麗しの世捨てロリババア生活を邪魔する奴は全員殺す(涙目) 作:がぱおら
「うわ、折れてる」
私は邪剣の破片を木の棒でつついた。
魔法で強化した瓦礫相手に折れちゃうんだ。
カッコいい剣がこんな情けない折れ方するんですね。
ひょっとして、邪剣の戦闘力そのものは全然警戒に値しないかも。今後は気軽にポキポキしていこう。
目的は果たした。家に帰ろう。
でもその前に、邪剣の支配ってどの程度の力なのか、把握しないと。
持ったら即精神掌握の厄モノだったらヤバい。
私は周囲を見渡した。
いつの間にか、城跡地の周囲に野次馬が集まっていた。
帝王様と戦ってたときは見かけなかったから、城落としたときの音を聞いて、ようやく集まってきたのかな?
「な、なんで城が壊れて……」
「あそこに誰かいるぞ!」
「現帝様はどうされた! 城の者達は……」
がやがやしてらぁ。
私はフードを被り直した。
ひとり、兵士っぽい人物が、私に近づいてくる。
「おい、こんなところで何をしている?」
「えっ、あ」
やべぇ、職質だ。
私は前世からずっと、職質が苦手だ。
大得意で大好きって人間がいるのかはわからないけど。
「あや、怪しいものじゃ、ありません、すいません」
「……なんだ、子供か。こんなところで遊んでないで、危ないから家に帰りなさい」
「は、はい……」
帰っていいの? ほっ。
許可出たし帰ろう。
私は邪剣の破片を木の棒でかき集め、兵士に問う。
「あ、あの、袋持ってませんか?」
「袋? そのガラクタを持ち帰る気か? まあ、現帝様とは無関係だろうし、構わんが……子供は妙なモノを欲しがるもんだ」
兵士には、ガラスの破片か何かに見えたのだろう。
怪しまれはしたが、私はバラバラの邪剣を手に入れた。
「うーむ、突然城に何が起きたのだろうか……? うわっ、これは人の血か? なんと惨い」
「おぉい、瓦礫を撤去するぞ! 現帝様のご無事が確認出来るまで、寝ずの作業だ!」
「魔法第三部隊、到着しました! 隊長不在につき、歩兵第四部隊に指揮を委ねます!」
「うむ、お前たちの隊長殿の安否も調べねばならない。気張れよ!!」
ドタバタと救助作業をはじめる兵士達と、野次馬の群れを苦労して抜けて、私は路地裏へ向かう。
周囲を見渡して、みすぼらしい格好をした乞食の男を発見した。
髪の毛ボサボサで伸び放題。手頃だ。
表の喧騒をぼーっと聞いている乞食に、私は話しかけた。
「髪頂戴」
「……は? いきなりなんだ、このガキ」
「一束、宝石と交換」
私は、唸る程余ってる不老不死失敗のガラクタ宝石を、男の足元に投げた。
「な、な」
「あ、刃物ない? えーとハサミハサミ」
「えっ、いやいやナイフくらい持ってるよ!」
「そう、よかった。切ったらその宝石、もっとあげる」
「おっおう!! へへへ、こんなとこでいきなり一発逆転のチャンスとは……オレもツイてるぜ」
私は、男の髪の毛を、邪剣が入った袋に入れさせた。
よし、ホムンクルスの材料ゲットだぜ!
邪剣の精神掌握力を調べるためだけに、ロリの美しい髪は切りたくなかったんだ。
「確かにもらった。今夜はこれで寿司でも食うといい」
「す、すし……?が何かは知らねぇが、お嬢ちゃんありがとよ!」
男は宝石を腕いっぱいに抱えると、通りへ駆け出して行った。
ふう、疲れた。
さあ、帰って実験フェイズだ!
私は自宅へ向けて"転移"を発動した。
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マルヴリアス王国は未曽有の大混乱に陥っていた。
「アレストレウシス帝が行方不明……!?」
同盟を結び、共に邪剣の国々に立ち向かおうと手を組んだアレストレウシス帝国。
その帝都城が、突如崩落したとの知らせが届いた。
原因は不明、死者多数。身元不明の遺体も多数。
行方不明者があまりにも多く、しかし民間人への被害は見られない。
崩落の仕方は、砲撃等を受けた様子はなく、土台から崩れたように見えたそうだ。
急に殆どの指揮系統の責任者が消滅したアレストレウシス帝国は、帝都城跡地での捜索作業以外、一切の身動きが不可能となっていた。
「邪剣の国々による攻撃だろうか?」
王子ディッツは、一番考えられる可能性をあげる。
「いとも容易く帝都城を崩落せしめた方法は、現時点で全く不明だが……困った時は邪剣を疑うのが一番だ」
が、疑念の元も、消極的な擦り付けだ。
ディッツもそれを自覚していた。
「現王、この場合俺はどうするべきだろうか。邪剣の関与を疑って、現地へ赴くべきか?」
「……仮に邪剣の国々による侵略だとすれば、次は我が王都城であろう。守りを固め、侵入者に目を光らせよう。警備の範囲も広げ、狙撃の可能性も視野に入れねば……」
消極的とも取れる現王の発言。
会議の最初からずっと渋面の宰相は、これからどう行動するか悩んでいた。
(たまたま帝都城外にいた"陰の者"の生き残りがもたらしてくれた、「賢者が現帝様を殺害した」という事実……! これは、あまりに大きな爆弾だ……)
"陰の者"は賢者の姿を知らないが、宰相はディッツからの報告で「ローブ姿の子供」だと知っていたため、帝国襲撃犯と結び付けることができた。
今のところ宰相は、マルヴリアス王国の誰からも「熱心ないち官僚」としか認識されていない。
そのため、宰相自身は、最早裏切りのトリガーを失った不発弾でしかない。
宰相本人に野望などなく、アレストレウシス帝の意志を継げるほどの真意も知らないのだ。このまま王国に骨を埋めてしまえば良い。
だが賢者は突然動いた。
ディッツは邪剣という脅威の存在を、賢者に明かした。
賢者は、殆ど日を置かずに、帝国を襲撃した。
帝国は邪剣に支配されていることを隠し通してきた、ハズだ。
(賢者は……どこまでを見通していた?)
明日は我が身、という言葉が、宰相の脳裏を過ぎる。
賢者が帝国の企みを全て看破し、真っ先に潰したとすれば、宰相の身も危ういのではなかろうか。
身構える間もなく、死神が首筋に刃を当ててきた。そんな錯覚がある。
(か、かくなる上は、王子ディッツを唆し、賢者を倒させねばならぬ……!)
宰相は、最後の命綱として、仇討ちも兼ねて、聖剣を頼ることにした。
「……げ、現王様。アレストレウシス帝国からやってきた商人の噂話に過ぎないのですが……気になる話を、小耳に挟みまして」
「宰相殿、何か情報を? 申されよ」
「その、帝国に不審な子供が現れた、と。詳しく聞けば、王子様の語られた賢者様に、よく似たローブ姿だったようで……」