麗しの世捨てロリババア生活を邪魔する奴は全員殺す(涙目)   作:がぱおら

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冒険者カードって基本的に高性能だよね

「はい、それでは次の方……、あら?」

 

 

冒険者ギルドの受付の人がイケメンだったパターンってあるのかな。

私達三人の目の前にいるのは、王道を外さない、美人の受付嬢さんである。

 

 

「あらあらあら、可愛いお姫様達ね。どうしたの? 見かけない顔ね?」

 

「最近村の外に引っ越してきたんです。手持ちも身分の保証もないので、冒険者になりにきました。登録をお願いします」

 

「あ、あらあら~……大変な思いをしたのねぇ。でも、冒険者でなくても、どこかのお店に住み込みで雇ってもらったりとか……」

 

「そういった『どの店なら信頼できる』という情報も伝手もないんです。人脈作りのとっかかりも兼ねて、冒険者として生活費だけ無理せず稼ぐつもりです」

 

「そう……。この村はいい村よ、冒険者をやってるうちにきっと好きになれるわ」

 

「ええ、今もいい村だと思っています」

 

「……ふぅ。それでは、こちらの用紙に名前と性別を書いてください。文字が書けない場合は代筆も可能です」

 

「私が書けます、心配してくださってありがとうございます。あ、この子は登録しません」

 

「そのローブの子? わかったわ。……縮こまっちゃって、可哀想に。よっぽど酷い目にあったのかしらね……」

 

(……エリーンちゃん、書くのって名前だけでいいの? 職業とか、住所とかは?)

 

 

疑問に思ったことは、とりあえずこそこそとエリーンちゃんに聞いてみよう。

こういう冒険者登録って、ジョブとかスキルとかも書いたりするもんじゃないのかな?

 

 

(住所は基本的に不定だし、職業って言われても……必要なのかな?)

 

(盾持ったタンクとか、魔法使い等の後衛職みたいな、ポジション登録は? 野良パーティ組むのに不便じゃない?)

 

(何それ? 賢者さん、不思議なこと言うね~。そういう持ってる技術は個人情報だから、教えたら危ないじゃん。それに、前に出てみんなを守れるくらいムキムキの人なら、いざって時には弓を使っての遠距離攻撃も、十分な威力でできるよ。"身体強化"できる魔法使いも同じだね。『剣一本で戦うつもりでいても、魔物に石を投げて倒す場面はある』って、ガンドラも言ってたよ)

 

(そういうもんかなぁ……)

 

(そんなに細かくいろいろと情報登録しても、冒険者は毎日生まれては消える危険な職業。情報でギルドがパンクしちゃうよ)

 

 

なんか……夢が無いな……。

私がガッカリしている間に、ロッカちゃんの冒険者登録は終わったようだ。

さて、気を取り直して魔力測定とか、実力テストとかだね!

ロリっとランク破壊していこうぜ!!

 

 

「……ロッカちゃんに、エリーンちゃん、ね。はい、問題ありません。指名手配リストとの"照合"も終わりましたので、冒険者カードをお作りしますね。番号でお呼びしますので、椅子にかけてお待ち下さい」

 

「わかりました」

 

 

……あ、あれ?

 

 

「……え、エリーンちゃん? ステータス確認は? 魔力測定器破壊は? いきなりSランクスタートは!?」

 

「すてえたす……??? 賢者さんが見てきた時代には、そういうものがあったの?」

 

「しないんだ……。それもコストの問題……?」

 

「ていうか、ランクって。ふふ、賢者さん、冒険者の格付けなんて意味ないよ。いずれは騎士なり、魔法の先生なり、なんでもいいから定職を見つけて冒険を辞めるんだよ? それまでの繋ぎなんだから。冒険者しかできないって人は続けてもいいし、ふらっと旅に出たい時とかお金が少し足りない時とかに、昔の冒険者カードを使って依頼を受けてもいいんだし」

 

「……なんて、なんて夢がないんだ……!」

 

 

この異世界の冒険者とは、食い詰め者向けのセーフティネット以上の意味合いを持たないらしい。

 

 

「つまり、Sランクカードを門番に見せて顔パス!とか、そういうのないんだね」

 

「そんな権限あるなら、冒険者ギルドは世界を支配出来てるよ。色んな国にあって、裏で情報を共有してるんだよ? 国公認の間諜じゃん、それ」

 

「言われてみればそれもそうだわ。……ふたりが目立たないなら、何でもいいや……」

 

 

いやまあ、目立ちたくないって言ったのはこっちなんだけど、ここまで丁寧にハシゴ外されると、ちょっと承認欲求が鎌首もたげるよね。

肩透かしが凄くて、モヤモヤが収まらないが、致し方あるまい。

千年もすれば、また様変わりした別の組織になってたりするかもしれない。今回はこれで助かった、でいいんだ、うん。

 

 

「賢者さん、滅茶苦茶不満そう……」

 

「だってさぁ、お約束じゃん。エリーンちゃんの最強聖剣チート百合物語の第一歩なんだよ? 寂しくない?」

 

「物語になるほど目立ったら、賢者さん困るじゃん」

 

「それは……そうなんですが……」

 

 

論破された。わからせ食らって悔しいよぉ。

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

そんな解説のあった冒険者ギルドの、冒険者カードが、そんなに高性能な品であるハズもなく。

鉄板に名前とバーコードっぽい呪文?が刻印されたものである。キャッシュカード代わりにお金が貯まるシステムとか、狩ったモンスターが登録される機能とかは一切無い。ランクが無いから、ゴールドとかプラチナの板にも進化しない。

代わりに、緊急時にはナイフや火打石代わりになるらしく、丈夫で厚いのに鋭い。実用性重視なんだ……。鋭利さを残しつつ、擦り減りに強い厚い作りなのは芸術的だとは思うんだけどさぁ。

 

 

「これにて手続きは終了です。……文字が書けるなら、手紙の代筆依頼があるわよ。畑の除草作業とか、少し危ないけれど、先月腐って壊れた柵の修繕依頼とか、肉体労働もあるわ」

 

「ありがとうございます。では柵の修繕を……」

 

「ま、待ってよロッカちゃん」

 

 

思わず口を出してしまった。受付嬢さんの「喋れたのかお前」な目が辛い。

 

 

「……どうしました?」

 

 

他人がいる状況では賢者様、とは呼ばないでいてくれるロッカちゃんの優しさ。

 

 

「ま、魔物討伐とかしようよ。バリバリ稼げるよ」

 

「……うふふ、魔物討伐、ねぇ。その子、ふたりの腕っぷしを随分と信用してるのね」

 

「え、ええ、まあ。いろいろありましたから」

 

「でもね、今は生憎、魔物狩りは必要ない時期なのよね。毛皮も肉も、牙とか骨とかの素材も十分。何か異変があったら頼むかもしれないけれど、今のところそれらしいのはゴブリン全滅くらいで、それもゴブリンが死んでるだけで手がかりゼロのくたびれるだけの依頼だし……」

 

「そ、そうなんですね。ゴブリンが。大変ですね」

 

「本当にねぇ……。オーク牧場の餌代が高騰して、お肉が少し高くなったのは困るわね。ま、ともかく立派な斧を担いでる上に頼られてるみたいだし、緊急時はお手伝いよろしくね」

 

「はい、お任せください」

 

「エリーンも頑張るね」

 

「頼もしいわねぇ、ふふふ。じゃあ、柵修理の依頼でいい?」

 

「はい、受託書の発行をお願いします」

 

「はいはーい、今用意するわね~」

 

 

……ぐぬぬぬ。

なんてチートのし甲斐のない異世界だ……!

ほんのちょっぴり、自重しない異世界転生先輩諸兄の気持ちが理解できた。

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