麗しの世捨てロリババア生活を邪魔する奴は全員殺す(涙目)   作:がぱおら

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最終決戦前夜

ロッカとエリーンは、まず屋外に設置された巨大な水槽と、そこに浮かんだ巨大な肉塊に面食らった。

 

 

「ああ、その脳みそが今、邪剣を一か所にまとめる魔法を自動でプログラミングしてるんだ。そろそろ出来上がる頃合いじゃないかな?」

 

「へ、へえ、そうなんですか……これが脳……?」

 

「す、すごいね賢者さん」

 

「ちょっと待っててね、人招くことのない家だからさ、椅子が無いんだよ~。二人分今作るから。畑でも眺めて待っててね~」

 

 

そう言い残し、賢者はログハウス風の小屋へ入っていった。

周囲を見渡すと、森の中の拓けた空間に、畑と小屋と異様な水槽のある空間だった。

水槽だけが異常で、それさえなければ、隠者の隠れ家として通用する風景に思えた。

 

 

「……ロッカ、見て。案山子が立ってる」

 

「うん、そうだね、案山子だね」

 

 

ふたりとも、コメントに困っている。

 

 

「……賢者様、いろいろブッ飛んでるから、もっとこう、捻じれた魔女の住処みたいな家だと思ってたんだけど……」

 

「エリーンも、溶岩に囲まれた魔王の城みたいなイメージがあった……」

 

「想像以上に、普通にのどかな隠れ家って感じだね」

 

 

庭先で小鳥が鳴いていた。

 

 

 

 

 

 

 

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「えっと、賢者さんにしては時間がかかったね?」

 

「座高とか気にしてあーでもないこーでもないと四苦八苦してた。どう? 座っててお尻痛くなったら言ってね」

 

「はーい」

 

 

エリーンは馴染んでいるが、ロッカは落ち着かない。

小屋の中まで、普通の家だった。

人体標本とか謎の薬品とかで汚部屋になってるイメージがあったのだが。

 

 

「……あの、賢者様。失礼なことを言ってもいいですか?」

 

「ん、いーよいーよー」

 

「えっと、なんだか思ったより奇麗ですね、お部屋」

 

「え、掃除できないガールだと思われてた……?」

 

「賢者さんのお掃除って、丸ごと消滅させて終わりって雰囲気あるよね」

 

「包み隠さず言うと、エリーンと同じ感想です。今さっき急いで掃除したって様子でもありませんし……」

 

「……そ、そっか……。うーん、私けっこう奇麗好きなんだけどなぁ」

 

「そういえば、お身体からもなんだかいい匂いしてましたね。お花の匂いというか」

 

「ん、お風呂入ってるからね。……お風呂くらいあるよね? 中世ファンタジーだし」

 

「『シャドウ』にはあったよ、大浴場。ナユリスがいつも身体洗ってくれてた!」

 

「リカラ商公国は、実は衛生管理が徹底されてて。あたし達スラムの住民も、定期的に入浴を義務付けられてました」

 

「えっ、それ凄いね。本気で凄い。あの催眠アプリチャラ男、実は優秀な為政者だったのか」

 

「でも、お風呂入ってるくらいでお花の匂いはしないと思います。何か秘訣があるんですか?」

 

「おー、それ聞いちゃう~? やっぱロリも『おなご』だねぇ。じゃあ、異世界技術チートしちゃうか! 石鹸と入浴剤でふたりを丸洗いだ!」

 

 

なぜか話の流れで、小屋の奥にあるお風呂に三人揃って入ることになった。

まだ日は高い。

 

 

 

 

 

 

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水鉄砲で遊んでいたら、だいぶ長湯になってしまった。

 

 

「凄いですね、この水鉄砲という道具。中に酸でも入れたら、かなり強力な武器になるんじゃないですか?」

 

「ロッカちゃんのその発想が怖いよ……。ロリのお風呂遊びセットなんだから、悪用とか考えずにキャッキャと遊んでほしかった」

 

「エリーン、銃は苦手だなって思い知った。剣を極める」

 

「あっ、そういや風呂上りには牛乳だよね。ちょい待ち、森の魔法生物から採取するよ」

 

 

バスタオル一枚の賢者が、ぺたぺたと無防備に小屋の外に出て行った。

 

 

「あっ、そんな姿だと風邪を引いて……行っちゃった」

 

「お風呂、楽しかったね、ロッカ」

 

「ん、そうだね。楽しかった」

 

 

公衆浴場とは比べ物にならない多機能風呂であった。

なんかすごい泡まみれになってたし。

 

 

「……賢者様も、女の子なんだなぁ」

 

「そうだね~。エリーン、びっくりしっ放しだよ……って待ってロッカ。女の子は半裸で外に出ていかないよ!?」

 

「あっ。……まあ、森の奥だし、いいんじゃないかな」

 

「それもそうだね!」

 

 

思考がゆるゆるになっていくふたりだった。

 

 

 

 

 

 

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しかして、賢者はやはり賢者である。

 

 

「あ、お夕飯作らなきゃだ……」

 

「賢者さん、お料理してくれるの?」

 

「……えっと、私料理チートは専門外なんだよね……ごめんね……」

 

「……料理、苦手なんですか?」

 

「自分が食べれたらいい、というか、食欲が存在しないんだよね。生理的欲求って、付け入る隙になるから、食欲が発生しないように身体を弄った」

 

「ええ……」

 

 

ロッカとエリーンは顔を見合わせた。

 

 

「……あたしも、料理はできないんですよ。スラムで炊事なんてする余裕なかったから……」

 

「エリーンは、ナユリスにちょっとだけ教わった。賢者さん、畑のお野菜使っていい?」

 

「ん、どうぞどうぞ。お肉が必要なら狩ってくるよ」

 

「じゃあ、エリーン達三人で食べきれそうな量のお肉をよろしく!」

 

「りょーかーい。ロッカちゃんはエリーンちゃんのお手伝いよろしく!」

 

 

賢者は、またも姿を消した。

 

 

「……信頼されてるのか、どうなのか……」

 

「ロッカ、どうしたの?」

 

「ん、賢者様、あたし達がなんか盗んで逃げたりしないのかなって、疑問で」

 

「うーん? どうなんだろ?」

 

「警戒心が全然ない。あんなに森に誰かが入ってくるのを恐れてたのに」

 

「……多分、エリーン達が賢者さんのお気に入りってだけじゃない?」

 

「……あんまり難しく考えることでもないか。エリーン、お手伝いさせて。まずは何をすればいい?」

 

 

 

 

 

 

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ジャガイモの皮を剥く。

 

 

「……これ、結構難しいね」

 

「うん、指切らないように気を付けてね」

 

 

賢者は帰ってこない。どれだけ大物を狩ろうとしているのか。

 

 

「……ねえ、ロッカ。ロッカは、邪神倒したら、どうするの?」

 

「えっ、今その話? うーん……賢者様の庇護下で暮らしたいな。死にたくないから、一番安全なとこにいたい」

 

「ロッカって、思ってたよりも自分本位だね……」

 

「まあ、ね。でも、賢者様はたぶん一人暮らししたいと思ってるだろうから、何か便利な魔法を教えてもらって別れる、くらいが落としどころかも」

 

「そっかぁ。ロッカはいろいろ考えてるんだね」

 

「エリーンは?」

 

「エリーンは……どうしよっか。賢者さんのお世話になる気満々だったけど、ロッカが言うからには、あんまり近くにいないほういいのかな?」

 

「うん。善意をストレスに感じるんだってさ」

 

「ふーん……? 不思議だね?」

 

「うん、不思議。……ああ、じゃあさエリーン」

 

「なぁに?」

 

「もうしばらく一緒に居ようよ。あたしはエリーンがいると心強いな」

 

「あ~、そっか、そういう手もあるね! あー、でもエリーン、お墓の近くに住みたいんだ。ロッカを付き合わせるのもなぁ……」

 

「お墓の? 墓守したいってこと?」

 

「そうなる、のかなぁ? まあ、賢者さんが毎年お墓参りの時期には付き合ってくれるって言ってたから、そこまで気にしすぎなくてもいい、かも?」

 

「なるほど……毎年賢者様に会える立場なら、安全だよね?」

 

「えっ、気にするのそこなんだ。むむむ、でもエリーンもお友達と一緒に暮らせたら嬉しいな!」

 

「前向きに計画立てていこうね」

 

「ね! えへへっ」

 

 

賢者はこの空間に居合わせることができなかったことを、生涯悔いるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

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「……賢者様、食べないんですか?」

 

「うん、ふたりが食べてるとこ眺めてたら満足」

 

「エリーン、賢者さんの感想聞きたいなぁ」

 

「おお、それもそうだ! 食レポしちゃおう! ずずず……」

 

「……どう?」

 

「うん、シチューの味。お店出せるよ!」

 

「お店……お店かぁ」

 

 

和やかな雰囲気で、賢者の家での夕餉は終わった。

口元を拭きながら、賢者が語る。

 

 

「ご馳走様。さて、明日は邪神との決戦だ! 枕投げとかしないで、さっさと寝るように!!」

 

「はーい。……えっ!?」

 

「け、決戦!? 急に!? 明日!?」

 

「うん、"邪剣収集"が完成した。邪剣騒動に決着を着けるぞー! えい、えい、おー!」

 

「……え、えいえい、おー……?」

 

「えいえいおー……って、賢者様、そんな、いきなり、邪神って神様ですよね!? そんなお気楽でいいんですか!?」

 

 

賢者は、下手くそなウィンクをしながら返した。

 

 

「大丈夫。私、世界最強のロリババアだから」

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