麗しの世捨てロリババア生活を邪魔する奴は全員殺す(涙目) 作:がぱおら
別に偉い人に聞かなくてもいいじゃん。
私はデカい城を見つけて、城下街に転移した。
その辺の通行人に「ここはどこですか」って聞けば一発。
軽く考えた私は、自分が何故引きこもりロリババアになったのか忘れていた。
「ここどこ」
「あ"? んだこのガキ。ヤナギ通りだろうが」
「いや、その」
「物乞いなら他当たれよ、めんどくせぇ」
会話スキルの欠如である。
あと、私のぶかぶかローブは乞食に見えるらしい。
まあ刺繍とかほぼ無い無地だし、仕方ないか。
私は途方に暮れた。
なんてこった、今いる国を知るだけでこんなに大変だなんて。
帰りたい。
旅の疲れと会話のスタミナを癒やすべく、私は公園で黄昏れていた。
きゃっきゃと走り回るロリ達を眺めていると、無心になれる。
「ねーねー、あなたどこの娘ー?」
こういう風に無邪気に話しかけてくれるロリもいる。
心が洗われる。ロリマルセラピーだぁ。
「田舎から観光に来た。飴あげる」
「いーの? わーい」
私は簡易不老不死飴をロリに与えた。
三十年くらい見た目を固定できる効果がある。
私と契約しなくてもいいからロリババアになってよ。
ぶどう味だよ。
ロリを懐柔するなら飴に限るね。
「それで、ここどこ?」
「ここ? 公園!」
「そうだね」
今自分がどこにいるかわかるんだー、偉いねぇ〜。
もう一つ飴ちゃんあげちゃう。
「ここ、なんて国?」
「お国の名前? アレストレウシス帝国だよ!」
「ほほう」
帝国。帝国かぁ。
帝国なんて大抵悪い奴らだよな。
帝国が味方のゲームなんて殆どないし。
ここは潰してもいい国。賢者覚えた。
「ありがとう。元気でね」
「飴ありがとー!」
「こちらこそ」
ロリババア仲間が増えるのは良いことだ。
私はデカい城の上空に転移し、浮遊する。
さて、まずは邪剣の基本性能を確認しよう。
私は城を丸ごと雲の上に転移させた。
落下の衝撃に対して、邪剣は耐えられるのか?
空中機動力は? 窓を突き破って出てきて、ドラゴンボールみたいな空中戦を仕掛けてきたりするかも?
邪剣の支配ってどの程度有効なの? そもそも支配されるとどうなるの?
根本的な疑問として、邪剣って自律行動するの? 人に寄生しないと動けないの?
何も起きなかったら、それでいい。
どうせ帝国なんだから、間違って滅ぼしても問題あるまい。
……そもそも邪剣あるのかな? なかったらどーしよ。
いや帝国名乗ってて邪剣持ってないとかあり得ないでしょ。
畜生、やっぱり私は頭脳戦は苦手だ。スローライフ専門なんだよ、無双バトルをやらせるな。
さっきまで城が建っていた空き地に激突した衝撃で、瓦礫の山と化した城を見下ろす。
……何も出てこない。
とりあえず瓦礫を撤去するか。
もしかしたら、地下室とかあって、そこに邪剣があるのかも。
そう思って城跡地に着陸した。
私の目の前で、瓦礫の山が盛り上がる。
「ぐ、うぐぐ……」
うめき声を上げながら、全身ズタボロのおっさんが這い出てきた。
右手に真っ黒の剣を握っている。
いかにも邪剣だ! もうあれが邪剣でいいよね!
「邪剣頂戴」
必殺、ロリのおねだり。
おっさんははじめて私に気づいたようで、こちらを見て、
「……何者、だ」
そう問いかけてきた。
え、もっと他に言う事ないの?
「あんた誰?」
名前を尋ねる時はまず自分から、だぞ。
「……わ、私は、アレストレウシス帝」
「わーお」
大当たりじゃん。
国のトップで、邪剣持ってる。
やはり帝国は悪。
「お、お前は……何者だ」
ほらほら、他に言う事あるだろ、皇帝様。
仕方ない、ヒントをやろう。
「何に見える? ていうか、どう? 私、可愛いよね?」
「……何者だ、と問うている」
皇帝様は、邪剣を杖代わりに立ち上がった。
そのまま邪剣を構え、臨戦態勢に入る。
……え?
バトル展開なの?
まだお約束のアレやってないじゃん。
悪い皇帝様と言えばさぁ。
やっぱり、アレをやらないと始まらないでしょ。
アレだよ、ヒロインに対して横柄な偉い人が「美しい、余の者になれ」って言うアレ。
そんで、ヒロイン(私)はそれを華麗に断り、主人公(私)が返り討ちにするのだよ。
テンプレートってのは美しいのだ。
せっかくの懇親キャラメイク、褒められるときに褒めさせておかないと損だ。
だと言うのに、なんなんだよこのおっさんは。付き合い悪いなぁ。
「ええー……じゃあ、大ヒント」
私は仕方なく、フードを下ろす。
見よ、絶世のロリババアフェイスを。
そして皇帝ボキャブラリーで褒めよ。
皇帝様はぽかんとしている。
なんか頭の上に疑問符がいっぱい浮いてる幻覚が見える。
本当に察しが悪いな!
「わからない?」
「……私の記憶にはない顔だが」
「そうじゃない。可愛い?」
「は……? 突然、何が言いたい?」
「クソッ、コイツおっぱい星人だ! 殺す!」
外の世界は危険がいっぱいだ、帰りたい。
私は杖を構えた。
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アレストレウシス帝は、突如として訪れた化け物を前に、絶望していた。
城を丸ごと遥か上空に転移させ、そのまま落下させる、という暴挙。
邪剣による身体能力の強化を持ってしても、大きなダメージを受けた。
肉体的には只人の"陰の者"は、地面に激突した際に即死した。恐らく、城内にいた者は全滅だろう。
そして、現在相対している、子供の姿をした化け物。
会話が通じない。
人語を発しているのに、まるで意味が通らない。
人間の皮を被った化け物だ、間違いない。
突然「可愛い?」と聞かれたら困惑するに決まってるだろうに。
しかし、策謀を得意とするアレストレウシス帝が、思考を止めてしまえば、平均的な邪剣所持者程度の力しか残っていない。
アレストレウシス帝は懸命に、状況を打開する策を考える。
「一応確認。それが邪剣?」
化け物は邪剣が狙いらしい。
邪剣一本のために、城を破壊した?
そこまで圧倒的な力と、躊躇しない残虐性があるなら、邪剣など必要ない。
邪剣は決して、大量破壊兵器ではない。
人間ひとりを強化し、無双の力を与えるという意味では強力だ。
しかし、対城規模の攻撃を撃ち・斬り伏せて無効化するほどの邪剣は、いくつも無い。
そもそも、アレストレウシス帝は自らが邪剣所持者だということを巧妙に隠してきた。
どこから漏れたのか。
(……ま、まさか。情報漏洩の証拠隠滅すら、今の一手で……!?)
そこまでするほどの価値が、今手にしている一振りにあったのならば。
それは、手にする邪剣にこの一本を選んだ、己の不運でしかあるまい。
アレストレウシス帝は考える。
邪剣を手放し、命乞いをするべきか?
「……返事無し。まあ、奪ってから考えるか。これで邪剣が粉砕されたら、邪剣もそんな脅威じゃないってことだよね」
その思考もまた、眼前で魔力を集める化け物によって否定された。
この子供にとって、アレストレウシス帝の命どころか、邪剣すら「壊しても良いモノ」だ。
「何故、突然、このような……帝国に怨みでもあるのか?」
子供の思考が理解できない。
それでも、動機だけでも知りたい。
策は浮かばず、言葉は通じず、思考は読めず、実力に圧倒的な差がある状況。背を向け逃げ出すことすら、その瞬間に殺されてしまいそうで、出来そうにない。
アレストレウシス帝は、突然の逃れられぬ身の破滅に対し、せめて納得ができる理由を求めた。
「怨み? ……うーん、怨みといえば怨みかも……いやどうだろう?」
明らかにピンと来ていない返答だった。
「とにかく、まずは邪剣の斬れ味を見せてよ」
付近の瓦礫が浮き上がり、アレストレウシス帝目掛け飛来してきた。
戦闘開始すら突発的。
何もかもが、子供の一存で決まっていく。
「うっ、うおぉぉおおおあああぁぁあアアアアアアア"ア"ア"ーッ!!」
無数の瓦礫による飽和攻撃。
火事場の底力だろうか。アレストレウシス帝は十秒程、瓦礫を斬り飛ばし、時に魔法で身を守った。
まさしく獅子奮迅の大健闘と言える。
しかし後頭部に瓦礫がヒットして怯んだ隙に、全身を瓦礫で混ぜられ、即死した。
大陸支配の野望を秘めたアレストレウシス帝は、断末魔すら残せず、マルヴリアス王国にとって戦友という認識のまま、歴史から一抜けしたのであった。