麗しの世捨てロリババア生活を邪魔する奴は全員殺す(涙目) 作:がぱおら
ふたりは柵の修理を立派に終えた。
私はぼーっと眺めていた。
何もトラブルはなかった。
平原の一軒家に帰ってきた。
何もトラブルはなかった。
森の奥から野菜を"転移"させて、エリーンちゃんが調理した。
何もトラブルはなかった。
三人で川の字になって、並んで寝た。
大きなベッドは女の子の憧れだ。これだけは譲らず、私の責任で設置した。
ロッカちゃんは苦笑していたし、エリーンちゃんははしゃいでいた。
流石に肉体労働で疲れていたのか、ふたりともあっという間にすやすやと眠った。
何もトラブルはなかった。
朝日が昇って、ふたりはギルドへ行く。
私は念のためついていく。
女の子ふたりでもできる仕事を中心に選び、順調にこなした。
何もトラブルはなかった。
一週間経った。
何もトラブルはなかった。
「賢者様。お薬の効果を消してもらえますか?」
訂正。夕食後にちょっとだけあった。
エリーンちゃんは皿を洗っている。
「……薬?」
「あたしにくれた、お水とか飴とか……。多分、賢者様が、あたしの為を思ってくれたものですよね」
「……」
半分善意、半分欲望でした。
「きっと、少しだけ賢者様と肉体のつくりが近くなる薬だったんですよね。あたし、昔から髪が伸びやすい体質だったんですけど、ここ一カ月は全然伸びてなかったんです」
「そんな体質ある???」
何の伏線も脈絡もないところからバレていた。
「エリーンは、飴を断ったって聞きました。あたしも、エリーンと同じ身体がいいです。あたしでは、賢者様と同じ時間には生きられません」
「えええ……案外なんとかなるよ? 多分。ロッカちゃんメンタル強そうだし……」
「賢者様のおかげで、命と貞操を救われて、立派な神器をいただいて、素敵な一軒家ももらいました。これらを大事にするので、その代わりに薬を無効化してください」
「アクロバティックな取引だね、そりゃまた」
すっかり「私の厚意はふてぶてしく受け取るくらいがいい」ってバレてる。プレゼントに喜ぶ幼女の姿こそ最大の褒美ゆえに。
……まじかー……。ようやく、悠久の時を共に歩める、ロリババア仲間ができると思ったんだけどなぁ……。
「……超寂しい。やだよ~、一緒に大陸の移動見物しようよ~……」
「またの機会にしましょう」
「私に社交辞令は通用しないぞ! 絶対いつか一緒に見るんだぞ!!」
「賢者様。今までありがとうございました」
……解除して、ロッカちゃんが成長したら。
あるいは、エリーンちゃんが大人になったら。
私は成長したロリも変わらず愛せるタイプのロリコンでは、ない。
あと数年。本当に僅かな時間だけ。
私がロッカちゃんとエリーンちゃんを、惰性ではなく助けられるのは、ほんの数年。
ロッカちゃんは、共同生活の相手に選んだエリーンちゃんと、条件を同じにすることを選んだ。
私の麗しの世捨てロリババア生活を邪魔する可能性が、エリーンちゃんには残る。
簡易不老不死飴を受け取ってくれなかったから。
だからロッカちゃんは、いつか老いて死ぬように治されようとしている。その時が来たらサッパリ縁が切れるように、私の気持ちに寄り添って。
私が、永遠の命を取り上げて、いつか来る死を与える。
ロッカちゃんを殺すわけだ。
「すっっっっごく嫌だ……ロッカちゃん美幼女なのに、もったいないよ……エリーンちゃんを説得して、一緒に不老不死になってくれない?」
「エリーンは、仲間の人達と同じお墓に入りたいと思いますよ」
そうだよなぁ。そいつら全員、私が殺したわ……。
「……しわしわのお婆ちゃんになってから、返してって言っても、駄目だよ」
「そんな無茶を言う人、賢者様ならイチコロでしょうに」
「そんな大人にならないでね、ロッカちゃん~……」
泣きながら、ロッカちゃんの不老不死を解除した。
超絶悔しい、勧誘失敗してしまった。だからコミュニケーション能力の無い私に交渉は無理なんだってば。
「うぇぇぇ……! ぐす、ぐす。もうやだ、誰も私とロリババア仲間になってくれない……こんな世界嫌だ、一万年くらい不貞寝する……」
「おお、えっと、よしよし。そうですね、寝て起きたらサッパリしますよ、きっと」
「ああぁぁぁ……!!」
超大声で泣いた。
エリーンちゃんも飛んできて、ふたりで私を撫でたりして、慰めてくれた。
気遣いできるロリふたりを、仲間にできなかった。
寝込むしかない。
「賢者さん、気持ち悪い人だとは思うけど、エリーンは助かったと思ってるよ。短い間だったけど、ありがとね」
「賢者様、何から何までありがとうございました。お元気で」
でも、あれだ。
頑張ったご褒美なんだろうね、幼女ふたりの胸に挟まれて、ギャーギャーと泣けるなんて。バブみ。
よく頑張った私。偉いぞ私。おめでとう私。
朝日が昇った。
何も、トラブルはなかった。
私は森の奥の家に帰って、楽しい世捨て人生活を再開した。
……いいもんなんだけどなぁ、不老不死幼女生活。
いつか、誰か理解してくれるだろうか。
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いい天気だ。
ロリババアハウスに集まった、魔法生物の小鳥達に餌を与える。
この餌に含まれる強化魔力によって、小鳥の身でも一騎当千の魔法生物に育ち、ロリババアの森を守るのだ。
「たまに食べさせてもらうけど、それまでは元気に育つんだぞ~」
ちゅんちゅんと鳴きながら餌をついばむ鳥肉達。
なんか卵かけご飯食べたくなってきたな。
「米でも収穫チートするか~……、ん?」
そこで気が付いた。
「"片道念話"? 私に話しかけてる? ……ん、んんんっ!? この識別子、ロッカちゃんか!」
懐かしいなぁ。
あれからだいたい……60か……80年くらいかなぁ。
私の森に侵入する敵は、しばらくいなかった。外からのアプローチは久々だね。
年数は、ロッカちゃんと……確か、エリーンちゃんをこの家に招いた時。あの日慌てて作った椅子の年齢を見ればわかる。
……82年、か。
82年、一度も"片道念話"を使われたことなかったから、忘れられたのかな、と思ってたけど。
なんだろうね、密かにエルフの血とか流れてない限りはお婆ちゃんだよね?
エリーンちゃんが先に亡くなって、お墓に埋める人がいないから頼みたい、とかかな?
それくらいはやってもいいか。82年、そんだけ久々なのに、結構ハッキリとした信号だもの。忘れたわけじゃなくて、今が使いどころだから使ったんだろう。
ロッカちゃんは賢い子だからな。……賢い子だったんだけどなぁ~……。本当に惜しかったなぁ~……。
「ん、『今行くよ』、っと返信……、そんで識別子から現在地割り出し……んぁ? 随分あの野原から遠いな。引っ越したのかな?」
小鳥が飛び立った。埃を被ったデカい杖を"清潔"にしながら手元に呼び出して、"転移"した。
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「なんだこりゃあ?」
思わず開口一番、素っ頓狂な声が出ちゃったよ。
だって、なんか明らかに豪華な……"3Dプリント"したらお城だった。
お城の一室。謁見の間的な、玉座とかある部屋。
そこが血まみれである。
鎧の兵士とか、豪華な服着た王様っぽい人とか、いっぱい死んでる。
生きてる人間は、私の他に3人。
玉座の影に震えながら隠れている、ドレス姿の幼女。
エリーンちゃんの聖剣を握る、しわくちゃに老いたロッカちゃん。
ロッカちゃんに剣を突き刺している、黒い騎士。
「……お久しぶりですね、賢者様」
血を吐きながら、老いたロッカちゃんは。
それでもふてぶてしく、私に笑いかけてきた。