世の邪剣全てを破壊する儀式を行う」
王の間がどよめいた。
「邪剣を全て破壊……!?」
「そんなことが可能なのか」
「当然すぐにはできない、儀式に時間がかかる。でも多分、三カ月はかからない。今戦争してるとこを潰して、周辺の邪剣も掃除して、その後邪剣との争いは終わる」
「な、なんと……」
「周囲が安全な状態の王国が、三カ月森の番人になってくれるなら、全てにケリがつくぞ。長く苦しかった戦いの終わりだ!」
「おお……!」
「代わりに、私の望みを理解してくれるトップが必要だ。どうだい、ディッツ。私のこと、一応親だと思ってるんだろう? お前なら、私がどんな暮らしを望んでいるのか、理解できるハズだな?」
散々言って聞かせたもんな。
理解できてなかったら、邪神の次に王国を滅ぼすだけ。ちょっと後始末が増える程度。
「……ま、まり、
私の要求をまとめたらこんな感じになった。ところどころ固有名詞がうろ覚えなのは許せ。
「……俺達と共に戦ってくれるわけでは、ないんですね」
「そりゃあ、私ひとりでやった方がずっとスピーディーだし。何より私はディッツ、お前が気に食わないんだ。これはツンデレではないぞ。仮に取引を断るなら、お前の全身を大爆発させて王国を消し飛ばしてもいいくらいには近寄りたくないんだ」
「それって取引じゃなくて脅迫じゃね……?」
スラムの子がなんかボソッと言ってたけど、話はそのうちね。
「……そんなに嫌いなら、何故助けたんだ……」
「闇落ち間際っぽく言われても、赤ん坊の時はまだ性格知らなかったし……ディッツ予備軍は全員殺していいなら、邪剣ついでに赤子を滅ぼす努力はするけど……」
「……そこまで嫌がる相手に、森の番を任せるんですか?」
「おおっと、勘違いするな。本来は森は私ひとりで守り切れるんだ。無理やり名誉職に捻じ込んでやろうという親心を理解してくれ」
流石に王の間の空気が最悪になったのがわかる。
いくらなんでも言い過ぎだろ、みたいな視線が突き刺さってくる。
いやぁ、マジで一片の可能性も残さずフェードアウトしないと安心できないんだよ
「……お、俺は、それでも……」
「待ってディッツ!!」
そこでフォウエンが声を上げた。
そそくさとディッツに近寄り、何か耳打ちし。
ディッツがなんか滅茶苦茶驚いた表情で私をまじまじと見つめてきた。
「……そ、それは、賢者様がど」
「ディッツ!!!!」
滅茶苦茶デカい声でフォウエンが遮った。ディッツが何か失言しかけたのを止めるために"拡声"まで使ったぞ。そこまでする?
「ま、現国王はディッツじゃないんでね。今の王様の意見は?」
「……本当に、ディッツに後を譲るだけで、ハリッシア神国を退け、邪剣も根絶してくれるなら、むしろこちらから褒美を与えたい程の取引なのだが。賢者殿はしがらみを作りたくないから、褒美すら余計なお世話になってしまうのであろうな……」
「おお、良いお返事がいただけるんで?」
「うむ、国も世界も、そこに生きる命も失いたくはない。……ハリッシア神国は気の毒だがな。賢者殿、お頼み申したぞ」
「よーし、じゃあ私はこれでおさらばだ! 皆の衆、寝る前に歯磨けよ! あでぃおーす!」
私とロリ二人、敵二人は、まとめて"転移"で王の間を去った。
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賢者達が嵐のように去った。
王の間は沈黙に包まれる。
「……ああ、国王様。騎士として彼の存在を止められず、不甲斐ありません……」
シャリアドネが首を垂れたが、誰もが「いやあれは止められなかったでしょう……」と同情の眼差しである。
「よい、シャリアドネ。今から玉座の引継ぎで忙しくなるぞ。皆、今すぐ準備だ! 簡略的に済ませた後、ハリッシア神国の先陣に突撃する!」
「……ディッツ」
先刻よりずっと慌ただしくなった王の間で、テルナはディッツに寄り添い、語り掛ける。
「フォウエンはなんて言ってたの?」
「……賢者は同性愛者で、男ってだけで俺は殺戮対象だって……」
「そ、そっか……」
「男に産まれただけでそう思われることがあるなんて、思いもしなかった……」
「いや、賢者様が特別おかしいだけだと思う。元気出して」