全ての呪いを背負いし灰に   作:あるあ〜る

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まいぺーすといこうじゃ> ⊂(  ⊂   _ω_ )⊃


第2話

「これが街というものか」

 

私はグランという男とトラビという女に連れられて街の城門に来ていた。

これはロスリックのものや不死街のものほど大きなものではなかったが、それらのものとは違い人気があり死臭もしておらず、門扉も手入れされている。

 

「話がついたぞぉ、こっちに来てくれ」

 

衛兵と話をしていたグランが私に身振りして来るように伝える。

どうやら私は身分とやらを証明するものがないからそれを発行しなければならないらしい。そのため、グランが色々と話をつけてくれたのだ。

ちなみに女の方は兵士のような者達に同行したため途中で別れた。彼女との会話は存外楽しいものだったのだがなぁ……またの再会を楽しみにしておこう。

 

 

城門横の扉から中に入るとグラン以外に3人の男が立っていた。1人は煌びやかな服装をしている貴族のような男、1人は聖職者のような格好をして円形で中央に宝石がついたペンダントをつけていている男、最後の1人は兜を被り主な部分を鎧で覆っている騎士。

 

「結論から言うと、お前さんが街に入ることは認められた。だが、その前にひとつ確認したいことがある。いいか?」

 

「街に入れるのならばできる限りの事はしよう」

 

私がそう答えるとグランは貴族の男に目配せをし、貴族は聖職者の男の方に頷く。

 

「わかった……『俺が見た氷蛇(アイスワーム)の死骸は、お前が殺したものか?』」

 

その時、言葉に魔力が篭っているように感じた。しかし、何らかのエンチャントや魔術が飛んでくるような気配は無い。

おそらくは「助言求め」のような奇跡の類いだろう。

 

「グラン殿と出会った時私の隣にあったワームの死骸のことか?ならばあれは私が1人で殺したものだ」

 

「『我が信奉し、真偽と裁判を司る神、裁定神ミトラの名においてこの言葉を真実とみなす。』」

 

私が問に答えると聖職者は判決を下す。どうやら私は裁判にかけられたようだ。しかし、罪人となることはないようだ。

 

「大佐殿、これでお分かり頂けましたか?彼はあの凍蛇を確かに討伐したのです。特例を処置するには十分ではありませんか?」

 

グランが貴族、いや彼の上官なのだろう男に声をかける。

 

「……ああ、いいだろう。この後のことはお前に任せる。私は回収班を結成してくる」

 

彼はグランの肩を叩き、騎士を連れて私が入って来た扉から部屋を出た。

聖職者も「神の御加護があらんことを」と言い残して彼らの後を追った

 

「あれは……なんだったのだ?」

 

「ん?知らないのか、あの人は裁定神ミトラ様の神官さ。証言があるが証拠がなかったり、判決を下すのが難しい時に呼ばれる。高い金を払ってな」

 

「そうか……助かった。」

 

つまり、彼は私のために高い金を払って面倒事を解決してくれたということだろう。

やはり、彼は良い人なのだ。

 

「恩を感じるならこの後酒の1杯でも奢れ。んじゃ、早速仮身分証を作るとしよう」

 

彼は棚から羊皮紙を取り出し、ペンを手に取り質問してくる。

 

「名前は……無いんだったか?とりあえず(アッシュ)にしとくぞ。種族は?」

 

「人だ。ただ、普通のものとは違うが」

 

「まっ、だろうな。只人があんなことできる訳がねぇ。大方獣人かなんかの先祖返りってとこかねぇ、その火も」

 

この身に燻る残り火を見る。

 

「……似たようなものだ」

 

「年齢と出身は?出身の方は最悪なくてもいいぞ」

 

「年はわからん。少なくとも20は行っているはずだ。出身は言えないというか、名前が無かったというか……」

 

出身と言っても、あそこはいろんな故郷が流れ着いた場所だ。人として生まれた場所はダークリングが見つかった時に追い出されて名前も忘れてしまった。

目覚めた場所ということなら「灰の墓所」となるが……墓から生まれたと言うわけにはいかない。「火」なら尚更だ。

 

「ふむ……相当田舎の方だったか。文字は読めるのか?」

 

「……わからん。だが故郷の文字は読めた」

 

「これは読めるか?」

 

壁に打ち付けられた木の板を指すグラン。

 

「火の扱いに気をつける、だな」

 

どうやら私の知ってる文字と同じようだ。風景(がわ)は変わっても中身はそう変わらないということなのだろう。

 

「王国語は読めると……よし、これがお前の仮身分証だ。なくすなよ」

 

「ああ、気をつけるとしよう」

 

受け取った仮身分証を「ソウル」に繋がっている腰のポーチに入れる。

 

「これがあれば街に入れるんだな?」

 

「そうだな、街に入ることはできる。ただ、これには魔法が込められていてな。持ってるやつは衛兵隊に位置がバレるようになってるのさ。だからバケモンみてえな強さがありながら身分証を持ってないやつが街に入っても大丈夫ってわけだ!」

 

「……なるほど、恐れられているというわけか」

 

先程の身分の高そうな上官と騎士、そして言葉の真偽を見抜く奇跡を扱う聖職者。私のような身元が分からない者は多いだろうに、その全てに彼らが出てきて大金をかけて術をかけるなんてことはしないだろう。

 

「私が言うことでもないが、そんな危険人物を街に入れても良いのか?」

 

そう問うと、グランは頭をかいて苦笑する。

 

「……まあ、あれだ。政治ってやつさ」

 

「……む?」

 

よく分からんが、そのセイジとやらで私が街に入れるのならばどうでもいいことだろう。

 

「……さて、んじゃ最後に関税として小銅貨3枚だしてもらおう!」

 

私はこの時ほど焦ったことは無いと断言できるだろう。

私は小銅貨なんてものは持っていないし、関税などというものは知りもしない。ただまあ、お金を請求されているというのは分かる。しかし私は金なんてものは持っていない。あの場所での商売は基本ソウル払いだ。金なんぞ持っていても役に立たな……ああ、これなら行けるだろうか?

私はポーチから1枚の硬貨を取り出した。

 

「……これでもいいだろうか」

 

「おぉ、あんじゃねぇか。焦りだしたもんだからてっきりねぇのかと思ったぜ。……錆び付いてはいるが手垢がついてねぇな。帝国産か?」

 

「あ、ああ。そうだ、テイコクサンダ」

 

なんだかよく分からんが上手く行きそうだ!

試してみるものだなぁ……

 

「なら王国銅貨2枚と小銅貨3枚の釣りだ。よし、それじゃあ行っていいぞ!」

 

「すまない、助かった。……ところで、金を稼げるところはないか?金が無くてな」

 

しばらく滞在するならば、この場所で使える金を持っておくべきだろう。「錆びついた銅貨」や「錆びついた金貨」でも良いだろうが、あれの用途は別にあるし、何よりそれほど数を持っていない。

篝火でもあれば良いのだが、今のところ見つけていない。

 

「ふむ…………なら、傭兵組合に行ってみるといい。あそこは身元が分からないやつでも力さえあれば成り上がれるとこだ。剣と盾が交差して、その上に兜が乗ってる看板がある。目立つからすぐ分かるだろうぜ」

 

実に私好みな……いや、好みというかそれしか出来ないというべきか。

 

「そうか、わかった。感謝する。礼は酒だったか?」

 

グランはニヤリと笑みを浮かべる。

 

「ああ、また会う時にでもたのむよ。お前が選んだ最高の酒を期待しているぜ?」

 

「酒はあまりのんだ事がないのだがな……努力しよう。ではな」

 

そう言って、私は「城塞都市ノースエンド」へ入った。

 

 

 

……「ジークの酒」の在庫はあっただろうか。

 

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【錆びついた銅貨】

 

 

錆びついた古い銅貨。

粉砕すると、一時的に発見力を高める。

富を失った者は、いつかより豊かな富に出会う。

それは古いまじないの類である。

 

「かの灰が初めて人間に渡したアイテムであり、多くの富を引き寄せる力ある道具(マジックアイテム)。

灰にとっては価値の低いものだ。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

こちらに背を向けて尋問室を出る(アッシュ)を見送り、その扉が完全に締まり切ったのを確認する。

 

「……問題ありません」

 

『司令室に向かってください。中隊長からお話があります』

 

「了解しました。すぐに向かいます」

 

尋問室からでて、城壁内の司令室に向かう。

この城壁の扉で最も頑丈に作られた司令室の扉をノックする。これいてぇんだよな。

 

「グラン軍曹です。ただいま戻りました」

 

「入れ」

 

「失礼します」

 

華美ではなくとも高級感溢れ、機能美を感じさせる部屋にいたのは全身を板金鎧と兜で覆った騎士と王国貴族らしい傲慢さと高貴さを醸し出す1人の男ーーー辺境第3軍所属北部国境警備隊大尉フィリップス・アトキンが座っていた。

 

「ジョイスを通じて話は全て見ていた。貴様の感想を言ってみろ。奴は、黒か?」

 

フィリップスは睨めつけるような視線をこちらに向ける。

 

「いいえ。証拠はありませんが黒では無いでしょう。かと言って西の聖騎士ではないと断言も出来ません」

 

「ふんっ、何も分からないということではないか。やはり、殺しておくべきだったか」

 

不機嫌そうに鼻を鳴らす。だが、そうはいかねぇ。俺の首が飛ぶだけならいいが、アッシュと敵対すればそれだけじゃすまねぇ。

 

「いいえ。そうとは言いきれません。彼からは間者特有の警戒感が感じられませんでした。また、アッシュの身につける鎧や武器は私がこれまで見た王国騎士、聖騎士、鎧武者のいずれにも当てはまりません」

 

「そうかそうか、貴様はやつが西の気狂いでも東の悪魔でも王国の監査官でも無いと」

 

アッシュのことはほとんど分からねぇ。特に奇妙なのが、あの鎧だ。高貴な身分を示す青のマントが着いていながら、あの紋章は見たことがねぇ。

 

「その通りです。彼の口にする言語は訛りがなく王国人そのものです。しかし、それらの身分の者では無いのだとすれば……暗部の者かと」

 

これは半分くらい口からでまかせだ。だが、コイツはその可能性を捨てきれねぇ。

フィリップス・アトキンという男は男爵位でありながら王家からの信頼が篤く、四十にして最前線の国境都市を任されるほど。

そして暗部に対して嫌悪感を抱いている。

 

「寄生虫共か……いいだろう。ひとまず奴は監視に留めてやろう。仮身分証は奴の手に渡ったのだろう?」

 

だからこそコイツは手が出せない。寄生虫と蔑む相手でも王家の大事な手駒であるから。

 

「彼が受け取り、ポーチの中に仕舞うまでしっかりと」

 

仮身分証には「追跡」の魔法がかけられている。ちょいと身動き取れねぇかもだが、これで安全が買えるわけだ。(アッシュ)にとっちゃ安いもんだろう。

 

「よろしい、あとはこちらで対処する。元の任務に戻れ」

 

「はっ!失礼しました!」

 

「ああ、それと。まだトラビは預けておく。傷一つつけるんじゃないぞ!分かってるな!」

 

げぇ!まだ子守りしなきゃいけねぇの!?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

後半はグラン視点でお送りしました。裏話的なやつです。あんな鎧着たやつがやすやすと街に入れるわけないよね。

グランの口調がぶれてたりするかもしれませんが、真面目に頭働かせてる時はこんな感じだと思っていて欲しいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

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