麗しの世捨てロリババア生活を邪魔する奴は全員殺す(涙目)   作:がぱおら

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理不尽、例外、規格外

結局、冒険者くらいしか仕事はなさそうだ、ということで落ち着いた。

 

 

「賢者様は目立たれると怖いとおっしゃってましたから、八百屋だってボツですよ。賢者様のお野菜なんて、どんな健康被害をもたらすかわかりません」

 

「健康被害って、健康になり過ぎってことでいいんだよね……?」

 

 

こんなシチュエーションで「私が弱すぎるってこと?」系の発言をするなんて思わなかったよ。

 

 

「どこかでバイトも駄目だね。賢者さんが怒る可能性考えたら、接客業とか、上司が存在する仕事とか、エリーン達怖くてとてもできないよ」

 

「はい……ごめんなさい……沸点低くてすみません……」

 

「鍛冶屋に武器屋、おしゃれなカフェ、服飾店に宝石店にアクセサリーショップ、魔導具屋、ペットショップ……賢者様の提案はだいたいが、賢者様の力を借りないととても手が出せませんよ」

 

「身寄りのない二人暮らしって、大変なんだねぇ……」

 

 

私は思わずしみじみと呟いてしまった。

 

 

「その点、冒険者はいろんな人が集まりますから、あたし達もちょっとワケ有程度に収まると思います。欲の深い悪人に狙われる可能性こそありますが、その場合はあたし達も全力で跳ね除ければ良い」

 

「いざとなったら賢者さん頼みになるけど、悪い人相手ならエリーン達も気兼ねなく賢者さん呼べるから、却って気持ちは楽だよね」

 

「舐め腐った貴族のボンボンとか、ランク高いけど不良のパーティとかなぁ……」

 

「なるべく目立たないように、簡単な依頼を受けて過ごすように心がけます。どうしても長年やった場合、成長して強くなった結果として隠しきれなくなるかもしれませんが……」

 

「急成長しなければ、そういうものだって受け入れられるよねきっと。うん。大丈夫大丈夫」

 

 

そんなこんなで、村に到着した。

獣避けの柵があるくらいで、のどかな雰囲気だ。

 

 

「ん、んんん? おぉい、お嬢ちゃん達。見かけない顔だが、どこから来たんだい?」

 

 

村周辺の警備をしているらしい、軽鎧のあんちゃんが声をかけてきた。

私はロッカちゃんの影で縮こまっておく。知らない男の人と話したら全身緑色になって死ぬってママが言ってました多分。

 

 

「どうもこんにちは。あたし達、最近そこの原っぱで……えーと、古くてボロボロだった空き家を見つけまして。そこに住ませてもらっています」

 

 

自己紹介時点でようやく気付いた。

あんな見晴らしいい野原に突然現れた家に勝手に住んでるって、絶対不審過ぎる。

 

 

「へー、空き家があったなんてねぇ。知らなかったよ。お貴族様の別荘にしちゃ、辺鄙な場所だし、多分持ち主はいないだろうさ。安心するといい」

 

「よかった。あたし達身寄りも持ち合わせもなくて、冒険者ギルドで仕事をしたいんです。この村にはありますか?」

 

 

ロッカちゃんは「引っ越ししたり、宿を取ったりする余裕はない」と含ませつつ、自然に冒険者志望だと明かした。なんて高度なコミュニケーション能力だ。チートか?

 

 

(賢者さんが人見知り過ぎるだけじゃないかな)

 

 

エリーンちゃんに正論を耳打ちされた。いい声で背筋がぞくぞくした。

 

 

「そいつぁ……大変だったなぁ。どこの出身だい?」

 

「リカラから。馬車を乗り継いで来ました」

 

「ほぉ~、リカラとは遠路はるばるだな! ギルドは実は、この入口とは正反対の場所にあるんだ。大きな道をずーっと真っ直ぐ行けば着くぜ」

 

「ありがとうございます。あたしはロッカ、こちらはエリーンです」

 

「エリーンだよ。よろしくね」

 

「俺はキーウィスだ、登録が受かったら後輩だな。よろしく頼むぜ。……その子は?」

 

「……彼女は、リカラから一緒に逃げてきたんですけど、何か辛いことがあったみたいで。心を閉ざしています」

 

「……そうか。大変だったんだな」

 

 

大変なんだよ、そりゃあもうね。

にしても、この男の話し方だと、この村のギルドは平穏らしい。偉ぶってるヤバい冒険者とかいたら、「今日はやめとけ」とか言われるだろうし。

助かった。異世界名物、絡んでくるチュートリアル冒険者は、この村にはいないらしい。

 

 

「文字は書けるのか?」

 

「あたしが書けます」

 

「賢いねぇ。んじゃ、またな!」

 

「はい、ありがとうございました」

 

 

男と別れ、入村。

見慣れない子供に向ける視線を感じつつ、しばらく歩いた。

見ないでください。シャンプーが目に入る魔法かけるぞ。

 

 

「賢者様、さっきの説明で、だいたい賢者様は名乗らず、喋らずに済みます。よろしいでしょうか?」

 

「うん、ロッカちゃんのやりたいようにしちゃってよ。私はフェードアウトする存在だからさ」

 

「そうですね。しばらくした頃に、朝起きたら突然いなくなっていた、と説明させてもらいますね」

 

「嘘は言ってないし、いいんじゃないかな」

 

 

朝も昼も夜も、突然いなくなれるだけだ。

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

「ハリッシア神国への調査依頼ねぇ……滅亡したって噂は本当なのか?」

 

「ゴブリン集団突然死の謎解明ぃ? 俺達は学者様じゃねぇんだぞ」

 

「心臓に刃物を埋め込む闇医者の捜索なんて、そんな恐ろしい依頼やりたくないわよ!」

 

「マルヴリアス王国まで行く依頼はあるかのぉ? 王が代替わりするとか聞いたんじゃが……」

 

「元気に戦争してた国々が、突然一斉に和平を結んだんだ! 商売するならこのチャンスは逃せないんだ、頼むよォ!!」

 

 

ロッカちゃんの視線が痛い。

 

 

「……私、また何かやっちゃいました……?」

 

「そうですね、みんなが迷惑してますね。もうやらないなら許しますよ」

 

「ちょっと約束できない……」

 

 

冒険者ギルドが慌ただしい。

大袈裟な依頼がいくつも張り出され、そのどれもが重要案件とされているみたいだ。

……突然心臓がズタズタになって死んだ、みたいな話は聞こえてこない。邪剣の破片回収は上手くいったみたいだ。

邪剣の洗脳から突然解放された偉い人達は大変みたいだけど。

 

 

「じゃあ、冒険者登録しよっか」

 

「……いつぞやのロッカちゃん、こんな小さい子が冒険者やったら駄目って言われてなかった? 本当に大丈夫?」

 

「他に稼ぐアテが無いことをちゃんと説明すれば大丈夫ですよ。安心してください」

 

 

そんなこんなで、ようやく異世界テンプレート、冒険者登録のお時間です。

まあ、私は登録しないから関係ないんだけどね。

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