side:キララ
私とブンカとは幼少期からの知り合い、所謂幼馴染って奴だ。
幼少期の頃、私は内気な性格と周りとは異なる趣味嗜好でいじめられていた。純粋に自分の好きな物を馬鹿にされたり、酷い時はそれを遊び半分で壊そうとしてくることもあった。
助けを求めても同年代の子は自分に気味の悪い視線を向けられる。先生を含めた大人は自分の趣味趣向が原因だと難癖をつけるだけ。自分の趣味趣向に理解を示してくれた両親を除いて、周りには私の在り方を否定する人しかいなかった。
ただ周りからいじめと仲間はずれにさせる日々が続き、ある日私は人目のつかない場所でこっそりと泣いていた。
どうして自分はこんな目に合わないいけないの? ただ好きな物を好きと言って何が悪いの?
自分に降りかかる理不尽に恨んでも、泣くことしか出来ない自分にただ悔しさが募るばかりだった。そうすすり泣いている時だった──。
「おーい? だれかいるのかー?」
「っ!」
はつらつとした声と共に見知らぬ少年が物陰を覗くように顔を出していた。人もあまり来ない場所で隠れて泣いていたので突然の来訪者に私は身体を硬直させた。
「うお、ほんとにいるとはおもわなかったぞ。というかきみ、ないてるけどだいじょうぶ? どっかいたいの? ──ん?」
こちらを心配そうに窺う彼の目はふと、ある物に視線を向ける。それは私の鞄に付けてたロボアニメに出てくるキャラクターのキーホルダーだった。
「なぁ、これって……」
「っ! ──やめて!」
彼に声を掛けられた瞬間、私は体を震わせ縮こまりながら叫んだ。相手は見た目からして外向的な性格で、引っ込み思案な私とは真逆な存在。性格から彼を今までいじめてきた人と同じだと思い込み、また自分に対して心無い言葉で傷つけてくるのかと強い拒絶を示した。
「──そのキーホルダー、もしかしてあのアニメのロボだよな? あれめちゃくちゃかっこいいよな!」
「え……?」
だが目の前の少年は自分への侮蔑や冷淡な言葉ではなく、目を輝かせながら純粋にキーホルダーのキャラが出てくるアニメを褒め称えていた。
「ね、ねぇ……わたしのこと、きみわるくないの?」
「ん、なんで?」
「だって、ほかのこからはおんなのこっぽくないとかいわれて……」
他の人だと言われることが無かった言葉を言った彼の真意を聞くために、私は恐る恐ると問う。すると、目の前の彼は「うーん」と言いながら数秒悩んだ後に私のキーホルダーを指差しながら口を開いた。
「でもさ、きみはそれがすきだからつけてるんでしょ? それにおれもこういうキャラのキーホルダーをつけたりするよ。ほら」
そういって彼は鞄から鍵を取り出し、その鍵についてるキーホルダーを私に見せた。それは黄色い体に稲妻の尻尾と細長の耳、そして紅丸のほっぺが特徴的なかわいい動物のキャラだった。今まで見たアニメやゲームでも見たことないキャラだが、これはどちらかというと女の子が好みそうなキャラなのは間違いなかった。
「だから、きみがそのアニメがすきでなんもおかしくないってこと。むしろそのアニメをはなせるなかまをみつけたことのほうがおれはうれしいな」
「そ、そうなの?」
「うん。それにほんとうにすきなものなら、たにんにどうこういわれてもしったことじゃないし、どうどうとしていればいいんだよ。むしろすきなものをたにんがひていするなんて、それのほうがおかしいんだから」
彼はさも当然のように自らの考えを言い切った。好きな物を否定されることを疑問に思い、両親以外にも自分の趣味嗜好を認めてくれる人がここにいるんだと。
その事実を受け止めていると胸の奥から熱い何かが込み上げて来て、急に目頭が熱くなり視界がぼやける。
「──えっ、どうしてまたないてるの!? もしかしておれ、なんかひどいこといっちゃった!?」
「うぅん……ちがう……ちがうよ……」
これが彼、ブンカと私の初めての出会いだった。意外なことに彼と私は組分けが違うけど同じ小学校であったことに驚き、この日を境に私と彼は一緒に遊んだり、アニメやゲーム、音楽や漫画などを語り合ったりして仲良くなり、次第にかけがえの無い親友へとなっていった。
悩んでるイジメも彼は「そんなの気にする必要ない、何なら俺も一緒に立ち向かってやるって」と笑って励ましてくれた。実際に彼はイジメ証拠の為に小型のボイスレコーダーを渡してくれたり、私がいじめられてる所を見るとすぐに割り込み、一緒になって立ち向かってくれた。
そんな彼の行動には嬉しく思ったし、それ以上に自分の趣味を語り合える同年代の人がいたという事実が私に勇気をもたらしてくれた。そのおかげで心の余裕が持てる様になったのか、イジワルなことを言ってくるいじめっ子の言葉なんか気にしなくなった。
後にいじめはヒートアップして互いの親を巻き込んだ言い争いになったんだけど、意外なことに決着をつけたのも彼だった。相手がうっかり彼の地雷を踏む発言をし、静かにブチ切れたブンカが淡々と論理的に相手の意見を次々と論破していった。最終的に相手は涙目になりながらただ非を認めることしか出来なくなってた。
あの時のブンカって傍から見ても同じ子供とは思えないくらいにとても怖かったし、少なくても絶対に怒らせないようにしようと心に誓った。
私は彼にとても……いや、言葉じゃ言い表せないくらいに感謝している。陰キャな本質は変わってないけど、もし彼と出会わなければずっと部屋に引きこもる日々を過ごすような、今よりも酷い状態になってた気がする。
それに中学からは彼以外にもウタゲという同性の友達も出来た。彼女みたいなリア充は今でもめちゃくちゃ怖い。でも昔に比べればまだマシで、彼女はサブカルを貶すようなことは言わない良い友人だ。むしろ興味津々に色々聞いてくるし、時にはアニメやゲームのキャラからオシャレに取り入れるくらい熱中するから布教のしがいもある。
そういや彼女との仲を上手く取り持ってくれたのもブンカだった。初めて彼女に話し掛けられてまごまごしていた私にフォローを入れて、話し合う機会を上手く設けてくれた。その後のウタゲのコミュ力もあるけど、あれのお陰で私にしては人と上手く話すことができたと思う。
高校や大学では彼が夢のために別の所に行った時は悲しかったけど、定期的に連絡してくれたり長期休みでは必ずこっちに遊びに来てくれたりとしてくれたから寂しくはなかった。それにただ待ってるだけじゃなく、機械工学に専攻している彼の隣に立てるよう、中学から特技として続けていたプログラミングの技術を磨いていた。腕前を彼に披露した時は彼の凄く驚いてくれた顔を見れて嬉しかった。
でもある日、私は鉱石病に罹ってしまった。既に感染していたウタゲからの手助けで私はロドスで治療を受けることが出来た。けど感染者になっちゃって極東にいる両親、そして彼とはもう会えないと思った時は思わず大泣きしてウタゲに迷惑かけちゃった。その時の彼女の提案で、彼に私達の事情を打ち明ける手紙を出すことにした。
正直手紙を出すのは怖かったけど、「ブンカが酷い奴じゃないってことはキララが一番知ってるでしょ? それにもしもあいつがキララをフッたらあたしがブンカのことバラバラにするから、ね?」と、ウタゲの言葉に勇気を貰って彼に手紙に出した。
いつ彼の元に手紙が届き、返信してくれるのか不安な気持ちながらも心待ちにしていた。そうして待つこと数ヶ月、彼からの手紙が届き封筒の中には私とウタゲの返事が綴られた便箋と、4枚入りのプラモVSの大会観戦チケットが入っていた。手紙には大会観戦のお誘いと、大会後に会って話がしたいという内容が綴られていた。こちらの事情を知り、おそらく彼なりに励まそうとしてくれた気持ちに、私達はそれに応えることにした。
龍門に着き、大会ではブンカの活躍ぶりを固唾を飲んで見守っていた。彼が駆るプラモは、前に秘蔵の一品として私達に見せてくれたSFロボアニメの主人公機を改造した機体だ。数多の強敵の前で一歩も引かずに果敢に立ち向かうその姿は、白き夜叉の如く荒々しくもヒーローのように勇敢に戦い、輝いて見えた。
勝ち進んでいった彼の決勝戦は白熱した戦いだった。激しい攻防を繰り広げて決着のつく終盤では自慢の白色が消え失せ灰色に変化する程に彼の機体は追い詰められた。最後の一騎打ちには邪魔な武装を全て外し、文字通り捨て身の覚悟でナイフ一本を持って突貫して勝利をもぎ取った。保護者のアカフユさんもあの瞬間は見事だと興奮しながらも彼を称賛していた。
こうして優勝を飾った彼に観客が大歓声で会場中を轟かせながら祝福した。そんな彼を見れたことに私はウタゲと一緒に自分の事のように嬉しく喜んでいた。
そして大会後、待ち合わせ場所で会ったブンカは久しぶりに会えたのか嬉々とした笑顔で手を振りながら私達と再会した。感染者だと手紙で知ってるのに嫌な顔もせず私達を迎えて、色々と積もった話をしたいと彼が予約した店で会食することになった。
食事の際の会話で、彼は私達が感染者になったこと、辛い状況になっていたことを知らずにいたことを謝っていた。彼曰く、親友が大変な時に傍に居られず何もしてやれなかったことを悔やんでいた。手紙を読んだ時、せめて何か元気づけたり出来ないかと彼なりに考えた結果、私達をプラモVSの大会に招待したらしい。
私達の鉱石病で彼がそう思い詰める必要が無いし、こうして謝る必要なんてない。それに彼の連絡が遅れたのはトランスポーターが天災に見舞われたことが原因だと、彼の返事を届けてくれたトランスポーターから話を聞いた。
私達に起きたことを自分の事のように心配し、昔から律儀な所がある彼の気持ちを私達は快く受け入れた。その後は辛気臭い話を止めて、お互いに積もった楽しい話を交わし合って一時を過ごしていた。
そうして何事も無く終わるはずだったのに、夜の大通りで散歩していた時にブンカが私を突き飛ばした。一体何だと抗議しようと振り向いた時、彼の脇腹に矢が刺さり倒れる彼の姿が目に映った。
―矢、なんで? どうして彼が倒れてるの?
目の前で起きた状況に私はパニックになり一心不乱に彼を呼び掛け続けた──
あの後龍門のロドス事務所に搬送され応急処置された彼は無事に目覚めてくれた。命に別状は無いと言われたけど数日間も目覚めない彼に気が気でなかった。けど無事に目覚めてくれてよかった。嬉し涙で顔がくしゃくしゃになりウタゲに慰められていたのは今思えば恥ずかしいとこ見せちゃったけど。
その後何故かケルシー先生がここにやってきてブンカと一部の人達に大事な話があるとのことで私達は一旦部屋を出て事務所のリビングで待つことになった。どうしてケルシー先生が来てるのがわからず、その後ケルシー先生からブンカが検査することになったことを聞いた。
私とウタゲは彼を待つことにしたけど、アカフユさんとスノーズントさんは急な仕事でロドス本艦に戻る必要が出て行った。二人は事務所の人に私達の保護者の引き継ぎを任せ、ブンカにはよろしく頼むと私達に言伝してから事務所から立ち去っていた。
でもブンカに検査……? ケルシー先生からの話から何か嫌な予感がすると感じ、ウタゲも同じように思っていた。
当たってほしくないと願うも──悲しいことにその予感は当たってしまうことを知ることになった。
「──と、いうわけで俺もロドスのお世話になることになったわ、あっはっはっは!」
「いや、笑って報告する内容じゃないでしょ!?」
「……流石のあたしも
検査を終えてやって来たブンカが、鉱石病というとんでもない事情を快活に笑いながら打ち明けたことに対して私はツッコんだ。ホント何でこんな能天気なんだと思わず怒気を込めたけど悪くないよね? ほら、ウタゲも顔はにこやかだけど目が笑ってないよ!?
鉱石病。私やウタゲが感染している不治の病で世界中に蔓延する差別・迫害の根源だ。罹れば最後、仲良かった家族や友人から手の平返すように虐げられ、過酷な環境で暮らすのを強いられるのは常識だ。私やウタゲは運良くロドスに受け入れられたからこうして感染前と大体変わらない暮らしをしながら治療を受けられている。けれど、そうでなかった時の暮らしはきっと想像できない程に辛いものになっていたかもしれない。
昔から彼の鉱石病や感染者に対する危機感はどうかと思う所がある。鉱石病をまるでただの風邪と同じような軽い受け取り方をしているなど、彼は鉱石病や感染者に対して所々に無知な所がある。まるで鉱石病や感染者というものに
しかし良くも悪くも、それが感染者を一人の人間として見れる彼の強さなのかもしれない。鉱石病に対し悲観的にならず、ブレないで生きれる彼の意志は眩しく見える。
「……それで、話は分かったけどロドスにはいつ来るの?」
「おう、大体一ヶ月後くらいだな。それまでに色々と手続きとか準備があるから、実際はあんま余裕無いけどな」
「にしてもブンカもロドスに来るとは思いもしなかったな~。やって来たら先輩としてロドスのことあたしらが教えないとね~」
「お、そうだな。そん時はオナシャス! ……あ、そろそろ時間だから行くわ。二人とも今回は色々とありがとな! アカフユさんとスノーズントさんにもよろしく言っておいてくれ!」
荷物を纏めながら玄関に向かい、私達に手を振りながらロドス事務所を後にするブンカ。彼の後ろ姿が見えなくなるまで私はその方向をじっと見つめていた。
「…………」
「ほらほら、しばらくすればいつでも会えるんだからそんな名残惜しそうな顔しないの。ほんとキララってブンカのことが好きだよね~。それも
「ちょ、何でそうなるの!?」
「だってキララ、ブンカと話してる時は分かるくらいに凄く楽しそうにしてるもん。見ているこっちが甘ったるくて胸焼けするし、幼馴染パワーってやつ? なんか妬けちゃうな~」
うりうりと言いながらツンツンと私の頬をつつくウタゲ。そりゃブンカの事はす……好きだけどさぁ……///
「け、けどそれを言うならウタゲだってブンカと話してる時は楽しそうにしてるじゃん!」
「そうだよ~。初めて会った時は変わった人だな~って思ってたけど、男子にしてはオシャレや流行の話にも真摯に聞いてくれるから好印象だよ。……ま、鈍感なのは唯一の欠点だけどね(ボソッ)」
「え? 最後何か言った?」
「んーん、何でもないよ。ほら、あたしらもロドスに帰ろっか」
そうして私達もロドス本艦へと戻ることになった。
──そして一か月後、ブンカがロドスへとやって来た。
キララ
主人公のおかげで原作に比べ引き籠り等諸々の部分が改善された。とは言え陰キャの気質が変わったわけじゃないので人見知りとかはあったりする。
自信を持たせてくれたことへの感謝と、趣味を堂々として誇っている姿を見ていくうちに惹かれていった。しかし陰キャの部分が強く告白は未だ出来てない。
ブンカ
泣いてるキララの趣味嗜好をピカ〇ュウのキーホルダー見せて励ました。その後何故か泣かれたのは驚いた。今となっては自身のオタ話についてこれる相手としてキララは大事な親友で、あの出会いは良い思い出だと思っている。
趣味の事をバカにするのは考えの違いと思っているが、過剰に貶されると「お前それサバンナでも同じこと言えんの?」スタイルでカウンターして静かにブチ切れる。
ウタゲ
中学の頃は主人公の事を面白い相手と見ているが、とある出来事で他の人には内緒だが彼の事を気にはなってる。
とは言えキララの恋心を理解しているため、基本はキララ優先。あわよくば一夫二妻ルートに持ち込めそうなら、そのルートに巻き込んでいこうと考えている陽ギャル。
問題は当の相手が少し鈍感な所が悩み。