NEW『三好in山本五十子の決断』   作:フォークロア

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第二段作戦
第一話(仮) 嶋野凶弾に倒れる


「史実とは逆のルートから来たか」

 

「はい。損害事態は大したことはありませんが・・・」

 

「心理的動揺は誘った、か」

 

 MO作戦を終え内地へと帰投した将和は戦艦大和の会議室で渡辺戦務参謀から本土空襲の詳細を聞いていた。

 

 

「国民の間じゃ、ヴィンランド軍に基地を提供した支那への報復を叫ぶ声があがってるぜ」

 

「それに付随して軍部の中でも“大陸打通作戦”をせよと声があがったと言う訳か」

 

「特に人事異動で追い出された連中が騒いでるぜ。もともと支那の大地を収めたかったから、渡りに船なんだろうが」

 

「現政府はその声に乗らなかった為に、対処におわれているという訳、か……」

 

「これがヴィンランドの狙いだったなら、大成功だと言わざるを得ないな」

 

「モレスビー攻略後に講話を打診する案も消えたのは痛いね」

 

「大本営が本質を見失わなければ良いんだけどね」

 

 彼、彼女達は諸々の情報交換から事の次第を悟った。

 

『ここが正念場だぞ、嶋野……』

 

 そんな将和の懸念に反して、事態は『最悪の場合でも』という所に行き着くのである。

 

 

 

 

 光文17年4月20日 帝都

 

「閣下、この機会に支那へと侵攻すべきです!」

「支那から敵機が飛来してくる以上、本土を守るために敵の航空基地を占領すべきです!」

「ここで弱腰な姿勢を見せれば、蒋介石から足元を見られます!」

「是非とも報復をしてください!」

 

 九州空襲以後、このような積極侵攻論が毎日軍官民の一部から主張される。

 支那侵攻となれば、陸軍の領分であるが件の永田首相や今村陸相、小磯総長ら陸軍関係者は頑として首を縦に振らなかった。

 

「我々は当初の予定通り、蒋政権との和平を目指します」

 

「九州や済州島に電波探信儀を設けます。これで敵機が飛来してきても迎撃できますので、本土は守られます」

 

「対美戦争を行なっている手前、二正面作戦を仕掛けるのは愚の骨頂なのです」

 

 それらしいことを語って、やんわりと否定した。

 

 しかし、堀や嶋野等には『そんな簡単に支那が降せるなら5年を年月を費やしたりしない。せっかく泥沼の対支戦争から抜けられたのに、またそんなドツボに嵌まってたまるか!』と、遠回しに聞こえたのである。

 

 それが彼らの偽らざる思いだったろう。しかし、確かにやられぱなしというだけでは政府の沽券にかかわるばかりか、下手すれば士気を低下させかねない。しかし、支那への侵攻は悪手だ。どうするか?陸軍としても判断がつきかねなかった。

 

 そこで嶋野海軍が助け船を出した。

 

「支那への報復は全面的に同意しますが、それについては海軍が対処致しましょう。今回侵入してきた敵機はB17でした。ということは、ヴィンランドが支那に貸与した。もしくは搭乗員ごと機体をまわしてきたと思います。ヴィンランド軍が支那へと機体を回したということは、インドから回したに違いありませんわ。ならば、インドへと圧力をかけて支那へと回っていくことを防ぎます」

 

「インドへと侵攻するつもりかね、総長」

 

「いいえ。インド洋から通商破壊戦を展開致しますわ。幸いなことにセイロン島はおさえておりますので、そちらに基地を設けてインド洋へと展開させていきます。これで支那侵攻を主張している者達を納得させて頂けませんでしょうか」

 

 嶋野の提案に陸軍側も頷いたことで、陸海の合同会議の方針は定まった。

 その後嶋野と小磯総長は皇居を訪れ聖上へと報告するのである。

 その後報告を終えた、嶋野、小磯両名は皇居をあとにしようとするが……

 

「国賊小磯国昭、覚悟!」

「天誅ッ!」

「陛下を惑わすものには死をッ!」

 

「「なっ!?」」

 

 とある男達が飛び出してきた。

 

 その時、嶋野の視界には黒く光るものが見えた。

 

 ズガアァン!!!

 

 パン!パン!パン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『嶋野夕香軍令部総長暴漢に撃たれる』

 

 その日の夕刻、新聞の号外の表紙大きな一面が飾られた。

 今世界でも4月18日に敵からの本土空襲は受けた。もっともそれは空母から発艦した航空機による帝都空襲ではなく、支那から飛来してきた美軍のB-17爆撃機による九州空襲であった。開戦以来葦原に押され気味で士気が低下していたヴィンランドはその空気を一掃すべく葦原本土への奇襲攻撃を計画した。その中でヴィンランド上層部も美空母にB25・ミッチェルを乗せて片道飛行させる渡洋爆撃を検討していた。その案にはルーズベルト大統領も賛成だった。可能ならば敵の首都を空襲するのが望ましい。早速、軍部に検討に入らせた。しかし、ニミッツやキングをはじめとした多数の海軍関係者より

 

―――成功はおぼつかないッ!

 

 との指摘を受けて、断念したのである。

 というのも、ヴィンランド海軍は戦前よりも葦原軍が空母を大量に保有しており、本土周辺の守りを固めているのを知ったからである。

 開戦より三ヶ月、暗号解読や航空機、潜水艦による敵情視察によって葦原海軍が空母を20隻以上保有していることを知った美海軍は震撼した。

 

―――葦原は何処からそれだけの戦力を揃えた!?

 

 明らかに戦前の情報が誤っていたのである。それでも本土周辺の守りが薄いのであればヴィンランド側も帝都空襲を考えたかもしれなかった。しかし、未来情報を知った葦原側も本土周辺に空母部隊を警戒させていた。おかげで一縷の望みは絶たれたのである。

 ルーズベルトも「成功がおぼつかないのであれば仕方ないわ。他の案を考えなさい」と軍部に命じたことで、この世界ではドーリットル空襲を行なわれなかったのである。

 因みにこの判断は正解であった。葦原海軍も美側による空母攻撃を懸念して(史実よりも余裕がある)連合艦隊麾下の空母部隊に警戒させていたからである。その為、もし美海軍が空母攻撃を強行させれば、なけなしの空母を沈められてしまっただろう。

 

 とはいえ、怪我の功名はあった。葦原側が東側を警戒したことで西側の警戒が緩んでいたのである。

 

 そこでヴィンランド軍上層部は本来B29が完成すればやろうとしていた計画を前倒しした。

 それが支那からの葦原本土空襲であった。用いたのはB17・フライングフォートレスである。支那の蒋政権と協議して西安の(拡張させた)飛行場を使うために、インドから機体をまわしてきて行なったのである。本来B17は片道3200kmしか飛べないため、今回使用された機体は特別仕様であった。航続距離増大のため、すべての武装を撤去し、防弾板や不用な乗員の椅子・無線装置まで撤去させ、胴体内の大型の燃料タンクを追加した結果、4800kmの飛行が可能となったのである。この航続距離ならば西安から九州までの往復爆撃が可能となる。かなり無理をさせただけに最大爆装量は1000キロに限定された機体は24機用意された。

 史実のドーリットル空襲並に色々と無理矢理所があったこの作戦は、結果的にヴィランド軍の不屈の闘志によって成功を収めた。東シナ海を横断し、海から葦原本土を高高度から侵入したB17は葦原機が上がってくる前に要衝を爆撃した。狙ったのは、北九州の都市や八幡製鉄所である。しかし、高高度からの爆撃だっただけに狙った目標にピンポイントに当たることはなかった。しかし、ヴィンランドの狙いは実際の目標破壊より心理的な要素を優先させることだったので、大枠は成功であった。

 

 ヴィンランド側の士気は高まり、葦原側の動揺を誘うことに成功したのである。

 

 今回の空襲の後に出された一部の新聞など「八幡への攻撃は、葦原本土全部に渡って不安の大波を立たせることになった」と記事を書いており、国民の軍への信用を失うことが懸念された。

 現葦原政府永田政権は将和達のテコ入れによって、支那との休戦、対美戦への一転集中東進を戦略方針としている。その為、葦原軍は支那大陸では満州国周辺まで兵を後退させてこれ以上の支那奥地への侵攻をしないように、戦線維持に努めている。

 ここでもし世論の声に応えて大陸打通作戦を史実通りに行なってしまったら、史実の二の前であるばかりか、今まで支那との和平交渉を進めてきた努力が水の泡になる。なんとして畑政権としては防がなければならない腕の見せ所であった。

 内容は大まかに以下のとおりである。

 

・支那の航空基地に対しては徹底した爆撃を以て対抗する。

・本土防衛について早急に電探を配備した防衛体制を確立させる。

・海軍はインドへと圧力をかけ、美・鰤・印ルートを断ち本土の安全と和平に向けて動く。

 

 とこのように考えつくあらゆる手段を使って本土の安全確保を達成することを聖上に伝えたのであった。




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