NEW『三好in山本五十子の決断』   作:フォークロア

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第三話(仮) シン・MI作戦

 5月に入り軍令部より次期作戦内容についての伝達が届いたのであったが、それは連合艦隊にとって青天の霹靂であった。

 

「軍令部より、連合艦隊に対し大海令第18号を発令致します。なお、細部に関してはおって豊田軍令部総長より指示がありますので」

 

 開口一番、軍令部参謀に復帰した、、、、神大佐が答えて、意気揚揚と作戦計画書を将和達に渡した。

 

 ふと将和は、隣にいる福留大佐や富岡大佐がこちらを見て済まなそうな表情をしているのを見て訝しんだが、作戦計画書が手元に来たので目を通した。

 

「AO攻略……ッ(まさか!?)」

 

 将和が慌てて富岡等を見る。視線を感じた二人は悲しそうな表情をして頷いた。

 

「次期作戦はミッドウェー島及びアリューシャン列島西部の攻略及びダッチハーバー基地の破壊です」

 

 神の言葉に会議室はざわついた。

 

「アリューシャン列島のアッツ・キスカ島の占領とダッチハーバー基地への空襲は、ミッドウェー攻略作戦と同時期に行なってもらいます。理由としましては美艦隊を引き出す為、つまりは陽動作戦です。同地は美領のためミッドウェー方面への美艦隊出撃を強要する補助手段となる算段ですので、ミッドウェー作戦の戦術的牽制にもなります」

 

 神はそう捲し立てる。

 

 将和や五十子たちも嶋野と当初ミッドウェー攻略作戦のみ、、をするように決めていたので、寝耳に水だった。 

 

「ああ…それってつまりアラスカ方面にも機動部隊を進出させろってことかい」

 

 神の話を聞いた角田中将が質問を投げかける。

 

「当然です。軍令部は元からアリューシャン列島の攻略を企図しておりましたので、東に大きく侵攻するならば連合艦隊には序で、、に攻略して貰います。その分油の節約になりますので。幸いなことに空母に関しては数に余裕がありますので、一ないしは二個航空戦隊を派遣すればよろしいでしょう」

 

 角田の言葉に神はそう答えた。ミッドウェー攻略は連合艦隊の総力を挙げて出撃であり、大量の油を使うのでアリューシャン列島も同時に占領出来た方が無駄に消費する必要もないということであった。

 

「反対だな」

 

「……何と?」

 

「同時作戦に反対だと言ったんだ」

 

 神の問いに将和はそう告げた。はじめて見る将和の並ならぬ雰囲気に富岡らは少し驚いていた。

 

「御言葉ですがミッドウェーを攻略しても、劣勢な美艦隊が反撃に出てこないのではあれば、美空母の撃滅はできません。三好大将はそれをお分かりで?」

 

「分かっているからこそ言っているんだ。そもそも大前提として俺たちは最終的にハワイ攻略を目指すんだから、敵機動部隊はその途上に撃破するのが根本的な戦略だろう」

 

「長官」

 

「うむ」

 

 将和は山口から差し出された指揮棒を手に取る。

 

「そんで美機動部隊を誘い出すという観点は、我が軍がミッドウェー島へ侵攻、攻略に乗り出すことでその条件は満たされる。敵が交戦を回避してミッドウェーの攻略途中に出て来なくとも別にそれはそれで構わん。ミッドウェーを占領し海軍航空隊を進出させれば、ハワイを拠点に置く美機動部隊の動きも捕捉しやすくなるんだから、敵が此方との交戦を回避しようと捕捉撃滅することは可能だ。しかし、アッツ・キスカ島への侵攻となるとミッドウェー侵攻と同等の効果は見込めないばかりか、マイナスとなる要素の方が強い」

 

 そう話す将和は指揮棒で地図上のミッドウェー島をトントンと叩いた後、その周辺をぐるぐると回して、次にアリューシャン列島を指し示す。

 

「何故ですか? キスカを占領出来ればミッドウェー島との間で哨戒機を往復させられます。また、美空母が東方から本土に接近してくるのを防ぐ防衛ラインが構築出来るではないですか!」

 

 神がそう捲し立てるのも、今や海軍に補給の問題がないからだ。そうである以上どの地を占領しようと、そこを拠点に哨戒線をはることは可能になると考えていた。

 

「この地域の気候を理解してるのか。北のアリューシャン列島は一年のほとんどを濃い霧に覆われているため、基地に航空機を配備しても索敵や迎撃のために飛ばせる時間はごく僅かだ。哨戒飛行なんて以ての外だと分かるだろう。ましてや霧に隠れて敵の侵入を許しやすい。攻めやすく守りにくい。それがこの島の特徴だ」

 

「ぐっ……ですが……」

 

 将和の発言に神は言葉を窮する。

 ここで沈黙を貫いていた五十子が問い掛ける。

 

「ねえ、神大佐。アラスカへの同時侵攻作戦は私も今はじめて聞いたことなんだけど、嶋野さんが認めてたことなの?」

 

「いえ、豊田総長が直々に発案されたのです」

 

「「「「「なっ………」」」」」

 

 神の言葉にこの場の何人かが驚愕するのであった。

 

 

 

「この作戦計画書は何なのですか!?」

 

「次期作戦計画です」

 

 軍令部に松葉杖をつき堀海相に支えられながら訪れた嶋野が豊田相手に吼えていた。嶋野の怒号に豊田は冷ややかだった。アリューシャン攻略支援は、嶋野(元軍令部総長)にとっても寝耳に水の出来事であった。

 

 嶋野自身、親交のあった伊藤中将から密かに教えられたことでようやく事態に気付いたのである。

 

「何故、戦力を分散させるような作戦を命じたのですか!」

 

「ヴィンランドの北方路の進行を阻止するためです。ヴィンランドとルーシ間の連絡を妨害すれば、シベリアにヴィンランドの航空部隊の進出を阻止できます。支那からやれたことを今度はルーシで実践されたら目も当てられません。また、ヴィンランドが大型爆撃機B29を開発しているとの情報があります。図上演習においてアリューシャン方面からヴィンランドの最新大型爆撃機B29が帝都空襲を行い、その一部が奇襲に成功するという結果が出ておりますので、アリューシャン列島攻略は葦原本土を守る為に是が非でも必要なのです」

 

「だけど! ミッドウェー島の攻略と同時にせずとも……」

 

「大臣、軍略のことは私にお任せしておいて下さい。貴女方二人が口を挟まれるとかえって軍令部が混乱を招いてしまいます。では失礼します。何せ次期作戦の事で忙しいので」

 

 豊田の二人はそう言って部屋を退出した。嶋野と堀は頭を抱えた。まさかこのような形で推薦した豊田から裏切られるとは。顔に泥を塗るだとか、恩を仇で返すとか、あれでは気にもしてないのだろう。嶋野は失望を禁じ得なかった。

 実際の経緯としては豊田は焦っていた。前任者であった嶋野という壁。望んだ地位しかし後押しされた故の海軍内に於ける自身の基盤の危うさを実感していた。

 

 早急に目に見える成果が必要だった。

 

 そして、早急な成果が欲しい人間にとって遠慮や配慮というものがない。そんな時に控えたMI作戦。直ぐに手が出せた。あたかも自分達が目論んだ策によって成果を挙げたかのようにする陽動作戦。

 

「早急に手を打たなければ、ですね」

「はい……海軍が死地に追いやられてしまう前にですわ」

 

 堀に支えられながら嶋野は痛む体を押さえて軍令部をあとにした。

 

 

「またしても歴史の力が働いたのか……」

 

 将和の呟きに皆が沈痛な思いを抱く。なんのことはない。最大の敵は味方だったということである。

 

 神は上層部が認可したと報告し連合艦隊が沈黙したのを良いことに、我が意を得たりとばかりに自信満々に作戦内容を説明して、GF司令部をあとにしていた。

 

「空母戦力を分散せざるを得ないのは痛いね」

 

「しかし大命を奉勅して発せられた大海令を発令既成事実されてしまった以上、我々は従うしかない」 

 

 草鹿の呟きに小澤は苦虫をかみつぶしたよう表情で答える。

 

「あとは作戦内容にこちらの意見を取り入れさせて、少しでも成功の確率を上げるしかないな」

 

「スピー……それに応じて、部隊編成も見直さないと……スピー……」

 

 宇垣の言葉に黒島は寝ながら答えた。

 

「うむ……なら、考えていた策を実行するしかないな」

 

「何か良い策があるってのか?」

 

 将和の呟きに宇垣が反応して聞き返す。

 

「ああ、一つ考えがある。この方法を用いれば空母の犠牲は免れないが、史実の様な最悪な事態完敗・敗走は防ぐことは出来る」

 

「「「「「「「「「「ッ!」」」」」」」」」」

 

 

 将和の発言を聞いて、五十子や宇垣をはじめ全員が驚いた。

 

「それは、どんな方法なんですか?」

 

 五十子が食い入るようなまなざしで聞いた。すっかり乗り気であったが次の将和の発言を聞き、心胆を寒からしめることになるのである。

 

「レイテ沖海戦時の小澤と同じやり方さ」

 

「っ! それって…」

 

「ミ島攻略は犠牲が避けられない戦いだ。何せ向こうにアドバンテージがあり、此方は制約を受けて戦うんだからな。ならば最初から被害担当となる空母を機動部隊の前面に突出させて敵側からの攻撃を吸収させる」

 

「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」」」

 

 将和の言葉にこの場の誰もが沈黙する。

 

「勝つことよりも、負けないように。それで、囮艦隊ってわけか?」

 

「そうだ」

 

「果たしてそう上手くいくかい? 艦隊の前面に空母が配置されていたら敵から見ても囮ではないかと疑うはずだ。それで敵が誘いに乗らなければ作戦計画そのものが頓挫する可能性が高いよ」

 

 作戦の問題点に思い至ったのであろう宇垣や草鹿が真っ先に将和の案に疑問を呈する。

 

「確かに敵が此方の意図に気付いて誘いに乗らなければ、このやり方は破綻する。だからこそ、敵が此方の誘いに乗らざるを得ないように仕向ける!」

 

「「どうやってだ(い)?」」

 

 宇垣と草鹿の二人が同時に尋ねた。

 

「囮部隊には現場海域に入り交戦が始まった段階で電波を常時発信させる」

 

 

「「「「「「「「「「なっ!?」」」」」」」」」」

 

 将和の発言に全員驚愕する。

 

「こうすれば敵は囮部隊に食いついてくるだろう。なにせ敵の側にとって正確に位置が捉えられるところに〝憎き敵〟がいるんだ。殺気立っているところ、直ぐに攻撃を仕掛けたくなるのが心情、、というものだろう。更に囮部隊の位置に目を向けさせておけば、後方配置の空母部隊の発見を妨げることにもつながる」

 

 将和の発言に全員が感嘆とした。

 

『確かにそれなら、効果は確実かもしれない。けど…』

 

 不意に五十子は妙な気持ちになった。

 

 まただ。MO作戦の時にも感じたが、この胸を締めつけられる感覚はいったいなんだろうか?

 

「囮に使う空母は大鳳と神鳳の二隻を使用する。抗堪性は空母の中で一番高いからな」

 

「三好長官、囮艦隊の指揮はもしかして?」

 

 五十子は嫌な予感をして尋ねた。

 将和は苦笑して答える。

 

「言い出しっぺは俺だしな。危険な任務を立案しといて俺が囮部隊を指揮しないでは、部下達に示しがつかないだろう」

 

 彼は何の事は無いというように答えた。

 

「長官、だったら私が!」

「長官、それなら私が指揮を執るよ!」

「三好の旦那が出る必要はねえよ! 私が代わりにやる!」

「三好長官……」

 

 小澤や楠木、角田は代わりに引き受けると言い、五十子は何かを察したように呟く。

 

「空母機動部隊の総指揮はお前らにやって貰う。今度のミッドウェー海戦は葦原海軍の……いや、君たちが越えなければならない通過点だ」

 

 将和は彼女達を見回して小澤へと視線を見据える。

 

「小澤、第一機動部隊の指揮を……やってくれるな?」

 

「……もしかして長官、君は……」

 

 将和の言葉に小澤は将和の意図に気付き将和に視線を向けるが将和はウィンクをする。

 

「ずっと俺の元で航空戦を担ってきただろ。なに、お前なら大丈夫だ」

 

「……フフ、仕方ないな。なら私に任せてもらおうか」

 

 将和の言葉に小澤は笑みを浮かべた。

 そして、将和は五十子へと視線を向ける。

 

「山本長官」

 

「…分かりました。三好長官の意見具申を採用してMI作戦を練ります。ですが」

 

「なにか?」

 

「……いえ、何でもありません」

 

『やっぱり自覚するしかないよね…』

 

「?」

 

 将和は五十子の反応に首を振ったが、会議はその場でお開きとなった。

 

 

「MI作戦」に充当する各作戦部隊の編成は以下のとおり

 

連合艦隊司令長官 山本五十子大将

 

【主力部隊】指揮官/山本大将[GF]

 (MI作戦全般支援)

 ・主隊/指揮官 山本大将兼務

   第一戦隊 司令官 山本大将直率

    戦艦「大和」

   第三水雷戦隊 司令官 橋本神奈子少将

    軽巡「川内」 駆逐艦八隻

 (空母隊)練習空母「鳳翔」軽空「蒼鷹」「翔鷹」「瑞鷹」

 (特務隊)水上機母艦「千代田」「日進」

 (補給隊)油槽船三隻 駆逐艦三隻

・警戒部隊/指揮官 高須魔理沙中将[1F]

  第二戦隊 司令官 高須中将直率

   戦艦「長門」「陸奥」

  第九戦隊 司令官 岸ネムノ少将

   軽巡「北上」「大井」 駆逐艦九隻

 (補給隊)油槽船三隻、駆逐艦三隻

 

【攻略部隊】指揮官/近藤咲夜中将[2F]

 (ミッドウェー島攻略支援)

 ・本隊/指揮官 近藤中将兼務

   第四戦隊 司令官 近藤中将直率

    重巡「愛宕」「鳥海」

   第三戦隊 司令官 三川霊夢中将

    戦艦「比叡」「金剛」

   第五戦隊 司令官 高木諏訪子少将

    重巡「妙高」「羽黒」

   第四水雷戦隊 司令官 西村早苗少将

    軽巡「由良」 駆逐艦七隻

   第六航空戦隊 司令官 吉良鈴仙少将

    軽空「瑞鷹」「祥鷹」「祥鳳」「瑞鳳」

 (補給隊)工作艦「明石」

       油槽船四隻、駆逐艦四隻

 ・支援隊/指揮官 栗田華扇中将

   第七戦隊 司令官 栗田中将直率

    重巡「鈴谷」「熊野」「最上」「三隈」

    油槽船二隻、駆逐艦二隻(付属)

 ・航空隊/指揮官 藤田菫子少将

   第一一航空戦隊 司令官 藤田少将直率

    水上機母艦「千歳」「神川丸」

    軽空「瑞鷹」「翔鷹」

    駆逐艦二隻(付属)

 ・護衛隊/指揮官 田中妖夢少将

    第二水雷戦隊 司令官 田中少将直率

    軽巡「神通」 駆逐艦一〇隻

 ・占領隊/指揮官 大田星少将

   第二連合陸戦隊 司令官 大田少将直率

   (横須賀第五陸戦隊、呉第五陸戦隊)

   (第一一、第一二設営隊)

   (陸軍・一木支隊)

 

 【第一機動部隊】

  指揮官/小澤智里中将[1AF]

  参謀長/草鹿峰少将

  旗艦「瑞鶴」

 

 ・空襲部隊

   第一航空戦隊 司令官 小澤中将直率

    空母「瑞鶴」「翔鶴」

   第二航空戦隊 司令官 楠木多恵少将

    空母「飛龍」「蒼龍」

   第三航空戦隊 司令官 角田斗角少将

    空母「加賀」「赤城」

 ・支援部隊/指揮官 阿部輝夜少将

   第八戦隊 司令官 阿部少将直率

    重巡「利根」「筑摩」

   第三戦隊・第二小隊(付属) 

    戦艦「霧島」「榛名」

 ・警戒隊/指揮官 木村燐少将

   第一〇戦隊 司令官 木村少将直率

    軽巡「長良」 駆逐艦三〇隻

   (補給隊)油槽船六隻、駆逐艦五隻

 

 ・陽動部隊/指揮官 三好将和大将

   第零航空戦隊 司令官 三好大将直率

    空母「大鳳」「神鳳」

    戦艦「出雲」(付属)

    付属駆逐艦一二隻

 

【北方部隊】司令長官 細萱幽々子中将[5F]

      

 (アリューシャン列島攻略支援)

  ・本隊/指揮官 細萱中将直率

     独立旗艦・重巡「那智」

     駆逐艦四隻(付属)

  ・第二機動部隊/指揮官 山縣妹紅中将

    第四航空戦隊 司令官 山縣中将直率

    空母「隼鷹」軽空「龍驤」「五十鷹」「夕鷹」「智鷹」

   第四戦隊・第二小隊(付属)

    重巡「高雄」「摩耶」

    駆逐艦四隻(付属)

 ・アッツ攻略部隊/指揮官 大森久侘歌少将

   第一水雷戦隊 司令官 大森少将直率

    軽巡「阿武隈」 駆逐艦四隻

    (陸軍・北海支援)

 ・キスカ攻略部隊/指揮官 大野尤魔大佐

   第二一戦隊 司令官兼「木曽」艦長 大野大佐

    軽巡「木曽」「多摩」 駆逐艦三隻

    (舞鶴第三陸戦隊)

 ・水上機部隊/指揮官 宇宿たかね大佐

    独立旗艦・水上機母艦「君川丸」

    駆逐艦三隻(付属)

 (付属部隊)特設巡洋艦二隻、油槽船二隻 

 

 

 

 

 ハワイ 真珠湾

 

 

「それは本当ですか」

 

「はい。葦原の次の目標はミッドウェーです」

 

 この日、情報主任参謀のミリーナ・レイトン中佐はハイポ暗号解読班が掴んだ情報をセシリア・ニミッツ(太平洋艦隊司令長官)に伝えていた。

 

 実は今回も珊瑚海と同じく敢えて葦原側が情報を流していたのであったが、そんなことは知らないニミッツはハイポを信じ、即座に応戦の覚悟を決めた。

 

「ミッドウェーを失う訳にはいきません。直ぐに迎撃の準備を。空母艦載機の編成を急いで整備しなさい。葦原の空母機動部隊を洋上で撃滅します!」

 

「「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」」

 

 ニミッツは部下に命じると、ミリーナに問い掛ける。

 

「ミス・レイトン、アドミラル・ミヨシは出てきますか?」

 

「確実に出てくるでしょう。ただ、どの艦に乗るかまではまだ分かりません。詳細が分かり次第、ご報告致します」

 

「ええ。お願いしますね」

 

 今度の作戦では、葦原海軍を企図しているのを掴んでいる。

 

「葦原軍機動部隊がミッドウェーに空襲を開始するのはいつですか?」

 

「6月4日・早朝(ミッドウェー現地時間)でまちがいありません」

 

『だとすると、5月30日には艦隊をパール・ハーバーから出港させる必要がありますね……』

 

 頭の中でニミッツは計画を練りはじめたのであった。

 

 

 

 

 その日の夜、将和は翌日の出撃に向けて準備をしていた。そんな時に扉をノックする音が聞こえた。

 

「開いてるよ」

 

「……エヘヘヘ……お邪魔しま~す」

 

「五十子……?」

 

 おそるおそる入ってきたのは五十子だった。取り敢えず将和は五十子を椅子に座らせてお茶を出す。

 

「どうしたこんな時分に?」

 

「うん……三好長官に伝えたいことがあって……」

 

「伝えたいこと?」

 

 そう言って五十子は将和の手を取ると自身の額に当てた。

 

「三好長官、一つだけ約束してください。無事に帰って来てください。お願いします」

 

 MO作戦の時といい、今度の事といい、五十子は自覚した。どうやら自分はかなり彼に気が向いているようだと。だからこそ、彼女は個人として将和へとその思いを伝えたのである。

 

「…まだ次の世界に行くつもりはないぜ」

 

「あなたを失ったら、私は…」

 

「っ…参ったな」

 

 そう言うと、将和は五十子の右頬にキスをした。

 

「あっ///」

 

「落ち着いたか」

 

 一瞬の事であり五十子は顔を真っ赤にしていた。 

 

「あ、ありがとうございます……そ、それじゃ!!///」

 

 そう言って五十子は一目散に将和の部屋を後にするのであり残されたのは将和一人だった。

 

「……なんか一皮むけた気がするな」

 

 夜は更けていく。

 

 それぞれの思いが交錯する中、5月27日遂にMI作戦が発動した。

将和をはじめ山口や小澤、草鹿は元より、第一艦隊の高須中将や第二艦隊の近藤中将等の将官達もGF司令部へと呼ばれていた為に、その第一報を聞くことになった。

諸提督達にとってミッドウェー攻略は規定路線であり、戦前より決めていた公然の秘密であった。故に軍令部からMI作戦が認可されるだけ、、ならば特段驚くことではなかった。

「大海令」とは、国軍の最高司令官たる大元帥陛下(聖上)の奉勅であり、大元帥陛下のご裁可を受けたものとなるので、撤回しようものなら無礼千万に当たる。

部隊を分けるというのは、空母だけでなく補助艦艇たる駆逐艦も大量にそちらに分けなければならなくなるということである。そこも痛い点だった。それによって機動部隊全体の防御力も低下するからだ。

 元々将和は前世の教訓から、このやり方を検討していた。そもそも機動部隊の空母全てが敵からの航空攻撃に晒されるからダメなのである。

 史実を知って挑んだ前世でも兵力差が優勢であったにも関わらず、ミッドウェー基地航空隊と敵空母による相次ぐ波状攻撃によって、手痛い損害を被った。

 ならば、最初から空母数隻を囮として敵からの攻撃を吸収させ、他の空母には安全海域から攻撃隊の発着艦と補給をさせることで、首尾よく敵空母へと攻撃隊を送り出し屠って貰うつもりだったのである。

 また、史実で日本海軍が予想外だったミッドウェー海戦の敗退は一挙に4隻中3隻の空母を撃破されてしまい、敵機動部隊に対する攻撃能力を失ってしまったことにある。これは艦隊編成の関係上、空母を集中配置する編成にしてしまったことが裏目に出た形だったからである。

 この点を踏まえて将和は囮艦隊の構想を練ったのである。

 ただし、この作戦にはいくつかの問題点もあった。先ず、敵が此方の意図に気付いて囮となる空母に見向きせずに他の味方空母に攻撃が差し向けられたら計画自体が破綻するし、囮となる味方空母も敵からの集中攻撃を受ける訳だから大損害は免れない、高い確立で沈められてしまう公算が高いということである。

 将和が流石なのは敵の心情を汲み取っていたところだろう。現役の戦う軍人として、誰よりも現実を直視し、敵の状況を正確に把握するだけでなく、敵側の気持ちを理解し、その精神的行動についてまで思考をめぐらしていた。

 

 まさに本物の軍人である。

 

 将和は前の世界の日露戦争から太平洋戦争までを現場で戦い、そのスキルを存分に磨き上げた。

 この世界の海軍乙女達よりも実戦経験が豊富にあるのだ。

 故に武人、、であった。

 侍同士が刀を抜いて斬り合う時、そこに相手の心情を推し量る感覚に近いものを将和は持っていたのだ。

 大日本帝国海軍の気骨は、今世界の葦原海軍にも伝わったのである。

第一機動部隊 主要航空戦力

 第零航空戦隊 司令官 三好将和大将

  空母「大鳳」【零戦三六、艦爆二七、艦攻二七、艦偵六・計九六機】

  空母「神鳳」【零戦三六、艦爆二七、艦攻二七、艦偵六・計九六機】

 第一航空戦隊 司令官 小澤智里中将

  空母「瑞鶴」【零戦二一、艦爆二七、艦攻二七/搭載機数・計七五機】

  空母「翔鶴」【零戦二一、艦爆二七、艦攻二七/搭載機数・計七五機】

 第二航空戦隊 司令官 楠木多恵少将

  空母「飛龍」【零戦二一、艦爆一八、艦攻一八/搭載機数・計五七機】

  空母「蒼龍」【零戦二一、艦爆一八、艦攻一八/搭載機数・計五七機】

 第三航空戦隊 司令官 角田斗角少将

  空母「加賀」【零戦二一、艦爆二七、艦攻二七/搭載機数・計七五機】

  空母「赤城」【零戦二一、艦爆一八、艦攻二七/搭載機数・計六六機】

記号[GF]は連合艦隊、[1F]は第一艦隊、[1AF]は第一航空艦隊を示し、それぞれが司令長官を兼務していることを表す。

 恐らく葦原海軍の艦艇の大半が出てくるはずだった。であるならば、必ずアドミラル・ミヨシも出てくるだろうと予想している。

 

ーーーチャンスがあれば、その首を討ち取る

 

 もしそれが出来たら、軍の士気も上がるだろう。空母を沈めるよりも価値があるとニミッツは判断していた。




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