全ての呪いを背負いし灰に   作:あるあ〜る

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マダアル

アイテム説明を挿入できてなかったので変更しました。


第4話

金銭の当てをつけて大男と別れた私は薄暗く狭い、どこか不死街を思わせるような路地を練り歩いていた。

目的は『篝火』の設置場所の下見。

急ぐ必要はないが、いつか必ず必要になる。

 

「こんな場所でも、死の危険はある」

 

雪の中を彷徨っていたとき、何度も奇妙な生物と戦った。

手の長い人モドキ、魔術を操る狼(クソッタレゴミ犬)、全身を剛毛に覆われた巨人。緑色の肌をした小人(クソチビ)。多種多様な化け物がいたが、そのどれもが群れていた。単体で出てきたのはあの大蛇くらいなものだ。

我ら『火の無い灰』の体は貧弱。平服の亡者にすら囲まれれば勝ち目はない。

もし『エスト』が尽き、群れに囲まれたとなれば……確実に死ぬだろう。

その時近くにいた人間が『篝火』から蘇る私を見ればどう思うだろうか。

 

「……しかし、見つからんな」

 

傭兵組合を出てからそれほど経っていないがどこにでも人の姿がある。一見いなさそうな場所でも建物の影で毛布に包まっていたりと、常に人目がある。

諦めて他の場所に行くか……そう考え、大通りに引き返そうとした時。

 

「おいおいィ、騎士サマがこぉんなとこ歩いてちゃいけねぇだろォ?」

 

後ろから挑発的な濁声と複数の足音が聞こえる。

振り向けば、4人の男がニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべていた。

先頭の男は右手にメイス。後ろの3人は曲刀。

『あの場所』なら先手を取るところだが、「ここ」ではどうするべきか。

 

「私は騎士ではない。ただの傭兵……になる予定のものだ。それで、貴公らは何用だね?」

 

申請はしたし、明日にはプレートができる予定だが、まだ受け取っていないのだから傭兵ではなく「その予定」と形容すべきだろう。

しかし、彼らにはその答えが面白かったのかゲラゲラと笑い出す。

 

「ハハッ!誤魔化しても無駄だぜェ。ステキなおべべ着て、うちのシマになぁにしに来たんだァ?」

 

私は腕を組んで考える。

彼らは『亡者』のように話しが通じないわけではないだろう。だが、あの『タマネギ』のように友好的というわけでもない。

……身の振り方を、変えるべきだろう。

 

「人目のない場所を探していた。だが、どうやら無駄足だったようだ」

 

「へぇ……?まぁ、用が済んだんならさっさとうちのシマから出てって貰いたいんだがなァ」

 

「ああ、もとよりそのつもりだ。ではな」

 

男たちの間を通って大通りに足を向ける。

ここでは『篝火』の設置は無理そうだ。やはり街の外に出るしかないか。

次の設置場所を考えながら、最後の1人とすれ違おうとした時。

 

「おおっと、手がすびゃ?!」

 

迫る曲刀を左手で『パリィ』し、空いた腹に右拳(致命の一撃)を叩き込む。

背負っていた『ボルドの大槌』を取り出し、崩れ落ちる男に振り下ろす。

なんの抵抗もなく潰され、血肉は飛び散る前に氷像となった。

ふむ、この冷気は実に便利になった。血飛沫がでないのが何よりいい。

 

「なっ……て、テメェ!」

 

周りの男たちが一斉に距離を取り、曲刀を向ける。

だがメイスの男だけは冷静に見える。

彼は狼狽える男たちを睨むんで下がらせると、私の前に立つ。

 

「落ち着け、お前ら。……躾がなってなくて悪かったな」

 

「問題はない。それより、行ってもいいか?」

 

「ああ、できればもう2度とここには来てほしくねェ」

 

「善処しよう」

 

私は『ボルドの大槌』を背負い直し、今度こそ大通りに向かう。

路地は、真っ赤な光で染まっていた。

 

 

 

翌日。

久しぶりの朝日に照らされて、私は体を起こす。

結局『篝火』は設置できず、道端でいくつかのマントを羽織って夜を過ごした。

 

「……さて、行くか」

 

マントを『ソウル』にしまい、『騎士の盾』を背負い立ち上がる。

その姿は傷だらけながらもどこか気品のある騎士鎧……ではなく、顔全体を覆う鉄兜(てつかぶと)と装飾のないシンプルな胸甲(きょうこう)を纏っている。

深夜、人のいないタイミングでマントの中で着替えた『下級騎士の鎧』だ。目立つ『ボルドの大槌』も『重厚なロングソード』に替える。

これも騎士鎧だが、装飾もなく全身を覆うような重鎧ではない。これなら先日見た他の傭兵と変わらないだろう。

すっかり人のいなくなった大通りを歩き、辺りを眺める。

 

雪の積もった屋台と石造りの家屋。そしてそれらを照らす朝日。

アリアンデルのように甘く腐っているわけでも、イルシールのように死んだ美しさでもない。

なんと言い表したものだろうか。私にはわからなかったが、ただ「美しい」という言葉だけが浮かんだ。

 

 

 

片側が木の板で塞がれた大扉を開ける。

喧騒はないが、傭兵と思わしき者らが大勢倒れている。

昨夜は随分と飲んだようだな。

 

真っ直ぐ歩いていき、カウンターにいた男に話しかける。

 

「プレートを受け取りにきた」

 

「えーと、お名前は……?」

 

「アッシュだ。……大男から聞いていないか?」

 

名前を伝えると、彼は驚いた様子で目を見開き私をまじまじと見つめてくる。

はて。なにかおかしなことを言っただろうか?

というか、未だにあの大男の名前を知らない。次の機会があれば聞いておくとしよう。

 

「……ほんとに偽騎士?」

 

「偽騎士……?私は騎士では無いし、そのような名前を名乗ったことも無い」

 

「す、すみません!確認を取ります!」

 

彼はそう言い残し、小走りで奥へ入っていった。

しかし、偽騎士とはな。嘘をついた覚えはないが、あの鎧のせいだろうか。

ロスリック騎士め……初まりからここまで私の壁となるか。

 

切り刻まれ、貫かれ、潰された苦々しい記憶を思い起こしながら暫し待てば、奥から見覚えのある大男が現れる。

 

「こんな朝っぱらから誰だよ全く……プレートを取りにきただぁ?昨日は偽騎士の奴しか来てねぇぞ。誰だおめぇ」

 

「アッシュだ。昨日も、先程も名乗ったが」

 

「んな訳ねぇだろ。冷てぇ大槌と立派な騎士鎧はどこにいったんだ?」

 

ああ、着替えたからわからんのか。少しぐらい自分だと分かる装備をしておくべきだったか。

『ソウル』から冷気纏う大槌を取り出す。

 

「うおっ?!お、おまこれ……保管庫(インベントリ)か?」

 

「意味は何となく分かるが、私は『ソウル』と呼んでいる。いくらでも物が入る便利なものだ」

 

原理も一般的なものなのかすらわからない。『火のない灰』は皆使えるものだったが、いつから使えるようになったのか知る者はいないだろう。

昔の記憶を覚えている者は皆『亡者』と化しただろうから。

 

「お前、どうして傭兵なんかやろうとしてんだよ……」

 

「手っ取り早く金がもらえると聞いたからだが」

 

「そんなら……まぁいいわ。ほらお前さんのプレートだ」

 

紐のついた鈍色のプレートを投げ渡される。

 

「それを見えるとこにつけとけ。んで、依頼を選んで持ってこい。お前さんのランクに合ったものなら受諾してやる」

 

「感謝する。ああ、それと貴公の名前を聞いていなかった。大男と呼ぶのも少しな」

 

「なんて呼び方してくれやがる……俺はボルドーってんだ。よろしくなアッシュ」

 

今はソウルに眠っている大槌が蠢いた気がする。かつての所有者と似た名前に懐かしさを覚えたのだろうか。

『冷たい谷のボルド』、最初こその大きさと予想できない瞬発力から叩き潰されたが、2回目以降は楽な相手だった。

しかし、成長を実感させてくれるいい相手だった。

 

「ああ、よろしく頼む」

 

兜の裏で口元を緩ませながら掲示板の端に向かう。

全体的に依頼の数は少ないが、アイアンランクの依頼はいくつか残っているようだ。

 

依頼を受けるなどはじめてだが、退治や駆除とかを選べば問題ないだろう。

紙には化物の姿が描かれているため、見たことのあるやつをいくつか選ぶ。

 

「これを頼む」

 

「おお、早ぇな。白猿(ホワイトプセウド)雪精霊(スノウスピリット)雪小鬼(スノウゴブリン)……全部討伐系か。ま、いいだろ。ぶっ殺したら証明できるもん持ってこい。白猿(ホワイトプセウド)は右の親指、雪精霊(スノウスピリット)は精霊石、雪小鬼(スノウゴブリン)は右耳だ。忘れんなよ」

 

全て叩き潰すような真似はするな、ということか。

 

「承知した。貴公に感謝を」

 

私は『貴人の一礼』をし、背を向ける。

ようやく金が手に入りそうだ。

 

 

 

「……もう突っ込まんぞ」

 

芸ではないのだがなぁ。

 

 

 

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【騎士の鎧】

 

下級の騎士の鎧。

堅固な鉄製のもの。

鉄の足甲の中でも重厚な部類であり、

高い物理カット率を持つが、重量の負荷も大きい。

使用には、高い体力が前提となるだろう。

 

 

「かの灰は道行く人々からに「偽騎士」と呼ばれた。

騎士とは主を護る、不屈の勇者に与えられる称号である。

かの灰はどんなに絶望的な相手であっても立ち向かい、打ち勝ってきた。実に相応しいあだ名と言えよう。

何せ、護るべきものを自身の手で火に焚べたのだから。」

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スマホで編集_( _´ω`)_ツライ
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