職業を変えて新たな力を得る転職のルールは二つ。
1つ目は前職から引き継ぐのは魔法の習得と戦闘経験のみ。
戦士職で培った能力はほぼ受け継がれないということだ。
2つ目はある程度の能力がなければ転職できない職がある。
迷宮潜りたてなら侍、忍者、君主、司祭に転職するのは難しいがマスターレベルに達した俺達には関係ない。
基本的に成長するまではなりにくい侍、忍者、君主になるか魔法職経由で戦士系職になり魔法も物理もいける職になるのが基本だ。
そうでないなら転職なんかせず超越者《ハイマスター》を目指したほうがよっぽどいい
そしてそれぞれの転職先だが俺は忍者のままだ。
消去法でなった盗賊及び忍者だが今はこれが俺の天職だと感じている。
たとえ俺に力があろうがよく回るオツムがあろうが高い信仰心があろうがなんだかんだで盗賊か忍者になっていただろうなと確信できる程度には。
金髪侍も俺と同じく侍が天職と感じているため転職するつもりは一切ない模様。
司祭も転職する気は無い模様。たとえ戦力外一歩手前でも一人は鑑定要員が必要な以上転職しないほうが貢献できると思っているようだ。
反対に魔術士は忍者志望らしい、何でも魔法使いとしては打ち止めな以上新たに力を得る必要がある、俺に鍵開けを習っているから盗賊系職は都合が良い。忍者には優秀で無駄に面倒見が良い優秀な先輩がいるから習熟も早いだろうとのこと。誰だよそいつ、優秀な忍者だったら俺様の事だが面倒みが良い上に優秀な忍者とかこいつの交友関係にいたっけ?
戦士も侍になるようだ。
最近前衛としての役割を果たしきれて無いと思っていたことと単純物理攻撃オンリーのスタイルではいつか限界がくると悟って侍に転職するのを決意したらしい。正直職人気質のこのジジイがあっさり新しい職に乗り換えるとは意外だった。
僧侶の転職先は君主だ。【白銀】に憧れを持っていたこいつは君主の鎧を着て白銀ごっこを始めるつもりのようだ。動機は意味分からないが君主の鎧を有効活用できるのは良い、こいつも前衛としては物足りない戦闘力になってきていたので良い転職先だとは思う。
後者三人が訓練場で転職の準備を勧めている間に転職しない組で今後の事を話し合った。
転職したらマーヴィーボコってレベルあげようとかレベル1でレベルドレイン喰らったら消滅するから当分四層より下行くのやめようだとか転職連中のフォローに関することがほとんどだった。
転職組が帰って来るのが余りにも遅かったため転職組のフォローに関する話が尽きたところで侍がそーいや盗賊君酒もタバコも色街も大好きなのにギャンブルにだけは一切手を出さないのなんで? とか聞いてきた。
ギャンブルは文字通りいくら金があっても足りないからだ。
他の趣味はなんだかんだで使える金額が限られるがギャンブルだけは賭けようと思えばいくらでも賭けられる、俺の性格上一度手を出せばのめり込むとこまでのめり込み際限なく金を使い破滅するのが目に見えているから絶対やらないと決めているのだ。
盗賊君あんだけ手先器用なんだからイカサマすりゃ楽勝だろみたいな事を二人揃って言ってくるがいくら賭場でも不正はダメだろ
そう言うと糞金髪は前々から思っていたけど盗賊君本当に真面目だねとか抜かしやがる。普通のやつがこのセリフ言ったら嫌味なんだがこいつの場合100%本心で言いやがるから質が悪い
続けて司祭も盗賊君クズだけど根っこは妙に真面目だよねとかケラケラ笑いながらほざきやがった。
この後も金髪チンコが色街でやらかした話を司祭にバラしたら司祭の口から今まで出た事もない程低い声でうっわという声が漏れ出たり司祭が元男だった話をした結果密かに司祭を狙っていた(パーティ全員にバレていたが)侍が泣き崩れたりとか色々あった。
死ぬ程くだらない話だらけの無駄極まりない時間だった。
しかし俺のパーティへの印象も変化している。
侍に対しては初対面のときに感じていた嫌悪感がだいぶ薄まってきている。
偽善的な面も傲慢さも全て自覚したのか発言の臭さが薄くなり割とゲスな発言が飛び出すようにもなってきたのが大きな理由だろうが、自分の悪性を受け入れ自分を悪人だと思いつつも本物の善人になれるように必死な姿に0.0000000000000000000000000000001ミリくらいは俺も感化されてしまった。
いつの間にかこいつに親友認定されていたのは最悪だったが
司祭も俺を善人扱いしてきた時点で頭に脳の代わりにうんこ詰まってるおっぱい扱いしていたのだがまあ昔のこいつのやらかしに比べれば俺は相対的に善人なのだろう。
こいつ曰くいくらでも悪事を働けるのにそれをせずしょぼいことしかしないから盗賊君は善人だ、とのことだがそんな適当な理由で俺を善人認定しないでくれ。他人を傷つけないくらい死体にもできる。他人を傷つけないだけでなく他人の幸せを願って初めて善人になるのだ。マイナスを作らないのとプラスを作るのは全く違う。
そこで意見の相違があるものの元クズと現クズどうし話が通じることが多く、善良な人間でありながら俺の拒否反応が出ない数少ない人間だ。俺にとばっちりを与えてしまったことへの誠心誠意込めての謝罪を受けたがまあそれは今更どうでも良いだろう。
そうこうしているうちに転職組が帰ってきた。全体的に5歳くらい年を取ったようなやつれようだがこれ後でなんとか治るよな
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次の日の迷宮探索後パーティの連中の装備の買い替えやメンテナンスの予約や魔術の記録、備品の整理を終えた俺は魔術師に斥候技能を教え戦士と近接戦闘技術の情報交換を行い、司祭とマジックアイテムの勉強をした。
そんでもってミーティングすると事前に散々伝えたのにも関わらず豚箱にぶち込まれた馬鹿僧侶の引き取りと色街から帰って来ない馬鹿金髪の連れ戻しをして酒場でミーティング
ミーティングが終わってバカ五人衆が帰ったら馬鹿兄妹の対処マニュアルを改良してボルタック商会のクソ共と交渉して備品を追加し俺達に追い剥ぎ行為仕掛けてきそうなカスをピックアップしてまとめる
こんな感じで酒場が閉まるまで冒険の下準備等を行って帰宅
これが俺の毎日のルーティンだ。
この後とある事情で知り合ったクソガキ共に餌を持っていき下宿しているクダンとかいうババアの家の馬小屋に戻る
クダンとかいうババアは未来予知の能力を持った魔物と人間のハーフ、いわゆる半魔のため酷く差別的な扱いを受けていたらしいがそれ故に差別意識のない俺の事を気に入り寝床を貸してくれていた。
まあ実際のところ俺は自分以外の全ての人間を等しく見下し差別しているため結果的にフラットな目線になっているだけだが。
ババアに挨拶をして馬小屋に入り寝転ぶと極度の疲労によって俺の意識は闇に飲まれていく
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ふと気づいた時には周りには大量の人間の気配。
以前クダンに襲撃かけてきて俺に追い払われた馬鹿軍団がまた来やがったのか?
そう思って盗賊の短剣を展開した俺の目の前に現れたのは凄まじい魔力を持った、見知らぬ老若男女の大群、その先頭に立つのは金髪偽善者侍の面影を宿す金髪の美青年。
おっぱい司祭の様に鑑定能力を持たない俺にすら分かる圧倒的な魔力を内包した鎧、兜、小手、剣、盾で完全武装しているがそれ以上にこいつの本体の存在感が凄まじい。
それを見て俺は短剣を引っ込めた。
こいつ等桁違いに強い。抵抗は無駄。そう判断したからだ。
それよりも大きい理由はクソ侍、クソ僧侶、司祭と同じくこいつ等が善人だと言うのが直感的に理解できたからだ。
他者に強く興味を持ち、他者の幸福を喜び、他者を愛し他者に愛され、地獄の様な現実の中でも善意をすり減らさない者、合理性と利己性に屈しなかった者、他者に手間をかけるのを惜しまない者。俺みたいなクズには理解できない者。
俺のクズ感知センサーは探知率100%だが善人感知センサーもなんだかんだで100%の探知率を誇る
しかし奴らが纏うのはその善性には似つかわしくない感情。絶望、後悔、悲しみ、罪悪感。
そして何よりもひたすらに、ただただ執拗に感じられるのが執念
先頭の金髪が口を開いたのを皮切りに奴らが口を開く
すまない、私達は仕留められなかった、すまない、すまない、君に押し付けてしまった、すまない、君に託してしまった、世界を救えなかった、ごめんなさい、ごめんね、■■■帝を殺し切れなかった、
頭の中に直接響くような、脳に直接絶望と罪悪感をぶち込まれるような、共感性皆無の俺にすら同情を抱かせるような哀しい声の大合唱だ。
よくわからんがここまで必死になられると流石に茶化せない。
そして先頭の金髪侍もどきが俺様に近寄ってくる。
僕が失敗したせいで金■■■はまだ生きている、封印されただけなんだ。
紹介が遅れた。僕の名前は■■■■・ペンドラゴン。■者だ。
そして■■龍■と戦い僕の後ろの彼らの命を犠牲にして放った月光■滅でも金■■■を仕留めきれなかった敗北者だ。
さらに君がその死■戻り能力を得るに至った原因でもある。
なんかところどころ聞こえねえんだよ、こいつの家名がペンドラゴンってことしかわかんねえよ。
俺の心を読んだかのように侍もどきが告げる。
すまない、ちょっと今の君には知らない方が良い情報が多すぎた。
肝心な事だけぼかして言う。
後5年で封印が解ける絶望そのものと君は戦う。その中で君は地獄を味わうだろう。
100年や1000年程度ではない、死と暴力と痛みで埋められた地獄だよ
この地獄を作ってしまったのは不甲斐ない僕のせいだ。
涙を流し俺に謝罪をする金髪共…いや、亡霊たちだこいつ等。不浄の気配が薄いが迷宮でみたゴースト共と同じだ。俺は口を開き亡霊軍団に告げた。
要は尻拭いしてもらえないと成仏できませんと言うことだろう
いいぜ、やってやる
どっかのまな板と金髪チンコのせいで他人の尻拭いにはもう慣れた。
あのクソアホ馬鹿兄妹の尻拭いするのよりはずっと楽だろうしな。
そしてこれは断じて善意ではない。最近糞侍とか糞司祭とかにツンデレだとか照れ隠しだとかレッテルを貼られているが本当に違う。
マジで違う。
単純に理不尽な世界への怒りだ。
お前ら善人が不幸な死に方をするのは俺にとって胸糞が悪いから仕方なく自分の為にやってやるだけだ。
こう言うと戦士魔術師にすらツンデレだとか言われるがマジで自分の為にやってるんだ。何度も言うが本当に違う、照れ隠しとかじゃねえ
そう言うとクソ侍もどき……もういいや、クソ侍2号で。クソ侍2号が笑いながら告げた
君は不思議だな、君よりも諦めの悪い人間も心が強い人間も善良な人間も掃いて捨てるほどいる。
それでもどんなに善良な人間も、強い人間も、諦めの悪い人間も、それこそ僕ですら諦め屈し歩みを止めた状況でも何故か君は絶対に屈さない、諦めない、歩みを止めない。
どんなに強い奴が、それこそ■■■帝が相手だろうと、途中でどんなにこっ酷くやられようと、どんなに不様を晒そうと最後に立っているのは君だと確信させてくれる。
頼んだよ全■者様
最後にうざってえ金髪にそっくりの顔でうざってえ笑みを浮かべてクソ偽善者金髪侍もどきは言った
ああそうだ、■■■■君
僕の子孫の助けになってくれてありがとう。
誰だよ子孫って、知らねえよ。
ここで俺の意識は途切れた。
次の朝起きると目の前には金髪バカ1号(精液スプラッシャーの方)と2号(人間かどうかも怪しい方)の馬鹿兄妹が立っていた。
なんでも迷宮探索の時間に遅刻した俺を起こしに来たらしい。
いつも僕が迷惑かける側で盗賊君がフォローする側だったけど今回は僕が盗賊君の力になれる! 嬉しい! とか喚きつつ俺用の朝食を作っているチンカスと盗賊さんいつも集合30分前には来ているのに珍しいねとか言いながら勝手に俺秘蔵のショートケーキを引っ張り出して捕食し始めるなんのために来たのか分からんマンカスのクソコンビにいつも通りキレながらも俺の心はあまり不快ではなかった