斬撃が舞い、
「GUAAAAAAA!」
化身はとうに死にかけ、しかしその火は衰えず。
「はぁぁぁああああアアアAAAAAAAA!!」
「GAA!!」
大槌は灰を巻き上げ、その中で一筋の火が煌めく。
「………ーーーーGAAAAAAAAAA!!」
「ッ!?ハァァァァ!!!」
私は咄嗟に大槌を地面に叩きつけ『
2回目。生命力が失われるのが分かる。
3回目。
4回目。左腕が焼かれ、指が焼き切れる。
まさに満身創痍。装備は壊れ、装備者を守護する力は失われた。
化身が、王たちの化身が我に近づく。
火の剣の切っ先が迫りーー
『ーーーーーー』
その時、声が聞こえた。
懺悔するような、後悔するような、聞き覚えの無い声がどこからか頭に響いた。
ーーーああ、これは呪いだ。この身体に注がれた呪いの声だ。
今までの疲労と負傷を忘れたかのように我の身体が動く。切っ先が地面に突き刺さり、爆発する。
爆風に身体は攫われ、熱され爆発した空気が内臓を潰し、私を殺そうとしたところで『
「ぐぅっ………ゥウアアラァァァァァァァア」
すぐさま大槌を立てて身体を支え、左腕をぶら下げ、右手で大槌を引きずり駆け出す。
「GAAAAAAAAAAA!!!」
化身の火の剣が抜かれ、私を真っ二つにしようと剣を横に振る。
我は身体を地面を削る勢いで屈み、斬撃の下をくぐり抜けるように避けーーー王達の化身の脇腹に冷気纏う大槌を叩き込んだ。
「GUAAAaaaaaaaァァァァァァァァーーーーー」
王達の化身の断末魔が響き、遠く響き、消えていった。
私は火継ぎを終わらせた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【ボルドの大槌】
冷たい谷の外征騎士ボルドの大槌
武器に冷気を纏い、凍傷を与える
冷気を蓄積し、たまりきるとダメージを与え
また凍傷状態とする。凍傷はしばらく続き
カット率と、スタミナ回復を下げる
戦技は「我慢」
大地に武器を突き立て、強靭度を一時的に増す
また我慢中は被ダメージも軽減される
「かの灰が初めて灰となった時からの、愛用の武器。8回目の目覚めまで、灰はこの武器をずっと忘れず使い続けた。
灰がどんな思いでこの大槌を使い続けたかは誰も知らないが、おそらく最初はたった一つの小さな思いつきのようなものだったのだろう。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
目が覚める。ここはどこだ?
火継ぎを終わらせ、長年の無意味な延命を断ち切り、全てを裏切って闇の時代を始めた。その後の記憶は全く無い。亡者になるか棺に戻るかするものだと思っていたのに。
周りは地平線まで銀景色だ。絵画世界でもないように思える。絵画世界にこんなだだっ広い雪以外何も無い場所は無い。あそこはところどころ腐っている。
まずは、ここがどこなのか把握する必要があるだろう。
そう考え、残り火を握り潰した。
「……くっそさみぃ」
「グラン隊長!弱音吐いてる場合じゃないですよ、ほらちゃんと松明持ってください!」
「へいへい分かりましたよトラビちゃん……ヒー!少し離れただけですぐに鎧が冷えちまうよぉ……」
「お子ちゃま扱いはよしてください!」
ああ、全くもって貧乏くじ引いたもんだよ。
最初はよお?娯楽もなければ極寒の中で突っ立ってるだけより、あったけえ松明持って城外調査やってる方がマシだろうと思ったし、さらに女まで付いて来るって聞いた時にゃあ、「行くっきゃねぇ!」とは思ったぜぇ?
だけどよぉ、城外はさらに風が強くて冷てえし、雪が積もりまくって松明を上に掲げなきゃいけねぇから全然あったまれねえ。
なおかつ付いてきた女が真面目腐った大尉、その娘だとぉ?
ふざけんじゃねぇってもんだ!
こんな調子で雪を掻き分けボソボソ言いながら歩く。
「……止まってください」
「…あ?どした?」
トラビが急に立ち止まり、その形のいい鼻を動かす。
……黙ってりゃイイオンナなんだよなぁ。
胸はありすぎず無さすぎない俺にとってドストライクの大きさ。
腰のくびれは鎧の上からでもはっきり分かり、足もすらっと伸びている。
うーん、素晴らしい!
これで髪の毛が不幸の象徴である黒じゃなければなぁ……
「……グランさん。なんか、鉄臭い匂いがします。」
「……あん?鉄臭い?」
愉しい愉しい女体鑑賞をやめ、俺も辺りの匂いを嗅ぐ。
……冷気が鼻に入りツーンと刺すような痛みがはしるが、その中に仄かな鉄錆びた匂いが混じる。
すぐさま剣を引き抜く。
「……おい、警戒しろ!」
「えっ!ちょっとどういうことです?!」
「……確かお前はここの冬は初めてだったな。北部辺境の冬は王国で最も寒い。魔物共もほとんど活動しない程だ。」
身体を低くしながら血の匂いのする方に歩き出し、トラビが慌ててついて来る。
早めに気づいたおかげで、血の発生源は50m程先だろう。
未だに俺たちが生きていることから、ここはまだ安全だ。
「しかし、その中で例外が2ついる。
一つは北部辺境の伝説、
「
「北部辺境に生息する
そして、全長10m級のものは砦を襲撃する。」
トラビは青ざめて震え出す。まあそんなでけぇ奴は滅多に現れないんだがな!
生意気な小娘を弄びながらも、ある程度の緊張感持って進み、すぐ近くまでたどり着く。
「……この丘の向こうだな。俺が様子を見るから松明を持ってろ。合図するまで来るな。」
「わっわか、分かり、ました……」
空いた左手で腰の小剣を取り出す。北部辺境に異動して(飛ばされて)からの付き合いだ。
小剣を雪に突き立てながら雪の丘を登る。
1分ほど掛けて丘の上にたどり着き、辺りを見回した時、俺は目の前の光景を疑った。
辺り一面に面白いくらい血が飛び散り、真っ白な新雪がトマト色に染まっている。
氷熊を丸ごと飲み込めるような大きさの地中大蛇は叩き潰され、素人のハンバーグよりもミンチだ。
そして、強烈な血の匂いが充満する一帯の中央に1人の男らしき人物が座り込んでいる。
その男は騎士のような板金鎧を血で染め上げ、人が持てるような物じゃない大槌の持ち手に右手添えながら火に当たっている。
おいおい、どんな状態だコレは……。
予想していた奴は確かにいた、だが死骸となって。そしてそれを殺しただろうやつがその死骸の近くで火に当たっている。
全く意味が分からない、だから俺は答えを知ってるだろうその男に声をかけた。
「その、騎士?殿。如何されたのでしょうか?」
とりあえず貴人と仮定する。全身を覆う板金鎧を着用できるのは軍の上級士官か高等級傭兵か貴族ぐらいなものだ。こんな形の鎧は軍では使用されていないし、こんなとこに傭兵が受ける仕事は無い。ならば貴族だろう。道楽かなんかだろうとは思うが……。
「……貴公、幽鬼ではないように見える。しかし、貴公のような者にはあったことが無い。ロザリアの指でもあるまい。奴らは会話を知らん。何者だ?」
貴族ではないようだ。なら一体コイツはなんなんだ?
「……俺は辺境第3軍ティパス砦所属のマルクス・グランだ。階級は軍曹。お前は何者だ?」
「……私は『火の無い灰』だ。名前や出身はとうに忘れた。階級なども無い。しかし、やはり私は全く知らない場所に来てしまったようだな。うーむ……」
『火の無い灰』だぁ?種族か?にしても名前も出身も分からないとか、田舎のボケ老人なのか?それにしては声は若々しい。
「……トラビ!来い!」
「はっはい!……ひぃ!」
トラビが怯えながら来る。
「周りを警戒しておけ……さてと、じゃあお前さんは何しにここに居る?」
「私は目的があってここに来たわけでは無い。気づいたら別の場所からここに居て、目に付いた狼やら熊やらワームを殺していたら貴公と会っただけに過ぎん。」
……嘘は言っていない、ように見える。
ならコイツは転移とか何らかの理由でここに来て、
「……わかった。じゃあ俺について来てくれ。付近の街まで案内しよう。」
「おお!貴公のような人間が住む町があるのか!実に素晴らしいな!」
やましいことがあるなら街には行きたくないはずだが、そうでも無いようだ。
頭おかしいことを口走っている気がしたが、聞こえない振りをした。頭が痛てぇ……
基本的主人公は脳筋です。技量にも降ってるので一通りの武器は使えますが、重いもの振り回した方が威力出ます。