「広い、本当に公園なのか…」
日も傾き、薄暗くなりつつある名城公園の森の中を俺、糸永、千々岩の3人は進んでいた。
「近年、大学が生態系のサンプル調査を行う施設も兼ねているんだ。一般開放はされているが実際の森林を再現するためにスキャン設備も少なく死角も多い、潜伏先にはうってつけだ」
糸永の説明で俺の疑問は晴れたがそれはそれで面倒だった。広い敷地内から現場から逃亡した容疑者を見つけ出さなければならないのだ。
「それにしても見つからなさすぎよ、少ないとはいえ街頭スキャナは設置されている、それに動体検知センサーだってあるっていうのに何一つとして引っかからないのは不自然よ」
「予測した経路を辿っているんだ、時期に見つかるだろう。…といっても奥に向かうにつれて確度は下がっていってるようだが」
手首のデバイスに表示された地図には映像から分析、予測した逃走経路の線が台風の予想進路図のように引かれていた。
しかし糸永の言う通り、奥に行くにつれて予測範囲は大きくなっている。
このまま日が暮れてしまうと操作も困難になってしまう、それまで発見したいところだが…
しかし俺には一つの考えがあった。
「だったら"森"に聞いてみましょう」
「…」
「…」
一瞬言葉を失う二人。
「藪から棒に何を言いだすかと思えば、そんなオカルトで逃走犯を見つけられるわけがないだろう」
進展しない捜索の苛立ちも相まって糸永の語気は強い。
しかし千々岩の反応は違った。
「まぁまぁ…このままだと手詰まりなんだし、そういったコトに頼ってみるのもいいんじゃない。それで、どうやるの?」
「ちょっとまってて下さいね」
俺はその場に立ち止まり、地面に仰向けになった。
「ちょっと!?スーツが汚れるわよ!?」
突然の俺の行動に慌てて駆け寄る千々岩
「気にしません、それより少し離れて静かにしていただけるとありがたいです」
「…」
指示に従い二人は俺と距離をとる。二人は顔を見合わせ、やれやれといったジェスチャーを見せた。
オカルトなんかじゃない…
俺は目を閉じる。
逃げた男はケガをしていた。衝突の衝撃で頭部を打撲、そして脳震盪、額からは流血しふらつきながら森へと逃げていった。
映像を思い出しつつ男が森の中での行動をイメージする。
木々に手をつきながらゆっくりと歩いて行く。時折痛む手足、頭を押さえつつ奥へ進んでいくがその歩みは遅く、視界だって悪いはずだ。
そして頬を撫でる風の強弱、聞こえてくる音、漂う匂いに全神経を向けるその中に違和感を感じないか…
しばらくの後…
「行きましょう」
俺は二人にそう言って歩を進める。
十数メートル歩いたあたりだろうか
「信じられん…」
「ウソでしょ…」
逃亡していた男を見つけたのだ。
「これだと、スキャナにもセンサーにも引っかからない訳ですね…」
男はすでに息絶えていた。逃げていた途中、意識を失いそのまま前へ倒れ込んだ様子だった。
俺はデバイスで藤堂を呼び出す。
「藤堂監視官、逃走中の男を発見しました。逃走中に死亡した模様です」
『あちゃー、遅かったか…でもお手柄よ。3係と鑑識ドローンを向かわせるから位置を送って頂戴、それから――』
『広場にて所属不明の武装ドローンが襲撃!至急応援願う!繰り返す――』
割り込みの非常通信だった。応援を求める捜査員の声の後ろではドローンであろう駆動音と爆発音が聞こえていた。
現場に緊張が走った。
『至急現場に向かって!私たちも合流するわ!』
「行きましょう」
「「はい!」」
俺たちは急いで広場に向かう。