――ふう、一先ず応急処置は完了したな。
即席の緊急オペが終わり、俺ことアはほっと一息をつく。
「お疲れ、ア」
「ありがとうございます、アさん」
「ま、これでも医者の端くれだからな。いいってことよ」
怪我人は極東の青年。なんでもこいつはキララとウタゲのねーちゃん達の知り合いだという。
しかしまぁ、危険を察知し我が身を盾にして友人を庇うなんて、こいつ命知らずだ。しかしそういう奴は死にやすいが、実はいい人なのが多い。
「皆さん!ロドスの救援が来ましたよ!あ、救援隊の皆さん!こっちです!」
スノーズントのねーちゃんが救援に来たロドスの人員に手を振ってこちらに誘導している。救援隊がやってくると同時に見知らぬヴァルポの男性が怪我人に駆け寄り、彼の名前を呼び続けていた。
やってきた救援隊は男性を怪我人から距離を取らせて注意を払いながら担架に乗せる。そしてロドスの治療施設へと怪我人を運んで行った。
残った俺達も向かおうとする前に、ヴァルポの男性がこちらに近づいてきた。
「貴方達はブンカ君が大会に招待したご友人ですか?私は彼の上司である八島商工業のタケナカと申します。この度はブンカ君を助けていただきありがとうございます」
「私はロドスのアカフユと申す。礼は要りませぬ。今回彼を守れなかったことで、謝るべきは私の方です」
「……頭を上げて下さいアカフユさん。皆様はブンカ君がプライベートで招待した人達なのです。今回のことで貴方達が責任を感じる必要はありませんし、私も貴方達を責めはしません。
──少なくても彼はそれを望んではいないでしょう。何が起きたかご説明を窺いたいのですがよろしいでしょうか?」
「寛大な処遇を感謝する。長い話なのでここでは話すには向かぬ場所だ。ロドスの事務所にて説明するのでご同行願えるだろうか?」
「わかりました。よろしくお願いします」
あらまぁ、本来なら会社側の人間が騒ぎ喚いてロドスに責任転換してもおかしくないのに、この人は本当に悲しんでいるが随分冷静だ。この人自身が人が好いのか、怪我人の人望があるのか──あるいはどっちもかもしれない。
(──だからこそ、あの怪我人の未来はやるせねぇものだな)
怪我人の手術で除去したクロスボウの矢を見る。その鏃には毒と源石粉末が仕込まれていて、刺さった対象を毒で動けなくするだけではなく、確実に鉱石病に至らせる非道な代物だったのだ。
『──それで、任務は果たしたのだな?』
「ばっちりですよ旦那、矢を脇腹にぶっ刺さりましたから。鏃に仕込んだ毒で助かっても、別に仕込んだ源石粉末で鉱石病に罹患する。鉱石病に罹患すればどんな奴だって人生はおしまいさ
それよりも旦那。しっかり報酬を払ってくれよ?」
『安心しろ。それよりも痕跡は残さぬようにしろよ?』
「わかってますって。じゃあ切りますよ」
龍門スラムの人目のつかない場所で、ボウガンを持った男が電話を切る。男は陰で動くヒットマンを生業にしている。今回とある客からあの青年を殺害あるいは鉱石病に罹患させろという依頼が入った。この客からの報酬は良く男は優先的のこの手の依頼を引き受けており、お互いがお得意様として認識し合っていた。
当日、いつも依頼で行っている通りに変装や自らのアーツで
大会後、奴は女四人と共に何処かへ出かけていった。近づいて殺ろうかと思ったが、あの極東の女侍は近づけば切られかねないと感じ、手を出せなかった。幸い奴らの会話を盗み聞きした所、食事後に大通りに行くそうなので男は大通りの狙撃ポイントを確認し、そこで待ち構えていた。
しばらくすればターゲットが大通りにやってきた。狙撃しようとするがターゲットの前にいる少女が邪魔で撃てない。このままだとターゲットが狙撃ポイントから外れる。
あの女ごと撃つか?しかし二連射すればこちらの位置がバレ、見つかるリスクが高すぎる。一発でもターゲットの身体に矢を撃ち込めばよいのだ。そうすれば殺せずとも鉱石病に感染する。
男が苛立って狙いを定める中、突如ターゲットは前方の少女を突き飛ばし狙撃の斜線がガラ空きになった。これならいける!と男は即座に引き金を引いた。
矢はターゲットの脇腹に命中し、毒で麻痺してその場から倒れる。狙撃後に女侍がこちらを見ていた。完全に位置はバレていないだろうが、あのまま留まり続ければ不味いと男は即座にその場から離れた。
そして誰もいないスラムの建物内で依頼主に任務の報告をし終え、今に至る。
男がそのまま立ち去ろうとした──その時。
「おっとそこの人。ちょいと待ってくれませんかねぇ?」
突如掛けられた声に反射的に振り向く。ここは誰も知られていない秘密の場所だ。誰かがここに迷い込むなんてありえない。
思わぬ事態に警戒していると、暗闇から出てきたのは胡散臭そうな男性―リーだった。
「何の用でしょうか旦那?ここは物騒ですからあまり来るべき場所じゃねぇですよ」
「これはお気遣いいただきありがとうございます。けれどおれはあなたに用があるんですよ。ここが物騒なら少し場所を変えて、茶でもやりながらお話しませんかね?」
胡散臭い笑みを浮かべながら男をじっと見つめるリー。男はリーを見て、確かこいつは龍門で探偵をしている人物だと思い出す。
何故ここがバレたのかはわからないが、おそらくさっきの犯行のことは奴にバレているのだろう。このまま捕まるわけにはいかないと男は自慢のステルスアーツで身を隠そうとした瞬間──
「逃がさないでください!」
「──合点承知!!」
突如現れたフェリーンの女―ワイフ―が回し蹴りを男に食らわせる。奇襲で男のアーツは上手く発動せず身を隠すことは出来なかった。こうなったらと腹をくくった男はクロスボウをワイフ―に向ける。引き金を指を当て引こうとした──その時だった。
「いっただきま~す」
女の声と共に男が構えてたクロスボウは真っ二つに切断されていた。同時にワイフ―が男を叩き伏せて取り押さえた。
「取り押さえご苦労です。ワイフー、ウタゲさん」
「ウタゲさん、さっきのフォローありがとうございました」
「どういたしまして~。──それで、こいつがブンカを狙撃した犯人?」
刀を鞘に納めたウタゲはワイフーに組み伏せられた男をゴミを見るような目で見下ろす。その声色は先程ワイフーに礼を言ってた時とは打って変わり、普段の飄々とした感じが消えて僅かに殺気を漂わせていた。
「ウタゲさん、一先ずこいつは近衛局にしょっ引きま「は、あんなナヨったガキが怪我したくらいでキレてんじゃねーよ!」……あちゃ~」
「は?おっさん今何言ったの?」
相手の地雷を踏んだ男にリーは思わず手を頭に当てる。ウタゲはドスを含んだ声で男を威圧し、反射的に刀の鯉口を切る。
思わず相手を殺しかねないとワイフーは彼女を宥めようとする。
「ウタゲさん、落ち着いてください!殺してはダメですよ!」
「……ふぅ、わかってるよ。ちゃんとリーさんの言う通りに約束は守るから。
けどねおっさん。こっちは大事な親友が傷ついて、泣いているんだよ。これ以上あたし達を不愉快にさせるならさ……」
チン、と鯉口が閉じる音が鳴った。ウタゲが何をしたのか理解出来ず呆ける男。そして彼の頬からいつの間にか出来た赤い線が浮かび上がり、男は切られたと認識した。
「……次は、そのおつむをおさらばさせるからね?」
「ひ……ひいぃぃぃぃ!!?」
男はガチガチと歯を震わせ、恐怖のあまり気絶した。
「あらら、気絶しちゃいましたか。……ところでワイフー、さっきの居合見えてましたか?恐ろしく早かったですよ」
「私は見切れませんでしたよ。凄いですねウタゲさん……」
「いやはや、つくづく女っておっかねぇと思いますよ……」
「……リーおじさん、私をそんな目で見ないでくださいよ」
「とりあえず犯人を近衛局に引き渡してアカフユさん達に報告して帰りましょう」
オペレーターウタゲ、彼女がマジになった時の怖さは六人前だと。リーとワイフーはそんな彼女の噂が真実だと知った。
・八島商工業
色々な業種を手掛けている極東の総合企業。一流ではないが、その技術力と成長力は目を見張るものがあると言われる。プラモVSの主催企業。
・タケナカ
八島商工業のプラモVS、科学技術研究課の主任。主人公の上司でチーフの愛称で呼ばれている。
見た目は30代後半に見えるが、実はギリ20代。主人公はかつての自身の論文から使い道を見出してくれた恩人。若き技術者として、歳離れた友として彼を応援してる。
原作キャラ
・ア
主人公を治療したが、この先の運命に同情している。
・ウタゲ
マジモード
・ワイフー
スキル2で狙撃手のステルス発動を邪魔した。
・リー
人脈で犯人を捜したMVP。