NEW『三好in山本五十子の決断』   作:フォークロア

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第一段作戦 
第一話 運命の開戦


 かつて、日本を破滅から救った三好将和。その将和もとうとう老いには勝てず、妻夕夏と共に永眠した。

 

 

 

「夕夏、あの世でもよろしく頼むよ」

 

「任されたわ貴方」

 

「暫くしたら私もそちらに行きますよ」

 

 

 

 息を引き取った二人に美鈴は涙を流しながらそう呟くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「長官、大本営から電文が届いた」

 

「ッ…なんて来た?」

 

「『新高山登レ 一二〇九』………長官ッ!」

 

「………………………そうか」

 

 空母「大鳳」の艦橋で将和は参謀長の小澤智里と航空参謀の草鹿峰からそう報告を受けていた。

 

「なあ、小澤、草鹿…」

 

「うん?」

「どうしたんだい、長官?」

 

「思い返せば俺たちが出逢ってからここまで長いようで短かい道のりだったな」

 

 将和ははじめて此方の世界へ来た時を思い出す。

 

 死後に黄泉の世界で出逢った新高山登子と名乗る女神から将和は異世界転生を言い渡された。

 行き先は過去にラノベで読んだ『山本五十子の決断』の世界であった。

 

 そこで将和は転生特典を求めた。自身が手駒一軍人ではなくプレイヤーとして挑まなければ様々な勢力陸海軍の思惑に利用され、結果的に異世界の日本葦原中津国の破滅に繋がるからだ。

 

 事情を聞いた登子は自身が救った世界の日本海軍が保持していた戦艦「出雲」と空母「大鳳」「神鳳」の2隻、補助艦艇多数と三好世界の航空機、戦車を含む装備一式と設計図を特典として持っていくことを許可する。

 

 あと、長谷川清が同行者として付いて来た。彼は将和がこっちに来るまで待ち構えていたらしく暇していた。いざ、将和が来て輪廻転生異世界転生すると聞いて同行を願い出て将和も許可したのであった。

 

 そうして、伴天連暦1941年3月の葦原へ転生した将和達は先ず戦艦「出雲」で東京湾に入港した。この時、最初に接触してきたのがGF長官の山本五十子であった。登子が彼女に話を通していたため、数日後には五十子を介して葦原陸海軍首脳との会談が実現する。

 

 当初、陸海軍首脳陣は怪訝な表情だったが〝結果的には〟三好日本の兵器(技術含む)を有償、、提供した事で掌クルーし、将和達は交換条件として相応な役職、発言力を持つ地位に就く事になる。

 

 それこそ、三好将和と長谷川清の海軍入隊であった。特に将和が就いた地位は第一航空艦隊司令長官だった。当初、将和達の提督就任に怪訝な表情であった海軍内の彼女海軍乙女らも彼の人柄に馴染んでいくのである。※1

 

 この時、将和は補佐として有力な将校を五十子へと所望。GF長官の五十子は本来参謀長の席に予定していた草鹿を航空参謀とし、小澤智里を参謀長兼補佐として任命させる。こうして第一航空艦隊は将和・小澤・草鹿の三人がメインとなって運営されていくのである。※2

 

 また陸海軍大本営では対美戦に備え「新軍備計画」を策定。陸海軍は『三好日本軍の装備一式を開発』『4年間で航空機約10万機生産』『兵器・エンジン・部品等の規格統一化』『パイロットの大量育成(特に戦闘機パイロット)』『大型艦を急速建造可能な中型航空母艦に限定』『駆逐艦・海防艦・潜水艦は年毎に100隻以上建造』等々策定する。

 

 そうしている間にも葦美間の情勢は悪化していく。未来情報を得た近衛内閣は〝美国との避戦に責任が持てない〟と7月の時点で内閣総辞職。この時、陸相を勤めていた西条英機も次の内閣で陸相を続けるつもりはなく、現役を引退し、軍事参議官として用賀に引きこもり、後継首班に永田鉄山大将を指名する。※3

 

 かくして、伴天連暦1941年7月18日 永田内閣が発足する。※4

 

 首相となった永田鉄山はその指導力を発揮し、『研究者・技術者・熟練工の除隊』『美鰤派(留学経験者含む)の参謀配置』『美鰤専門情報部の設置』『〝戦陣訓〟と〝捕虜規定〟の見直し』『研究員の補償奨励』『陸海軍間の情報共有化』『支那戦線の縮小・不拡大』『満州国大慶油田の開発』『〝南方占領地行政実施要領〟廃止・〝アジア植民地の自治権確立、独立支援〟確定』等々内政(戦略)に大きく貢献する。※5

 

 また、永田は支那とは休戦に持っていきたかった。しかし、美鰤支との外政は次第に行き詰まっていく。

 

 11月26日、永田内閣は駐美大使の野村を通して妥協案を美政府に提示するも、コーネリア・ハル国務長官から『ハル・ノート』を提示し返される。その中身は史実の内容に加えて、『現政権の退陣』『通信・暗号の開示』『軍事基地の査察』『朝鮮・台湾・南樺太・内南洋の領有放棄』『美葦の艦船保有量を総トン数比較で10:5とし、葦原は主力艦の建造を今後20年は停止すること』等々、とても葦原が吞むことが出来ないような要求であった。

 

 ここに葦原政府は対美戦争を決意。国際放送にて非難すると共に最後通告を提示。

 真珠湾攻撃へと赴く機動部隊に対しても電文を発したのである。

 

 

 ハワイ攻撃部隊の編成は以下のとおり

 

 第一航空艦隊

 

 司令長官 三好将和大将

 参謀長 小澤智里中将

 航空参謀 草鹿峰少将

 旗艦『大鳳』

 

【空襲部隊】※6

 

 第一航空戦隊 司令官 三好大将直率

  空母「大鳳」「神鳳」

 第二航空戦隊 司令官 楠木多恵少将

  空母「翔鶴」「瑞鶴」

 第三航空戦隊 司令官 角田斗角少将

  空母「蒼龍」「飛龍」

 第四航空戦隊 司令官 原美宵少将

  空母「加賀」軽空母「隼鷹」「飛鷹」

 

【支援部隊】

 

 第三戦隊 司令官 三川霊夢中将

  戦艦「出雲」「比叡」「霧島」

 第八戦隊 司令官 阿部鈴仙少将

  重巡「利根」「筑摩」

 

【警戒隊】

 

 第一水雷戦隊 司令官 大森久侘歌少将

  軽巡「阿武隈」 駆逐艦25隻

 

【哨戒隊】 潜水艦6隻

 

【補給隊】 油槽船12隻

 

 

 

 そして葦原時間12月9日午前0時 帝都※7

 

「我が葦原中津国はこれより自存自衛のために戦争を開始します」

 

 居並ぶ記者たちを前に永田首相はそう声明を全世界に発したのである。

 

 葦原時間1941年12月9日 葦原中津国 美国、鰤国、陀国に対しついに宣戦布告!!

 

 同時刻、空母「大鳳」の甲板上では将和が搭乗員達に鼓舞激励する。

 

「皇国の興廃、此の一戦に在り。各員一層奮励努力せよ。お前達、存分に暴れて戻って来い! 葦原海軍の力を見せつけるのだ!!」

 

「「「「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」」」」

 

 搭乗員達は敬礼で返すと、自らの搭乗機に乗り込んでいく。

 

「淵田、しっかりと頼んだぞ」

 

「まぁーかせて下さい。しっかりと敵を叩いてきます」

 

 将和は淵田の手を握ると、淵田も力強く握り返した。

 

『さて、また歴史を変えにいこうか』

 

 淵田を見送ると将和は軍帽を被り直し命令を下す。

 

「第一次攻撃隊発艦始めェ!!」

 

「ほな、いっちょやってきますか」

 

 淵田は愛機たる尾翼に赤地と黄色線で識別模様がつけられた九七艦攻に乗り込むと、甲板から飛び立っていく。

 

「発艦!」

 

 淵田の機体が発進してから他空母からも続々と艦載機が飛び立ってゆくのである。艦に残る海軍乙女達と提督・参謀達が帽子を振り「頼んだわよ!」「がんばれ!」「戻ってきてね!」という声に見送られながら、一機また一機と舞い上がり、空中で編隊を組むと、南東方向へと向かっていった。

 

 その光景を見て将和は小さく呟く。

 

「海鷲達が往く……」

 

 将和はポツリと呟くが幸いにも誰にも聞かれなかった。

 彼女達は編隊を組みつつ真珠湾を目指していった。

 

 この日、第一航空艦隊は零戦180機・艦爆210機・艦攻207機の計597機の艦載機を用いて、四波にわたる航空攻撃を実施した。

 

 葦原軍からの攻撃を危惧はしていたヴィンランドだが、空母機動部隊による〝予想外な攻撃〟により、奇襲を許してしまうことになる。

 

 

 

 

「………これがパールハーバー……なの……!?」

 

 12月13日早朝、真珠湾に帰還した第5巡洋戦隊司令官のレナ・スプルアンス少将は、真珠湾の余りの被害ぶりに息を飲んだ。

 

 12月8日時点でウェーク島へ航空機輸送を終えて共に帰投の途についていたフレンダ・ハルゼイ中将率いる第8任務部隊が先にパールハーバーへ帰還していたのに対し、レナの率いる第5巡洋戦隊は、ジョンストン島近海で砲撃訓練を実施していた重巡「インディアナポリス」が突如砲身内破裂を起こす大事故が起きたと報告を受けて、救援の為に緊急で向かっていた為、難を逃れていたのである。

 

 そんな最中葦原軍奇襲攻撃の悲報を聞いて、空母『レキシントン』を中核とする第12任務部隊と合同すべく急いで駆け付けたのだが、合流前に将和の放った偵察機に発見された『レキシントン』は沈められてしまっていた為、残存の部隊を引き連れてパールハーバーへと帰投したところだった。※8

 

「艦隊に港湾施設、飛行場は壊滅。燃料タンクまでやられたというの……フレンダ・ハルゼイ提督は無事なのですか?」

 

「はい。葦原軍の攻撃で『エンタープライズ』が沈められた時、海上に投げだされたことで軽傷で済んだようです」

 

 将和は敢えて史実より1日遅れで攻撃したのは空母「エンタープライズ」が真珠湾に帰投している日時であったからだった。これにより湾内に停泊していた「エンタープライズ」を仕留めることに成功したのである。乗艦していたハルゼイは「エンタープライズ」が沈められるまで迫ってくる葦原軍機を迎撃する指揮を担っていたのである。※9

 

 また、燃料タンクに搭載されていた重油は燃え辛い性質なので多少の爆撃を受けた程度で爆発炎上はしない。そこを理解していた将和は、九七艦攻に二一号爆弾(※通称・夕弾)を搭載させて攻撃させたのである。これにより、一発放つと放出された小型爆弾が地上に落下すると同時に爆発し広範囲が燃えて重油にも引火したという訳である。

 

「真珠湾は少なくとも半年から一年は復旧に時間がかかるだろうなぁ」

 

「あっ……兄さん!」ギュ

 

 そう言って半舷上陸したレナの前に現れた男性にレナは抱きついた。 

 

「無事で良かった、レナ」

 

「兄さんこそ、無事で良かった。葦原軍の攻撃で怪我しなかった?」

 

「幸い、基地が襲撃を受けた時はショート中将を迎えるために宿舎にいたから無事だったよ。葦原軍も主に海軍施設と航空基地を中心に攻撃をしていたから、陸軍基地へのダメージは軽傷だった」

 

 そう言って陸軍司令部参謀長のレイモンド・スプルアンス大佐は、妹のレナ・スプルアンスと兄妹無事の再会を喜びあったのである。

補助艦艇の内訳は隼鷹型軽空母10隻、『秋月型』駆逐艦50隻・『夕雲型』駆逐艦50隻、『伊四百型』潜水艦50隻、『東亜丸』型油槽船50隻、『第一号』型輸送艦50隻である。

※1
諸提督達や有力な参謀等にはその正体と経緯を話して同意を得ていた。なお、長谷川は海上護衛総隊初代司令長官となるが、この時は創設出来ていなかったため、南遣艦隊司令長官と兼任となる。

※2
なお、本来第一航空艦隊司令長官の席に就く予定であった南雲汐里は、南遣艦隊参謀長、、、のポストに就くのであった。

※3
本世界線では永田鉄山は暗殺されずに陸軍中央からは離れていたが、西条のより良き理解者兼腹を割って話せる相手だったので、お鉢が回ってきた形であった。また、海相であった及川大将も同様に現役を続けていくつもりはなかったので、海相の後継には堀蓮子大将を指名する。堀大将は予備役にはなってはいなかったが、佐世保鎮守府の窓際で勤務していた。

※4
永田内閣では陸軍大臣に今村均大将(陸相になると共に昇進)、海軍大臣に堀蓮子大将、参謀総長に小磯国昭大将、軍令部総長には嶋野夕香大将がそれぞれ就任している。他の顔触れとして外務大臣に東郷茂徳、大蔵大臣に賀屋興宣、商工大臣と国務大臣には岸信介が兼任して就いている。

※5
この人事異動に併せて陸軍では対美鰤強硬派として前杉山総長を支えていた参謀本部の田中大将作戦部長、服部大佐作戦課長、辻中佐作戦課長等々がサイゴンの南方軍付きとして異動になった。また、海軍軍令部では神大佐が横須賀鎮守府附参謀として異動となった。

※6
空母別/搭載機数

「大鳳」【零戦36機、艦爆27機、艦攻27機、艦偵6・計96機】

「神鳳」【零戦36機、艦爆27機、艦攻27機、艦偵6・計96機】

「翔鶴」【零戦21機、艦爆27機、艦攻27機・計75機】

「瑞鶴」【零戦21機、艦爆27機、艦攻27機・計75機】

「飛龍」【零戦24機、艦爆18機、艦攻18機・計60機】

「蒼龍」【零戦24機、艦爆18機、艦攻18機・計60機】

「加賀」【零戦18機、艦爆30機、艦攻27機・計75機】

「隼鷹」【零戦15機、艦爆18機、艦攻18機・計51機】

「飛鷹」【零戦15機、艦爆18機、艦攻18機・計51機】

※7
ハワイ現地時間で12月8日・午前4時30分

※8
 葦原海軍機動部隊は補給艦を多数引き連れてきていたため、真珠湾攻撃の翌日も付近の海域に留まって「レキシントン」を捜索、撃沈に成功していた。

 また、第5巡洋戦隊はハワイ攻撃の直後に太平洋艦隊司令部から第12任務部隊と合流し、葦原軍機動部隊に対処するように命令を受けていた為、レナは急遽ミッドウェー方向に艦隊針路を向けて進んでいたのであった。

※9
なお、「エンタープライズ」は正確には転覆したのだった。村田少佐率いる艦攻隊によって片舷を集中的に攻撃されたためであった。




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