ヒロインでヒーラーと言うとBLEACHの井上織姫ですかね、真人と性格は真逆ですけど。……いやけど“ラスボス候補に能力を狙われる”のと“主人公にキスしようとする”のも井上織姫に当てはまりますね…………あれ?
━━━━神奈川県川崎市・キネマシネマ
(……全然内容入ってこない)
平日昼間、本来ならば学校へ行っているであろう時間。学校をサボってまで映画を見ようと、四人の高校生がその映画館を訪れていた。
(喋るな!!電源を切れ!!)
その内、後ろの席に座っていた吉野順平はマナーを守らない残りの三人に対し心の中で一人愚痴る。無理もないだろう、先程から彼らは“大声で喋る”、“スマホを弄る”極めつけには彼らが順平に暴力を振るった不良であるときた。映画に集中しろと言う方が無理がある。
(やっぱり偏差値そこそこでもああいう人種はいるんだな)
折角お金を払ったのだからと最後まで見ようと思っていたが、気分がどん底まで落ちてしまった今、これ以上見ていても嫌な思い出になるだけだろうと席を立とうとした……その時
「……君たち、マナーは守ろうか」
ツギハギの顔に白髪の青年が、なぜか
(!?何してんだあの人!!!)
殴られるぞ、という心配の思いと同時に自分も巻き込まれそうだと考え、急いで映画館から出ようとした順平だが、その直後三人組が奇妙なことを喋りだした。
「……オイ、いまのやったのてめェか?」
「は?いやちょっと待てよ、俺じゃねえって」
「後ろに誰もいねえのにてめェ以外に誰がやれるってんだ!!?舐めてんのかてめェ!!!」
ピコピコハンマーとはいえいきなり殴られたのだ、そりゃキレる。だが奇妙にも、彼らのうちの誰も後ろの青年を認識していない。
(暗くて見えてないのか?いやけどあんなに近くにいて見えないなんてこと……)
そう思い青年へと目を向けると、青年もまた順平の方を向き手招きをしてきた。
(……着いて来いってことかな)
どう見ても怪しいのに着いて行ってしまったのは好奇心からか、それとも人間からはしないであろう気配を青年が発していたからか。……どちらにせよ、ここでついて行く選択を取ったことで、彼の人生は大きく変わってしまうことになるだろう。
「一応聞いておくけど、彼ら君の友達だったりする?」
映画館の裏、順平は先程の青年と対峙していた。
「……違います」
「なら良かった、仕返しされるかと思ったよ」
「……あなたは、何者なんですか?」
単純な疑問を、直球に聞く。普段の順平ならばまずしない事だ、それが出来たのは先程のことに対する疑問と好奇心のせいに他ならないだろう。
「呪霊、まあいわゆる幽霊みたいなものだよ」
「……だからあの三人が気づかなかったんですか?」
「そう、俺たちは本来普通の人には見えないし、カメラとかにも写らないんだ。君みたいな例外を除いてね」
“例外”、その言葉に少しムッとしてしまう、もう少し言い方がなかったのだろうか。
「君みたいにたまたま見える人もいるけど、見える人の大半は呪術師っていう俺たちを殺す仕事のヤツらだね」
「殺っ!!?」
いきなりとんでもない言葉が聞こえてしまった、
「別に彼らは間違ってないさ、呪霊っていうのは人間の負の感情が集まって出来たものだからね、俺みたいに知能を持ってるやつもいるにはいるけどほんと極小数だし」
「知能を持ってない呪霊は……」
「人に害を成すだけの化け物、もしいたのが俺じゃなかったら君今頃死んでるよ」
冗談だろうと笑えれば良いのだが、青年の顔は嘘を言っているようにはまるで見えなかった。
「俺の名は真人、君は?」
「……吉野順平です」
「うん、よろしく」
真人は右手を突き出して来て、順平は少し迷ったあとに握手をした。
「これで俺たちは友達、困ったら頼っていいよ」
「……友達」
初めて出来た友達が人外、B級映画にありそうだなとふと思ってしまう。
「順平は今まで呪霊を見た事ないの?」
「はい……正直、今でも実感がないです」
雰囲気や風貌は明らかに人間のものとは違うが、人間と名乗られても分からないほどに人に近い容姿だ、そう思うのも無理はないだろう。
「呪霊っていうのは、みんな真人さんみたいな姿をしてるんですか?」
「……いいや、俺みたいに明らかに人間の姿をした呪霊は少ないよ」
「じゃあなんで真人さんは……その、人間の姿なんですか?」
その問いに……真人は困ったような、言いたくなさげな表情をする。
「……呪霊っていうのは、人の負の感情が集まってできるんだ。その中には一つの存在に対する畏怖なんかから生まれる呪霊もいてね」
「一つの存在……天災とか、ですか?」
「正解、例えば火山や大地、例えば海、例えば自然、みたいにね。呪術師達はそれらを総じて“
まるで
「真人さんは、何の呪霊なんですか?」
「……俺は“人”、人が人を怨み、畏れた……その腹から生まれた呪霊だよ」
自分の事を話すには酷く寂しそうに、悲しそうに話す姿は、とても呪いには見えなかった。
「特級呪霊?」
「ええ、恐らくですが」
伊地知潔高と虎杖悠仁は車内にて今回の任務の内容について話していた。
「“窓”の報告によれば人型、人語を話している姿も目撃されています。恐らくですが先日五条さんが戦った単眼の呪霊の仲間でしょう」
「アイツの仲間……!」
虎杖の記憶では五条に圧倒されていた記憶しか残っていないが、それでもなお“自分では勝てない”と確信するほどの強さ、それと同レベルと考えると顔が強ばってしまう。
「……ですが奇妙なことに、その呪霊による被害が未だに出ていないそうです」
「変に暴れたら五条先生が来るからとかじゃないの?」
「確かにその可能性も有り得ます、ただ……」
まるで信じられないことかのように言葉を濁した伊地知を、虎杖は不思議そうな顔で見つめる。
「ただ?」
「……その呪霊は、ショッピングモールで玩具等の雑貨を買っていた、との事です」
「……呪霊が買い物?出来んの?」
「その玩具をとってからお金だけを置いて去ったそうです」
「それ買ったって言うの?」
不気味としか言いようがないその行為に、頭の中が?でいっぱいになる。
「人間の文化の勉強とか?」
「それも有り得ます、ですが呪霊の行動に意味を求めては行けません、彼らは息をするように人を殺しますから」
「……うん、分かってる」
虎杖の脳内には少年院で戦闘した呪霊、そして己の体の中にいる両面宿儺が思い浮かぶ。強さは違えど、どちらも息をするように人を殺す呪いだ。
「それで、そいつはどうやって見つけんの?」
「その呪霊の残穢を追った所、最後にいたのは神奈川県川崎市の映画館です。呪霊の追跡は七海さんが、虎杖君にはそこに居合わせた少年に話を聞いてもらいます」
「押忍!」
「せっかくだから、呪術についても教えておこうか」
先程と場所を移し、下水道の中で順平と真人は話していた。
「呪術って言うと、藁人形と釘の?」
「確かにそう言うのを使ってる術師も居そうだけどね、俺が話したいのは呪力と術式を使った呪術だ」
そう言いながら、真人は順平から少し離れた位置に空き缶を置く。
「まず、これが呪力」
手で指鉄砲を作り空き缶に向けると、大きな音をたててその空き缶が変形しながら吹き飛んだ。
「次にこれが術式」
順平へ向き直ると、みるみるうちに真人が兎の姿へと変身して行く。
「術式は人によって違うからまあ当てになんないけどね……どう?驚いたでしょ」
兎の姿から人間の姿へと戻りながらも、悪戯が成功した子供のような無邪気な顔で順平へと笑いかける。
「……正直、今日色々な事があり過ぎて、全部夢なんじゃないかって思い始めてます」
自分の知らない世界が、いつもの彼ならば単なる妄想だと一笑に付す様な話を、今まさに実践されているのだ。普通の高校生ならば混乱する事は必至だろう。
「じゃあもう一つだけ、俺の術式にはこんな使い方もあるんだ」
真人はそう言いながら順平の額を
「無為転変」
「……今、何したんですか?」
「鏡、貸してあげるよ」
━━━━順平は所謂、“いじめられっ子”だ。映画館にいた三人の不良や学校のクラスメイトなど、多くの人間からの虐めを受けた中、時には
「傷が……治ってる」
「どうにも鬱陶しそうだったからね、それとも前の方が良かった?」
「……まさか…………本当に、本っ当にありがとうございます……!!!」
俯きながら震えた声で、それでも心底嬉しそうに、順平は礼を言った。
「いいよ礼なんて、友達なんだから」
そう言う真人の顔は、これまた呪霊とは思えない…………まさしく“人”の顔をしていた。
設定の都合上真人が生まれたのを原作よりもだいぶ昔にしてます。