~麃然視点~
俺がキングダムという漫画の世界に転生したことを最初に自覚したのは,まだ子供の頃であった。
とはいえ転生したこと自体は生まれて間もない時点で察していたものの,その時はまだどんな世界かは分からなかった。
最初はどうやって死んだのかが思い出せないのが気がかりではあったが,神様から使命を与えられたり,手から火が出たり天才的な頭脳を得たわけでもなさそうだったので,特に気負うこともなかった。
そこで今世は前世の教訓を活かして若いうちから勉強でも頑張って,真面目に慎ましく生きようかと考えていたのだ。
俺は周囲から麃然,もしくは然と呼ばれていた。どうやら然という部分が名前らしい。変わった名前だと思ったが,中華風の世界なのだろうと考えたら納得できた。
その時はここは前世と同じ世界なのか,それとはまた違った異世界なのかはいまいち確信が持てなかったが,それが分かった所で自分のような凡人が何かできるわけでもないと思って気にしていなかった。
家族に関しては,母の実家が裕福な商人の家で,まだ顔も見たことがない俺の父親もやり手の軍人らしく,幸いにして我が家は金には困っていないようだった。
父親は戦争で忙しいので稀にしか家に帰って来ないらしいが,一応は俺が産まれてからも何度か帰ってきているようで,俺が会ったことがないのは単純に運が悪いみたいだ。
どうやら前触れなく来るみたいで,大抵その時に俺がいないらしい。
それにしても軍人か……国の為に戦っているのはめちゃくちゃ尊敬はするけど、怖いから俺はなりたくないなぁ……と当時は考えていたのを覚えている。
周囲の環境が前世で言うところの現代的なものではなかったことは少し不便に感じたが,厳しくも優しい母親や激甘な祖父の存在に加えて,実家の手伝いをすれば結構な小遣いをもらえたりすることもあってなんだかんだで楽しくやっていた。
その後も順調に成長していき,俺は子供にしては体が大きくて丈夫だったこと…も少しあるだろうが主に地元に限れば母方の家がそれなりに有名だったことが理由でガキ大将的なポジションを手に入れていた。
いや~子供は素直でいいよ~ホントに!
――だがそんな時だった……俺の日常を破壊する悪魔が現れたのは。
それはある寒い日の昼のこと……家の庭で食後の休憩がてら近くに生えていた木の根元に座り込んで小鳥とキャッキャしていたところ――
「バッハッハ! 中々に良い目をしておるではないか!流石はワシの息子じゃァ!」
いきなり目を血走らせた屈強な男がのぞき込んできたのである。
その時俺は思ったね……。
ギャーー! ばばば化け物ぉ!!
その顔にどこか既視感がある気もしたが,そんな思いは突然目の前に特級の不審者が出現するという異常事態に対する驚きに追いやられて一瞬でどこかに消え去った。
丁度その時に家の中から母上が出てきたが,俺は緊張で動けなかったので心の中で助けを求めた。
助けてぇぇ! ……いややっぱり危ないからきちゃダメェェ!!
しかしそんな俺の心の叫びの甲斐もなく,母上は急いでこちらに駆け寄ってきた。
「あら~! あなたお帰りなさい! こんなに早くに帰ってくるなんて珍しいわね~!」
あ・な・た!?
「フッ、いかに戦場で生きるこの麃公と言えど,戦がなく気が向けば家族の元に顔を出しもするわい。それにそろそろ息子の様子も気になっておったしのォ……!」
「フフフッ……でも今日は――」
ちょっ! ちょっと待っていただいてもよろしいか!?
……誠に申し訳ないんですがこの目の前の明らかな危険人物が俺の父親だという事実を俺は認めることが出来ません!! そんな時は一体どうすればいいんでしょうか!?
……というか麃公という名前でこの顔って前世にあった漫画『キングダム』で見たことがあるぞ! だからどこかで見たことある顔だと思ったのか!!
ちくせう! 初めて父親の名前を聞いた時は一瞬だけ『ん?』と思ったが同姓同名の別人ではなかったのか!!
そもそも原作では彼に子供はいないんじゃなかったの!? 教えはどうなってんだ教えは!!
俺は頭の中がパニックに陥っていたが,そんな俺に構わずに周りの話は進んでいく。
「ふむ……よし然よ! そなたもそろそろ戦場を知っても良い時期じゃろう! ワシに付いてくるがいい!!」
何を思ったのかいきなりそう言った麃公……俺の今世の父親は目にもとまらぬ速さで俺を肩に担ぎあげ,そのまま俺をどこかに連れていこうとしたのだ。
えええええ!?
くそっ……HA☆NA☆SE!!
「バッハッハ! 元気が有り余っておるようじゃのォ!!」
笑いながらも一切手の力を緩めない麃公に対して必死に抵抗したものの,大人……しかもこんなにデカい化け物の腕力に勝てるわけもなく,締め付けられて潰れそうでもあった俺は最後に一縷の望みをかけて母上に目線で助けを求めた。
そして俺の思いが通じたのか,俺を見た母上は何かに気が付いたような顔をしたのだ。
よし! 流石に今回はこの状況の異常さに気が付いたようだ! 早く助けてクレメンス!!
そんな俺の期待をよそに,母上はその場で手を振りながら大声を上げた。
「いってらっしゃーい!!」
は・は・う・え!?
違う違う! そうじゃ……そうじゃなーい!!
特に驚いていない母上の様子を見て,事ここに至って遂に心が折れた俺は抵抗を諦めた。
……ああ,どうやら父親だけでなく俺の家族は全員がまともじゃなかったようです。
その時の俺は,この世界は人がポンポン死んでいく過酷な戦争漫画である『キングダム』の世界であると知ったこともあって,自身の境遇を呪いながらこの先に待つであろう明るくなさそうな未来に思いを馳せていたのだった。
……そしてそれからが俺にとっての地獄の日々の始まりだった。
あの日に戦場を見せてやると言って俺を拉致した麃公は,あろうことかまだか弱い子供であった俺をそのまま戦に参加させたのである!
なんと安全で遠い場所からの見学みたいな形式を挟むことすらなくだよ!!
その時の俺は温室育ちだったので馬の乗り方すら知らず,親父がくれた馬の背に全身全霊でしがみ付きながら頭上を飛び交う弓や剣戟にビビりつつも親父の後ろを追いかけ続けた。
戦場に耐性がなかったことを加味すれば,あの時が1番命の危険を感じた瞬間だったかもしれない。
そんな風にして,俺は冗談抜きで死にかけながら親父に連れていかれる戦場をなんとか生き抜いていった。
もはや初めて人を斬った時も,人の命を奪うことに対する罪悪感を感じる暇すらなかったのだ。なぜならそんな俺を凝視する親父の方が万倍怖かったから……。
ちなみに親父と呼んでいるのは俺の静かなる決意表明であった。お前みたいな化け物を母上と並んで同じように父上と呼んでやるものかという微かな反骨精神の現れである。
……ただ親父にとってはそちらの方がお気に召した様子だったのは意外だったが。
そのうちに親父が任された領地の関係もあって家族揃って移動したりもしたが,親父に拉致された時に俺を笑顔で送り出したあの母上も,その後に会った時はなんだかんだで親父が絡まなければ戦の話を頻繁に聞いてくるだけの普通の人()なのだ。
ゆえに俺の尊敬度ポイントはギリギリのところで母上と呼ぶレベルに留まっている。
両親の馴れ初めとかは聞いたことがないが,かなりカオスじみていそうだよね。
とにかく俺は親父に引っ張られて数多の戦場を経験し,ある時は大軍に少数で突っ込む暴挙に付き合わされて死にかけ,またある時は親父と同じような頭のおかしな奴らと得物を激しくぶつけ合わさせられて死にかけた。
その過程で雑兵には簡単に殺されないと思える程度の自信は付いたが,それ以上に戦場に連れ回され過ぎたことによる疲労のせいで慢心する余裕などあろうはずもなかった。
……そもそもどれだけ戦に出る気だよ親父は!このままじゃ戦場が家になっちまうよ!!
とにかくそんな生活の中で心も体もボロボロになりながら,ある時俺は思ったのだ。
『このままでは死んでしまう!』……と。
若くして戦場で嬲り殺しにされるなんてまっぴら御免だった俺はある時,遂に勇気を出して1つの決断を下したのである。
それは俺が軍の中で親父と同じ最前線から外してもらって,後方に配置してもらうという試みである。
後方は後方で大変だったりするのだが,当時はそれが務まるか務まらないかという思考すらままならず,自分が死から少しでも遠ざかるためにはどうすれば良いのかということで頭が一杯だったのだ。
そのぐらい俺の心は追い詰められていたのである。
流石にここまで来て軍を抜けたいなんて大胆な発言を親父にぶつける度胸はなかったので,せめて比較的安全なところにいさせて欲しいと思ったのだ。
そこで俺は親父に直談判して,もう軍人であることから逃れられないのは分かったから,せめて最前線の親父の周りから外してくれと言葉を選びながら頼んだ。
正直なところ,きっと反対されるだろうと思いながらダメ元で言ってみたのだが,結果は半分成功で半分失敗だった。
どういうことかというと,なんと俺は親父から軍の半分を任され『好きに使えィ!』との言葉を賜ったのである。
それによって危険な親父の近くから離れられたのは良かったが…大軍を率いる責任感で俺の胃は死ぬことになった。
当時親父の率いる軍は既にかなりの数だったので,俺が率いらねばならないのも相応の人数だったのだ……。
流石にこんなガキに任せるとかコネ編成にもほどがあるだろ! 俺の兵たちもなぜそんなに気合が入っているのか理解不能だ!!
そう思いつつも,一応は晴れて親父の無茶な突撃に付き合わされる機会は減ったので直談判の成果も少しはあったのである。
ただ,そこからも大変だった……。
不本意ながらも自由に軍を動かす立場になったことで考えることが一気に増えたのだ。
とにかく麃公軍は親父の無茶な戦い方のせいで滅茶苦茶に人が死ぬ。まぁホント~にポンポン死んでいく。
故に軍としての改善点は探せば探すほどあるくらい山積みだったのだが,ここで1つ問題があった。
それは親父は武将としては"本能型"と呼ばれる戦い方をする人間だということだった。
このタイプの戦い方をする武将は,兵法書などに書かれている大多数の将の常識よりも己の勘を優先して勝利する戦い方をする傾向が強く,原作では親父はそんな本能型の武将の中でも極みにいると言われるほどにその傾向が強い人物だった。
なんせ戦場を炎に見立てたり,戦は生き物だとか言っちゃう人だ…俺たちとはそもそもの頭の作りが違いそうである。
そんな戦い方が麃公軍の特徴であったことから,下手に俺が軍の体制を弄るようなことをしてしまうと軍の強みが失われてしまう恐れがあったのだ。
……そもそもの話でそうなるまでやらせてくれるかも疑問ではあるが。
とはいえあんな風に頼んでおいて,曲がりなりにも親父に任されておきながらそれらしい成果を出さねば流石に今度こそ何をされるかわからないと思った俺は焦りに焦りまくった。
そんな心理状況の中で色々と試行錯誤した俺は,最終的にやけくそで素晴らしい結論を出したのである。
『そうだ,皆が死ににくくなればいいじゃない!』……と。
……何を言っているのか分からないとは思うが安心して欲しい……俺自身もよく分かっていない。
ただ大雑把に言うなら,麃公軍全員が親父の無茶な戦いに付き合っても死なないくらい強くなればいいじゃないかという考えの基による頭のおかしい作戦を実行したのである。
そこからの俺は軍の強化に全力を注いだ。
頭がおかしいほどの練兵を兵たちに施し,親父に何かあってもすぐには崩れないようにある程度の戦術を皆に叩き込み,最低限の医療知識を浸透させた。
……もちろん全て戦場でな! 麃公軍にとっては戦場が練兵場なんだよ!!
俺が面倒くさがらずに継続したそれらの効果は戦で遺憾なく発揮され,麃公軍の死傷者は以前よりも減少して戦績も向上していった。
更に俺はそれに加えて自分の訓練もより過酷なものにした。
この世界は1人の武人の命は良くも悪くも重い。それは戦略の話だけではなく,それなりの武力を持つ将は基本的には大量の雑兵に囲まれたとしても謎の力によって中々死なない。
死ぬのは大体が自分以上の武人からの攻撃によるものなので,個人の武力を高めておけば格段に死ににくくなるのだ。
故に俺は死なないために,今までは数少ない癒しであった帰宅時でさえ武力を磨くために多くの時間を充てたこともあり,個人武力に限ればそれなりになったと思う。なったよね……?(震え)
だが,俺が期待されているものには将としての役割もある。
これに関しては少し苦戦したが,最前線で駆け回るのと比べれば何倍もマシだと自分に言い聞かせて猛勉強した。
ただ,個人的には親父がこの先戦っていくだろう各国の大将軍レベルの奴らに通用するとは思えなかった。
そこで俺の不甲斐なさをカバーするために,国内国外問わず自らいろんな場所を駆けまわって外部からも使えそうな人材を呼び寄せたりした。
そう! 結局のところ全ては巡り廻って俺自身のために!!
……だが結果を出した影響で親父も俺も出世したことで更に面倒が増えたのは誤算だった!
特に王様からの招聘などを親父が断り続けるので,その後始末をつけるために俺が奔走するハメになったのだ。
親父は政治的なアレコレだとか領地の経営だとかにホントに興味がないらしく,その辺りを俺に丸投げしてきたことで,せっかく戦死から少しだけ遠ざかったのに今度は過労死しそうになったものである。
しかし,これも最前線と比べればマシだと言い聞かせて何とかこなしていった。
……うん。コレはもうほとんど病気だね。
ただそんな踏んだり蹴ったりな俺の人生だったが,そんな中でも幸運だったのは優秀な人材が思いのほか多く俺たちのところに舞い込んできたことだった。
代表的なところとして挙げられるのは,現在も麃公軍の将として戦場で活躍している満羽,千斗雲,紫詠の3人だろう。
まず満羽と千斗雲は,原作では楚国の出身ではないものの"什虎四将"にも数えられるほどの楚国の強い将軍であったが,その理由は彼らの祖国である小国が色々とあって楚に滅ぼされてしまって彼らの心が壊れたことで楚国に取り込まれてしまったからである。
……早口言葉みたいになっちゃったな。
ま,まぁいいや。とにかくそれを原作知識で知っていた俺は,彼らの母国が楚に降伏して滅ぼされる前に色々と工作をしてなんとかその国々の民を秦国で保護することに成功したことで,そのまま2人も我らの軍に迎え入れることが出来たのだ。
彼らは原作の描写でもわかる通りにかなり強いので,手に入れるための労力を考えても十分にお釣りがくるレベルだと思う。
……あの時は彼らのために楚国の都である"郢"まで行ったんだよな~。あの時は皆の顔が怖くて地獄だったね。
ちなみに今は関係ないが,あの国は秦に攻められて徐々に東に遷都していく度に遷都先の都市の名前を郢にするという面白い特徴があったりする。
次に紫詠は,原作では魏国の大将軍である魏火龍七師の1人で"紫伯"の異名を継いだ中華でも随一の槍の名手であった。
彼には義父がいるのだがそいつが中々にあくどい奴で,囲っている女性の連れ子の1人だった紫詠は母親が死ぬとすぐに過酷な戦場に送り出されて酷使されるようになったのだ。
そんな中でも別の女性の連れ子で,いじめられていた"紫季歌"という義妹と恋仲になったことが心の支えになっていたのだが,ある時に紫詠の活躍を嫉んだ義父の策略もあって紫季歌は紫詠が戦場にいる隙に無理やり嫁に出され,その相手だった男に殺害されてしまうのである。
愛する女性を殺されたことにプッツンした紫詠は,原因となった義父に加えて,直接の犯人である魏火龍の同僚をそいつと結託した他の2人のメンバーごと殺害してしまったことで牢にぶち込まれてしまうことになり,そこから14年も牢に入れられることになる。
そしてまたまたそれも原作で知っていた俺は,紫詠が大成する前に接触して,殺されるはずだった紫季歌ごと魏国から引っこ抜いたのだ。
彼は原作では当時はまだ秦の若手四千人将だった"王賁"に敗れているが,それは14年間も牢屋に閉じ込められていたブランクや,紫季歌が死んだことで生への執着を失って急所を守らなくなったことが原因だと思うので,万全ならちゃんと大将軍クラスに強いのである。
いや~,彼に関しては義父に疎まれていたこともあってほとんどお金の力で解決出来たので楽でしたよ。
ちなみに,彼が魏国にいないことで仲間割れ事件がなくなって魏国の戦力の低下がなくなってしまうのではと思う人がいるかもしれないが――
……そんなものは俺の知ったことじゃねぇ!(逆ギレ)
べ,別に忘れてたとかじゃないんだからね! これはやらかしじゃなくて魏国に対するハンデだから!!(錯乱)
……とにかくこの話はもう終わり!!
それにしても今思えば,なぜかウチの軍って他国出身者の集いみたいになっているな。
……でも敵国の戦力を減らすという意味では有効な気もするし問題なし!
そもそもキングダムの世界の秦国は史実の秦国と違って一歩間違えれば国が滅びかねないハードモードなのである。
戦国七雄の中でも1,2を争う強国であることに間違いはないが,他国にも創作物特有の謎のバフがかかっているので余裕で中華統一できるというわけではない。
……前世ではこの世界の趙国は長平の畑から将兵が生えてくるとか言われてたしね!!
だから少しでも敵国の将を奪って有効活用するのは悪くないことだと思うのだよ!
……そう言いつつも人材集めはしばらく戦場から離れる良い口実になっていたのは秘密である。
ま,まぁそれは気にしないでおこう。話を戻すとそもそも秦という国は歴史的に見ても実力主義を採用して他国からも優秀な人材を広く積極的に集めたことによって強くなってきた国だからね!
ここで全員紹介しだすと長くなるからやらないが,その他にも幾人かの優秀な者を麃公軍に迎えることが出来ている。
そんな彼らがいなければ俺はとっくに死んでいたかもしれないとつくづく思うよ!
とにかくそんな風に生きるのに精一杯の俺ではあるが,運の良さに加えて前世の記憶の存在にも助けられて,様々な苦難を乗り越えてなんとか今でも生き残ることが出来ている。
だが,それでもいつ死んでもおかしくないのがこのキングダムの世界である。
早く隠居したいなぁ……。
これが昔から思い続け,今でも変わらない紛れもない俺の本音だ。
俺を戦場に縛り付けているのは親父の存在なので,彼が死ねば多少のいざこざはあるかもしれないが麃公軍を解散させることも不可能ではないだろう。
今までの話を聞いても分かる通り,親父の戦い方は苛烈で危険なものだ……故にいつ死んでもおかしくはない。
実際に原作でも彼は戦死しているので,色々と変化があるとはいえどもこの世界でもどこかで戦死する可能性は決して低くはないだろう。
ただ……親父は滅茶苦茶な人物だが,俺にとってこの世界ではたった1人の父親でもあるのも確かだ。
それに親父が死んだら多くの者が悲しむのだ。それは母上や俺の後に生まれた可愛い妹などの家族だけでなく,麃公軍の皆もそうだろう。
本人は戦場で散れるならば本望だとでも思っているのかもしれないが,その思いを尊重してやれるほど俺は戦場に魅せられてはいないのである。
だから親父を戦場で死なせはしない。実家の布団の上で多くの者に看取られながら,戦場で死にたかったと後悔させながら寿命で殺してやると決めたのだ。
……そして俺もそれを見届けてから老衰で死んでやるのだとなぁ!!
この先も多くの困難が待っていることは想像に難くないが,きっと何とかなる! いや,何とかしてみせる!
……主に俺の頼れる仲間たちがな!!
次話は麃公視点になると思います!
それではまた!('ω')ノシ