そいじゃ本編どうぞ!
かつて、世が戦国乱世だった頃、『赤兎』と呼ばれたウマ娘が存在した。
そのウマ娘は野を駆け、山を駆け、ありとあらゆる戦場で暴れ回った。
その瞳とその毛は並び立つ者がいないほど鮮やかな焔に染まり、また、同じくらい血に塗れていた。
彼女の逸話で必ず出てくる物に、この炎の瞳と毛色の他にもう一つ、特異な物があった。
嘘か真か、彼女は『一日に千里を駆け抜けれる』、という話だ。
勿論、皆ご存知の通りウマ娘の足は消耗品であり、硝子の様なものだ。
千里、今の距離に換算すると約4000kmを一日で駆け抜けるなど正気の沙汰ではない。
わかりやすく速度を出してみようか。
駆け抜けると言うからには走っているのは確かだろうから、仮定として現代のサラブレッドの平均的な最高速度、時速70kmを参考にしよう。
一日4000km÷時速70km=約57。
つまり57時間程の全力疾走でようやく駆け抜けられる速度なのだ。
おわかりだろうか?
平均的なサラブレッドの『全力疾走』で『57時間』なのだ。日にちになおすとよりわかりやすいだろうか。
2日と9時間である。
2日と9時間である。*1
つまりは普通のサラブレッドでは無理だと言う事だ。
では逆に24時間で走り切るにはどれ位の速度が必要かをだしてみよう。
1日4000km÷24時間=時速約165km
馬鹿げているだろう?
つまりは最低でも現代のサラブレッドの倍以上の速度が出せることが確定しているのである。
しかし、駆け抜けるには少なくとも戦場であるのは確か。
ならば防具や武器を持っている筈だし、調べてみるとその総重量は約20kgにも及ぶそうだ。
走る為に改良された服や場所で3km駆けるだけでも、相当疲れ、足を消耗するのに、重りを全身に合計20kg程付け、尚且つ全力疾走で何時間も駆ける。
余りにも馬鹿げている。
彼女の話にが嘘か真かの逸話として残るに充分だろう。
また更に、彼女にはもう一つ言われている言葉があった。
『最もウマ娘らしいウマ娘』…………と。
生涯にかけて一人の主君に仕え、
闘争本能に身を任せ戦場を荒らし、
主君の死後は拒食により死亡、
と、ウマ娘の特徴とも言える重い*2愛情と闘争本能を一生涯で示しているのである。
オグリキャップ並みに大食いであった彼女が拒食になったというのを聞けば事の重大さが伝わりやすいだろう。
何故この話をしたのかって?
いたのさ、『現代の赤兎』と呼ばれたウマ娘がね。
それじゃあ、彼女の物語を始めようか。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「あちゃ〜、こりゃ迷っちゃったね。」
彼女の名はミスターシービー。
トレセン学園きっての自由人であり、『ターフの演出家』と呼ばれ揶揄された歴代でも数少ないクラシック3冠*3ウマ娘の一人である。
そんな自由人な彼女は今現在何処かの森の中で絶賛迷子中であった。
「空も星で埋め尽くされたし、ルドルフとミスタートレーナー*4に怒られちゃうなぁ。………まぁ、適当に進んで行けば出れるでしょ。」
彼女はまさしく『自由人』であるが為ちょくちょく学園を脱走し未知の土地を探検していた為かこういう自体には慣れているようで何処か楽観的でもあった。
そうして適当に森の中を進んでいると彼女の耳が何か音を拾った。
よく耳を凝らしてみると祭か何かの騒ぎ様だ。
「おっ、やっと人がいる所に出たみたいだね。ソッチに行ってみようか。取り敢えず電話を借りたいや。」
音のする方へ森の中を進んで行くと広場の様な場所に出た。
そこには大量の人がおり、ウマ娘の耳には辛いと感じる者もいるだろう位の騒がしさだった。
「ちょっと騒がしいかなぁ………。んー、誰か話しかけて電話借りたいけど皆なんか見てるしな………。」
その広場にいる者達は皆一様に同じ方向を見ており、
運悪くシービーの出た部分には背の高い大人達が集まっており、その者達が肉壁となって此処からではよく見えない。
「んー…………此処からだと見えづらいなぁ……。」
突如歓声が上がり上から何かの紙切れが舞う。
「………なにこれ?」
舞う紙切れの一つを拾い上げ、見てみると
◯月△日 コン 良 4200 第3レース 単勝
8 ネビュラクロス 15.2
1 ルディキオポーカー 3.6
5000円
と書かれていた。
察しの付く読者は勘付いただろう。
その紙切れは我々の世界で言う馬券である。
しかし、この世界にその様な概念は表向き存在しないので知らぬシービーは不思議そうな顔で紙切れを観察する。
(日付と……多分レースの詳細?でもコンなんてバ場聞いた事無いし4200なんて長距離は流石に馬鹿げてるよ……?多分下の二つが走ったウマ娘の名前だろうけどその隣の小数はなんだろう?下に五千円って書いてあるけれど……。こういう時は聞くのが一番だね。)
取り敢えず自分で考えるより知ってる人物に聞いた方が早いなと結論付けたシービーは近くに顔を俯け座っているおじさんに声をかける。
「ねぇねぇ、おじさん。この紙切れって何?」
「あぁ?俺は今負けて気分が悪……ぃ………」
顔を上げてこちらを見るおじさんは最初はイラつき睨む様な顔だったが、シービーの顔を見ると呆けた顔をしフリーズする。次第に顔を真っ青にしシービーを指差しながらカタカタ震えだす。
「あ………アン………タ……何でこんな所にっ!?」
「なんでって………迷子になってたまたま辿り着いただけだよ?」
男が震える意味がわからないシービーはキョトンと端正な顔を傾けながら返答する。
気付けば辺りの人達はシービーを中心に大きな円を作って離れてドタバタ慌てている。
「………?なんでそんなに慌てているのかな?」
未だにこの場がどういう所か気付いて居ないミスターシービーは変わらずキョトンとした顔で辺りを見渡す。
丁度人がバラけたので、取り敢えず気になって居た方向を見ると巨大なモニターが設置されていた。
「モニター……?」
モニターには8人のウマ娘の名前が並び、その隣にはタイムも着順が映し出されている。
コレだけなら何時ものレースと同じだった。
けれど見慣れない物が一つ。
その下には『単勝』『複勝』『枠連』『ウマ連』『ウマ単』『ワイド』『三連複』『三連単』と八つの単語とその各単語の隣に表示された金額があった。
「…………???」
自由を謳い、レースは楽しむ物だった彼女には全く知らない物であった。
「ほ〜ら散った散った!勝った奴はさっさと賭け金受け取ってきな!」
突然、辺りの人混みから一人のウマ娘が声を上げながら寄ってきた。
「ようこそ、
そのウマ娘は私の前で
全体的にやや赤みがかった黒髪に炎の如く紅い毛先、髪型は私と似たロングヘア、兎の様に大きな耳の内、右耳には赤い月の中に黒い星が嵌められた耳飾りがあった。
「そんな一気に質問されても困るよ。私はミスターシービー。ソレで此処はどんな所?」
怒涛の質問に多少たじろぐが取り敢えずは名乗り、気になっていた事を聞いた。
「ミスターシービー………ああ『ターフの演出家』ですか。尚更此処に
現れたウマ娘は顎に手を当て中空を見ながら記憶を探る様な動作をする。どうやら思い出せたようだ。
「散歩してたらついつい迷っちゃってね。レースしてるみたいだけど周りの人達は何してるの?」
やや剣呑な気配を出しながら話すウマ娘にあっけらかんとシービーは返す。
「賭けですね。URAがしてるのと似たような物ですよ。ライブ会場の席の抽選でしてるでしょう?一着や着順を当ててより良い席を取るのは。賭けてる物がライブの観客席か金かの違いですよ。」
「URAがそういうのは禁止してなかったっけ?」
「此処は勁牙組の領地。
「ふぅん……。」
「そうそう警察に通報しても無駄ですよ。治外法権なのもありますが抱き込んでるので。」
シービーの質問にサラリと大分ブラックな事を言うウマ娘。驚いたのかシービーは眉根を上げている。
「………君、結構腹黒いね?」
「まさか。私程度は白い方ですよ。貴方もご存知でしょう?華族数家*5は。」
シービーの発言にとんでもないと言うふうに彼女は大袈裟に肩を竦ませる。
「確かシンボリ家とかメジロ家みたいに有名な家なんだっけ?」
「今の日本を仕切ってる家々ですね。此処は其の内の一つ、二世家*6の私有地なんですよ。」
シービーの答えにその通りと頷くウマ娘。
「で、どうします?帰りますか?次のレースをご覧になりますか?多少の小遣い稼ぎでもしますか?それとも……………出走しますか?」
彼女は改めてシービーに向き直り再度、怒涛の質問を浴びせ、挑発するようにニヤリと笑いながら走るか問う。
ソレに対しシービーは顎に手を当て星空を見ながら考える。
「ん〜そうだね。こうしよう!」
何か面白い考えでも思い付いたのか子供の様にはしゃぎながらシービーは眼の前のウマ娘に言った。
「君が次のレースに出るなら見ようかな。」
想定外の言葉だったのかシービーの言葉に呆けるウマ娘。
「ソレは何故?」
先程までの剣呑でやや胡散臭い雰囲気は何処へやら。
びっくりと言う顔でコテンと首を傾けてシービーに問う。
「君、強いでしょ。多分今の私と勝負出来る位には。」
先程までの子供の様な雰囲気は何処へやら。
まるでシンボリルドルフとレースをする時の様な、子供が新しい玩具を見つけた時の様なギラギラと目を輝かせながら、確信を持った様に言い切る。
「…………ククッ、随分と褒められた物ですね。わかりました。ならば特等席を用意しましょう。付いてきてください。」
軽く笑い、何処かへとシービーを連れて行くウマ娘。
シービーの放つ圧に触発されたか、その背には初めに人混みから登場してきた時よりも気配はまるで武器を構えているかの如く鋭く、その瞳は闘志の焔に燃えていた。
「君は次走るの?」
ウマ娘の背に問いかける。
すると私の前を歩くウマ娘はピタリと歩みを止めた。
「ええ、走りますとも。是非見学していってください。トゥインクルシリーズとは違って面白い物が見れるでしょうから。」
「…………楽しみにさせてもらうよ。」
「では、コチラの部屋です。」
二言三言交わすと近くの扉を開き中に案内された。
部屋は簡素な作りであり、巨大なモニターとソファ、ドリンクサーバーと何かタブレットらしき物が置かれた小さなテーブルしか無い。
「このモニターにレースが表示されます。操作はその机の上のタブレットで行ってください。」
「え〜私生で見たいんだけど?」
「生憎貴方がそこら辺をふらつかれると迷惑ですので諦めて下さい。」
「ぶ〜」
「そんな幼稚な真似をしないでください。みっともないです。では私はこれからレースがあるので。」
彼女はそう言って部屋を出ていこうとした所、突如扉の前で歩みを止めコチラに振り返った。
「そうそう、名乗り忘れて居ましたね。」
「私の名はノクトレープス。この裏レースを主催する
勁牙組の次期当主であり、この裏レースに置いて『赤兎』と恐れられております。それでは、ごゆっくり。」
彼女は自己紹介を終えると一礼して部屋を出ていった。
「フフッ、ルドルフ達以来だねこんなに体が震えるのは。」
一人部屋に残されたシービーの手は震えていた。
「恐怖?あの子に私がビビってる?まさか!」
「ああ、あの子と走れたらどんなに気持ちいいだろう!?」
「今からレースが待ち切れないや!」
震えは恐怖から?
否、ルドルフ達に匹敵するだろう強者に相まみえた事への歓喜による武者震いだ。
震えが落ち着くとドリンクサーバーからハチミーを注ぎ、机の上のタブレットを起動して観戦の準備を整え、タープの演出家はソファに座った。
「それじゃあ、ノクトレープス、君の実力を魅せてよ。」
夜虚「やぁ皆!いつものヤコさんだよ!」
天夜「…………。」눈_눈
夜虚「おやどうしたんだい天夜くん?そんなカフェみたいな顔して。」
天夜「お前………いやいい、お前の事だ。思い付いた奴片っ端から形にして感想が貰えた奴から更新していこうとか考えてるだろ。」
夜虚「あはは………正っ解!まぁ全く更新しないわけじゃ無いからね?書けたら投稿がモットーだから。」
天夜「それで良いのかねぇ……?」
夜虚「良いんだよ。形に出来てないだけでどれも構想は粗方出来ているから。」
天夜「なら良いがねぇ。しっから更新しろよ?」
夜虚「そりゃ勿論、蜜柑にはしないよ。」
天夜「字が違う字が違う。」
夜虚「あっはっは冗句だよ冗句。それじゃあそろそろ締めようかね。」
天夜「えー、真に更新が遅いコイツですけれども!」
夜虚「『「赤兎」と呼ばれたウマ娘』を」
「「よろしくお願いします!!」」