麗しの世捨てロリババア生活を邪魔する奴は全員殺す(涙目)   作:がぱおら

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才能の不法投棄

王国攻めの準備を整える神国陣地に、上空から偉い人とスパイを捨ててきた。

"クッション"は使ったし、ギリギリで"起床"もかけたし、心配あるまいよ。

 

王国での用事を全て終わらせた私は、晴れやかな気持ちで空を飛んでいた。

 

 

「わあ~! すごいすごい、地面があんなに遠い!」

 

 

エリーンちゃんがはしゃいでいる。かわいい。

 

 

「ロッカちゃんもはしゃいでいいよ」

 

 

私の背中にしがみついているロッカちゃんは、小刻みに震えている。

高所恐怖症って程ではないけど、けっこうビビってるらしい。

 

 

「い、いえ、私は落ちそうで怖くて……」

 

「そういや、すまんね。幼馴染置き去りにしてきて。神国での用事終わらせたら、ロッカちゃんは王国に帰る?」

 

「幼馴染……? ああ、カイツのことですか。別にそこまでする間柄でもないので……」

 

「本当に? 大丈夫? 無理してない?」

 

 

しつこいくらいに念押ししておこう。他人の考えはわからないものだから。

思考の読み取りでもすれば一発なんだけどね、あれは「難しくした」魔法だから。

使い方次第で人間社会を私の予測不能なものに変化させたり、私に危害が加わる可能性がある魔法はかなりの数がある。

ネクロマンシー、時間操作、無敵チート、隷属、ゲーム的な動作を伴うあれこれ、無限インベントリ、そして心を読む力。他にも様々。

不意を突かれた時に対処がめんどくさいものは、軒並み「コストと使用条件」を非現実的なものにし、「発揮される効果」をリターンに見合わないものにして対策している。

私自身もその一環として、「これ一本で食っていける」系能力の制限に自分で引っかかっている。

こんだけめんどくさくしておけば、ものぐさな私でも軽々には使わなくなる。

こういう技術はどこで漏れるかわからないから、なるたけ封印推奨なわけだ。

"読心"だけはちょっと、他人の本心知ったら寝込みそうだから本気で使いたくないっていう特殊な事情もあるんですけどね。

 

つまりは、ロッカちゃん本当にスラムの仲間恋しくないのかな、ってことなんだけど。

 

 

「まあ、あたしがいないとゾンがドジしないかは不安ですけどね。いてもドジするときはするから、いいんです」

 

「そっかぁ……」

 

「というか、あたしがむしろ不安というか。非力で学もないあたしですけど、本当についてきてよかったんですか?」

 

「ああ、能力の心配はいらないよ。私と比べたら全員アリンコだし。ロッカちゃんは美少女なんだから無条件で一軍よ」

 

「はあ、そうですか……」

 

「私、ロッカちゃん、エリーンちゃん。三人は真の仲間だ! お互い助け合いながら、戦っていこう!」

 

「ええと、できることがあったら言ってくださいね」

 

「エリーン頑張る! 邪神滅ぼす!」

 

 

全員戦意は十二分。

ではいざ、ハリッシア神国へカチコミだ!!

 

 

「まあ神国の方角がわからないんだけどね」

 

「……そうだとは思ってました……」

 

「じゃあ、関係者に聞こう! エリーン、さっきハリッシアの旗覚えたよ! ほら、あそこを行軍してる!」

 

「ナイスだエリーンちゃん! 超特急で行こう!」

 

「あっ、あの、スピードはあんまり出さなきゃあああ!!」

 

 

 

 

 

 

====================

 

 

 

 

 

「セベレルデの奴め、いったい何が目的なのだ……」

 

 

ハリッシア神国第二副将軍ソッコーテは、ぶつぶつと文句を言いながら進軍していた。

追い立てられるように軍を編成し、出撃させられ、目的も何もわからぬままマルヴリアス王国を目指している。

本来ならばこの時間は、愛人と快い汗を流していたハズなのだ。

そこへ、セベレルデの急な内応である。

マルヴリアス王国はかなり混乱していたが、ハリッシア神国とて相応に混乱していた。

 

何もかもが突然動き出しているので、ソッコーテの率いる軍勢は五千程。

これもソッコーテを苛立たせている。

 

 

「本来ならば、俺は万の軍を率いるべき将であるというのに……!」

 

 

不満ばかりが膨れ上がる。

この怒りを王国に向けることだけを考えて、ひたすら行軍しているソッコーテである。

 

そこに現れるのが、全部ぶち壊す賢者である。

 

突然、何かがソッコーテ軍の進軍方向に落下した。

落下、というよりも、激突に近い勢いだった。

地が揺れ、余波で隊列が乱れた。

 

 

「な、なんだ!? 何者だ!?」

 

 

混乱の中でも、人の気配を察知できたソッコーテは、十二分に優秀な将であった。

 

 

「全軍、防御態勢! 奇襲だ! 構えろ!!」

 

 

ソッコーテが声を張り上げ、ハリッシア神国兵が慌てて追従する。

 

 

「魔術部隊、先制攻撃だ! 最大火力でいい!!」

 

「いきなりですか!? マルヴリアス王国相手に温存は……」

 

「考えるな!」

 

 

ソッコーテも剣を抜き、魔術を構築する。

 

 

「"地獄の業火""圧縮"!!」

 

 

火炎を扱う魔術の中でも、特に対軍特化として開発された、殲滅専用の爆炎魔術。

それを、未だ煙の晴れぬ爆心地に"圧縮"し、一撃必殺の対個魔術とする。

 

ソッコーテの本気にようやく緊急性を悟った魔術部隊が、次々に魔術を放った。

 

 

「ひ、"氷刃"!」

 

「馬鹿、氷を使うな! "旋風"!!」

 

「"魔力弾"! "魔力弾"!!」

 

 

次々に着弾する魔術。未だに敵の姿すらわからない。

 

 

「や、やったか……!?」

 

 

ソッコーテは、流石にこの物量攻撃で奇襲も凌げたハズ、と思いたい。

未だに戦場の勘が、警鐘を鳴らしている。

 

そもそも、これは奇襲なのか?

挟み撃ちも横からの攻撃もなく、落下からの追撃もない。

ただ、ソッコーテ軍を警戒させ、魔力を浪費させただけ?

なら、先ほどの人の気配は?

 

 

「俺は何を見落としているのだ……!」

 

 

……気配は、まだするのだ。

じっと爆心地を睨んでいると、人数もなんとなくわかる。

手練れが一人。素人が一人。素人に見せかけた手練れが一人。

 

 

「……"風"」

 

 

突風が吹き荒れ、ぶわっ、と煙が晴れた。

 

 

「……ぬうう、何者だ」

 

 

落下地点にいたのは、三人の少女であった。

ふたりは小奇麗な、街に繰り出した令嬢とでも言うべき服装。

ひとりはローブ姿の、恐らく魔術師。

 

 

「何者なのだ!! 名を名乗れ、我々はハリッシア神国の聖伐軍である! 行軍を妨げる者は死罪であると心得よ!!」

 

 

ソッコーテは虚勢を滲ませつつも、死を覚悟していた。

戦場に場違いな存在がいたら、そいつは死ぬ。死なない場合は、こちらが死ぬ。

あれだけの魔術をぶち込んでも、少女達の服にはほつれのひとつも見当たらなかった。

 

 

「……名乗れ、って言われてるなぁ。どうしよ」

 

「エリーンは、エリーンだよ。……これでいい?」

 

「おー、偉いぞ~。自己紹介できて凄く偉い。飴あげる」

 

「えへへ。飴はいらない」

 

「あの、賢者様……反撃はなさらないんですか?」

 

「道聞きたいだけだし、派手に倍返しするのもね。方向音痴しか生き残らなかったら絶望的だよ」

 

「そうですか……」

 

「ねえ、おじさん達。ハリッシア神国まで案内してほしいんだけど」

 

 

エリーン、と名乗った少女が、剣を抜いた。

ソッコーテはその一瞬で、二度負けを悟った。

剣を抜いた瞬間が見えなかった技量と、抜かれた剣の輝く神聖さ。

そして、今まで少女達が全く武装していなかったことに気付き、三度目の敗北を喫した。

 

 

「……全軍、突撃」

 

 

ソッコーテの内心は、セベレルデへの罵詈雑言と、祖国の無事を祈る気持ちで満たされていた。

 

 

「呪われよ、セベレルデ!! このような化け物を我が国へ突入させてはならぬ!!」

 

 

口に出ていた。

でもどうせ今から死ぬだろうから、最早ソッコーテは取り繕うのを諦めた。

 

 

「奴らを殺せ! 何としてもだ! ハリッシア神国の家族の為に命を捨てよ!!」

 

 

兵達は、ソッコーテの乱心を疑うよりも先に、少女のひとりが口走った言葉によって覚悟を決めた。

「賢者様」。

ハリッシア神国建国以来、その肩書きを名乗る者は死罪と定められている。

産まれてから刷り込まれた価値観が正しかったことを、一般の兵達は今際の際で学んだのだ。

 

 

「う、うおおおお!!」

 

「魔術兵!! なんでもいいから打ち込めェ!! 俺達を貫通するほどのヤツをぶっ放すんだーっ!!」

 

「突撃! 突撃ぃー!!」

 

 

たった三人の為に、全力で襲い掛かる軍隊。

 

 

「"広域入眠"っと」

 

 

最も、全ての覚悟はたった一言で無意味と化したのだが。

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