NEW『三好in山本五十子の決断』   作:フォークロア

5 / 21
第五話 セイロン沖海戦 前編

 3月になり、セイロンが脅威にさらされているという情報を受けとったチャーチル鰤首相は、あらたに東洋艦隊を再編成してインド洋に派遣した。

 

艦隊編成は以下のとおり

 

【東洋艦隊(再編)】

 

司令長官 モードレッド・サマービル大将

旗艦『ウォースパイト』

 

戦艦「ウォースパイト」「レゾリューション」「ラミリーズ」「ロイヤル・サブリン」「リヴェンジ」

空母「インドミタブル」「フォーミダブル」軽空「ハーミーズ」

重巡「コーンウォール」「ドーセットシャー」

軽巡「エンタープライズ」「エメラルド」「ダナエ」「ドラゴン」

駆逐艦「テネドス」他15隻

 

 東洋艦隊の顔触れは戦艦五、空母三、重巡五、軽巡四、駆逐艦一五というもので、ヴィンランド海軍を除けばアジア・太平洋地域における連合国の海軍戦力としては、堂々たるものであった。

 

 司令長官はチャーチルの推薦により、モードレッド・サマービル中将が就任していた。

 

 チャーチルはサマービルに、葦原海軍がセイロン島へ侵攻してきた時はコレをもって迎え撃たせるつもりであった。

 

 しかし、これらの艦隊はあくまで東洋におけるブリトン軍の示威行動葦原軍への牽制が主目的だったのである。

 

 艦隊司令のサマービルは葦原海軍がセイロン島へ侵攻してきたら勝算はないと理解していた。

 

 しかし、葦原軍がセイロン攻略に乗り出してきたら嫌でも戦わざるを得ない為、モルディブ諸島北部に設けていた秘密基地アッヅ環礁へ東洋艦隊を入港させて待ち構えていたのである。

 

 

 一方の葦原海軍も第一航空艦隊第一・第二・第三航空戦隊をインド洋へ繰り出し、東洋艦隊との決戦に挑もうとしていた。

 

 

艦隊編成は以下のとおり

 

【第一航空艦隊】

 

司令長官 三好将和大将

参謀長 小澤智里中将

航空参謀 草鹿峰少将

旗艦『大鳳』

 

第一航空戦隊 司令官 三好大将直率

 空母「大鳳」「神鳳」

第二航空戦隊 司令官 楠木多恵少将

 空母「翔鶴」「瑞鶴」

第三航空戦隊 司令官 角田斗角少将

 空母「蒼龍」「飛龍」         ※※

第三戦隊 司令官 三川霊夢中将

 戦艦「出雲」「金剛」「榛名」「比叡」「霧島」

第八戦隊 司令官 阿部鈴仙少将

 重巡「利根」「筑摩」

第九戦隊 司令官 岸ネムノ少将

 重雷装艦「大井」「北上」

第一水雷戦隊 司令官 大森久侘歌少将

 軽巡「阿武隈」 駆逐艦30隻

 

 

 3月23日、空母「大鳳」にて戦隊司令官が作戦室に集まって会議を開いた。

 

「今回の作戦では、セイロン島を占領して北アフリカのトメニア軍を支援する」

 

 インド洋の地図を拡げてそう将和が説明した瞬間、小澤と草鹿を除いて皆が唾を飲み込んだ。

 

「セイロン島を攻略するのですか?」

 

 三川中将が質問をしてきた。

 

 開戦前に聞いていた第一段作戦にはセイロン島の攻略は含まれていなかったため確認したのである。

 

「そうだ。真珠湾攻撃によってヴィンランド海軍の反撃が予想以上に出てきていない現状を見た連合艦隊司令部は、セイロンを取りブリトンに圧力をかける決断を下した。トメニアがエジプトを取ればスエズ運河を取られたブリトン軍はインドを孤立させられる事になる。そのためにセイロン島を占領するんだ」

 

 どうやら美軍の動きを見た山本五十子大将は、急遽セイロン攻略に打って出る決断を下したようだ。

 

「その…陸軍は承知しているのですか?」

 

 阿部少将は陸軍との段取りが出来ているかを尋ねる。

 

「うむ。第十六軍司令官の阿南中将は第二師団の歩兵第四連隊と二個大隊、そして高速輸送船を提供してくれるそうだ。だから今回の作戦ではケンダリーにいる海軍陸戦隊と第十六軍の部隊で行なう」

 

 将和の言葉に皆が納得した。

 

「セイロン島攻撃は敵飛行場と敵艦船、敵防御陣地のみに絞ることとする。それ以外の物資諸等は俺等が攻略した暁に基地の再建を進めるための材料に使わせて貰うぞ。糧を敵中を求むるは我が軍の伝統だからなぁ」

 

「貧乏暇無しって奴かい。太平洋の次がインド洋たぁ、忙しいねぇ!」

 

 角田は口では文句を垂れつつも、表情は喜色満面だった。溢れる闘争本能を抑えるつもりは全くない所が彼女が闘将たる所以であった。

 

「皆、ここまで来たらとことんやってやろうじゃないの!」

 

 角田の言葉に楠木が「おぉー!」と拳を上げ、諸提督達も頷いたのである。

 

 そして、ケンダリーにいた陸戦隊二個大隊が乗る高速輸送船『第一号』型輸送艦2隻とジャワから出撃した歩兵第四連隊と二個大隊を載せた高速輸送船『第一号』型輸送艦4隻が第一航空艦隊に合流すると、作戦は発動されたのであった。

 

「攻撃隊発艦せよ!」

 

 4月5日、第一航空艦隊はトリンコマリーの南東方海上約250海里から艦載機133機(零戦40機、九九式艦爆50機、九七式艦攻43機)を発艦させてトリンコマリー港及び飛行場を空襲した。

 

 攻撃隊長は淵田中佐である。

 

 史実ではコロンボを空襲してからトリンコマリーを空襲したが、本世界ではトリンコマリーから先に攻撃を仕掛けたのである。

 

「長官、淵田中佐より電文です。トリンコマリ港及び敵飛行場を爆撃、これの破壊に成功しました。更にトリンコマリ港にて敵小型空母ハーミズを爆撃して大破転覆させたとのことです。また、駆逐艦1隻、補助艦5隻の撃沈にも成功しました。しかし、トリンコマリ港には多くの敵艦船は在らず第二次攻撃を求むと……」

 

 どうやらトリンコマリーへ先に攻撃を仕掛けたことにより、完璧に奇襲攻撃となったようである。これにより、トリンコマリ港へ停泊していた軽空母「ハーミーズ」、駆逐艦「ヴァンパイア」、機雷敷設艦「Teviot Bank」、コルベット「ホリホック」、汽船「British Sergeant 」、補助艦隊の「Pearleaf」、「Athelstane」等々の艦船すべて撃沈に成功した。

 

「敵飛行場は完璧に破壊したんだろうな?」

 

「はい」

 

「ふむ……草鹿、索敵機から敵艦隊発見の報告は来てないか?」

 

「何も来ていないよ。しかし、待機させている攻撃隊は……」

 

「もしも、ブリトン艦隊が現れて横合いから攻撃を仕掛けてきたら厄介なことになるな……」

 

 草鹿の報告に小澤が史実ミッドウェー海戦時の状況を懸念する。この時、将和は東洋艦隊を発見すれば直ちに攻撃できるようにする為、第二次攻撃隊には艦艇攻撃用兵装で待機させていたのである。

 

だな。まあ…焦る二次攻撃隊を兵装転換させて出撃させる必要は無いだろう。トリンコマリー攻撃隊を収容してから再出撃させれば良い」

 

 しかし、今回の作戦は史実のミッドウェー作戦決められた日時で行動と違い、艦隊行動に余裕を持たせている一航艦司令部の裁量で上陸日時を決められるので、トリンコマリー攻撃隊を収容してから再攻撃に向かわせられたのである。※1

 

 こうして、第一航空艦隊は二波にわたる攻撃でトリンコマリー空襲を成功させた後、西へと針路を取り、コロンボ南方250海里に進出した。

 

 4月7日0900、艦載機150機(零戦42機、九九式艦爆54機、九七式艦攻54機)を発艦させると、コロンボ攻撃に向かわせた。※2

 

 今度の攻撃隊長は嶋崎少佐である。

 

 コロンボ周辺の天候はあまり芳しくなかったが、攻撃隊は迎撃のブリトン戦闘機を排除しつつ予定通りに港湾施設と飛行場を破壊したのある。

 

「敵の飛行場を完全に破壊したかを嶋崎に問い合わせてくれ」

 

「分かりました」

 

 そして嶋崎少佐から電信が届き、コロンボの飛行場は完全に破壊したと届いた。

 

 しかし、将和の頭は常に東洋艦隊の影がチラついていた。

 

『そろそろ出てくるか? それとも交戦を避けて逃れたか……?』

 

「長官! 彩雲2号機より電文ですッ!!」

 

 将和が思案していた時、通信兵が艦橋に駆け込んできた。

 

 将和は既に三段索敵を展開させて東洋艦隊を捜索していたのである。

 

 史実では東洋艦隊はアッヅ環礁周辺に居たため、主に南西の方角へ集中して彩雲を哨戒させていた。

 

 すかさず小澤は通信兵から通信紙を受け取り、一読した。

 

「長官、敵機動部隊を発見したようだッ!」

 

「数は?」

 

「戦艦五、空母二、重巡二、軽巡五、駆逐艦一五の艦隊のようだ。一刻も早く攻撃隊を出そう、長官ッ!!」

 

「………よし。ただし艦爆隊には敵護衛艦艇、、、、を集中して狙うように伝えておけ」

 

「えっ」

 

「護衛艦艇……?」

 

「……あっ!」

 

 将和が艦爆隊には主力艦より護衛艦艇に攻撃目標を絞らせたことに当初疑問を呈した草鹿と小澤の二人だが、小澤は即座に将和の意図に気付いた。

 

「そうか、装甲空母!」

 

「正解だ。艦爆だとイラストリアス級の撃沈は無理でも、その他の艦艇攻撃には有効だからな」

 

「そして、先に護衛艦艇を叩いて防御の薄くなった所を艦攻で(空母を)仕留めるという算段な訳ね!」

 

「分かってるじゃないか」ナデナデ

 

 そう言って将和は小澤の頭を撫でた。

 

「あっ……頭を撫でるのは辞めてくれ///」

 

「むっ」

 

 小澤は顔を赤く染めて満更でもなさそうに笑ったが草鹿は不満そうであった。

 

「攻撃隊は直ちに発艦準備に移れ!!」

 

 将和は直ぐ様攻撃隊の出撃を命じた。

 

「全機発艦!! 始めェ!!」

 

 待機していた攻撃隊はプロペラを回しだした。

 

 攻撃隊133機(陣風36機、九九式艦爆54機、九七式艦攻50機)は手透きの整備員達から見送られて発艦していく。

 

 今度の攻撃隊には必勝の為に陣風が護衛に付いていた。

 

「上空警戒をしつつトリンコマリの攻撃隊収容の準備にかかれ。第三次攻撃隊には対地攻撃用、、、、、兵装を施すように」

 

「対地攻撃用?」

 

「?……っ!」

 

 敵艦隊を発見した今、ふつうに考えて第三次攻撃隊には艦艇攻撃用、、、、、に再兵装させて出撃させるべきである。まさか嶋崎隊を再びトリンコマリー攻撃に向かわせる訳ではあるまい。またまた疑問を呈した草鹿と小澤の二人だが、今度は草鹿が真っ先に将和の意図を気付く。

 

「長官、アッヅ環礁を!」

 

「正解だ。淵田なら必ずこの一回の攻撃で鰤空母をすべて沈めてくれるだろう。ブリトン艦隊は消極的だ。空母を沈められたら空襲を避けるために必ず避退するだろう。だからこそ」

 

「逃げ道を塞ごうという訳だね」※3

 

「分かってるじゃないか」ナデナデ

 

 そう言って将和は草鹿の頭を撫でた。

 

「なっ……子ども扱いは辞めてくれ///」

 

「むっ」

 

 草鹿は顔を赤く染めて満更でもなさそうに笑ったが小澤は面白くなさそうであった。

 

 そんな将和達のやり取りを艦橋職員達は微笑ましい視線を送っていたのであった。

 

『初々しいなぁ』

『はぁー彼氏欲しい』

『甘すぎて砂糖吐きそう』

『あの人、今頃元気にしてるかな』

 

「…と、すまんな」

 

「「「「「「「「「「いえいえ」」」」」」」」」」

 

 周りの視線に気付いて将和は軽く謝罪する。

 

「気引き締めていくぞ!」

 

「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」

 

 将和は軍帽のつばを押さえて皆の気を引き締め直す。

 

「小澤、搭乗員達には〝あの事〟は言っているな?」

 

「長官命令として〝口酸っぱく〟伝えているよ」

 

 小澤が苦笑いして答える。隣では『長官らしい』といった顔で草鹿も微笑んでいた。

 

 セイロン島を攻撃する前、将和は搭乗員達に『被弾、洋上不時着水する場合は必ず艦隊に連絡せよ。必ずに迎えを出す』と伝えていたのである。※4

 

 真珠湾攻撃の時から搭乗員を大事にする将和の姿勢は既に一航艦に所属する海軍乙女達に馴染んでいた。

 

「上手く頼むぞ、淵田……」

 

 将和は水平線上に消えていった淵田中佐の攻撃隊を見ながらそう呟いた。

 

 

 一方のブリトン東洋艦隊旗艦「ウォースパイト」の艦橋ではサマービル大将が、艦隊上空に現われた葦原軍機が直俺機の追撃を振り切り東の方角へと飛び去っていくのを眺めていた。

 

 葦原艦隊への勝算がないと分かっていたサマービルだが、隙あらば〝横やりの攻撃を仕掛けてやろう〟と、アッヅ環礁からひそかに主力部隊を出撃させていたのである。※5

 

「敵の偵察機に見つかったか。攻撃隊の発艦準備はどうなってる?」

 

「全機発艦準備は完了していますが、肝心の敵機動部隊の位置が……」

 

「ならば逃げた偵察機を追え。その先に敵の機動部隊はいるはずだ。これ以上、インド洋を荒らされたらロイヤルネイビーの沽券にかかわるぞ!」

 

 サマービルはそう言って攻撃隊を発艦させた。攻撃隊はフルマー戦闘機20機、ソードフィッシュ雷撃機33機であった。艦隊護衛にはフルマー戦闘機18機が残っていた。

 

「全艦全速前進で北上を開始だ! 通信参謀、セイロンを除く周辺の全航空基地に対し、敵空母部隊による航空攻撃が行なわれることが決定的なため、我が艦隊に対する全力航空支援を要請……いや、命じろ。相手が陸軍でもかまわねぇ。全責任は、この俺が取ると言って出撃させろ。やれることは全部やるんだ!」

 

『トーゴーの子孫は強い』

 

 サマービルはそう思い、艦隊をインド本土の味方航空勢力圏へ近づけ最大限の警戒を払った。

 

 それから数時間後、「ウォースパイト」の対空レーダーが接近してくる敵攻撃隊を探知した。

 

「敵航空隊、接近。機数、100機以上です!」

 

『くそッ! まだ空軍の支援が来てないって時にッ』

 

「戦闘機はすべて迎撃に出せッ!!」

 

 2隻の空母からフルマー戦闘機18機が発艦していく。

 次にブリトン東洋艦隊は対空戦闘準備に移った。

 対空火器が仰角をとって砲身を上空に向けていく。

 

「さあ、来い葦原軍。ヴィンランドとはひと味違うことを思い知らせてやるぜ!」

 

 徐々に迫ってきた淵田中佐の第一次攻撃隊を見ながらサマービルはそう啖呵を切った。

 

 

「陣風隊は敵戦闘機に当たれッ!!」

 

 第一次攻撃隊総隊長の淵田未央中佐は戦闘機隊にそう指示を出す。

 

「頼むで板谷!!」

 

『了解。護衛機以外は私に続け!!』

 

 板谷機は軽くバンクしながら上昇してくる敵戦闘機群に対して急降下で攻撃を始めるのであった。

 

「陣風隊が敵戦闘機とやり合っている今が好機やッ!! 全機にト連送を打てッ!!」

 

 淵田の指示に高橋少佐指揮下の九九式艦爆隊は一気に急降下爆撃を開始した。

 

「みんな、来てるわね? 行くよ!」

 

 一番機として先陣を務めるのは高橋少佐である。狙うは敵護衛艦艇群の中でも大型艦である「ドーセットシャー」であった。戦艦・空母と護衛艦艇群から猛烈な対空砲火が上がって来た。思わず目標から目をそらしそうになるが、そこを高橋は頑張り通す。

 

「八〇〇、七〇〇、六〇〇、五〇〇!」

 

「テーッ!」

 

 後部偵察員が高度計を読みとるのを確認した高橋は、爆弾投下と同時に、操縦桿を引き上げる。

 

「左翼被弾ッ!!」

 

 高橋が機体を立て直している最中、ポムポム砲の四十ミリ弾が左翼を貫いた。引火こそしてないが、燃料タンクからガソリンが洩れていた。※6

 

 その後、高橋機は第一航空艦隊に帰還する事が出来ず途中で不時着水を余儀なくするが、水偵に無事に救出されるのである。※7

 

 しかし、高橋は見事に照準していた重巡「ドーセットシャー」に250キロ爆弾を命中させていたのである。

 

 高橋機に続けて二番機、三番機も二五番を命中させ、九発目の爆弾が命中した時、「ドーセットシャー」は耐えきる事が出来ず波間へと消えていったのである。※8

 

 艦爆隊は他重巡・軽巡に二五番を命中させ、結果的に「コーンウォール」「エンタープライズ」「ダナエ」「ヘクター」が沈没、「ドラゴン」を中破、駆逐艦3隻を沈めるのである。

 

 そして、対空砲火が弱まったところに村田少佐率いる雷撃隊が空母「インドミタブル」と「フォーミダブル」に殺到していくのである。

 

 

「直俺機、見当たりません! 敵戦闘機に、まるで歯がたちません!!」

 

「ドーセットシャーに爆弾命中、沈みます!」

 

「コーンウォールにも敵急爆迫ります!」

 

「右舷四五度方向より、敵雷撃機、多数!」

 

「空母フォーミダブルへ敵雷撃機による魚雷、三発命中!」

 

「インドミタブルより緊急通信! 艦尾推進器および操舵装置に魚雷命中! 操艦不能!!」

 

 「ウォースパイト」の艦橋ではサマービル大将が、死んでも耳にしたくなかった報告を受けていた。※9

 

 落胆にサマービルの顔がゆがもうとした瞬間、ふたたび報告が入った。

 

「北西方向より、味方と思われる陸上戦闘機多数が来ます!」

 

 天はサマービルを見捨てていなかった。

 

 インドの空軍基地より、ホーカー・タイフーン及びDH.98 モスキート54機が応援に駆け付けてくれたのである。

 

 

「取り敢えずは(空母は)仕留めたか」

 

 淵田の眼前に黒煙をあげる空母「インドミタブル」と「フォーミダブル」の姿が確認できた。

 

 艦爆隊が護衛艦艇への攻撃を終えた後、雷撃機隊は空母二隻を優先して攻撃。

 

 隊長の村田は50機の九七式艦攻を率いて空母の右側面に突入すると、二隻の空母に四〜五本の魚雷を命中させる。

 

 これにより大傾斜となった空母二隻は総員退艦が発令され決定打が決まったのであった。

 

「よし。三好長官に打電や。〝空母二、重巡二、軽巡四、駆逐艦三を撃沈確実〟と」

「了解…っ!? 上空、敵機!!」

「なんやて!?」

 

 電信員の水木の悲鳴に、淵田が上空を見ると敵機が逆落としのように迫り淵田機に銃撃を浴びせてきた。

 

「うわっ!?」

「きゃぁ!?」

「ぐっ!!」

 

 それは淵田達にとって完璧な不意打ちだった。

 

 インド本土から東洋艦隊の応援に駆け付けたタイフーンが高高度から一撃離脱戦法を仕掛けてきたのである。

 

 不幸中の幸いだったのは彼女達の搭乗機がこの攻撃で致命傷とならずに飛行を続けていたことだった。

 

 しかし、大小の破片が彼女達を襲い負傷させたのである。

 

「水木!?」

 

 淵田は後方を見ると、水木一飛曹が血を流して絶命していた。敵弾が命中したのである。

 

「無事か、松崎」

 

「大丈夫です。隊長、避退しますよ」

 

 ガラス片が当たったのか、操縦者の松崎大尉と淵田も頭から血を流していたが二人は意識はしっかり保っていたのである。

 

 淵田機を狙ったタイフーンは、救援に駆けつけた陣風によって撃墜される様を淵田は視界の隅に捉えた。

 

「板谷! 攻撃隊を守れ!!」

 

「了解!」

 

 淵田は短波無線にて戦闘機隊長の板谷少佐に指示を出すと、戦場から離れていったのである。

 

「攻撃隊には近づけさせないで!!」

 

 陣風隊は新たに来襲してきたタイフーンとモスキートとの格闘戦に突入する。

 

 総数50機と陣風よりも多いが、板谷の乗る陣風は急上昇・急降下に優れているので、たちまちタイフーンを照準機に捉えると引き金を引く。

 

「貰った!!」

 

 主翼の20ミリ機銃が吼え、弾丸はタイフーンの翼と胴体に着弾すると、火を噴いてタイフーンは眼下の海面に墜落していく。

 

「零とは違うのよ、零とは!!」

 

 板谷はそう言いつつも新たな敵機を見つけて迫るのであった。

 

 この空戦により葦原軍第一次攻撃は、ブリトン東洋艦隊へ大打撃を与えるも、陣風4機、九九式艦爆13機、九七式艦攻15機の未帰還機を出す手痛い攻撃になったのである。※10

コロンボやトリンコマリーに艦隊を停泊させていたら、真珠湾攻撃における美艦隊の二の舞になる危険性もあった為、これを避けて艦隊の温存をはかる意味合いもあった。

空母別/搭載機数

「大鳳」【陣風36機、艦爆27機、艦攻27機、艦偵6・計96機】

「神鳳」【陣風36機、艦爆27機、艦攻27機、艦偵6・計96機】

「翔鶴」【零戦20機、艦爆27機、艦攻27機・計74機】

「瑞鶴」【零戦20機、艦爆27機、艦攻27機・計74機】

「飛龍」【零戦24機、艦爆18機、艦攻18機・計60機】

「蒼龍」【零戦24機、艦爆18機、艦攻18機・計60機】

 

※「大鳳」「神鳳」の2隻のみ、艦上戦闘機が「陣風」に更新されている状態。

※1
第一航空艦隊にとって、東洋艦隊撃滅が最優先目的であった。東洋艦隊を撃滅しないと、空母艦載機をセイロン攻略に集中して当てられないからである。つまり、セイロン空襲は後に控える攻略作戦の布石(の意味合いもある)ではなく、東洋艦隊をおびき寄せる為の刺激攻撃だったのである。

※2
史実の攻撃日より2日早い攻撃であった。ここらあたりは将和の拙速なる動きが現われていた。彼は先々を考えては即断即決で動いていたのである。

※3
なぜ将和がコロンボとトリンコマリー攻撃の前後を入れ替えたか分かるであろう。将和は東洋艦隊を必ず仕留めるつもりだった。

※4
実際、コロンボ空襲の時に零戦1機、九九式艦爆2機、九七式艦攻1機が不時着水をして零式水偵を出して搭乗員を救出していた。

※5
この時、東洋艦隊は全ての艦艇が結集していた。サマービルは葦原艦隊がセイロン攻撃を企図している情報を掴むと、東洋艦隊をA部隊とB部隊の二つに分けて行動させていた。しかし、トリンコマリー空襲の一報を聞くとA部隊とB部隊を6日の払暁に合同させて、葦原艦隊への攻撃を計画していたのである。また、重巡「コーンウォール」「ドーセットシャー」駆逐艦「テネドス」と仮装巡洋艦「ヘクター」等もトリンコマリー空襲の一報を聞くとコロンボから避退し艦隊と合流していた。

※6
高橋の搭乗する機体は将和の入れ知恵によって防弾装甲として燃料タンクがゴムで覆われていた為、引火しなかったのである。

※7
しかし、艦爆隊長の高橋ともう一人の隊長が次の攻撃に参加できなくなった影響は一航艦司令部の考えを変えさせる影響に繋がったのである。

※8
二五番とは「250キロ爆弾」のこと。

※9
この時、「ウォースパイト」の艦橋上部にある露天観測台から、伝声管を通じてサマービルのもとに情報が送られていた。

後に陣風1機、九九式艦爆4機、九七式艦攻4機の搭乗員が漂流しているところを零式水偵に救出される。




御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。