麗しの世捨てロリババア生活を邪魔する奴は全員殺す(涙目)   作:がぱおら

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チート能力の使い方を練習するパート

「おはよう兵士Yくん。ハリッシア神国の方向を知らない?」

 

「う、ぐ……だ、誰が、賢者などに……」

 

「そうか、残念だ」

 

 

エリーンちゃんが兵士Yの首を刎ねた。

なんだろう、なかなか上手くいかないな……。

 

集団を昏睡させて、ひとりずつ起こして、道案内の意思を聞いて、無理なら殺す。

単純作業を繰り返して駄目となると、方向性が間違っているのかもしれない。

 

 

「ロッカちゃんロッカちゃん。キミの出番だ」

 

「賢者様って、想像以上になんというか……すみません、何でもありません」

 

「奥ゆかしいねぇ。まあその、基本的に人って殴れば言うこと聞くから、搦め手は嗜んでないんだよ」

 

「そうなんですね。それで、兵士さん達ですが、多分賢者様って存在に対して、何か負の感情を教育されてるんだと思います。賢者様が、昔何かやらかした結果かもしれません」

 

「ふーむ、また私なにかやっちゃいましたねパターンかぁ……」

 

「過去はどうしようもないので、兵士さん達は道案内はしてくれないと割り切りましょう。どっちみち、この数がマルヴリアス王国攻めに加勢したら、マルヴリアス王国が危険ですよね?」

 

「あー、生かして帰す選択肢がそもそも最初からなかったね」

 

「はい。……あたしもマルヴリアス王国には仲間達を残してきましたから……命の取捨選択をするなら、ここの兵士さん達を捨てます」

 

「ま、これは私が元からその気だったんで、ロッカちゃんは別に気に病まなくてもいいんだけどね? 一蓮托生、三人揃って真の仲間だ。共犯共犯」

 

「……あれ? エリーンも?」

 

「ああ、エリーンさんには、この兵士さん達を積極的に無力化する理由はないんですよね。すみません、あたしが非力なばかりに、首切り役をやらせてしまって……」

 

「うーん……。ハリッシア神国にはナユリスが酷い目に遭わされたって言ってたから、一応理由も無くはない……のかなぁ?」

 

「ほぅら、神国は敵! 邪悪! 倒しますよ賢者ちゃん直々に!!」

 

「それで、道案内ですよね。賢者様の魔法に、何かこういう時使えそうなものは……」

 

「神国に邪剣あるよ!ってのも、口から出まかせなんだよねぇ……。今、私の手元に、大量の邪剣の破片があるから、邪剣所持者をでっち上げる手段があるってだけで……つまり、"邪剣探知"もうまくいくやら」

 

「"隷属"はどうなんですか? あの偉い人に使ってみるとか」

 

「本人の知識に基づいた動きしかしないからなぁ~。地上歩かせれば日が暮れるし、空中でコンパスみたいに神国の方向向けって言っても、空からの眺めなんて知らないだろうし……」

 

「エリーンには難しいことわかんないけど、軍隊が歩いてきた方向に向かうのは?」

 

「途中で森とか山とか経由されてると、真っ直ぐ向かっても目的地はズレるよ」

 

「……やはり"隷属"が手っ取り早いのでは?」

 

「"隷属"案を真面目に突き詰めてみる? さて……空中ルートは論外として。地上ルートの場合、ネックはスピード。"身体強化""疲労回復"で無理やり歩かせ続けて……」

 

「そもそも、この軍隊の何人がハリッシア神国の方角を知ってるのかな? 軍隊の帰還時には魔術師が先導するのが基本って、ガンドラが言ってたよ。方位を知る魔術とか、国の位置を知る魔術とかがあって、国ごとにどういった手段を使ってるのか違うんだって」

 

「へぇ、そうなんだ。現代魔術戦での魔術運用もなかなか創意工夫されてるんだね」

 

「じゃあ、魔術師を"隷属"させて、方角を知る魔術を使わせれば……」

 

「……多分、対策されてる気はするんだけど、やるだけやってみるか」

 

「対策、ですか?」

 

「私なら、意思に反して拠点の位置を教えた罰として、内臓全部腐らせる呪いをかけておくよ」

 

「そ、そうですか。でも確かに、これが軍隊規模なら、突然自爆したりする可能性も……?」

 

「とりあえず、"防壁"とか駆使しつつ試行錯誤してみよう。魔術師っぽいのは、えーっと……」

 

 

結果だけ報告すると、この策は失敗した。

読み通り、精神操作のシークエンスに入った時点で、魔術師自身の脳を中心に"爆炎"が使用された。

とっさに"モザイク"でロッカちゃんのメンタル保護はできたけど、うーむ。

 

 

「うっ……。す、すみません。やはり失敗しちゃいましたね」

 

「まーしゃあないさ。エリーンちゃんはグロ平気?」

 

「好きじゃないけど、苦手でもないよ」

 

「そっか。しっかし、思わぬところで躓いたなこりゃあ……」

 

「エリーンが一度でもハリッシア神国に行ったことあれば、説明できたんだけど……」

 

「……行ったことがある、かぁ。行ったことないあたし達には無くて、ここの兵士さん達にはある情報……」

 

 

ロッカちゃんがしばし沈思黙考してから、顔を上げた。

 

 

「賢者様、視力を上げる魔法ってお持ちですか?」

 

「視力? まあ、"身体強化"のいちカテゴリとして内包されてるね」

 

「エリーンも使えるよ」

 

「どの程度遠くまで見えますか? 例えば、空中に上がって、マルヴリアス王国の方向を見た場合、どのくらいまで見えるのか……」

 

「エリーンは流石にそこまで遠くは見えないよ、ごめんね……」

 

「よしよし、私に任せなさい。どのくらい見えるかって言われたら、城壁の染みまで見えるとは思うよ。合戦始まってたら実況もできる」

 

「素晴らしいです。では、兵士さん達に"隷属"をお願いできますか?」

 

「お、使い道決まった? でも対策されててまた爆発するんじゃ……」

 

「末端の一兵士まで施されるような対策なんでしょうか? 多分、機密の多い魔術師が自分にかけている、保険のようなものだと思うんです。魔術の心得が無ければ、大丈夫なハズです」

 

「なるほど確かに。足軽に施してもコスパ悪いか。それで、"隷属"で何をやらせるの?」

 

「絵を描いてもらいましょう」

 

「絵っ!?」

 

「……紙と筆はどうするの、ロッカ?」

 

「あー、そのくらいは私がちょちょいと用意できるよ。よーし、今森の奥から"転移"で取り寄せるんでね。その間、何を描かせるつもりなのか説明よろしく」

 

「お城の絵です。ハリッシア神国のお城を描いてもらいます」

 

「城のイラストぉ? ……まさか"遠視"で、城を探す気なの?」

 

「はい。国旗のマークで探してもいいんですが、見えるように掲げているとも限りませんから。現にあたしは、リカラ商公国ではそれらしい旗を見た記憶がありませんし」

 

「なるほど、なんなら軍旗と国旗が違うパターンもありうるね。その点不動産ならそうそう形は間違えない! 流石ロッカちゃんだぜ! エリーンちゃん、撫でて差し上げろ」

 

「はーい。ロッカ、なでなで」

 

「わっ、その、ありがとうございます。あとは絵心が死んでない兵士さんに当たらないように祈りましょう」

 

「……画伯対策に、五人くらい"隷属"しておこうか……」

 

 

うーむ、これぞ美しきチームワークだ。

私達三人、ひょっとして最強なんじゃないか?

 

 

 

 

 

 

====================

 

 

 

 

 

 

賢者が兵士達を操っている間、ロッカとエリーンは手持無沙汰となった。

知り合ってから数時間の間柄で、まだ緊張感は残っているが、賢者に振り回される者同士ある種のシンパシーも感じていた。

 

 

「……エリーンさん、年齢とかって聞いても大丈夫ですか?」

 

「年齢? えっと、実はわからなくって……デンセルスは11くらいって言ってた」

 

「わからない……実はあたしもそうなんです。スラムで育ったから、だいたいこのくらいかな?ってのがあるだけで……でも、年上みたいですね。遅くなっちゃったけど、よろしくお願いします」

 

「あ、うん、よろしくね。ていうか、あんまり堅苦しくされると、エリーンも困るよ。仲間とは気さくに話すものだし」

 

「仲間……うん、確かに仲間だね。エリーン、って呼んでもいいかな」

 

「うん、エリーンもロッカのことはロッカって呼ぶ! えへへ、同年代のお友達できたのはじめてだ~」

 

「そうなの? そうなんだ……。エリーンは、なんで賢者様に連れてこられたの?」

 

「組織が壊滅させられて、エリーンを邪神討伐に協力させてくれるって、賢者さんが言ってくれて、あっ仲間のお墓も作ってくれたんだよ」

 

 

寝ている間に賢者が何をしていたのか、想像してロッカは頭を抱えた。

 

そんな会話を眺めるロリコンロリババアは、

 

 

「あ"~……癒し。脳が回復する。あれぞまさしく世界平和.zip……」

 

 

鼻の下を伸ばしていた。

魔力操作がおろそかになった結果、兵士がひとり爆散した。

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