麗しの世捨てロリババア生活を邪魔する奴は全員殺す(涙目)   作:がぱおら

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賢者の遊び半分

「いや言ってる場合じゃないでしょ!?」

 

 

なんか不適に笑った老ロッカちゃんだけど、明らかに生命反応弱いし!!

死にかけじゃん!? てか斧は!?

……ストームブレイカー・レプリカは壁に突き刺さってる!! なんか真下でデカい敵が真っ二つになってるから、活躍はしたんだな!! ヨシ!!

 

 

「"隔離""緊急治療""浮遊"!」

 

 

黒騎士を異次元に転送してから、ロッカちゃんをひとまず喋れる程度に治療。ゆっくり浮かせて引き寄せた。

普通の"治療"する前に、事情聴取だ。

 

 

「ちょっとちょっとちょっと!! 私はてっきり、死に際を悟ったロッカちゃんに枕元に呼ばれて、『お墓に入れてください』って言われるものだとばっかり思ってたんだけど!?」

 

「ふふふ……相変わらず、不思議なことをおっしゃられますね」

 

 

老ロッカちゃんは、順当に老けていた。

髪はすっかり総白髪、なんか腰が悪いみたいだし、いやそれ以前に枯れ木のような身体で戦闘してたのは明らかに寿命で遊んでるレベルじゃない!?

 

 

「ここはどこ!? ロッカちゃんは何者!? エリーンちゃんはどこへ!? そこの幼女とさっきの黒い騎士は誰!?」

 

「ふふふふ……賢者様に、ここがどこかなどは無関係でしょうに」

 

「そうなんだけどさぁ!」

 

 

でも、あれだな。

老ロッカちゃん、とても良い老い方をした、古木の貫禄みたいなものがある。

 

 

「エリーンが亡くなって、聖剣を受け継ぎ、埋葬したあたしは、旅に出たのです。流れ着いたこのハーレイシャーン聖国で、あたしはこの国の宰相となりました」

 

「宰相!? 超大出世じゃん! スラムからめっちゃ大躍進じゃん!」

 

「冒険者をやる傍ら、ひたすら知識を磨きました。興ったばかりのこの国で重用していただけたのは幸運でした……ゴハッ!」

 

 

老ロッカちゃんが血を吐いた。

……先に"治癒"してくれ、と頼まない辺り、なんか企んでるな。

ロッカちゃんの作戦が外れたことはない。信用すべきだね。

 

 

「……失礼しました」

 

「あ、あの、貴女は……」

 

「ま、待っててねおチビちゃん。飴あげるからもうしばらくね」

 

「う、うん……」

 

 

幼女が心配そうにこちらを見ている。すまん、ロッカちゃんが紹介を溜めてるから後でね。

 

 

「飴は駄目ですよ、賢者様」

 

「……普通の飴だよ。ブドウ味」

 

「ならいいでしょう。ターカ様、今しばしお待ちくだされ」

 

「は、はい」

 

 

老ロッカちゃんの言葉に、大人しく従うターカちゃん。かわいいね。

 

 

「……ああ、どこまで話しましたかな……」

 

「それが宰相ロッカちゃんの喋り方? 無理して昔に合わせなくてもいいのに」

 

「いいんです、すいません。……先ほど、この国は滅びました。王族も兵士も全滅です。城下街には火が燃え盛っています」

 

「今来たばっかりなのに、スピーディーに滅んだなぁ……」

 

「ノダーレン帝国の侵略戦争です。ふふふ、邪剣が無くなって、その影響も消えた今、この侵略は純粋な領土目的でしょうね」

 

「ほら見たことか! やっぱ帝国は全部悪だよ!!」

 

「あははは! まさしく、賢者様の言う通りでしたね」

 

「んで、なんで今呼んだの?」

 

 

はやくに呼ばれても、戦争に協力とかは絶対しなかったと思うけど。

あれかな、聖剣をメガちゃんに返してやってほしいのかな。

 

 

「そちらにおられますのが、この国の最後の王族、ターカ様です」

 

「お姫様か~。かわいいねぇ」

 

「でしょう?」

 

 

老ロッカちゃん、本当に悪い笑顔するようになったなぁ。

結構素敵だよ。あんまり笑顔見た覚えなかったな、そういや。

 

 

「彼女を、海の向こうの孤児院へ捨ててください」

 

「えっ!?」

 

「はい!?」

 

 

お姫様を!? なんで!?

 

 

「かつてディッツ様にそうされたように、ターカ様もお救いください。命だけ救っていただければ十分です」

 

「ちょ……ちょっと待ってよ。なんでいきなりそんなことを頼まれないといけないんだ?」

 

「不愉快ですか?」

 

「いや、それほど不快でもないけど……幼女だし」

 

「でもモヤっとされるでしょう?」

 

「まあ、ちょっとだけ」

 

「ちょうど、ここには賢者様の八つ当たり先が存在します」

 

「……、え」

 

「大量の悪の帝国兵と、身の程知らずに助けを乞うた愚かな老婆です」

 

 

老ロッカちゃんは目を瞑った。

 

 

「……聖なる斧と剣をお返しします……。……エリーン、の墓に……一度だけ、手を…、合わせ、に…………」

 

「あー待て待て待て! なんか死ぬ気みたいだけど! ぽっと出の私よりも、そっちのお姫様に最期に言い聞かせることとかないの!?」

 

「………け……じゃ、様に、命を捧げる覚悟での、"片道念話"でした……全てをBETするだけの……力が……賢者様には…」

 

「こんにゃろー! 私はゲームのNPCとかじゃないんだぞ!? ちょっとくらい融通利かすのを期待してよ!! 私達は邪神討伐の美少女チームだったじゃあないかっ!!」

 

 

老ロッカちゃんは駄目だ。老いてなんか頑固な部分が出来てる。

分からず屋の偏屈お婆ちゃんに育ちやがって、ちきしょー!

 

 

「ターカちゃん、ロッカちゃんを少し頼むよ」

 

 

問答無用で老ロッカちゃんに"延命治療"をした。

そんなに軽々しく命を捨てやがって、私は死にたくないから不老不死になったというのに!!

ロッカちゃんなんて、ホコリにまみれて死んじゃえばいいんだ!

 

 

「え、あの、貴女様は、いったい」

 

「今から帝国を滅ぼしてくる!!」

 

 

ふたりが最期に会話できるくらい時間をかけて、悪の帝国をゆっくりじっくりいたぶることにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

====================

 

 

 

 

 

 

ノダーレン帝国が滅んだ様は、何故か後世にも克明に伝わっている。

その理由もわかっている。虐殺の現場に居合わせた吟遊詩人達が、その凄惨な有様を伝え広める代わりに命を救われたのだ。

他でもない、下手人に。

 

帝国一の騎士であった『重黒』のグリシェイス・ローゼインと、当時ハーレイシャーン聖国を攻めていた軍。それらのバラバラ死体が雨となって帝国に降り注いだことから、惨劇の幕は上がった。

突然のスプラッタに、パニックとなった民衆は、血の雨に追い立てられるように帝都城へ押し寄せた。

国に残った兵達は民衆を落ち着かせようとしたのだが。

不思議なことに、武器を持った兵だけが、雨に降れた瞬間空高く弾かれたように浮き上がり、新たな血の雨となるのだ。

兵達も恐怖し、武器を捨てて、押し寄せる民衆と一体とならざるを得なかった。

 

自然と城前に集まった震える民達は、更なる絶望を味わうことになった。

ローブ姿の、「賢者」を名乗った少女と、空中で十字架に磔にされた王族、従者、貴族、城内の兵達。

賢者は、まず帝王の首を刎ねて、問うた。

 

 

「王様が死んだね。このままだと国は滅ぶね。ノダーレン帝国の新たな王になる気がある人はいる?」

 

 

粗暴だが武勇で有名だった第一王子が吠えた。

第一王子の十字架が地上に降ろされ、賢者の手で血まみれの王冠が被せられた。

 

 

「それじゃ、ノダーレン帝国の新しい帝王様に乾杯。そしてさようなら」

 

 

第一王子の首が刎ねられた。

 

 

「王様が死んだね。このままだと国は滅ぶね。ノダーレン帝国の新たな王になる気がある人はいる?」

 

 

賢者は全く変わらぬ調子で、再度問うたと言われる。

当然、こんな状況で「自分がやりたいです」と言う者はいなかった……と思いきや、いた。

賢者が少女と知って、王妃にしてやると懐柔しようとした第二王子。

これまで何人もの男を堕としてきた自慢の涙で、情に訴えた元正王妃。

これからは優しい国を作って見せる、と必死に声を張り上げた第五王子。

これからは女の時代、貴女が王女だと自信満々で言い切った第四王女。

肥えた私腹も死なば塵と察し、全ての財産を明け渡すと宣言した大臣。

 

 

「それじゃ、ノダーレン帝国の新しい帝王様に乾杯。そしてさようなら」

 

 

全員、首を刎ねられた。

忠臣、佞臣、善き王、暗愚、革命家、野心家、夢想家。

分け隔てなく。

 

 

「王様が死んだね。このままだと国は滅ぶね。ノダーレン帝国の新たな王になる気がある人はいる?」

 

 

遂に誰も立候補しなくなった。

しかし、少女の凶行は留まらなかった。

 

 

「ちなみに、私は人の心が読める。例えば、そこの第七王子。今は雌伏の時とか考えてたね」

 

 

見る間に顔を青くする、心の中で反撃の機会を伺っていた者達。

元から一切の抵抗ができない"十字架"に、何故か魔法も魔術も一切発動しない状況で、反撃の芽はいとも容易く刈り取られていった。

 

 

「それじゃ、ノダーレン帝国の新しい帝王様に乾杯。そしてさようなら」

 

 

そうして残されたのは、純朴なメイドや、野心のない一兵士等、ごくわずかな人々。

王族の血は根絶やしだった。

 

 

「王様が死んだね。このままだと国は滅ぶね。ノダーレン帝国の新たな王になる気がある人はいる?」

 

 

民衆は悟らざるを得なかった。

今日、この大いなる帝国は滅んだのだ、と。

 

 

「では、ノダーレン帝国はこれにて滅亡、ということで。ここに街が残ってても仕方ないよね?」

 

 

賢者の言葉と同時に、空中に無数の"隕石"が出現した。

 

 

「一か月後に、空のデカい石全部が、この国を更地にします。さらさらの野ッ原にします。それで完全にノダーレン帝国は滅亡。おーけー? おーけーだね? おーけーにした。じゃあね、幼女には優しくするんだぞ~」

 

 

言い残し、賢者は忽然と消えた。

吟遊詩人達は口を揃えて語る。

皆が注目していたのに、最初から誰もいなかったかのように、賢者は消えた。

残ったのは、死んだ帝国の残滓と、目に見える破滅のカウントダウン"隕石"だけだった、と。

 

きっちり一か月後、"隕石"はノダーレン帝国を完全に消滅させた。

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